久遠の神話
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第七十四話 実った愛その四
「そうした感情はどうしても抑えにくいので」
「聖職者であってもだな」
「はい、妻を持ち子供をもうけます」
「しかしあんたは違うか」
「私自身神に仕えるならばそうあるべきと考えていますので」
それ故にだというのだ。
「ですから」
「そうか、それがあんたの考えだな」
「私は妻帯はしないつもりです」
「女も捨てているか」
「そう自分に言い聞かせています」
「俺には出来ないことだな、とてもな」
今は特にそう思うことだった、自分自身のことから。
「しかしあんたがそう思うのならな」
「それならですか」
「そうするといい、戦いを止めることもな」
そのことについても言う。
「これからも頑張ってくれ」
「有り難うございます、それでは」
「俺はもう戦いは降りた」
剣を置いた、それで全ては終わったのだ。彼自身の戦いは。
「関係はなくなったからな」
「ではこれからは」
「見守るだけだ」
戦いを降りてそうするというのだ。
「そういうことでな」
「そうですか、では」
「俺は俺の願いを適えた、後はだ」
「その願いをですね」
「守っていく」
そうするというのだ。
「後はな」
「そうされますか」
「願いが適ってもそれで終わりじゃないな」
「そうです、願いは適えただけでは終わりではないです」
そうだとだ、大石もこのことに答える。
「その願いを守っていくことも」
「難しいな」
「ことを為すことは難しいです」
まずそれが難しいというのだ、そしてさらにだった。
「それを守っていくことも」
「どちらもだな」
「そうです、難しいですから」
だからだというのだ。
「頑張って下さい」
「そうだな、願いを適えてそこでハッピーエンドじゃない」
「その通りです」
「ならだ」
それならとだ、広瀬は強く言ってだった。
そのうえで前を見てだ、大石に言い切った。
「後は剣を捨てて戦う」
「適えた願いを守られていきますね」
「そうしていく」
こう言ってそしてだった、彼等は今は別れたのだった。
その次の日だった、大学の講義、午前中のそれを終えた彼のところに由乃が来た。そのうえで彼にこう言ってきたのだ。
「あのね、お父さんが言ったことだけど」
「オーナーがか」
「広瀬くんのお父さんとお母さんにね」
つまり彼の両親にだというのだ。
「お家に来て欲しいっていうのよ」
「つまりそれは」
「そう、私達のことでね」
まさに彼等のことでだというのだ。
「話がしたいって言ってるから」
「そうか、それなら」
「私達も一緒にいてね」
同席して、そしてだというのだ。
「お話したいっていうから」
「わかった、そうか」
「広瀬君のお父さんとお母さんにお話しておいてくれるかしら」
「今日家から帰ったら早速話す」
彼の両親にだというのだ。
「そうさせてもらう」
「そう、それじゃあね」
「そうか、話が早いな」
「そうよね、何か凄くね」
笑ってだ、由乃は広瀬にこうも言った。
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