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久遠の神話

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第六十二話 十二時の決戦その十四

「善人とは思いません」
「じゃああれかい?悪人かい?」
「そうとも考えています。これまで嘘を言ったこともありましたし誤魔化したりもしてきました」
 そうした悪をしてきたというのだ、マガバーンは中田に対して彼がこれまでしてきたその罪のことも話していく。
「そして生あるものを糧として口にしてきました」
「それはですが」
 大石がここまで聞いて言って来た。
「人なら誰もが行ってしまう」
「はい、罪ですね」
「それを言えば人は全て悪ですが」
「そうです、人はそもそも罪があるものであり」
 尚且つだというのだ。
「そして善きこともします」
「そういうものですね」
「つまり人は善であり悪です」
 これがマガバーンの考えだった。
「私は完全な善人とは言えません。同時に完全な悪人でもないでしょう」
「罪も徳も積むからかい」
「その通りです」
「あんた宗教家なんだな」
「バラモンのカーストにあります」
 中田にその宗教も話した。
「とはいっても差別主義者ではないつもりです」
「ヒンズー教の人なんだな」
「そうです」
「インドには色々な宗教があるらしいけれどな」
「宗教も民族も文化もです」
 それこそあらゆるものがだというのだ。
「様々なものが存在します、それがインドなのです」
「行ったことはないけれど凄い国らしいな」
「そう言われています。ですが貴方にも何時か」
 中田のその目を見て語る、今去ろうとするその彼の。
「因果のことをお話出来ればと思っています」
「気が向けばな」
 中田は軽いいつもの笑みでこう返した。
「聞かせてくれよ。それじゃあな」
「はい、では」
 中田はマガバーンに手を振って別れそのまま戦場を後にした。そして工藤と高橋もこう言ったのだった。
「そこのインドから来た人のことは気になるがな」
「後で聞かせてもらうよ」
「今は、ですか」
「このことを一佐に話させてもらう」
 二人の今の上官であり責任者である彼にというのだ。
「因果のことは長い話になりそうだな」
「そうなります」
「詳しい話は後でじっくりと聞きたい」
 今は、というのだ。
「一佐のところに行き報告したい」
「正直なところ聞きたいとも思うけれどね」
 迷った、だが今はというのだ。
「そう判断した」
「二人で話をしてね」
「ではお二人には後日」
 マガバーンも二人に微笑み応える。
「然るべき場所と時間で」
「そうさせてもらう、それではな」
「また会おうね」
 二人は敬礼をしてから去った、工藤は海上自衛隊のもので高橋は警察のものだ。
 その敬礼をした二人が去ってそうしてだった、
 後に残った上城と大石はマガバーンに対して問うた。
「僕達は聞きたいです」
「今ここで」
 こうマガバーンの顔、とりわけ目を見て言うのだ。
「その因果のことを」
「戦いのことも」
 その両方のことをだというのだ。
「そうさせてくれますか」
「時間は遅いですが」
「はい、それでもです」
 こうマガバーンに言う。
「お願いします」
「では場所を変えますか」
 ここでまがバーンが言うとだった。
 彼の横にもう一人来た、それは誰かというと。
 聡美だった、二人は聡美の姿を見て目を瞠って言った。
「どうして貴女がここに」
「どういうことでしょうか」
「はい、実は」
「この方は全てを御存知です」
 マガバーンも言う。
「この戦いのことを」
「そういえば以前から僕達に色々と教えてくれましたね」 
 上城はここでこのことも思い出した。
「剣士のことも戦いのことも」
「それは全てを御存知だったからですか」
 大石も驚愕の顔で言う。
「この戦いのことを」
「その通りです、それは何故か」
 詳しく話すというのだった、そして。
 四人は戦場を後にした、戦いは終わったが謎が語られようとしていた。それは上城達が思いもしないものだった。


第六十二話   完


                        2013・3・19 
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