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戦国異伝

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第百四十九話 森の奮戦その十二

「猿夜叉殿が来られた」
「兵は三千といったところですな」
「どうやら浅井殿の軍勢も一戦交えられているらしいな」
「では残りの兵は」
「抑えで残しているのであろう」
 その読み通りだ、実際に長政はそうしている。
 だが、だ。それでもだった。
「しかし援軍が来てくれた」
「このことは大きいですな」
「我等は助かったぞ」
 森ははっきりとした声で言った。
「これでな」
「ですな、それでは」
「今より」
「皆の者に伝えよ」
 森は仁王立ちだった、身体の至る場所に傷を受けているがその大柄な身体をしっかりと立たせてそのうえで言うのだった。
「この戦勝ったぞ」
「ですな、では」
「今より」
「戦え、そして猿夜叉殿をお迎えせよ」
 この宇佐山城にだというのだ。
「よいな」
「では我等もうって出てですか」
「戦いますか」
「そうせよ、傷のない者達を選んでな」
 まさにそうしてだというのだ。
「わかったな」
「はい!」
 皆森の言葉に強い声で応えた、そしてだった。
 彼等は城に迫る者達を片っ端から叩き落とし森は門の一つを開けて浅井の軍勢に向かった、彼等は息を吹き返した。
 長政は今も自ら槍を取り軍の先頭に立って戦っている、左右にいる門徒達を右に左に倒しながら言うのだった。
「このまま城に向かうぞ!」
「はい、そしてですな」
「与三殿も城の者達も」
「お助けする」
 まさにそうするというのだ。
「わかったな」
「では城の中に今より」
「向かいますか」
「そうするぞ、先に進んでな」
 即ち周りにいる門徒達を退けてだというのだ、こう言って今も自らだった。
 槍を振るい倒していく、その勢いに灰色の衣の者達は逃げるばかりだった。
 僧侶達もだ、門徒達にこう言うのだった。
「いかん、相手が悪い」
「あの軍はあまりにも強いぞ」
「止むを得ん、道を開けよ」
「そうせよ」
 こう話してそしてだった、彼等は浅井の軍勢から避けて道を開けた。だが灰色の衣も旗も身に着けていない者達はというと。
 彼等はその浅井の軍勢にも向かう、そしてだった。
 命を知らない様に戦う、長政はその彼等とも戦いながら言うのだった。
「またか」
「ですな、またです」
「またこうした者達が出て来るとは」
「わからぬ」
 長政は眉を顰めさせて言う。
「この者達、どうもな」
「ただの門徒ではありませぬな」
「尋常な者ではありませぬな」
「忍に動きが近いですし」
「武器もよいです」
 刀や槍にだ、鉄砲や弓矢も持っている。確かに武器がいいのだ。
「百姓の武器ではありませぬ、どう考えても」
「鍬や鎌、鋤なぞ全く持ってはおりませぬ」
 百姓が一揆の時に持って来る武器はこういったものだ、他には斧もある。そして急に作った竹槍である、だがなのだ。
 何故か一向一揆にはそうしたものだけを持っている者がいる、そのうえだ。 
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