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久遠の神話

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第六十七話 人相その一

                  久遠の神話
            第六十七話  人相
 加藤はこの日も戦っていた、今戦っているのは無数の獣達だった。
 ケルベロスにオルトロス、その兄弟の魔犬達だった。その異形の犬達を同時に相手にしながら魔の力を振るっていた。
 オルトロスが七色の炎を吐く、二つの頭から同時に吐いてきた。
 ケルベロスはその横で三つの頭と鬣の様に生えている無数の蛇の頭から毒の息を吐いていた、濃いドス黒い紫の毒だ。
 その獣達が加藤に襲い掛かる、まずはオルトロスの炎を。
 加藤は身体を右に捻ってかわした、だがそこにケルベロスが襲い掛かる。
 毒の唾液を滴らせながら噛まんとしてくる、しかしそのケルベロスに。
 加藤は剣に己の力である魔を込めた、そのうえで中央の頭の額にその剣を突き刺した。
 そこから力をさらに注入した、すると。
 ケルベロスは動きをr止め身体を膨張させた、そうしてだった。
 加藤の力が中から爆発した、三頭の怪物はその爆発の中で消えた。
 加藤はケルベロスを倒した返す刀でオルトロスに向かった、今度はその剣を離れた間合いから上から下に一閃させた。
 そしてその魔の力でオルトロスの頭と頭の間、首のつなぎ目の辺りから身体を縦に両断した、それでだった。
 オルトルスも倒した、そうして金塊を得たがそれと共にだった。
「また力を得たのね」
「見ていたのか」
「ええ、最初からね」
 加藤が声の方を振り向くとそこにはスフィンクスがいた、彼はその場に座ったままそのうえで彼に言ってきていた。
「見ていたわ」
「そうだったのか」
「一戦一戦ごとに強くなっているわね」
「いいことだ、それにだ」
「それに、なのね」
「やはり戦いは楽しい」
 にこりともしないが確かに言った言葉だった。
「こうして戦うことはな」
「戦えさえすれば」
「俺はそれで満足だ」
「だからストリートファイトもしているのね」
「あれもな」
「そして剣士の戦いも」
「どちらもな。いいものだ」
 加藤は金塊達を手に入れたがこのことについては特に何もない感じだ、剣を収めてからスフィンクスに対してこうも言った。
「生死を賭けて戦うことはな」
「止められないのね」
「これからもな」
「だからこそ剣士の戦いに勝ち残っても」
「この戦いを続ける」
 剣士のそれをだというのだ。
「そう願う」
「永遠に戦うことを願うというのは」
「修羅だというのだな」
「そちらの宗教ではそうなるわね、仏教ではね」
 スフィンクスは加藤を見たまま彼に告げた。
「北欧ではヴァルハラにいるエインヘリャルね」
「羨ましいものだな、永遠に戦えるというのは」
「何時か貴方が倒れてもいいのね」
「構わない」
 既に受け入れている言葉だった、そうしたことも。
「戦っていれば自然とそうなる」
「そう、そこまで考えているの」
「戦い、そして清める」
 加藤は表の仕事の話もした。
「俺はその二つだけで充分だ」
「では剣士としての戦いは戦えるから行うだけなのね」
「何度も言っている通りな」
「では他の戦いが見つかれば」
「その時はか」
「ストリートファイト以外のね。その時はどうするのかしら」
「言っておくが俺は戦いたいだけで金にも名誉にも興味はない」
 金塊は手に入れる、だがそれもだった。
「金にしても生きていけるだけあればいい」
「無欲なのね」
「興味がないだけだ」
「名誉も」
「名誉、下らんな」
 これについては顔を背けさせて唾棄する様に言った。 
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