戦国異伝
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第百四十九話 森の奮戦その十一
「ここで時を稼げばその間に殿が来られる」
「大軍と共に」
「門徒達と戦える」
「ですな、では我等は」
「何としても戦い最悪でも時を稼ぐ」
そうして戦ってだというのだ、これが森の考えだった。
彼は何としても信長が来るまでの時を稼ごうとも考えていた、その為にも今は意地でも戦うつもりだったのである。
それで今も戦っている、だが。
やはり門徒達の勢いは強い、それはあくまで衰えない。森のところに次々と悲報があがってくるのもその証だった。
「右の櫓がもう」
「左の門が危ういです」
「兵も立てなくなっている者が出ております」
「鉄砲も」
「くっ、明日までじゃ」
その中でもだ、森は言うのだった。
「明日まで生きるのじゃ」
「明日ですか」
「明日まで、ですか」
「そうじゃ、明日までじゃ」
それまでだ、何としてもだというのだ。
「明日までもて、何としてもな」
「しかしこの勢いでは」
「門徒共の勢いは衰えませぬ」
「退けても退けてもこれでは」
「最早」
こう言う彼等だった、そして今もだった。
門徒達は攻めて来る、最早これではどうしようもなかった。城はこのまま為す術もなく踏み破られんとしているかに見えた。
森も遂にだ、腹を括ってこう皆に言った。
「よいか」
「?よいかとは」
「まさか」
「うむ、何としても戦え」
死を覚悟してだというのだ。
「よいな」
「何としてもですか」
「最後まで、ですか」
「そうじゃ、最後までじゃ」
こう言うのだった、今は。
「最後の一兵までな」
「そしてですか」
「少しでも時間を」
「あがけ」
生きる為ではない、戦う為にだというのだ。
「「何としてもな」
「あがきそうしてですか」
「絶対に」
「そうじゃ、時を稼げ」
これが彼等の残された道だというのだ。
「わかったな」
「はい、では」
「こうなれば」
「一人でも多くの門徒達を殺せ」
ただ死ぬのではなくだ、そうしろとも告げる。
「わかったな」
「地獄で会いますか」
「そうしますか」
皆覚悟を決めた、それでだった。
誰もが笑みさえ浮かべてだ、こうも言ってだった。
確かな顔で武器を手に取った、そうして。
最後の戦いに入ろうとした、門徒達は今にも城を破ろうとしている。まさに最後の時が迫ろうとしていた。
しかしここでだ、突如として。
北の方から鬨の声があがった、その声と共に。
紺色の軍勢が姿を表した、彼等こそは。
「おお、浅井殿じゃ!」
「浅井殿の軍勢が来られたぞ!」
「我等は助かったぞ!」
「援軍じゃ!」
城の兵達はその彼等を見て力を取り戻した、そして。
森達も見た、侍大将の一人がその森に対して言うのだった。
「与三殿、来られました」
「うむ、そうじゃな」
森も彼等を見つつ応える。
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