久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七十四話 実った愛その七
「だからクリープも多い」
「そういうことなんだな」
「コーヒーは甘い方がいいな」
「まあそこは人それぞれだな」
「あんたは今は」
「ああ、見ての通りだよ」
中田の紅茶には砂糖は入れていない、そしてレモンを入れている。
「レモンティーだよ」
「それか」
「ああ、大抵はミルクティーだけれどな」
それを飲んでいるというのだ。
「けれど今日は気分を変えてな」
「そのレモンティーか」
「何でもイギリスじゃレモンティーは飲まないらしいな」
「そうだ」
その通りだとだ、広瀬もその話に答える。
「イギリスはミルクティーだけだ、基本的にな」
「だよな」
「レモンティーはアメリカ人のものだ」
その国のものだというのだ。
「イギリスじゃない」
「イギリスとアメリカでまた違うな」
「全くな、アメリカは最初はイギリスの植民地だったが」
かつては同じだった、だがだというのだ。
「今では全く違う国だからな」
「だよな、それでアメリカの料理はな」
中田は笑ってこの国の料理についての話もした。
「あれで結構いけるらしいな」
「そうだな、ロスやニューヨークはな」
「行ったことがあるんだな」
「一度だけな、それぞれな」
そのロサンゼルスやニューヨークにだというのだ。
「アメリカの料理はかなり美味しくなっている、ボリュームもある」
「それも有り難いよな」
「しかしだ」
広瀬はコーヒーを飲みながら話していく。
「イギリスは違う」
「まずいんだな」
「一応朝食とティーセットが自慢だが」
後はフィッシュアンドチップスとローストビーフだ。
「そのどれもな」
「まずいんだな」
「日本人が作ると美味い」
そうだというのだ。
「イギリスのそれはまずい」
「それは俺も聞くな」
「ティーセットもだ」
そのイギリス人が料理で自慢できる数少ないものですら、というのだ。
「俺の舌が合わないだけかも知れないが」
「そんなにまずかったのか」
「水が違う」
イギリスは硬水だ、これが料理だけでなく茶にも影響するのだ。
「あの国は土がよくないからな」
「だからお茶もなんだな」
「日本人には合わないのかも知れない」
ここではあえてまずいとは言わない広瀬だった、彼も出来るだけ客観的な評価を心掛けているのであろうか。
「どうもな」
「しかし。ティーセットもか」
「日本のものの方がな」
広瀬はよかったというのだ。
「美味いティーセットは日本で楽しめ」
「よし、じゃあ今度ティーセットを食う時はな」
そうするとだ、中田も答えた。
そしてそのうえでレモンティーを飲みこうも言った。
「レモンティーでティーセットはな」
「やはりミルクティーだな」
「そうだよな、やっぱり」
「スコーンにサンドイッチにケーキにだ」
広瀬は今度はそうしたものを話に出す。
ページ上へ戻る