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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百四十二話:レース場の覇者

 初めてのルーラ体験で、ルラフェンからオラクルベリーに飛んで。
 仲間たちとともに、オラクルベリーの町に足を踏み入れます。

「ずいぶん、久しぶりみたいな気がするけど。やっぱり賑やかだね!」

 ここに泊まったのが十日くらい前だから、言うほど経ってないんですけどね!
 色々あったので、もうずいぶん前のような気がしますね!

 私とヘンリー以外のみんなはこの町に入るのは初めてなので、それぞれ物珍しそうに辺りを見回していますが。

『うわー!ここが、オラクルベリーなんだ!うん、にぎやかで楽しそう!』
「あー、こないだ素通りした町かー!ヘンリーから逃げるときに!」
「ピキー」
「ふむ。過ぎてみれば、それもまた一つの思い出にござりますな」
「……」

 微妙に気まずいことを、さらっと持ち出さないで欲しい。

『え?みんな、逃げたの?ヘンリーさんから?なんで?』

 そして食い付かないで欲しい。

『……あ!そっか、そっか!……うん、でも今は、一緒にいるんだもんね!そっか、うん、わかった!大丈夫!』

 説明に困るので、自己完結してくれたのはありがたいんですが。

 モモのことだからきっと正しく理解してくれてるんだろうけれども、できれば口に出す前に気が付いて頂きたかったと言いますか。

「……とりあえず、カジノに行くか?時間はあるし、町を見てもいいが」
「……そうだね。先にカジノで用を済ませて、余った時間で町を見る感じで」
「わかった」

 気まずそうな態度こそ見せてませんが、敢えてその件には触れてこなかったヘンリーのフリに乗っかって。


 まずは、カジノに向かいます。

 前にこの町にきた時も、軽く見るくらいはしたんですが。
 お金に余裕も無かったし、ゲームと違ってセーブ・リセット・ロードを繰り返して稼ぐなんてこともできないので、遊びはしなかったわけですが。

 今回は、どうしてもやらなければならない理由がありますからね!
 蘇生魔法ザオリクの習得は、私の目的達成のための必須事項ですからね!
 是が非でも、可能ならばイカサマをしてでも、ここで世界樹の葉は取っておかねばなりません!!

 ポーカーみたいな対人のゲームでもあれば、ドーラちゃんの美貌を活かして色仕掛け、なんてことも考えられましたがここには無いので。

「……ドーラ。……今なんか、妙なこと考えなかったか?」
「妙なことって?例えば?なんのことだか、全くわかりません!」

 カジノ対策に不穏な方向に思考を展開させていると、すかさずヘンリーの突っ込みが入ります。

 むしろ妙なことしか考えてなかったわけだが、口にはもちろん表情にだって出したつもりは無いのに!
 相変わらず、鋭いヤツめ!

 それはともかく、スロット、モンスター格闘場、スライムレースの三択なのであれば。

「やっぱりここは、スライムレースかな!」

 ゲームで稼ぐなら、スロット一択なんですけれども。
 現実で考えたら運任せにもほどがあるので、ここはモンスター使いとしての眼力に期待して!

 モンスター格闘場でもそれは同じかもしれないけど、あれはあれで運の要素が大きいからね!
 強くて調子もいいヤツがいたとしても、集中攻撃されれば負けるし!
 私なら遠くから目を合わせて従わせるなんてことももしかしたら可能かもしれないが、そんなことしてバレたら完全に出入り禁止になりそうだし。

 あくまでスライム個々の能力と性格と体調だけ見て考えればいいスライムレースのほうが、勝てる可能性は高そうですよね!


 ということで、まずはコイン売り場で千ゴールド分、五十枚のコインを購入して。

 実際問題としてそんなに上手くいくかわからないので、まずは少な目に賭けるつもりでスライムレース場に向かいます。


『わー!スライムさんがいっぱい!カラフルで、とっても可愛い!』
「……ドーラ。……どうだ?」
「……一、二、かな……」

 ……能力自体で言えば、三、四といったところですけれども。
 三は性格にムラがあって途中でレース放棄しそうだし、四は体調が悪そうだし。
 むしろレースになんか出さないで、休ませてあげてもらいたい……!
 五は可愛いんだけど能力が低すぎて、ちょっと論外。

 このレースが終わったら四を休ませる件について進言しようと思いつつ、カウンターに向かおうとすると。

「ピキー!ピキー!」
『ドーラ!スラリン!でる!』
「……え?スラリン、出たいの?」

 自分のスライムを出すと手数料が五十ゴールドかかる代わりに、一着に入れば四百ゴールド、二着で百五十ゴールドの賞金がもらえるわけですが。

 レベル二十以上のスライムでないと出せないという縛りと、それ以上にレベルを上げたからって勝率が上がるわけでは無いという仕様と、勝ってもコインが儲かるわけでは無いし勝ち続けてもダブルアップも無いので、ゲームで稼ぐという観点からは、特に旨みは無い要素なんですけれども。

「ピキー!ピキー!」
『ドーラ!スラリン!かつ!』
「……」

 ゲームでは、どんなに手塩にかけて育てたスライムでも、レース中に疲れて休んだり眠ったりなんかしちゃうわけですけれども。

 このスラリンの、この気合い。
 スラリンで儲けようなんて露ほども考えてなかったけど、なんだか勝ってくれそうな……!

「……スラリン。私は、そんなことしてくれなくても。スラリンが大好きだから、いてくれるだけでいいんだよ……?」
「ピキー!ピキー!!」
『ドーラ!スラリン!でる!かつ!!』

 ……スラリン!
 知ってたけど、そんなこととっくに知ってたけど!
 本当に、なんて良い子……!!

「……わかった!私は、スラリンを信じてるから!スラリンに、全部託すから!だから、頑張ってね!」
「ピキー!!」
「お兄さん!この子、次のレースに出します!それで、一、六に五十枚!全部、賭けます!!」

 スラリンに全てを託し、目を付けた二匹のうちでより調子の良さそうなほうと組み合わせて、手持ちの全てであり、一回のレースに賭けられる上限でもあるコインを賭けて。


 レース開始の合図とともにゲートから勢い良く飛び出したスラリンが、そのまま脇目も振らずに跳び跳ねて、一目散にゴールを目指します。

「スラリンー!!頑張ってー!!」
「いけいけー、スラリン!!ぶっちぎれー!!」
「スラリン殿!!油断召さるな、最後まで勝負はわかりませぬぞ!!」
『スラリンくん、かっこいいー!!』
「……スラリン!行け!!」

 気合い十分で突っ走るスラリンの姿に、応援する私たちもついつい力が入り。


「きゃー!!スラリン、やったー!!」
「すげー!!ダントツじゃん、スラリンー!!」
『すごーい!!スラリンくん、速かったー!!』
「スラリン殿。流石にござります」
「……スラリン。……成長したな」

 十スラ(しん)の圧倒的大差で一着に入った六枠のスラリンに続き、一枠のスライムも順当に二着に入り。

 十倍の倍率で、まずは五百枚のコインと、賞金の四百ゴールドを獲得しました!


 ウィニングランよろしく、駆け寄ってきてくれたスラリンを労います。

「ありがとう、スラリン!スラリンのお蔭で、元手がかなり増えたから!ムダにしないように、この後もちゃんと増やすからね!」
「ピキー!ピキー!」
『ドーラ!スラリン!つぎ、でる!』
「え?また出てくれるの?……でも、疲れてない?」
「ピキー!ピキー!!」
『だいじょぶ!スラリン、でる!かつ!!』
「……わかった!ありがとうスラリン、頑張ってね!!」


 そんなわけで。

 レースに出続け、勝ち続けるスラリンに私もコインを投入し続けて増やし続け、賞金も獲得し続けて。


「……スラリン。……そろそろ」
「ピキー!!ピキー!!」
「……わかった。次も、頑張ってね……」

 すっかり勝負に目覚めてしまったスラリンが、必要なコインを稼ぎきった後もさらに勝ち続けて。


「……えーと。今、コイン何枚になったかな?」
「……五万枚を越えたな。賞金は、四万ゴールドを越えた」
「……えーと。……つまり?」
「……百勝を越えたな」
「……わー。スラリン、すごーい……」


 その後もまだまだ勝ち続けるスラリンを、いい加減に遅くなったからと宥めて引き上げて。

 調合に必要な分と予備に数枚の世界樹の葉と、エルフの飲み薬をいくつかと。
 今回の功労者であるスラリンにメタルキングの剣と、まだコインがあったので、装備さえできればなんだか使えるイメージの強いキラーピアスに交換します。


 女として私も当然にキラーピアスが装備できるわけなので、早速着けてみて。

「ピキー!」
『ドーラ!かわいい!』
「ありがとう、スラリン!スラリンのお蔭だね!大事に使うからね!」
『ほんとだ、武器なのにオシャレだね!ドーラちゃん、似合ってる!』
「ありがとう、モモ!」
「ふむ。強く美しいドーラ様のためにこそ、存在する逸品にござりますな。スラリン殿、お手柄にござります」
「だなー!今日はスラリン、大活躍だな!すげーよ、スラリン!」

 盛り上がる仲間たちの中で、考え込むようにしていたヘンリーも口を開きます。

「いつでも身に着けられて、護身用に良さそうだな。……敵の懐に入る戦い方になるのが、心配だが」
「大丈夫だよ!チェーンクロスと使い分けるし、無茶はしないから!」
「……無茶はしないとか……。お前が言うのに、これほど説得力の無い言葉も無いよな……」
「……」

 口先だけのつもりは無いんですけれども。
 実際の行動を思い返してみると、なかなか反論もしづらい。

 いやでも、その時々で必要な行動を取ってるだけで。
 別に無茶をしているつもりは、無いんですけどね?

 その時は。

「……まあ、いい。俺が、ちゃんと守ればいいだけだからな。似合うな、ドーラ。綺麗だ」
「……ありがと」

 ……そしてまたなんでコイツは、さらっとこういうことを言うかな!

 ドーラちゃんが綺麗とか可愛いとか、そんなの知ってるけど!
 同じくよく知ってるはずのコイツに改めて言われると、なんだか照れるじゃないか!!

「……思ったより、遅くなったし。早く、オラクル屋に行こう」
「ああ」

 たぶん赤くなってるだろう顔を隠すように後ろを向いて外に向かって歩き出すと、追い付いてきたヘンリーにまた腰を抱き寄せられます。

「……」

 ……いつものことだし、賑やかな夜の町を歩くわけだから仕方ないけど!

 このタイミングっていうのが、なんかまた……!
 また、顔が赤くなる……!!


 外に出てしまえばもうわからないだろうけど、それまであんまり顔を見られたくないので、しっかりとヘンリーに寄り添って顔を見られないようにして。

 そうしてくっついてたら更にまた顔が赤くなったような気もしないでも無いが、優先順位というものがあるんだから気にしないことにして。

 カジノを後にして、夜の町に繰り出しました。 
 

 
後書き
 スライムレースの仕様を確かめようと、DS版のクリアデータでやってみたら。
 パーティに人間がいると町中では強制的に人間優先の四人組になるのに、その四人の中にスライムがいないとレースに出せない、つまりパーティに人間が四人以上いるとスライムレースに自分のスライムを出せないというめんどくさい仕様でした。
 旨みが無いにも程があると思います。 
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