久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六十七話 人相その二
「そんなものはな」
「下らないというのね」
「そうだ、下らん」
全く以てだというのだ。
「そんなものはな」
「本当に戦えればいいのね」
「しかもルールなぞない命のやり取りが出来る戦いだ」
彼が望む戦いとはそうしたものだった、道場や試合で行われるルールの中での戦いには興味を見せなかった。
「それこそが楽しいからな」
「そう言うのね」
「そうだ」
その通りだというのだ。
「俺は死ぬまでそうした戦いをして生きていく」
「わかりやすいけれど困った好みね」
「それもわかってるが性分だ」
やはりこう言うのだった。
「俺は剣士として戦う、戦いたいからな」
「では私と闘うことも」
「闘うか、今から」
スフィンクスに鋭い目で問うた。
「そうするか」
「私は他の怪物とは違うわ」
スフィンクスは加藤の誘いに静かに答えた。
「生憎だけれどね」
「そうか」
「ええ、闘うことはしないわ」
「怪物でもだな」
「私はスフィンクス、知恵と思考を持つ存在よ」
だからだというのだ。
「戦いはしないわ」
「そうか」
「そしてこの戦い自体にも」
「反対か」
「この戦いにあるのはエゴ」
そrだというのだ。
「何にもなりはしないものよ」
「そうかもな」
「わかってはいるのね」
「わからない筈がない、この戦いはだ」
加藤自身も言う、剣士達の戦いは何かということを。
「それぞれのエゴを満たす為の戦いだ」
「その通りよ」
「俺もだ。俺のエゴを適える為に戦っている」
「永遠に戦いたい為に」
「まさにその為にだ」
戦っているというのだ、永遠に戦うという彼の願いを適える為にだ。
「俺は戦っている」
「そういうことね」
「それだけだ、俺もまたエゴイストだ」
「そしてそのことをなのね」
「受け入れている。むしろどうでもいいと考えている」
「エゴの下で戦うことを」
「それをいいと考えている」
そうだというのだ。
「そうであってもな」
「ただ戦いたいだけだからなのね」
「俺は戦うことが好きだ。命と命のやり取りがな」
静かだがそこには動じないものがあった、心の奥底から戦いを楽しむまさに戦闘快楽者としての言葉だった。
「それが好きだからな」
「あくまでなのね」
「戦う、それを選ぶ」
「つまり誰が何を言っても」
「考えを変えるつもりはない」
加藤はスフィンクスにこのことも告げた。
「あんたが何を言ってもだ」
「アルテミス様が仰ってもなのね」
「同じだ。戦い続ける」
誰が何を言おうともだというのだ。
ページ上へ戻る