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八条学園怪異譚

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第五十話 秋に咲く桜その十六

「栄養のバランスもどうもだから」
「いいところないじゃない、イギリス料理って」
「そうね、よく噂は聞くけれど」
「まずいよ」
 正直言ってそうだとだ、妖精は言い切った。
「というか日本人は美味しいものを食べ過ぎなんだよ」
「美味しくないとお店のお料理が売れないでしょ」
「パンもよ」
 二人はここでもそれぞれの店の商売から言う、きちんと正座をして抹茶やお菓子を楽しみながらそのうえでの返答だ。
「まずいと論外じゃない」
「美味しいこととサービスと清潔が必須条件よ」
「その全部がねえ、イギリスは日本の基準だと」
 妖精の言葉は難しいものだった。
「これがね」
「サービス駄目なの?イギリスって」
「お料理も」
「店員さんは基本無表情かな」
 資本主義発祥の国である、産業革命を産みだしたことは歴史にある。
「あと食器は洗ったら洗剤を洗い落とさずにタオルで拭くだけだよ」
「私その現場見たら瞬時で暴れる自信あるわ」
「私も」
 二人は目を鬼のものにさせて答えた。
「洗剤はちゃんと洗い落としてからタオルで拭くのよ」
「衛生第一よ」
「シャワーを浴びても泡をお湯とか水で洗い落とさずにタオルで拭くだけだよ」
「それ滅茶苦茶お肌に悪いわよ」
「それもかなり」
「だから硬水だから」
 ここでも水のことが影響するのだった。
「しかも水が日本と比べて少ないからね」
「だからなの」
「それでそうなるの」
「そうなんだ、日本はお水がよくてしかも豊富だから」
 そこでもうイギリスと大きく違うというのだ。
「お茶だって違うよ」
「お茶が美味しいことはそれだけで幸せなことよ」
 茉莉也は自分で茶を立てている、見ればそれは茶道の見事な動きである。
 その茶を九尾の狐と団十郎狸に振る舞いながらだ、こう言うのだ。
「身体にもいいしね」
「ですね、お茶はビタミンも豊富ですし」
「飲んでいると心が落ち着きます」
「私お茶も好きなのよ」
 お酒だけでなく、というのだ。
「お抹茶も麦茶も玄米茶もね」
「お茶は全部ですか」
「そういえば先輩本当によくお茶飲まれてますね」
「そうよ、紅茶や烏龍茶も好きだけれど」
 とりわけ、というのだ。
「日本のお茶が好きね」
「それで今もですか」
「飲まれてるんですね」
「そうよ、だからどんどん飲んでね」
 また茶を立てながらだ、茉莉也は二人に言う。
「遠慮せずにね」
「ううん、今の先輩って」
「そうよね」
 二人はここで茉莉也を見た、正座で茶を立てる彼女を。
 そのうえでだ、こう彼女に言った。
「大和撫子よね」
「今もいるのっていう」
「何よ、私が大和撫子じゃなかったっていうの?」
「普段は全然じゃないですか」
「酒豪でセクハラ好きでしかも制服が派手で」
「そんなのですから」
「とても」
 二人は普段の茉莉也から言う。
「巫女さんですけれど」
「それでも」
「言ってくれるわね、大和撫子はね」
 それは何かとだ、茉莉也はその二人に話す。 
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