久遠の神話
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第七十六話 富を求めるならその一
久遠の神話
第七十六話 富を求めるなら
中田はこの日王の店で彼の作った料理を食べていた。食べているのは特大の丼の中に入ったラーメンと三人前の焼き餃子、それに三人前はある炒飯だった。
そういったものを食べながら彼は自分の横に立つ王にこう言ったのである。
「今日も美味いな」
「謝々」
王は中田の実際に食べての言葉に中国の言葉で礼を述べた。
「そう言ってくれると何よりだよ」
「やっぱり誰でも自分が作ったものを美味いって言ってもらえると嬉しいよな」
「そうだよ、私にしてもね」
「けれど、だよな」
「美味しいものしか作らないよ、私はね」
自信に満ちた笑みでその言葉を出したのだった。
「絶対にね」
「言うねえ、また」
「腕が違うよ、腕が」
「だからか」
「そう、どんな料理でも中華なら」
このジャンルの料理なら、というのだ。
「最高の料理にしてみせるよ」
「そうだな、あんたの料理はこれまで結構食べてるけれどな」
そのどれもが、というのだ。
「最高の味だよ」
「そうだろうね、私は料理の天才だからね」
「自分で言うんだな」
「自分で言わないと駄目だからね、中国ではね」
「確かにな、それはアメリカもだよな」
「そうだね、あの国もね」
王は気さくな笑顔で中田の言葉に応えた。
「自己主張しないとね」
「それもかなりな」
「生きられない国だよ」
「結構辛い国なんだな」
「生きることがかな」
「ああ、アメリカにしてもな」
そういう国に思えるというのだ、中田から見れば。
「いつも自己主張してしかも実力を見せないといけないからな」
「いや、それがね」
「違うっていうのかい?」
「慣れればね」
その気さくな笑みで中田に話す。
「そうでもないよ」
「そうかい?」
「というか日本人が大人し過ぎるんじゃないかな」
そうではないかというのだ、中国人である彼から見れば。
「噂には聞いていたし中国に来る観光客の人達もね」
「それで実際に日本にいる日本人もだよな」
「大人しいね、全体的に」
「こっちは違うだろ」
「ああ、関西はっていうんだな」
「ここは違うね」
関西は、というのだ。そして王はあの街のことを言った。その言及した街はというと。
「特に大阪はね」
「ああ、あの街は自己主張が激しいよ」
「そうだね、広島も福岡もね」
「大体日本の西の方は自己主張が激しいんだよ」
「この神戸も結構だね」
「だろ?まあ東の方はともかくとしてな」
東京を意識しての言葉だ、尚中田は関東は好きではない。合わないからである。
「こっちは違うさ」
「日本人でも自己主張が強いね」
「そうだよ、けれどあんたの国やアメリカと比べたらな」
「大人しい方だね」
そうした国々の基準から見ればというのだ。
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