八条学園怪異譚
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第五十話 秋に咲く桜その十四
「じゃあね」
「今から回ってみてね」
「それでどうなるかわからないけれど」
「まずはね」
回る、それで確かめてこそだというのだ。
「そうしてね」
「うん、それじゃあ」
「今から」
二人は人魂達にも強い顔で答えた、言葉も強くなっている。
そのうえで二人で手をつないで桜の木の周りを回った、時計回りに。
一回、二回、それにだった。
三回目だ、その前になると。
愛実は聖花の手をこれまで以上に握り締めてこう彼女に言った。
「ねえ」
「うん、今からね」
「三回目、いよいよ回るけれど」
横にいる聖花の顔を見てだ、そのうえで言うのだ。
「ここが泉だったらね」
「そうね、それでね」
「何処に出るか、よね」
「そのことも気になるし」
それにだった、聖花も応えて言う。
「あと、これで終わるのね」
「ええ、私達の泉探しもね」
「もうかなり少なくなっているっていうし」
泉の候補地、即ち学園内の怪談スポットがだ。
「もうすぐね」
「そうね、あと少しで」
泉に辿り着くことは間近だった、そして若しかして。
この桜の木かも知れないのだ、そう思ってだ。
愛実は聖花の手を強く握り締めたままこう言ったのである。
「回ろうね、そしてね」
「確かめようね」
聖花は愛実のその言葉に頷いて応えた、そうしてだった。
二人は三回目を回った、今回も時計回りに。
ゆっくりと回る、そうして二人で見たものは。
秋の夜空に咲く満開の桜、その周りで遊ぶ用意をしている狐狸達と人魂、それに茉莉也と妖精達であった。
今回も泉ではなかった、それで茉莉也が二人に言って来た。
「今度は何処に行くの?」
「はい、次は劇場に行きます」
「あそこに」
「わかったわ、じゃあ行って来てね」
茉莉也は二人の背中をその言葉で押した、そして。
そのうえでだ、二人にこうも言った。
「それじゃあ今からね」
「はい、お茶ですね」
「それですね」
「私実はコーヒーでは目が覚めるけれどね」
これはカフェインの効用だ、カフェインには覚醒作用があり眠気覚ましになる。勉強や仕事の時は最適だ。
「お茶だとね」
「お茶にもカフェインが入ってますよ」
「それでもですか」
「そうなの、お抹茶でもね」
元々目覚ましで飲まれていたそれもだというのだ。
「眠くならないから」
「だからですか」
「夜に飲まれても」
「すぐに寝られるの」
例え抹茶を飲んでもだというのだ。
「だから飲むのよ」
「そうですか、それでお菓子もですか」
「召し上がられるんですね」
「お茶といえばね」
やはりだというのだ。
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