八条学園怪異譚
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第五十話 秋に咲く桜その十五
「お菓子もないと駄目でしょ」
「はい、それはもう」
「欠かせないものですね」
二人は茉莉也に応えながら手招きをしている彼女の傍に座った、その場には今も九尾の狐と団十郎狸もいる。
「先輩はお酒でもお菓子の時ありますけれど」
「それでも」
「そう、お菓子がないとね」
お茶を飲むのならというのだ。
「さもないと寂しいわ」
「うむ、お嬢は菓子も過ぎるがな」
「食べる量が多いがな」
九尾の狐と団十郎狸が言って来る、もう二匹でそれぞれ抹茶を淹れている。
「しかしお茶にお菓子はな」
「必須の組み合わせだな」
「そうでしょ、じゃあ今から皆でね」
「飲もうぞ」
「たまには酒ではなくお茶をな」
狐狸達も言う、そしてだった。
二人もお茶とお菓子を楽しむことにした、その周りには。
他の狐狸達もいる、それに人魂達も漂っている。その人魂達も。
置かれた湯飲みの中の茶を飲み皿の上のお菓子を食べる、まるで虫がかじる様に。
その姿を見てだ、愛実がこう言った。
「人魂さん達も食べるのね」
「そうだよ、妖怪だから身体があるから」
「ちゃんと食べるよ」
そして飲むというのだ。
「お酒も好きだしね」
「お野菜とかお肉も食べるよ」
「僕もだよ」
ウィル=オ=ウィプスも言って来る。
「ちゃんとこうしてね」
「飲んで食べるのね」
「そうだよ、イギリス生まれだから紅茶派だけれど」
それでもだというのだ。
「緑茶も好きなんだ」
「成程ね」
「イギリスのお茶と日本のお茶を比べたら」
妖精はお茶談義もはじめた、その抹茶を飲みながら。
「お水が違うからね」
「味も違うのね」
「そうそう、日本のお水はいいよね」
日本の水は軟水だ、それに対してイギリスの水は硬水だ。両国の茶はまずその基本となる水が大きく違うのだ。
「特に神戸のお水はね」
「六甲のお水はね」
有名だとだ、今度は聖花が応える。
「いいのよ」
「うん、お茶にしてもいいよ」
「イギリスのお水とどっちがいいの?それで」
「言うまでもないんじゃないかな」
この言葉がそのまま答えだった。
「イギリス料理はティーセットと朝食はいいけれど」
「それでもなのね」
「そう、お水が違うから」
そもそもだというのだ。
「お茶も日本の方が美味しいから」
「何かお茶まで駄目っていうと本当にイギリスの味覚は」
「給食を見ればいいよ」
イギリスの学校の給食である、それは。
「卒倒するから」
「そこまで酷いのね」
「卒倒って」
「まず料理のレパートリーが少なくて」
妖精はお菓子も食べる、漂いつつかじっている。
「焼き過ぎだったり煮過ぎだったりして、あと味付けが駄目で」
「駄目出し続くわね」
「それもイギリスの妖精さんから」
「あと出される料理が貧相で」
イギリス映画を観てもそれがわかる、よく見れば粗末としか言い様のないメニューばかりが出されているのだ。
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