久遠の神話
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第七十六話 富を求めるならその二
「まだね」
「そうだよな、やっぱり」
「それで中国に話を戻るけれど」
彼のその国についての話にまた戻る、その話はというと。
「それぞれの才能を活かしてそこで活躍すればいいんだよ」
「つまり得意分野での自己主張か」
「好きこそものの上手なれとも言うね」
「つまりあれか。好きなものを見つけてか」
「やっていけばいいんだよ」
そういうことだというのだ。
「才能は。エジソンの言葉だったね」
「一パーセントの才能で、だよな」
「九十九パーセントの努力だよ」
「一パーセントの才能がなかったらどうするんだい?」
中田はラーメンを食べながら微笑みつつ王にその場合について問うた。
「その場合は」
「簡単な答えだと思うけれど」
「つまりその残り一パーセントをか」
「努力すればいいんだよ」
そうすればいいというのだ、あっさりと答えた彼だった。
「そういうことじゃないかい?」
「それはそうだな、才能がゼロコンマの可能性でもな」
「ゼロでないとね」
ほんの少しでも芽があれば、というのだ。
「必死で努力すればいいだけだよ」
「好きなことをか」
「そう、必死にね」
そうすればいいというのだ、中田に言う言葉はこうしたものだった。
「頑張ればいいんだよ」
「前向きだな」
「中国では前向きでないと生きていけないよ」
王は明るくこんなことも言った。
「そうした国だよ」
「何か共産主義めいてないな」
「共産主義?あんなのもう誰も信じてないよ」
あっさりと言い切った王だった、これまでで最も軽い口調でもあった。
「誰もね」
「まあ今更な、あんな思想な」
「それよりもお金がないとね」
王は彼の戦う目的でもあるこれの話もした。
「私もいつも欲しいと思っているよ」
「あんたはそれが強過ぎるな」
「だから戦ってるしね。けれどね」
「モラルはあるっていうんだな」
「そのつもりだよ」
このことは断るのだった。
「法律は破ったことはないよ」
「それはいいけれどな」
「戦うにしてもね」
それについてもだった。
「刃物は何か」
「料理をするものだよな」
「それに相手を殺めることはまではね」
「嫌かい?」
「そこまでは考えていないよ」
そうだというのだ、戦うにしてもだ。
「私は確かにお金が好きだけれどね」
「人は殺さないんだな」
「そうだよ」
こう中田に話すのである。
「そのことは念を押すよ」
「俺でもかい?それは」
中田は炒飯も食べながら悪戯っぽく問い返した。
「殺さないのかい?」
「そのつもりだけれどね」
「いいのかい?俺は首がつながってる限り戦うぜ」
「それが出来ればね」
してみろとだ、笑って返す王だった。
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