少年は魔人になるようです
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第83話 少年は闇の道を行くようです
Side ネギ
「ハッハッハッハッハ!まさか『闇の魔法』がここまでヤバイもんだとは思わなかったぜ!
俺じゃなきゃ死んでたな、アレ!闇はやめとけ、マジで。」
「手の平返しすぎだろうがぁ!何も知らねぇで他人にオススメすんじゃねぇえええ!!」
昨日、ラカンさんがエヴァンジェリンさんの『闇の魔法』を試用してから、一時間を要し何とか生き返った
ラカンさんの第一声はそれだった。それを受けて、早朝トレーニングをしながら考える。
「(父さんの道と、エヴァンジェリンさんの道……。『闇の魔法』、昨日の実演を見れば大体どんな技かは
想像出来る。そのリスクの大きさも……。確かに今の僕があいつに対抗できる力を手に入れるには、そっちに
進むしかない!)でも……。」
一瞬呼吸を止め、迷いを振り切るかの様に型の練習を再開し、再考する。
何も僕だけが強くなる必要はない。ラカンさんの言う通り、僕には仲間がいる。
皆の力を合わせれば、どんな困難にだって立ち向かえる!あの愁磨さんだって、皆の力を借りてるんだ!
「(………でも、本当にそうかな。それをしていいのは、その"仲間"を守れる力がある人だけじゃないのか?
少なくとも、皆を巻き込んだ僕がこれ以上―――)」
「朝っぱらからけんぽーの練習かよ、先生?」
「……千雨さん。」
考えがダウナー最低辺になりそうな所で、後ろから千雨さんに声をかけられた。
・・・千雨さんが凄いのか、僕が後方不注意なのか。多分後者なんだろうなぁ・・・。
「前から思ってたんだけど、あんたら化け物同士の戦いでけんぽーが役に立つのかよ?
織原先生達とか見てっと、そういう…武術?の臭いがしないんだよな。」
「その、化け物的な力も当たらなければゼロですので。攻撃を当てる為の接近戦技術は必要なんです。
あと……愁磨さん達のは完全な我流ですが、培った年月の桁は中国拳法や武術と同じくらいですので、
アレはアレで"武術"になる……んだと思います?」
「ふ~ん、そんなもんかね。まぁいいけどさ。ホレ。」
と、千雨さんがなにか巻物を投げて来る。これは・・・ただの巻物じゃない?
「ロリ吸血鬼が昔書いた、『闇の魔法』の巻物だってさ、おっさんが。
もしあんたが父さん側の道を行くなら開けるな、あいつら側の道を行くなら開けてみろ、ってさ。」
「……!そうですか。」
「………って、まぁ。どうせもうあんたの心は決まってんだろ?ったく、無茶な結論だぜ。
これでも、あんたや、あんた達の事は見て来たつもりだ。それくらい分かる。」
僕でも決めかねていた事を、千雨さんは"決めている"と言った。
・・・迷っているフリをしていたって事なのかな。そうだ、方法が一つしかないのなら―――
Side out
Side ―――
「よぉぼーず、どうだ?決めたか?」
「ハイ!それより…ラカンさんこそ身体の方は大丈夫ですか?」
「ハッハッハ!ほぼ無敵の俺様がこの程度の大けがでどうにかなるとおぼっぷ?」
ブシュゥゥッ!
「吹き出したぁ!?」
「……最早どこまでがギャグなんだか。」
ラカンに修業の方向を話しに来たネギと千雨。『闇の魔法』の反動の心配をしたネギに
いつもと変わらない様子で答えたラカンだったが、頭の傷口から血を吹き出した。
千雨は既に動じず、冷めた目で二人を見ている事に気付いたラカンは先を促す。
「で?光と闇、どっちだ?」
「ハイ………。」
スッ
「む。(やはりナギの道を行くか……。話を聞く限り五分だったが…まぁそれもありだろうな。)」
巻物を差し出されたラカンは、表情に出さず『少々詰まらんな』と気を落とす。
しかし、思わせぶりな事をしたネギの考えは違っていた。
「千雨さん、やっぱり……この選択って無茶かも知れませんね。」
「ふん、何だよ先生。まーだ悩んでんのかよ。正しいかどうかなんて、やってみるまで分かんねーよ。
後の利かねぇ決断だし分かんなくも無いけどさ。」
ネギに問われた千雨は、何を分かり切った事を、と鼻を鳴らす。
「けどな、それは……あんた自身が選ぶ道だ!あんたがあんた自身で踏み出す一歩だ!
無理も無茶もいつも通り蹴っ飛ばしちまいな、あんたが好きなあの人らみたいによ。
胸張っていいんだぜ。どうなったって、私がちゃんと見届けてやるからさ。」
「………ありがとうございます。」
千雨に背を押されたネギは、ニヤリと嗤う。
――考えた末の結論。間違っているかもしれない、闇に飲まれるかもしれない。でも・・・それでも、と。
この先起こる事を予期して、楽しげに嗤う。彼の様に。
「これからも皆と一緒に歩いて行く為に……あの人達を目指す為に!僕は……!!
ラカンさん、僕は……闇を選びます!!」
「ほ……。」
勢いよく巻物の封を解き、広げる。それを見たラカンは心底以外だと声を上げた後、こちらも嗤った。
"面倒で生真面目"なだけの子供の背に、確かに"鳥頭"と"魔人"を見た――と。
「けどいいのかい、ぼーず。父さん探す為にこっちに来たのに、父さんを目指さなくて?」
「僕は父さんじゃありません。格好だけ真似しても父さんにはなれない。
僕に闇の要素があるなら、それを突き詰める事でしか父さん達に辿り着けないと思うんです。
それに……僕、エヴァンジェリンさんの事も大好きですかrッビャァーーーーーーー!?」
ズドォーーーーーーーン!!
「あー………面白い愛の告白だったがな、ぼーず。ここじゃ禁句だぜ?」
「な、成程…………。この力の"臭い"は、良く知っていますよ……。」
カッコ良くキメていたネギであったが、エヴァへ告白もどきをした瞬間、頭上から雷が直撃した。
説明するまでも無いのだが、ネギの言う通り、愁磨が無駄に設置した不届き者成敗の為のシステムだ。
「水を差されたが…闇を甘く見たなぼーず?その巻物を一度開けちまった以上、キツいぜ?
恐らくは、お前が辿って来た今までの何よりも。」
「……分かっています、この巻物が普通じゃない事も、闇の重さも。
覚悟の上です、乗り切って見せます。」
『言ッタナ餓鬼ガ。』
そんな、少し空気が若干弛緩したところへ、今度は冷や水が叩き付けられる。
巻物が光りエヴァの精神体が浮かび上がる。
『闇ガ貴様ガ思ウ程浅イ物デナイコトヲ思イ知ルガイイ。』
「え、エヴァンジェリンさ―――
ガキッ!
ぐっ!?」
反応が遅れたネギの頭を、黒化した手で掴む。瞬間、黒い雷の様なものが迸り、ネギが叫びを上げる。
そして・・・。
「がっ……!?」
『打チ勝ッテ見セロ。耐エラレナケレバ貴様ハおわりダ。』
「ちょ、オイ!なんであいつが……!?」
「だーから言ったろ、キツイってな。」
軽いノリのラカンと驚いた千雨の会話を最後に、ネギの精神は巻物に取り込まれた。
Side out
後書き
漸く新PC獲得。自分用の設定とかメモとか修正しつつ更新再開。
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