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久遠の神話

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第六十三話 明かされる秘密その六

「しかし止められず」
「セレネー女神の望みはあと一歩のところまで来ています」
「あと一歩といいますと」
 上城はマガバーンのその言葉に問うた。
「まさか」
「はい、この戦いで」
 今彼等が戦っているこの戦いでだというのだ。
「セレネー女神はエンディミオンを神に出来るだけの力を手に入れます」
「神話の頃から続けてですか」
「そうなります」
「そうなんですか」
「お姉様の願いは適おうとしています」
 また聡美が言う。
「間も無く、ですが」
「それでもなんですね」
「それで得た幸せは何なのでしょうか」
 聡美は真剣な顔で剣士達、そして樹里に問うた。
「果たして」
「人を犠牲にして手に入れる幸せですか」
「そうです」
 樹里に対しても答える。
「それは何でしょうか」
「私の考えを言っていいでしょうか」
 樹里はこう前置きしてから聡美に問うた。
「そうしていいですか?」
「はい」
 聡美は樹里のその言葉を受け取って頷いた。
「お願いします」
「はい、私は」
「どうお考えですか?」
「それは間違っていると思います」
 これが樹里の考えだった。
「お題目かも知れないですが他の人を犠牲にして手に入れた幸せは」
「何にもならないですね」
「上城君達はずっと戦っているんですよね」
 上城を横目に見ながらさらに問うた。
「そうですよね」
「その通りです。その時で性格や立場は全く違いますが」
「魂は同じですよね」
「はい、全て同じです」
 十三人の剣士達全員がだというのだ。その時代によって確かに性格や立場、願いは違うがそれでもだというのだ。
「魂は不滅なので」
「そうですよね」
「剣士の方々は神話の頃から戦っています」
「そして力をその女神に与えてきたんですね」
「その通りです」
「まるで家畜か奴隷ですよね」
 樹里は剣士とは何なのか、このこともわかった。
「その人の」
「そう言っていいです」
 実際にそうだと、聡美も答える。
「皆さんは」
「そうですよね、セレネーさんがどれだけエンディミオンさんを愛していても」
「最初は違ったのです」
 聡美は悲しい顔でこうも言った。
「本当に」
「どうした方だったんですか?以前は」
「神話の頃は私と共に月の女神でして」
 そしてだというのだ。
「その頃はとてもお優しくて落ち着いた方でした」
「恋愛については」
「御存知なかったです」
 そうだったというのだ。
「公平で慈愛にも満ちておられ」
「そうしたことはされなかったんですか」
「はい、全く」
 こう答えたのである。
「それがです」
「変わったんですか」
「あの方とお会いして」
 そのエンディミオンとだというのだ。
「そしてあの方が人間だったが為に」
「神jは死にませんが人は死にます」
 マガバーンが聡美の横で言う。
「そこが大きな違いです」
「だからですよね」
「セレネー女神は私達を戦わせているのです」
 マガバーンは上城に話す。 
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