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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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【D×D】記憶のお掃除

 
前書き
そういえばこんなのも書いたことがあるんだった、ということで投稿しました。
随分前に書いた物ですが、ハイスクールD×Dの二次創作です。 

 
「なぁ、グレモリー」
「何かしら?」

放課後の夕日が差し込む教室に高校生の男女が二人きり、というと甘酸っぱいシチュエーションを想像するのが健全な日本男児と言うものなのかもしれないが、あいにく俺はそういうのと縁遠い存在なのでそういうのはしない。

今俺と同級生・・・リアス・グレモリーが二人きりで教室に残っているのは単純に俺が美化委員というポジションゆえに掃除が行き届いているかの点検をしなければならないこと・・・そしてグレモリーがここにいるのは教室に忘れ物をしたとかそういう理由だろう。事実、彼女は自分の机の中から目的物と思しきプリントを握っていることが俺の推論をより信憑性の高いものとしている。

それはさておき、俺は一度グレモリーに聞いてみたいことがあった。折角2人きりと言う環境なんだからちょっと聞いてみようかと思う。普段のこいつは学園の憧れの的みたいなもんなので話しかけにくいし。俺そもそもこいつそんなに好きじゃないし。
・・・この光景、誰かに見られたらあらぬ誤解を招くんじゃなかろうか?

「お前の姓・・・グレモリーって偽名だろ」

早速核心を端的に問うてみる。グレモリーは小首を(かし)げて心底不思議そうな顔して聞き返してきた。まぁ普通そうだろう。いきなり自分の名字を全否定されれば誰だって怒るか戸惑うだろう。普通なら、だが。

「・・・?どうしてそう思うのかしら?」
「あんた確かイギリス出身だったよな」
「ええ、そうよ」
「あそこはキリスト教だ。プロテスタントとかそういう細かい区分けは無視してな」
「・・・そうね」
「そも、キリスト教が主なユーロ圏でグレモリーって無理があるだろ。ソロモン72柱が1柱の立派な悪魔の名前だぞ?」

グレモリーはゴモリーともガエネロンとも呼ばれる女悪魔だ。地獄の軍団を率いる公爵と言う説もあるが、過去、現在、未来及び財宝の情報を知っているらしい。というか珍しく(出典にもよるが)性別が女と明記されている名前が姓ってどうなんだろう。

「・・・そうでもないわよ?事実、私がいるし」
「そうでもあるだろ。調べたんだよ・・・イギリス姓を含む各国の姓に悪魔の名前なんて存在しない。仮に存在しててもお前の家ほどでけえ筈がないというか、続くわけがねえんだよ。どう考えてもそんな名前名乗ってんの邪教徒だもん。淘汰されるって」

深く考えなくたって不自然じゃないか。みんな気にしないから黙ってたけど、俺はそれがずっと気になり続けていた。だっておかしいだろ。そんな名前絶対イジメられるわ。

一応日本に帰化した際に新しい姓が作られる事もあるらしいが、あいつの家ってほとんど屋敷なので低く見積もっても結構な金持ちの筈。収入が多いという事は今か過去かは別として社会的な地位が高いだろう。悪魔の名前で地位が高けりゃなぜ今の今までグレモリーの家族の名がいくら調べても見つからないのか分からない。

「でも私には戸籍も国籍もあるわよ?昔帰化したらしいって家族に聞いたけど・・・」
「それもおかしいんだよ。帰化するのだって簡単じゃないのに、偽名のまんま通るなんてありえないんだ」
「ねぇ、貴方今日はどうしたの?普段はそんなに人に食って掛かることしないのに・・・そんなに私の名前がおかしいの?」

ぷくっと頬を膨らませて怒られた。ほんのちょびっと可愛い。ちょっとだけ、あくまでちょっとだけ!

「・・・ああ、すまん。短刀直入に言うべきだったな」

自分で言うのもなんだが、この質問内容は結構アホだと思う。でも、ついつい聞かずにはいられなかったのだ。

「お前実はまともな人間じゃないだろ?いや、ひょっとして人間ですら―――」

その質問を境に、俺の意識は闇に沈んだ。



 = = =



・・・何とまぁ困った同級生がいたものだ。まさか学校を含む町の各所に設置していた認識阻害魔術に唯の人間が抵抗を試みていたとは。神器を持っている訳でも特別な血縁者がいる訳でもいないこの同級生―――掃詰(はきづめ)(しゅう)が、まさか誰に言われるでもなく私と言う存在、人ならざる存在に感づくとは思わなかったため、咄嗟に魔術で彼を眠らせてしまった。

「仕方ないわね・・・取りあえず記憶を操作して疑いを持たないようにしないと・・・朱乃に手伝ってもらおっと」

それにしても完全に油断していた。唯の人間が人ならざる存在に感づくとは思ってもみなかった。
私たち悪魔は、人間と言う生き物を過小評価し過ぎているのかもしれないと考える。

「それにしても気持ち良さげな顔して寝てるわね・・・フフッ、普段の仏頂面がまるで子供みたい」

その日、箒はいつもより少々遅く家に帰り着いた。なぜ自分が遅くなったのか思い出せなかった箒だが、晩御飯を食べているうちにその疑問は溶けてなくなってしまった。

その後夏休みに突入したため顔を合わせる機会は少なかったが、変わった様子はなかったのでこれにて一件落着のようだ。但し朱乃から「次はもっと穏便に済ませるように」と小言をもらってしまった。次は気を付けよう・・・



 = = =



「なあ、グレモリー」
「・・・何かしら?」

放課後の夕日が差し込む教室に高校生の男女が二人きり、というと甘酸っぱいシチュエーションを想像するのが健全な日本男児と言うものなのかもしれないが、あいにく俺はそういうのと縁遠い存在なのでそういうのはしない。

今俺と同級生・・・リアス・グレモリーが二人きりで教室に残っているのは単純に俺が美化委員というポジションゆえに掃除が行き届いているかの点検をしなければならないこと・・・そしてグレモリーがここにいるのは殊勝にも俺の仕事ぶりを見学しているのだ。こいつ生徒会長と友達だからサボったらきっとチクる気だろう。俺は真面目だからそんなことやらないが。

それはさておき、俺は一度グレモリーに聞いてみたいことがあった。折角2人きりと言う環境なんだからちょっと聞いてみようかと思う。普段のこいつは学園の憧れの的みたいなもんなので話しかけにくいし。俺そもそもこいつそんなに好きじゃないし。
・・・この光景、誰かに見られたらあらぬ誤解を招くんじゃなかろうか?

「お前は()だ?」
「・・・えっと?言葉の意味が分からないわね」

分からんだろうな。俺も何言ってるか分かんないし。でも俺なりに夏休みを費やして調べた自由研究の結果を発表しておこうと思う。

「えっと、まずお前の近辺にいる人間に片っ端からグレモリー家のこと聞いてみた。途中でイギリスの方に元住んでた屋敷がまだあることも聞いてそっちにも旅行がてら行って、いろいろ調べてみた」

どうした俺。行動がアグレッシブすぎるぞ。傍から見たらストーカー一直線だ。だが知的好奇心に負けた俺はそれを実行した。きっかけは「グレモリーって悪魔の名前だろ。それっておかしくねぇ?」と疑問に思ったことだった。
・・・グレモリーは絶句している。そらそうだ。俺だってそうするわ。

「でな。結論から言うと日本にいるお前の近辺・・・よく一緒にいる朱乃とかは質問の間ずっと言葉を選んでたように思えた。お前自身の話は聞いたが、お前が育った環境とかの広い部分を明らかに隠してた」
「プライバシー保護の為じゃないの?最近何かと怖いから」
「俺はお前の方が怖いぞ・・・イギリスの方での成果が特に」

懐からつたない英語と汚い日本語訳で埋め尽くされた手帳が出て来る。俺の研究成果が詰まった最高のボロボロ手帳だ。

「データによると確かにお前の父親に当たる人物がここに住んでたという証言は得られた。屋敷もいまだにグレモリー家の名義になってた。でもな・・・どういう訳か、そこからどれだけ調べてもみんなみぃんな”思い出や記憶の内容が一緒”なんだよ」

調べたこっちが軽くホラーである。抱いた印象や思い出、あいさつした時のことなどがまるで最初からたどる道であったかのようにつらつら同じことを喋るのだ。人間の記憶がそこまで画一的になるなんてあり得るか?

「ぶっちゃけ記憶を操作したか、何かしらの方法で脅したとしか思えん。ついでにグレモリー家の資金繰りを見てみたら歳入が無いのに財産が増え続けてる。税務署がこんなテキトーな財産管理を放っておくはずが―――」

ここで俺の意識は暗闇に沈んだ。
・・・あれ、なんかデジャヴ。



 = = =



本当に困った同級生だ。まさかグレモリー家の周辺調査を単独で行った上に認識阻害魔術の効果範囲外まで足を運んで調べていたとは。別に英雄の子孫でもなんでもない一般人の箒が、私達にも気づかれずにこれほど具体的な調査まで行っていたなんて信じられない気持ちだ。

イギリスの証言も、もし万が一異常を感じたら面倒だからと予め暗示で記憶を刷り込んでいたのに、まさかそんな観点から不自然さに気付くなんて。しかも家の資金繰りなど一体どこで調べたのか本当に見当もつかない。

一度記憶を消していたのに前より強く疑われてしまったため、また魔術を掛け直さなくてはいけない。

「もう・・・今回はちょっと念入りに消しておきましょう。箒君ったら、駄目よこっちの世界を知ってしまっては」

辿り着く前に止めておかねば、下手をすれば彼自身の身が危ない。人間の好奇心というのは恐ろしいものだと実感した。

「また気持ちよさそうな寝顔・・・人の気も知らないで。このこのっ」

八つ当たり気味に頬を乱れ突きされたのちに魔術を掛けられた箒は、いつもより少々遅く家に帰り着いた。なぜ自分が遅くなったのか思い出せなかった箒だが、晩御飯を食べているうちにその疑問は溶けてなくなってしまった。

その後しばらく使い魔を張り付けて監視したが、変に思える兆候は見受けられなかった。後は朱乃に定期的な監視を任せ、休むことにした。記憶の操作は間違えると余計に記憶を忘れてしまうため大変なのだ。次こそ彼が疑いを持たぬように・・・



 = = =



「なぁ、グレモリー」
「えっと・・・何かしら?」

放課後の夕日が差し込む教室に高校生の男女が二人きり、というと甘酸っぱいシチュエーションを想像するのが健全な日本男児と言うものなのかもしれないが、あいにく俺はそういうのと縁遠い存在なのでそういうのはしない。

今俺と同級生・・・リアス・グレモリーが二人きりで教室に残っているのは単純に俺が美化委員というポジションゆえに掃除が行き届いているかの点検をしなければならないこと・・・そしてグレモリーがここにいるのは授業中に珍しく居眠りをしたせいで先生に俺の手伝いをするよう仰せつかったからだ。帰ってもいいと伝えたが、それがばれたらまた怒られるからと結局一緒にチェックをしている。

それはさておき、俺は一度グレモリーに聞いてみたいことがあった。折角2人きりと言う環境なんだからちょっと聞いてみようかと思う。普段のこいつは学園の憧れの的みたいなもんなので話しかけにくいし。俺そもそもこいつそんなに好きじゃないし。
・・・この光景、誰かに見られたらあらぬ誤解を招くんじゃなかろうか?

「お前・・・っつうか、お前ら俺に何をしたんだ」
「私達って、私の部活メンバーの事?」
「そうだ」
「そうだって・・・他の子が何か迷惑かけた?私、ちっとも心当たりないんだけど」

グレモリーが混乱の極みに達したような目で俺を見ている。俺も割と混乱の極みに達している。しかし色々鑑みるとどうしても俺の身に起こったあの怪奇現象の説明がつかない。

「最近時々、旧校舎にあるっていう部活動の部屋に行ってみたいと思って旧校舎に行くんだ。でも入り口付近まで来ると何故かいかなくてもいいかという気分になって、最初はそのまま帰ってた」

おいおい諦め速すぎるぞ俺、と今になって思ってしまう。三歩歩いて忘れる鳥頭でもあるまいし、一度興味を持ったくせにどうしてそこで諦めるんだそこで。初志貫徹できない男はモテないぞ。学校を出てからそのことに気付いた俺は、何を思ったか改めて旧校舎に再ログインを敢行しようとしたのだ。

「帰りたいし興味なくなったけど取り敢えず入るんだが、今度は入った途端気味悪くなって帰りたくなった。しかしここで帰ってはと歩きはじめて気が付いたら入口から外に出てたんだよ。ドア一つ空けないで」

グレモリーが頭を抱えている。堂々同級生がアルツハイマーを発症してしまったみてーなその態度は気に入らないが、俺自身は一番自分を疑ったんだからな。今日の所は見逃す。

「という訳で入りたいのに入りたくなくなる、進もうとするのに進んでないと本能に従うと悉く入るのに失敗したから本能の選ぶ方から全力で反対に進んでみたんだ。で、結果としてあの中で遭難した」

グレモリーが天を仰いでいる。俺もあの時は神に拝みたかったものだ。

「途中で木場に発見されてそのまま返されたんで諦めたが、次の日も頑張って突入したらまた遭難した。今度は塔城に抱えられて保健室に連れて行かれた。次も遭難して今度は朱乃に・・・だ。ドア一つ空けられねぇ」
「方向音痴ここに極まれり?」
「ねーよ」

富士の樹海は磁場を狂わせるとかそんなレベルじゃない不快感との戦いに疲れ切ってマジで死ぬかと思ったね。長期戦用に飲食物も用意したけど粘るのは4時間までが限界だったくらいだからあそこ絶対おかしい。っつーか広くもない旧校舎で4時間とかありえん。

「で、疲労がてら気付いたんだけどその3人はみんなお前の部活仲間な上に妙に俺を憐れんだ目で見るんだよ。しかも最近やたらコウモリ見るし。コウモリ追い掛け回しても絶対に撒かれるし」

コウモリを追いかけて右往左往する俺の姿を見せてやりたかった。絶対笑い話の種になる。

「その蝙蝠がどう繋がって私達があなたに何かしたことに繋がるのよ・・・?」
「捕まえようとすると逃げるもんだからここ一か月コウモリの分布図や目撃例を探してみたらこの学校の旧校舎を中心とする一帯だけ異常に多すぎる。お前ん所の部活・・・オカ研だっけ?あそこから放たれてるとしか思えん。旧校舎に入るのはお前たちと時々来る生徒会のメンバーだけだし、そもそも公的な資料によるとこの近所に野生のコウモリなんぞ生息しとらん」
「・・・・・・・・・え、生息してないの?」
「近所の大学の生物研究の教授に聞いた。住める環境が無いらしい」
「Oh・・・」
「もうよく分からんが、何故か旧校舎とお前含むオカ研メンバーと蝙蝠と3つ繋がったんだ。疑いもするだろ?てめー実は黒魔術的な何かで―――」

ここで俺の意識は暗闇に沈んだ。
またこれか。・・・あれ、またって何だよ?



 = = =



もう言葉も出ない。箒は何が何でも理由を見つけて私の悪魔の秘密を暴きたいんじゃないかと思えてきた。いわば彼は何度でも疑問を抱き真実暴くマン。存在を隠している我々悪魔を懲らしめるために神の遣わした嫌がらせなのだ。

私たちの目の届かない所に重点を置いて監視した結果学校内での視線とかを確認するのが疎かになるとか笑えないし、そもそも箒が旧校舎で遭難って初めて聞いたんだけど。

「どーゆーことよ朱乃!!」
「だってリアスったら彼の記憶を2回も消したことを内心気にしていたでしょ?だからそれ位なら気付かない方がと思って」
「失敗してんじゃない!しかもあらゆる方向で!」

半ばヤケクソ気味に記憶を消去。これで駄目ならもうチラシ契約を何としてでも押し付けて使わせるしかない。今までにポストに契約の紙を放り込んだことは何度もあるけど、他の広告類と一緒に学校行き途中のコンビニのゴミ箱に毎度放り込まれているから全然効果ない。

相変わらず健やかな寝顔をしているが、貴方は一般人なのよ。悪魔の世界に首を突っ込んでも何にもいいことは無いのよ。もう勘弁して頂戴、箒。



 = = =



「なぁ、グレモリー」
「・・・・・・・・・へぇへぇ私が悪うござんしたよ。地球が太陽の周りを回ってるのもアダムとイブが知恵の実食べたのもエルニーニョ現象もペストが流行したのもありんこの2,3割が働かないのも蚊がマラリアを媒介するのも毎年台風時に外出したおじいさんが死んじゃうのも梅毒が大流行したのもオゾンホールが開いたのもどぉーせ私の所為よ!はいはい私が諸悪の根源で~す!!」
「何言ってんだお前・・・」

同級生のグレモリーがおかしくなってしまった。

その後、実は悪魔だったことを暴露したら「・・・え、マジで言ってんの?ぷっ」と笑われて発狂するグレモリーとそれを必死で止めるオカ研メンバーという変な構図が出来上がったとか。
 
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