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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第82話 少年は新技を習得したくないようです

Side ネギ

「た、高畑先生三人分!?……ってどんなだよ。」

「軽く見積もって、な。簡単に言や、ぼーやが魔法使わなきゃイージス艦沈めれない時に、こいつは

スデゴロで沈めるってところだな。」


6000で軽く・・・?そ、そんな・・・これだけ修行した上でこんなに差があるんじゃ、幾ら修行しても

勝てないんじゃ・・・。いや、きっと何か方法があるんだ!


「察しが良いな。マトモな方法じゃ無理だが、マトモじゃない道なら無いでもない。

……まぁ、愁磨の修行がマトモだとも言わねぇが。」

「あるのか無いのかハッキリしろよ!!」

「まぁまぁ早合点するなって嬢ちゃん。修行方法としてマトモじゃないってだけで、やってる事は

正しかった筈だ。」

「…………た、確かに。凄まじいスパルタだったけど、やってる事は実戦訓練に反復練習だったからな……。

いやいや、実戦訓練って時点で突っ込むべきだろ私。」


暗黒面を少し覗かせた千雨さんは自分の思考を悔いる様に頭を振る。最近多いなぁ・・・少し心配だ。

でも、マトモじゃない方法って言われても・・・こう言っては何だけれど、愁磨さんや学園長さんよりも上、

良くっても同じくらいの修業しかラカンさんには出来ないんじゃないかなーなんて・・・。

ゴッ!
「あぶっ!?」

「失礼なガキだな、考えてる事丸分かりだ。……お前は親父に似てねぇ。どっちかっつーと愁磨……とも違うか



エヴァンジェリンとかの側、正反対だ。いいか?この技は、何百年か前にまだ弱っちかったエヴァが編み出し、

愁磨とノワールさんが改良したと言われてる禁呪だ。もしかすると……お前になら使えるかもしれん。」


・・・それはつまり、僕がエヴァンジェリンさんと同じ闇っぽい人間って事でしょうか?

い、いや、でも、方法を選んではいられないんだ。それでもし、カゲタロウやフェイトに勝てるなら・・・!!


「そ、それで……エヴァンジェリンさんが編み出した禁呪、と言うのは?」

「ああ、"闇の魔法(マギア・エレベア)"って技法だ。そのポテンシャルは究極技法(アルテマ・アート)と言われてる"咸卦

法"にも

匹敵するが、闇の眷属の膨大な魔力を前提にしてるから、並どころかそん所そこらの奴には使えない。」

「な、なんだか凄そうですね…!!成程……でも闇……"闇の魔法(マギア・エレベア)"ですかー………。」

「お前向きだろ?」

「えぇっ!?」

「確かにな。最近はポジティブろうとしてるけど、あんた基本的に悩み症だし一人の時暗いだろ?

まぁ闇か光かっていわれりゃ、断然"闇"だわな。」

「ハッハッハ、分かってるな千雨嬢ちゃん!」


・・・なんだかこの人達仲良いなぁ~。って、現実逃避しても状況は変わらないよ!

でも闇・・・闇かぁ・・・。よく考えたら、闇使ってる人達って強い人多いよね。愁磨さんにノワールさん、

エヴァンジェリンさんに刀子先生。アルさんも闇魔法得意そうだし・・・。


「なんだぼーず、あいつらに修行つけて貰っといて闇が不満か?まぁ決めるのはお前の自由だが、触りぐらい

聞いても損はあるまい。」

「はい、それもそうですね……。でも、聞いちゃうとあともどr「よろしい!いいか?闇の力の源泉は

負の感情だ。負とは否定・恐れ・恨み・怒り・憎悪………つまり『ヤな感じ』だ!まとめると!」

「えぇっ!?」

「アバウトすぎんだろ……。しかもなにもまとまってねぇ。」

「修行そのいーち!!」


思った通り、ラカンさんは有無を言わさず修行を始めてしまった。僕の自由意志は無いの!?

もうここまで来たら修行つけてもらうしかないのは分かるんだけど釈然としない・・・。


「何事も気合と形が重要だ!つまり"闇の魔法"を使うには…嫌ぁな気持ちになる事だ。嫌な顔して―――

パンチを撃つ!!さぁやってみろぉ!」
ドッパァン!
「えーー!?や、ヤな顔をして……撃つ。」
ボッ
「ダメだダメだぁーーッ!ぜんっぜん気持ちが入ってない!もっと心の底からだ。何か嫌な過去を思い出せ!

何かあんだろうが!授業中先生を『ママン』って呼んだとか、好きな子の縦笛舐めてる所を見られたとか!

ラブレター渡した次の日、内容をクラス全員が知っていたとか!筋肉嫌いとか言われてフラレたとか!!」

「…………え、ええと、僕そういう事はあんまり……。」

「嘘をつけぇ!!」


そんな事言われても・・・・そんな実体験暴露されても、そんな恥ずかしいと言うか恥になるイベントは

無かったよ・・・。いやな事、いやな事・・・。うぅぅーん・・・・・?


「誰にでも思い出したくない恥ずかしい過去ぐらいあるよなぁ?嬢ちゃん?」

「いや、私に振られてもな。別に……あー、そう言えばネット始めた頃―――――

………ぬっがぁぁぁあああああああああああああ!!」

「千雨さん!?千雨さんしっかり!!」

「おおっ、良い感じだな。嬢ちゃんも素質ありか。それじゃあネギ、嫌な事じゃなくて不甲斐無いと思った事を

思い出してみろ。アーウェルンクスやデュナミスと戦った時とかどうだった?」

「は、はぁ……。」


フェイトやあいつらと戦った時・・・そう、僕は手も足も出なかった。攻撃を当てる事も出来なければ、

あいつらと対等に議論出来もしなかった。もっと僕が強かったら・・・ゼクトさんの転移魔法が完成する

くらいの時間は稼げた筈だ。そうすれば皆がバラバラになる事も無かったし、のどかさんが奴隷になる事も

無かった。いや、そもそも僕があの時キチンと断れてさえいれば、皆を危険な目に晒す事もなかった。

そう、全ては僕の不注意と浅はかさが原因と言っても過言じゃない。

あー、不注意と言えば学園でも散々事件起こしたなぁ。結局愁磨さんには怒られっぱなしだったし、

クラスの半分くらいとしかまともにお話出来てなかった気がするなぁ・・・。僕先生失格だよね・・・。

いや、それ以前に人間失格か・・・・・・アハハハハ・・・・・・。


「僕ってダメな奴………。」

「うわぁぁぁぁぁ!先生ーっ!?気をしっかり持てー!」

「フ、フフフ……ヤな顔をして……撃つ……。」

「それだぁーッ!!」

「いやダメだろ!何から何まで間違ってんだろ!一瞬でげっそりして誰だよアレ状態じゃねーか!!」

「フフ……闇の力を使うには、まずは己の内の闇を見つめなければな。」

「尤もらしー事言ってんじゃねぇぞおっさん!!」


あー、千雨さんとラカンさん楽しそうだなぁー・・・・・・。それに引き換え僕ってやつは・・・。

ふふふ、このへなチョコパンチとか、まさに僕を具現化させたようなパンチじゃないか・・・。

これじゃぁ虫だって倒せないよフフフフフフフフフフフフフフ・・・・・・。


「どうしたネギ、声が小さいぞ!ヤな顔パンチ千本ーー!!」

「僕……僕……ダメな奴ですぅーー!ミジンコさんごめんなさいぃぃーーー!!」

「………あぁ、こりゃダメだ。」

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――
subSide 千雨

「997!998!999!1000!!ハッ、ハッ、フゥー………。死のう……。」

「先生ーーーッ!!?オイコラおっさんどーしてくれんだ、見ろよこの体たらく!

何が闇の修行だよ、その前に暗黒面落ちてダウナー全開じゃなぇか!!」

「ウム!………正直、ちょっとやりすぎたかなーっと。テヘッ♪」

「キモイわぁ!!アホか!元々根暗っつーても繊細なガキなんだから、あんな自分を追い込むような事させたら

こーなんのも当然だろ!」

「いやホラ、俺あんま"闇"関係詳しくねえじゃん?俺のどこが闇っぽいの?って感じだしなぁ!」


カワイコぶって舌をテヘッとやるおっさん。こ の お っ さ ん は !!

つかそれはリアル女がやったって可愛くねぇんだよ!二次元だってちょっとムカつくレベルなんだよ!

やっぱダメだろこいつは。色々間違ってるっつーか適当すぎる。


「じゃ、あと頼むわ!泣く子とイヌは苦手でよ!」

「おぉぉおおーーい!」


私に丸投げしやがった!つか泣いてねぇだろ!おいおい勘弁してくれよ、私だって苦手だよ。そもそもガキが

苦手なんだよ。・・・まぁ、保護者名乗ったからには面倒見てやらねぇといけねぇんだけどさ。

で、当の本人は―――


「(まだ沈んでるなぁー・・・。どうせまたいらん事考えてんだろうな。)」

「ハァ…………。」

「……#(ブチッ)」
ボゲァ!
「へもげっ!?ち、千雨さ「しっかりしろバカ!強くなんだろ?」……は、ハイ!」


よしよし、復活したな。やっぱり馬鹿にはショック療法が一番だ。

とは言えもう夜だし、また明日っから・・・つづくのかぁ・・・・。私まで闇化しそうだ。

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――

Side ―――

「ったく、世話の焼けるガキだぜ。私が居なかったらホントどうなってた事か。

まぁでも昨日のは仕方ねぇか。あの修業はないよなぁ……。」


翌朝。千雨は水浴びをしながら昨日の事を思い出し、愚痴を零していた。

"闇の魔法(マギア・エレベア)"と、ラカンの修業方法。ネギに必要な事とは言え、千雨はそれを肯定しない。

何故ならば、彼女はこの世界で唯一と言えるまともな思考の出来る人間だからだ。


「(しかし"闇の魔法"ねー……。言葉にすると陳腐だけど、この世界じゃマジモンだからな。

大概"闇の"ってつく代物は力は凄いけど何らかのペナルティがあるのが相場だよなぁ。

魂を喰うとか、闇に飲まれるとか……。んー、一応話しといた方がいいか……。)」


そう決めると体を拭きささっと着替え、ネギの元へ向かう。しかし、先程まで修行していた場所にはおらず、

代わりにラカンが朝早くだというのに酒を飲んでいた。


「(朝から酒かよ・・・まぁいいや、おっさんにも言いたい事があったしな。)

おいおっさん、ちょっと良いか?」

「お、千雨嬢ちゃん。今時の若いもんにしちゃ朝はえぇな。で、なんか用か?」

「用って程でもないけどよ。アンタ、このまま修行続けさすつもりかよ?」

「ん?そらまぁな、ボーズがやる気ある内は稽古つけてやるつもりだが。何でんな事聞くんだ?」


半強制的にやらせておいて何を・・・と深く千雨は溜息をつく。しかし、この男はそんな事は微塵も覚えて

いない。いや、そんな自覚さえ初めから無い。それを早くも理解しているので、あえてつっこまず話をする。


「あいつも言ってたけどさ、今回の事件はあいつに責任があると思ってんだよ、先生は。

で、強くなりたい…って言ってんだけど、どうなのかな?皆を守るとか言ってんのも、その罪悪感?っつーか

まぁなんだ、私には無理してるようにしか見えない。」

「ハッ、よく見てんな嬢ちゃん。強くなりたいって気持ちはホントだろ。男の子だしな。

でもまぁ良いたい事は分かるぜ。あのぼーずはメンドクセーな、かなり。まぁその分教え甲斐もあるがな。

……て、なんだっけ?」

「いやだからさ、そう言う奴だからあんまり"闇"とかそういうのは―――」

「ラカンさん!!」


埒があか無いと思った千雨が本題を簡潔に切り出そうとした時、ネギが息を切らせて走ってきた。

その申し訳なさそうな顔を見れば、大体話の内容も分かるのだが、ラカンは態々促してやった。


「その……元々僕の得意な魔法は風と雷、それに光ですし……闇系統はやっぱり似合わない、って言うか、

気が進まないんです。それに、力だけを追い求めても本当に強くはなれない気がして……。」

「ふぅむ……。けど、手っ取り早くアーウェルンクスと"戦える"力を得るにはこの道しかねーぜ?

言ったろ、マトモな方法じゃないってな。それに、お前に"闇"は向きだと思うぜ?

この間みたいな戦いをするなら、尚更な。」


ラカンの言い分に、ネギは言葉も無い。時を急いているのは自分であるし、何よりも―――分かっているのだ。

自分に"闇"が合っているであろう事も。しかし、踏ん切りがつかないのは敵や彼等と同種になるのが嫌なのだ。

フェイトや、デュナミスや・・・愁磨達と。


「まぁ、マトモな道を行くって手もある。わずか数ヶ月……いや、一年足らずか?たったそれだけの期間で、

魔法学校卒レベルから達人級までのし上がったんだ。仲間もいる。数年かけりゃ、俺らレベルには追いつける

カモ知れない。それに……あいつ、ら?の禁呪はリスクがバカでかいからなぁ。」

「り、リスク?」

「おう、それを言わないのはフェアじゃなかったな。スマンスマン!」

「やっぱりあるのかよ……。つー事はアレか、魂食われたり命に関わるって感じか?」

「平たくいやぁそんな感じだな。実演してみるか?」

「出来るんですか!?」


何でも魔人かよ・・・と呟いた千雨の言葉に、凄まじいまでの苦笑いをして、席を立ち指輪を嵌める。

そして、何でもないように普通に水の上を歩きネギ達から少々離れる。


「実際見ないと選びようが無いだろ?適性の無い人間がどれだけダメージ食うか見せてやる。」

「え、それってラカンさんが危ないんじゃ……!?」

「まぁ、鍛え方が違うから大丈夫だろ。―――――スゥ。」


ピィン、と空気が張り詰める。本気の真面目になったラカンを初めて見た事に驚くネギ達だが、そこではない。

ラカン程の・・・世界最強クラスの人間が、本気にならなければ危険なほどの"技術"、それが『闇の魔法』。

練られた魔力は渦となり、ラカンを中心として回り始める。


「"プラ・クテ・ビギナル! 来れ 深淵の闇 燃え盛る大剣!闇と影と憎悪と破壊 復習の大焔!!

我を焼け 彼を焼け そはただ焼き尽くす者!!『奈落の業火(インケンディウム・ゲヘナエ)』!!"」

「なっ……!?」

「ちょーー!!」

「『術式固定(スタグネット)』!!」


上級魔法・・・それが完成し放たれようとしたが、ラカンはそれを直前で止めた。

『術式固定』、完成した魔法を放たずに塊として固定する技。系統としては遅延呪文と同じだが、

難易度は遥かに高い。それも、上級魔法といえば尚更だ。そして、それを―――


「『掌握(コンプ・レクシオー)』!!」

「(握り潰した!?違う・・・取り込んだんだ!)」

「"魔力充填(スプレーメントゥム)・『術式兵装(プロ・アルマティオーネ)』"!!」


炎と闇の魔法を取り込んだ事により、ラカンの様子が変わる。肌は褐色というよりも"黒"くなり、

周囲には炎と闇が渦巻く。これが、『闇の魔法』。瞬間の破壊エネルギーを自身の中に取り込む事で、

その魔法の持つ属性と特性、そしてその破壊力を"装備"する魔法技術。


「ぐ……やっぱキツイな。つか、俺様は元々つえーから、こんな事する必要ねーんだがな。

い……いいか?これはこの技の一端にすぎん。本来この技の核心は……ぐっ……。」

「ら、ラカンさん!?」

「い、イカン。やっぱ俺様でも無茶だったみたいだぜ……。さ、流石は死神と真祖の魔法……こりゃ、

し、失敗……だ、った………たっ……たっ―――!!」


ビシビシッ、と体から魔法が溢れつつも喋り続けたラカンだったが、とうとうそれも限界。

規則正しく漂っていた炎と闇はあちこちに飛び、足元の水も煮立ち始めている。

そして―――

ぼっぱーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!
「たわらばぁっ!!」

「ラカンさーーん!?」

「おっさーーーん!?」


大爆発。いや、自爆と言った方が正しいかも知れない。ピクリともせずに水に浮かぶラカンにネギは泡を食い、

それを見ながら、千雨が一言放った。


「…………もうつっこみきれねぇ。」

Side out 
 

 
後書き
PCと外付けが水没したので修復中。 
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