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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百四十一話:古代魔法の復活

 ルラムーン草の採集と整理を終えて、草原で夜を明かした翌朝。

 馬車の中で目を覚まし、まだ寝ているモモを起こさないように気を付けながら身なりを整えて、そろそろ朝食の準備でもしようと外に出ると。

「おはよう、ドーラ。準備が出来たから、起こそうと思ってたんだが。丁度良かった」

 やっぱりというかなんというか。
 既に起きていたヘンリーが、朝食の準備を済ませてくれていました。

「……おはよう、ヘンリー。ごめんね、全部させちゃって。ありがとう。モモ、起こしてくるね」
「ああ。頼む」

 いつもヘンリーのほうが先に起きてるわけだから、こうなるような気はしてたけど。
 昨日の残り物を使ってるから、そんなに作業量も多くは無かったとも思うけれども。

 ……でも、それは普通、私の役目じゃないのか!

 女だからというだけで家事全般押し付けてくるようなヤツなら、とっくにどこかに置いてきてるけど!
 なんていうか、女子力の高さとかいう部分で、完全に負けている気がする!!

 これは、仕方ないのか?
 攻略されるヒロイン的な立場にある現在、こうして尽くされる感じになるのは致し方ないことなのか?
 いいのか私は、女としてそれで!
 モテモテイケメン主人公のポジションを譲る気は無いとは言え、女であることも捨てるつもりは無いのに!!

 …………まあいいか。
 ヘンリーのごはん、美味しいし。
 私もできないわけでもやる気が無いわけでも無いし、やってくれるうちはやってもらっても。
 やってもらって当然とか、そんなこと思わなければ。



 とかなんとか自分の中で折り合いを付けつつ、モモを起こして。
 ピエールに起こされてきたスラリンとコドランも加わって、朝の草原の爽やかな空気の中で朝食を済ませ。

 あまり早い時間から押し掛けるのもなんなので、腹ごなしにその辺の魔物を倒して経験値稼ぎがてら時間を潰して。

 訪問に失礼の無い時間になったところで、キメラの翼でルラフェンの町に戻ります。

 ややこしい町の構造も昨日のうちに完全に把握していたので、また迷ってる戦士さんを横目に見つつ挨拶だけしてスルーして、速やかに目的のお宅にたどり着き。


「おはようございます、先生!!先生の助手がルラムーン草を持って、ただいま戻りました!!」
「……ふがっ!?な、なんじゃ!?もう、朝か!?」

 きちんとノックしてから扉を開け、玄関から明るく元気に呼びかけたのですが。

 二階でまだ寝ていたらしいベネット先生の、慌てたような声が微かに聞こえてきました。

 起こしてしまったのは申し訳ないけど、もういい時間だからね!
 昨日別れてから今まで寝てたなら、いくらなんでも寝過ぎだし!
 そろそろ、起きて頂いたほうがいいでしょう!

 最初の挨拶が聞こえていたかもわからないので、改めて二階に向けて挨拶込みで呼びかけます。

「おはようございます、先生!お目覚めですね!よろしければ、身支度のお手伝いに参りますが!」

 失礼の無いように急き立てる意味も込めて、提案してみますが。

「や、やめんか!男が寝ておる寝室に、若い娘が気軽に入ってくるものでは無い!すぐ降りるゆえ、おとなしく待っておれ!」

 また慌てたような声がして、あっさり断られました。

 ほとんど毎日のように男と同じ部屋で寝起きしてる身として、そんなの今さらなんですが。

「わかりました!それでは、お待ちしてます!」

 すぐ降りてきてくれるというのに逆らう意味も無いので、言われた通りにおとなしく待つことにします。


 部屋の中の邪魔にならない場所に、持ち帰ったルラムーン草の入ったカゴを並べて置いていると、言葉通りにベネット先生がすぐに降りてきてくれました。

「どれ、ルラムーン草は。…………これは。このカゴの中の、全部がそうかの?……また、随分と多いの」
「はい!可能な限り全ての魔法適性を身に付けたいので!仲間たちの協力を得て、頑張って採ってきました!」
「なんと!?全ての魔法適性とは、それはまた……。……まあ、その話は後じゃ。……それにしても、それでも少しばかり、……多いのでは無いかの?」
「はい!少し張り切りすぎてしまって、全部で百二十四個あります!残った分は、先生の研究にお使い頂ければと!」
「……有り難くはあるのじゃがの。我が助手よ、そなたは少しばかり、限度と言うものを知ったほうが良いの」
「はい!肝に命じます!」

 また微妙な顔をしたベネット先生にありがたいお説教を頂戴したのち、先生が端数でバラにしておいたルラムーン草の中から一つ抜き取り、部屋の中央の大きなツボに向かいます。

「では、我が助手よ。着いて参れ」
「はい!」

 いい返事で後に続く私に頷き返し、ベネット先生がヘンリーに目をやります。

「そちらのそなた。そなたも、魔力はあるのかの?」
「はい。可能なら俺も一緒に、適性を身に付けさせて頂ければと」
「うむ。我が助手の助手として協力したようじゃしの、わしの手間も変わらぬゆえ問題無い。ならばそなたも、着いて来るが良い」
「はい。ありがとうございます」

 ……やっぱりヘンリーも、適性を身に付けるのか。

 うん、まあ、途中まででも一緒に旅する仲間としては、できることは増やしておいてくれたほうがありがたいしね。
 ヘンリーのその後の人生においても、付けられるものなら付けておいたほうがいいだろうしね。
 一緒に作業しておいて私だけ身に付けるのも気が引けるし、本人がそうしたいなら、私が口を出すことじゃないよね。


 ベネット先生に着いていく私の後にヘンリーも続き、魔法は使わずアナログに火を起こしてツボを煮立たせる先生を手伝います。

「ほとんど、調合は終わっておるでの。残るは最後の仕上げとして、煮立ったところでこのルラムーン草を投げ込むだけじゃ。この部屋におれば大丈夫じゃとは思うが、念のため二人ともツボの側から離れぬようにの」
「はい!」
「わかりました」

 ツボが大きいので、なかなか煮立ってきませんが。
 ヘンリーの魔法で火力を上げられれば楽なんですがそうもいかないので、扇いで空気を送ったり薪を足したりして、煮立つのを待ちます。

 火の勢いを増す作業でかいた汗を拭っていると、不意にベネット先生が緊迫した声を上げます。

「……む!二人とも、もう良い!作業はやめて、待て!……よし、ここじゃ!!」

 先生の指示に従って作業の手を止めた直後、気合いと共にルラムーン草がツボの中に投げ込まれ。

 既に煮立っていたツボの中が、ルラムーン草に反応してさらに激しく沸き立ちます。

「……よし!上手くいきそうじゃ!」

 ベネット先生が興奮した様子で、覗き込むようにツボの中を見守ります。

 ……でも、これって。

「……あの、先生。そんなに近付いたら、危ないのでは」

 確かこの後、爆発とかそんなのがあった気が。

 かけた声も聞こえていない様子の先生の安全を確保するために歩み寄ろうとしたところで、一気にツボの中からケムリが噴き出します。

「……先生!危な」
「ドーラ!!危ない!!」

 叫んで駆け寄ろうとしたところで後ろからヘンリーに抱え込まれて、結局果たせず。

 轟音が響き渡って目の前で先生が背後に向かって吹っ飛んでいくのを為す術も無く見守り、自分も吹き飛ばされそうになるのをヘンリーに庇われて。

 と、思う間も無く視界が真っ白になり、庇ってくれたヘンリーごと吹き飛ばされて、叩き付けられたような鈍い振動を感じたのを最後に、意識を失いました。





「…………う…………?」

 まだケムリの立ち込める室内で、意識を取り戻したのは私が最初だったようで。

 意識を失ってもしっかりと私を抱えたままのヘンリーの腕の中で、痛む頭を抱えながら目を覚まします。

「……ヘンリー。……大丈夫?……生きてる、よね?」

 心臓の鼓動も息遣いも感じるので、生きてることは間違いないですが。

 頭を打ったりなんかしてないだろうか、と声をかけながらそっと頭を探っていると。

「……つー……。……ドーラ、大丈夫か?」

 意識を取り戻したヘンリーが、一言目から私の心配を始めました。

 ……これなら、頭も大丈夫そうだけど。

「私は、大丈夫。ヘンリーが庇ってくれたから。ヘンリーこそ、大丈夫?どこか痛いところ、無い?」
「……頭は、痛むが。打ったからとか、そういうんじゃなさそうな……」
「……頭は、私も痛い。……さっきの爆発の影響かな?先生は、大丈夫かな」

 ヘンリーの腕の中から離れて起き上がり、先生の姿を探します。

「……先生!大丈夫ですか?しっかりしてください!」

 派手に吹き飛んで倒れた先生を見付けて駆け寄り、抱き起こします。

「……おい!!ドーラ!!」

 置き去りにしてきたヘンリーが、なんか叫んでますが。
 お互い無事だったんだし、今は先生の安否を確認しないと!

 ヘンリーに庇われた私と違ってまともに吹っ飛んでたし、受け身も取れなさそうだしお年寄りで体力も無いだろうし。
 打ち所が悪かったらと思うと下手に揺さぶったりもできないので、あくまでそっと抱え起こしながら、念のため回復魔法もかけてみると。

「…………うう…………な、なんじゃ?天使か、女神か?とうとう、お迎えが……」
「先生!気が付いたんですね!良かった、痛むところはありませんか?私が、わかりますか?」
「うう……無念じゃ……。志半ばにして……。女神様、どうか、後生じゃから……。今しばらく、この老体に猶予を……」

 焦点は合っていて間違い無く私を見ているのに、なんだかおかしなことを口走っています。

「先生!大丈夫ですから!ちゃんと生きてますから、しっかりしてください!」
「うう、女神様……。そのような気休めは、結構ですじゃ……。この天上の至福に包み込まれるような幸福感、わしは間違い無く天に召されたに違い無く……」
「先生?やっぱり、頭を打ったんですね?なんてこと、人類の宝である先生の天才的な頭脳が!!……でも大丈夫です、私がちゃんと」
「いい加減にしろ」

 先生の頭を抱え込んで決意を固める私の腕の中から、ヘンリーがベネット先生を奪い取ります。

「ヘンリー!!そんなに乱暴にしないで!!先生は、頭を」
「打ってねえから。先生、俺がわかりますか?」
「む?そなたは。我が助手の助手ではないか。なんじゃ、わしはまだ生きておったのか。はて、ならば先程の」
「大丈夫ですから。何でも無いので、それは忘れてください。そんなことより、これで古代の魔法は復活したんですか?」
「む、そうじゃ!」

 私に代わってヘンリーが声をかけた途端、ベネット先生がしっかりと受け答えを始め、思い出したように立ち上がります。

 あれ、頭は?
 人類の宝は、無事だったの?

 なんだ、良かった。
 無事じゃなさそうだったから、しっかりと介護して回復して頂くつもりだったけど、杞憂だったのか。

 ほっと胸を撫で下ろす私の前で、先生が高らかに宣言します。

「我が助手、及び我が助手の助手よ!わしの考えでは、今ので古代の移動呪文、ルーラが復活し、わしらは適性を身に付けたはずじゃ!ただの町の研究者であるわしには、適性が身に付いたとておいそれと使うことは出来ぬであろうが。旅人として経験を積んできたそなたらであれば、或いは使うことも出来るやもしれぬ!早速、試してみてくれぬか!」
「わかりました!」

 私も、元気に答えてみますが。

 適性だけあっても勉強してなければ使えないんですが、先生は興奮のあまりそこに気が付いていないのかどうなのか。
 私もヘンリーも勉強はしてあるのできっともう使えるし、言い訳はどうとでもできるし。
 早速、使ってみようとは思うわけですけれども。

「……先生。……室内ですけど。天井とか、大丈夫なんですか?」

 チートの書にもダメとは書いてなかったから、大丈夫なのかもしれないけど。
 適当に使って、天井に頭をぶつけたくはない。

「うむ!邪悪な力で満たされた洞窟や塔等では、脱出魔法のリレミトが別に必要になるがの!町や村にあるような人の住む建物であれば、魔法の障害にはならぬゆえ!安心して、使ってみるが良い!」
「……本当ですね?……信じますよ?」

 先生だって使ったことは無いのに、鵜呑みにするのも不安だが。
 今後の関係を考えれば、無暗に疑うのも。

「では、早速!……どこに行こうか?」

 今度はヘンリーに向かって、疑問を投げかけます。

 ゲームならヘンリーに会いに行かないと話が進まないので、ひとまずラインハットに行っとくところだけど。
 ヘンリーはここにいるわけだし、そういう意味ではラインハットに向かう必要は無いわけだが。

「……とりあえず。ラインハット、行っとく?」

 家族に会いたいとかあるんだったら。
 なんだったら、そのまま

「別にいいよ。オラクルベリーでいいんじゃないか?オラクル屋、行きたいんだろ」

 国に帰ってもらってもいいなんてことは、思考レベルで遮られるわけですかそうですか。

「そうだけど。あれは、夜にならないと」
「オラクルベリーに向かうならば。魔法の適性を得るのに必要な一通りの材料は揃っとるが、蘇生魔法に必要な世界樹の葉が無いでの。カジノで、取ってきてくれんかの」
「……わかりました!」

 ヘンリーの提案に先生の鶴の一声で、オラクルベリーに向かうことに決定して。


 離れて待っててくれた仲間を呼び寄せて、いよいよ初めてのルーラを使ってみます。

「それじゃ、いきますよ?……ルーラ!」

 高らかに呪文を唱えると間違いなく魔法が発動して、目の前の景色がぶれて空高く飛んで行くような感覚に見舞われて。

「おお!!やった、やったぞ!!」

 遠くで先生の喜ぶ声を聞いたような気がしながら、町から町へと移動していきました。 
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