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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第84話 少年は力を受け入れるようです


Side ―――
ズズゥン!!
<グルァ―― ゴルルゥァァアアアアアアア!!!>
「(くっ…!20ミ上の図体でこの機動力、それに加えて莫大なスタミナ……。

成程、竜種と言うのは凄まじいモノでござるな!これで下級と言うのだから―――しかし!!)」


森を疾走する二つの影。しかし彼我の大きさには10倍以上の差がある。

そして同時に上空へ飛び出す影・・・その一つである楓は、黒竜との距離が十分である事を認識、

分身を五つ出現させ、鎖と札の付いた1mもある手裏剣を黒竜へ投げつける。


「"楓忍法・縛鎖爆炎陣"!!!」
ギュルラララッ!
<ガャウッ――!!>

र्र् अः अं अं ई प् इ ऌ ह् (ナウマンダ・サラマンダ・ヴァジュラ・ダン・カーン)
ドッ――! ズドドドドドドドドドドドドドドォン!!
古!!」

「アイィ―――ヤァッ!!」
バガァン!

楓が札を起動させ、連続する大爆発で黒竜の動きを止める。その僅かな隙に古菲が宙を疾走し、

巨大な棍を振り上げ黒竜の弱点である角に思い切り振り下ろす。


<グルァ………―――>
ズズゥン ドォン!
「ふぅ……黒竜退治完了でござるな。」

「むむむ………楓と二人がかりで1時間もかかってしまうとは思わなかったアルよ。

まだまだ修行が足りないアルよ!!」


古菲の一撃で角を折られた黒竜は昏倒し、地に伏す。その傍で互いの健闘を称えつつも、二人の表情は

正反対だ。楓が自分の身長よりも遥かに大きい角を担いでも、古菲は棍で型を確認している。

"神珍鉄自在棍"、ネギとの仮契約により手に入れたアーティファクトだ。

初めはそれしか無かったが、実力をつけるにつれ、新たな能力が目覚めた。


「古、まずは村に行って安心させてやるのが最優先でござる。アレをだしてくれ。」

「仕方ないアルねー。"来たれ(アデアット) 『筋斗雲』"!」


ボウン、と棍が姿を変えたのは金色の雲。それに苦も無く黒竜の角と二人は乗り、空を駆けた。

"如意金箍棒"と思わしき棍、そして"筋斗雲"に"舞空術"。ここまで揃っては、最早明白。

古の得たアーティファクト"斉天大聖 孫悟空"。魔法具は造物主が創った物だが、当然ながらこれは違う。

今や、仮・本契約品の半分は愁磨が創った物が出回っており、これもその一つ。


「いやー、しかしこれは便利ネ。気の消費も少ない上に物凄い速さで飛べるアル!……対価がちょっと

アレあるけど。あの時ネギ坊主と仮契約しておいて良かったネ。」

「何とも便利な事だ。拙者は相も変わらず忍者じみたアーティファクトでござったからなぁ。」

「"天狗之隠蓑(テングノカクレミノ)"とか言ったアルよね?あの中に楓も入って移動出来れば便利なのにネ。

どのアーティファクトも一長一短ネー。」


そんな事を話していると、あっという間に二人は村の入口についた。

物見をしていた獣人が楓の背負った黒竜の角を見ると、嬉々とした様子で門を開いた。


「おいおい、ありゃ黒竜の角じゃないか!?あのネーチャン達やりやがったぜ!」

「あの二人出てってからそんな経ってないぜ!?流石旧世界のジャパニーズニンジャだ!」

「いやー良くやってくれたよ!こんな田舎の村じゃ辺境軍もすぐには来てくれねぇからなぁ。

本当に助かったよ!」

「いやぁ、しかし村を襲っていた二匹の内一匹しか退治出来なかったでござるからなぁ……。」

「それなら心配いらないぜ!妙な二人組が倒してくれたらしい。」


村の皆に囲まれ思わぬ感謝を受け、二人は照れつつ村長の家へトコトコと向かう。

どうやら二人は村に滞在して居たらしく、帰り道でも通る人達とにこやかに挨拶を交わしている。

と、その正面から良く知った"気"が近づいて来た事に気付いた二人は、珍客に驚いて立ち止まる。


「刹那!何故お主がここに居るのでござるか?」

「楓、それに古。妙な所で会いましたね。……ああ、もう一組とはあなた達の事だったのですか。

いえその、本当は武闘大会に参加しようと思ったのですけれど………。」

「そう言えば刹那。お前の相方はどこ行ったネ?二人組と聞いていたのだガ?」

「あー………それに関しては、そのー……。」

「何故私を紹介する事をそんなに嫌がるのかね?全く、失礼なお嬢さんだ。」


いやに歯切れの悪い刹那に二人が首を傾げるとほぼ同時、刹那の背後からゾシュンヌと長身の男が現れた。

黒竜の角を持っているにも関わらず今まで存在を認識出来なかったその男――件の刹那の相方である

松永を見た瞬間、楓と古は構えを取る。


「こい、つは……!?何でござるか、刹那?」

「つまり、コレが私の相方と言う話で……。」

「昨今のお嬢さん達は失敬な子ばかりなのかね?全く……。初めましてお嬢さん方。

私は魔軍師団長、"天我爆散"松永久秀。今は刹那君のぼでいがあど兼、戦友だよ。どうぞよろしく。」

「やや、これはご丁寧に。私は古菲!刹那の戦友とあらば警戒する事も無いアル!

此方こそよろしくアル!」


生粋のお気楽さもあってか、古は怪しさ満点の松永とも直ぐに仲良くなってしまい、

それを見た刹那と楓は頭を抱える。が、気にしてもいられない、と先


「で、お主らは何故ここに?武闘大会がどうとか言ってたでござるが?」

「おお、良くぞ聞いてくれた!実はだね?私が刹那君と組んでから直ぐに闘技場へ向かったんだ。

そうしたらなんと、愁磨殿が手を回していたのか、私達二人とも登録出来なかったのだよ。

だがしかし、それでおめおめ帰る訳にもいかないだろう?信長公は刀を取られて絶賛激怒中だと言うのに!



「…………ちょっと待つでござる。いや待て!流石に気になった!今しがた、三つほど聞き慣れた

名前を聞いたでござるが?まさか本人でござるか!?」


珍しく取り乱した楓を、楽しげに見る松永。

それはそうだろう。刹那から話を聞いて、愁磨との話を持ち出せば嫌が応にも彼女達が反応するのを

知っていてやっているのだから。


「そういえば君達は愁磨殿の教え子であったな。フフフ、気になるのも仕方あるまいね。

簡潔に応えるならば、肯定だ。私は彼の私で、信長公は彼の信長公だ。だがこれ以上は教えんよ。

愁磨殿に怒られてしまうからね。」

「……いや、もう良いでござる。彼の話を持ち出されると頭痛の種が増えるだけでござるよ……。」

「おや、良く理解している。常人が理解するには、彼は少々破天荒が過ぎる。」

「あなたが言うことではないでしょう!?」


刹那がツッコミを入れた所で、漸く話に一区切りがつく。

そして、楓がネギの元へと向かうが、と刹那達に切り出す。しかし、当のネギはと言えば―――

………
……


「ハッ!……ハッ!……ハッ!……ハッ!」

「くそっ、熱が下がらねぇ。なんだこりゃ!?オイッあのロリ吸血鬼何しやがった!?つかどこ行った!」

「ロリ……って、エヴァもどきの事か?」


闇の巻物の精神を取り込まれてから数時間。ネギは高熱を出し、苦しそうに浅い息を吐いて魘されている。

千雨が必死に冷やしたタオルで熱を下げようとしてはいるが、徒労に終わっている。

異常に気が付いてはいるが、こちらに来て日の浅い千雨はその原因が何にあるかを推測は出来ても察せない




「ありゃエヴァの劣化コピー、人造霊だ。恐らくは愁磨が魂の一部を使って何かこさえたんだろう。

今頃ぼーずの中だろうぜ。"闇"を使いこなせる様になる為の試練だな。」

「またンなテンプレを……!」

「ぼーずがこの試練を乗り越えられなければ、二度と目を覚まさねぇか。

少なくとも魔法を使えねぇ体になっちまうだろうな。」


ラカンがサラりと言うと、千雨は息を飲み、絶句する。それも仕方ない。

幾ら非日常を体験した所で彼女の周りに居たのは達人、はたまた妖怪だの悪魔だの、それ以上の存在だ。

どのような危険があったにせよ、重要な所でもそれを笑いながら掻い潜っているのを見てしまっている。

故に、今回のネギの決定も、彼とラカンが笑いながら決めていた為に安直な考えしか持てていなかった。


「なっ……!そんな話聞いてねぇぞ!?知ってたんなら止め「マトモじゃない方法ないんだ。

これくらいはネギも覚悟の上だろ?」

「………!!くそっ!」

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
subSide ネギ

「う……?ここは?」


エヴァンジェリンさん(もどき?)に頭を掴まれた後。目を覚ますと、そこは真っ白な空間に一本街灯の

様なものが経っているだけで、他には何もない。一体ここは――


「構エロ。構エナケレバ……死ヌゾ?」

「え、エヴァンジェリンさん……。」

「精神ノ死ダガナ!」
ブォッ――!
「ぐ…!!」


途端、エヴァンジェリンさんが手から光の剣を出して斬りかかって来る。

修業で何度も見た愛用の魔法『断罪の剣(エンシス・エクセクエンス)』。密かに練習していた劣化版の剣で受け止める




「ホウ、『断罪の剣(エンシス・エクセクエンス)』カ。私ノ真似事カ、ハタマタ兄様ノ真似ト言ウ訳ダ?

成程成程、最初カラソノ気ダッタト言ウ事ジャアナイカ。ククク………馬鹿メ!」
ガキィン!
「ぐぁっ……!」

「ハハハハ!自ラ闇ヲ選ブ愚カ者ガイルトハナ!!」


弾き飛ばされ再びエヴァンジェリンさんの方を見ると、周りの風景が一瞬にして大橋の・・・

あの大停電の日と同じ風景になる。場所が・・・まさか心象風景の具現化って言う奴か?

いや、落ち着け。ここは多分僕の頭の中だ。ここもあの人も本物じゃない筈!


「闇トハ何ダ?ボーヤ。光ノ影、昼ト夜、正ト邪、善ト悪、秩序ト混沌、条理ト不条理……。
キン キン キン キン キン キン キン
ダガココデ貴様ニ必要ナノハ、モットしんぷるナ力ダ!!」
ガキキキキキン! ギュゴッ!  ドボゴゴゴゴゴバァ!
「うわぁぁっ!」


喋りながら、いつもの修業の様に氷の中級魔法を雨霰と撃って来る。

妙に声が聞き難くく、頭の中で反芻しながら避けているから、少しずつ掠って行ってしまう。

落ち着け、今のこれは僕の記憶とかから作られた僕の『影』・・・僕のイメージなら―――


「ソレハ全テヲ飲ミ込ム暗キ穴ニシテ始マリノ闇……始原ノ混沌ダ!」
ズグアァッ!!
「ぐあぁぁっ!」

「コノ意味ガワカラナケレバ……貴様ハココデ私ニ敗レ、死ヌ。」


す、全てを飲み込む始りの闇・・・?闇のイメージ・・・。

エヴァンジェリンさんや、闇方面の人のイメージ、イメージ・・・か、勝てる訳ない!

いや待て、それじゃぁ駄目なんだ!


「―――尤も、貴様はその意味を既に知っているハズだがな。」

「え……。
ザンッ!
「ぐッ………!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

Side ラカン

「ガハッ!」

「先生っ!?おいオッサン、血ぃ吐きやがったぞ!危険なのは精神だけじゃなかったのかよ!?」

「何、血を?ホントか?そりゃよっぽど同調がいいんだろうな。闇に向いてるってのは間違いないぜ。」


ネギが仮想世界でエヴァになんかされたんだろう、現実で眠ったままのネギが吐血した。

さっき言った通り、『闇の魔法(マギア・エレベア)』を習得出来る素質を持っているだけなら、仮想世界での

影響は肉体には一切出ない。だが、ネギは違う。今も体中に深い切り傷や刺し傷、更には火傷や

凍傷までが現れている。


「……しかし拙いな。下手すっとマジで死ぬ。肉体的にも。」

「うぉぉい!?マジで言ってんのか!!
パキっ バキバキッ ピシッ ビシビシッ ブシュゥッ!
え―――?って、ぎゃぁぁああああああ!」

「おぉう、こりゃ本格的に拙いな。ここはとっておきのこれを使え、嬢ちゃん。

"超アルテミシアの葉"ぁ~~!これ摺り潰して塗ってやれ。肉体的にはなんとかなるはずだぜ。」

「青狸ロボの真似してる場合かぁ!!って言うか何で私がっ!」


文句を言いながらも嬢ちゃんは甲斐甲斐しく葉を擂り潰し始める。

しかし、何でこんな普通の子がこっち側にいんだろうな?まぁ、言うわきゃねぇんだが。


「何でこう毎回毎回、あんたらは命を簡単に賭けやがんだよ!馬鹿じゃないのか!」

「そりゃあ、男ってのは馬鹿な生き物だ。選択にはいつだって命を懸けちまうんだぜ。」

「……ッ!あーそうかい!今更だとは思うが、そーゆーファンタジーで現実離れした事は大っ嫌いでね!

世界が違うし理解もしたくないぜ。死んだらそこまでだろうが!」


嬢ちゃんが何気なく言ったその本音。・・・以前、同じ事言った奴がいたな。

自分が一番突っ込んで行ったくせに。まぁ、それもそうだ。

トンッ
「んなら、これを渡しとくぜ。もしあんたがどうしても無理だと判断したら、そいつで巻物を刺しな。

闇の魔法は二度と使えなくなるが、命は助かるぜ。」

「……っ、くそっ!」


再度悪態をつくと、ネギの服を引ん剝きにかかる嬢ちゃん。

・・・おぉう、大胆だねぇ。なら、俺はまた葉っぱを取りに行くかな。

頑張りな、嬢ちゃん。何がしたいのか知らねぇがな。

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」

「ハハハハ、どうしたぼーや!もう終わりか!?高がか数百時間で!!」
ドキュッ! ズグァァ!!

―――駄目だ・・・勝てない!!いや、"エヴァンジェリンさん"に勝つ必要はない。と言うか

勝てる訳がない。だけど、このエヴァンジェリンさんは僕の影。このエヴァンジェリンさんに勝つと

言う事は、僕自身の影に、記憶に勝つと言う事・・・!

でも・・・どうやって勝つ!?

ゴシャッ!
「ハッ……!しま―――」

「そぉらっ!!」
ゴィィン!

学園祭の風景に変わった世界で、計算されたタイミングで落ちて来た超包子の電車をエヴァンジェリンさん

が蹴り飛ばし、ダメージで動きの鈍った僕はそれと一緒に、空中へ弾き飛ばされる。

目隠しのつもりだろうけれど、今の僕なら・・・!!


「"ラステル・マスキル・マギステル! 久遠の空よ来たれり 敵を撃て戦神の矛 集え星の欠片

地より出でよ砂の鉄 空に伴え御使いの剣『熾使よりの天剣(シュワルト・ヴァンヒンメル・ファーレン)』"!!」
ザンッ!
「クハッ……!良くやる!」
ブォン――   ドスッ
「な……!ゴ、フッ………。」


天から落とした大剣で電車ごとエヴァンジェリンさんを突き刺せればと思ったけれど、それを受け止められ

ただけでなく、こちらに向かって投げつけられ、逆に僕の胸に刺さり家の屋根に縫い付けられる。

べちっ
「くくく、まだあれほどの魔法を使える余裕があるとは驚いたぞ?ぼーや。

この眠る事も逃げ出す事も死ぬ事も許されぬ幻想空間で、ここまで持ち堪えるとは見事。

奇跡に近い、尋常ならざる意志力だ。」


縫い付けられた僕の顔を裸足で踏みつけ、何度も弄ぶ。

・・・愁磨さんなら悦ぶ所かな、とか何で僕まだ生きているんだろうとか関係ない事を考えていられる

のは、余裕なのかな。それとも、本格的に精神が終わって来たのかな。


「だが……貴様とて精神に限界はある。これで何度目だ?七十回程か。
キ キ キ キ――――
次は、再び立ち上がれるかな?」
ド ズ ッ !!

エヴァンジェリンさんの氷魔法を凝縮させた貫手が、大剣の消えた僕の腹に刺さり、氷漬けにした。

だ、メだ・・・・・・もう、起きれな―――


「……フン。なんだ、もう終わりか。これで、光への道も闇への道も断たれた訳だ。」


閉じて行く意識の中で、此方を見下すエヴァンジェリンさんが微かに見える。

初めて会った時の様な・・・赤の他人を見る、微塵の興味も無い表情。


「だがまぁ、それもいいだろう。お前と言う"柱"が居なくなれば、兄様がお前の仲間全員連れて

学園に帰してくれるだろうさ。そうしたら、父親の事も、あの人形共の事も忘れて………

あの学園で皆と楽しく過ごすのも悪くはないだろう。」


そんな表情をするのに、まるでこちらを慈しむような事を・・・多分、本音で言ってくる。

そんな・・・そんな悲しげな表情で、言われても・・・!


「お前はよくやったよ、ぼーや。」

―――ド ク ン

瞬間、僕の中の何かが溢れた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

subSide エヴァ(霊体)

やれやれ。兄様に言われて本体から切り離されて長年封印された揚句、何のつもりか筋肉達磨が

巻物を掻っ攫って?漸く出られたと思ったらナギとエルザのガキの相手とは。

いやはや―――

ゴ ・ ・ ・ ・ 
「何―――
ガッ!
なっ……!」


もう限界と思ったぼーやが立ち上がり黒い魔力を迸らせ、『神虎(シェンフー)』もかくやと言う速さで

突撃して来て、私を吹き飛ばした上500mも地を這わせて引き摺る。

面白い・・・!!


「『玖獄氷瀑(ニウィス・カーススド・コキュースト)』!!
ドッバァン!!
ハハハ、いいぞ!やっと出力は互角か。良く見ろ!良く味わえ!良く覚えておけ!!
ガガガガガガ! ゴィン! ゴン ガガガ ドガァ!
それこそが貴様の力の源泉だ!貴様の初期衝動、貴様の第一動因、貴様の原風景だ!!だが――」
ガキィッ! ゥオッ! ガキィィン!!
「―――!」


中々の力を持ってはいたが、周囲をぼーやに一番強く根付く風景に変えた瞬間、オーバードライブしていた

筈が、それですら動きが止まった。・・・弱い、脆すぎる!

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

ド ン ッ
「それだけでは勝てぬ。残念だったな、ぼーや。」


意識が再び僕に戻ったのと同時、断罪の剣が僕を切り裂いた。

やら・・・れた?暴走しても、駄目なのか?当然か・・・僕の影だろうがなんだろうが、

僕がエヴァンジェリンさんに勝てる訳が―――


『この馬鹿ネギ!エラそうな事言っておいて、そんなところで諦めちゃう訳!?』

「"リク・ラク ラ・ラック ライラック! 来たれ氷精 闇の精!闇を従え吹雪け 常夜の氷雪"!」


エヴァンジェリンさんの詠唱に被さって、何故か明日菜さんの声が聞こえて来る。

でも、明日菜さん・・・僕は、もう・・・。


『……尤も、貴様は既に知っている筈だがな。』

「終わりだぼーや!『闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)』!!」
ドォッ!!

―――そう、そうだ。僕は知っている。

それは皆が僕に教えてくれた言葉の中に・・・全部、織り込まれていた。


『せんせーは、凄い人です。でも、せんせーは一人じゃないです。皆と、一緒に。』

『だからね。あなただけは、あの人を見失わないで欲しいの。味方になるとしても、敵になるとしても。』

『あんたはあんたのやりたい事をすればいい。あたしらはついてくぜ。』

『お前の根源は"闇"だ。だが、それは"悪"と言う事じゃない。お前は……お前の道を行け。』


「―――――――――――あぁっ!!」
バシィッ!
「何っ!?」
パキ ィ ィ ン
「ぐぅぅぅぅっ!」
ギキキキギキキキギキキ

エヴァンジェリンさんが放った魔法を受け止め、僕の魔力に書き換えて行く(・・・・・・・・・・・・)

闇の魔法(マギア・エレベア)』・・・それはつまり、善も悪も、強さも弱さも、闇も魔も負も。

全てをありのままに、受け入れ飲み込む力!!


「『(コンプ)……(レクシオー)』!!」

Side out 
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