久遠の神話
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第六十三話 明かされる秘密その五
「そこにもう一つ加わり」
「さらに大きくなりますか」
「貴方達が十三人だったのは実はある程度偶然だったのです」
「偶然でしたか」
「タルタロスに落ちるだけの罪人が十三人いまして」
それでだというのだ。
「貴方達がお姉様に選ばれ」
「そして、ですか」
「神話の頃から戦い力を出させられているのです」
「十三という数字は偶然でもあったのですね」
「そうなります。ですが偶然であると共に」
偶然だけではない、それに加えてだというのだ。
「必然でもあったのです」
「十三がギリシアでも特別な数字だからこそ」
「その通りです」
「そう言えばこんな話がありますね」
樹里は今度はこの話をしだした。
「太陽、月、地球に」
「火星、水星、木星、金星、土星にですね」
聡美は樹里の言いたいことを察して星達の名前を出していく。
「天王星、海王星、冥王星」
「もう一つの星があるって」
「その星もですね」
「星の数は十一ですけれど」
「それに加えてです」
謎の惑星、この存在は以前から言われている。俗称をネメシスという。
「ありますね」
「その星もですね」
「はい、規定の数字に一つが足されると」
「より大きくなりですか」
「充実もするのです」
そうしたことももたらすというのだ。
「この辺りが中々難しいものがあります」
「けれど若し剣士が十二人ならば」
マガバーンが言った。
「この戦いはセレネーの思う通りになっているでしょう」
「規定の数字だからですか」
「アルテミス女神の言う様に十二は規定です」
自分の横にいる聡美をちらりと見てから三人に話す。
「そこに一つ、一人が加わればです」
「規定ではないからですか」
大石がそのマガバーンに問い返す。
「だからですね」
「神の規定ではありませんから」
「そこに狂いが生じますね」
「そうなります」
「お姉様はそのことに気付いていません、そして」
聡美は俯いたままで語る。
「私もついこの前まで」
「銀月さんもですか」
「気付きませんでした、十三という数字は神の規定の数字ではなく」
十二ではなく、それ故にだというのだ。
「それを超えていますから」
「セレネー女神の思惑も超えられるのです」
「お姉様を止められます」
聡美の言葉は切実なものになっていた、それは俯いた顔にも出ている。
「もうこれで」
「セレネー女神は神話の頃より私達の力を集めてきました」
戦いにより発散されてきたそれをだというのだ。
「エンディミオンに注いできたものを」
「それは貴方達の犠牲です」
戦いその中で剣士達が倒れていってきたからだ、力が出されることは戦いを通じてだからこれもこう言えることだった。
「その犠牲はもう止めたいのです」
「この戦いは無益です」
マガバーンもこう言った。
「欲と欲が神によって利用するだけの」
「貴方達にもまた心があります」
聡美もまた三人に語る。
「ですからそれを弄び続けることは」
「止めなければなりません」
「私は神話の頃からお姉様を止めようとしてきました」
アルテミスとしての言葉だった、銀月聡美でありながら。
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