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久遠の神話

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第六十七話 人相その三

「その話なら誰の言葉も受けない」
「わかっているわ、そのことは」
 既にだと、スフィンクスも答える。
「だからそのことは止めないわ」
「そうか」
「ただ。一つ気になることは」
「何だ」
「貴方は戦うことは好きだけれど暴力は好きではない様ね」
「暴力か」
 加藤もその言葉に目を動かせた、今動かしたのはそれだけだった。
「それか」
「戦意のない相手には攻撃を仕掛けないし弱い相手にもなのね」
「俺は戦うことが好きだ」
 言葉を限定させた、あえてである。
「しかし暴力には興味がない」
「一切なのね」
「そうだ、全くだ」
 まさにそうだというのだ、暴力に対しては何の興味も抱いていないというのだ。
「そんなものには何の興味もない」
「それは何故かしら」
「言ったな、俺は戦うことが好きだ」
 それはだというのだ。
「戦う気がない相手とは戦いにならない」
「そして弱い相手にも」
「弱い相手をいたぶることは戦いではない」
 それではない、では何かというと。
「いじめだ、俺はいじめなぞはしたことがないしこれからもするつもりもない」
「いじめはなのね」
「弱い者いじめをしている奴は戦っていない、ただ嫌いだからな」
 いじめもそれを行う奴も嫌っている、それでしたことは。
「いつもそうした奴の前にただ出るとな」
「貴方も狙って来るのね」
「嫌いな奴でも相手から何もしないと俺も何もしない」
 戦いではない、だからだ。
「しかしそれでもだ」
「向かって来るのなら」
「容赦していない、そんな奴に指一本触れさせたこともない」
 そうしたことすらなかったというのだ。
「屑は屑だ、己より弱い者をいたぶるだけで戦わない奴を屑と言わずして何と言う」
「それはその通りね」
 スフィンクスは加藤の今の考えには賛同して頷いた、彼女もまたそうした行動を忌み嫌っているからである。
「だからなのね」
「いじめを止める趣味もないがな」
「それでも前に出るのね」
「暴力を使う相手ならどうかと思ってな」
 だからあえて前に出てだというのだ。
「相手をしてやるがな」
「どの相手もなのね」
「いじめをする奴は弱かった」
「それで倒しているの」
「何度も言うは俺は戦うが暴力は振るわない」
 その二つに明確な区分をつけての言葉だった。
「絶対にな」
「そういうことなのね」
「そうだ、そのことは言っておく」
「わかったわ、ではね」
 スフィンクスはここまで聞いて加藤の前から姿を消そうとする、加藤もその彼女を見送る。
 その時にだ、スフィンクスはその加藤に最後にこう言った。
「戦いを止めないにしても」
「それでもか」
「剣士としての戦い以外の戦いを見いだせらればいいわね」
「永遠に楽しめる戦いか」
「貴方にはそれしかない様だから」
 それ故にだというのだ。 
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