久遠の神話
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第七十五話 避けられぬ戦いその十二
「自分達がどう思われているのか全く考えられない」
「そうした連中ですからね」
「アメリカの政治のこともわかっていない」
そのネオコンのこともだというのだ。
「あれではな」
「どうにもなりませんね」
「連中の言うことは無視をしていい」
工藤は彼等似非保守のことをこう言って切り捨てた。
「偏見だけの差別主義者だからな」
「ですね、本当に」
「政治は彼等の考える通りには動かない」
何もわかっていない者達の見方通りにはならないというのだ、アメリカの政治にしても。
剣士の戦いは戦いから降りられる者と今すぐにはいかない者で分かれていた、しかし剣士の数は徐々に減っているのも確かだ。
だからだ、智子も言うのだった。
「何とかします」
「そうだな、動かなければ何もならない」
「はい、戦いを選ぶ他の剣士達のことも」
こう工藤に言うのだった、そのうえで。
焼きそばを食べてだ、こう言った。
「しかしこの焼きそばというものは」
「美味しいですよね」
「日本にはこうしたものがあるのですね」
白い皿の上のソースで色と味が付けられたそれを食べながらの言葉だ。
「こんな美味しいものが」
「何か随分お気に召したみたいですね」
「ギリシアにはない味です」
高橋に食べながら答える。
「本当に」
「だからですか」
「そしてお好み焼きも以前食べましたが」
二人が今食べているそちらの話もした。
「それもとても」
「ああ、お好み焼きも食べられたんですね」
「特にモダン焼きが」
お好み焼きの中に焼きそばを入れたものだ。これは大阪独自の食べ方で広島の挟むお好み焼きではないものだ。
それを食べてだ、こう言うのだった。
「最高ですね」
「モダン焼きも召し上がられたんですね」
「今は食べていませんが」
それでもだというのだ。
「あの味には特に驚きました」
「そうなんですね」
「明日はあれを食べようと思っています」
こう話す智子だった、そして。
その焼きそばをさらに食べていく、智子は戦いのことだけでなく料理のことも考えていた。暗鬱としたことだけを考えている訳ではなかったのだ。
その料理のこと、暗鬱でないことについてはこうも話す彼女だった。
「こうして明るいことも経験して味わえば」
「いい考えも出て来る」
「そういうことですよね」
「はい、ですから」
食べることも大事だというのだ、戦いのことだけを考えてもそれは煮詰まるだけであるというのである。
だからだ、智子は焼きそばと一緒についている味噌汁と御飯も口にして述べた。
「日本にずっといたくなりました」
「料理が美味いからか」
「だからなんですね」
「こうしたお料理を味わえることは幸いです」
神話の時代から生きている彼女から見てもだった。
「ですからずっと」
「じゃあ戦いが終わってからも」
「この国にいたいですね」
高橋の問いに微笑んでこう返した。
「是非共」
「そうか、それならな」
「楽しんで下さい」
二人もお好み焼き定食の御飯と味噌汁を味わいながら応えた。それはどれもいい味だった。
第七十五話 完
2013・7・15
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