没ストーリー倉庫
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
【D×D】掃除男の素朴な疑問
俺の名前は掃詰箒。駒王学園3年生だ。
誰がモッピーだコラぁ!!……あ、いやなんとなく叫んだ方がいいかと思って。
で、そんな俺は今日も素朴な疑問を引っ提げてある場所へと向かっていた。
旧校舎内にひっそりと存在する無駄に悪趣味で豪華な部屋――オカルト研究部部室。
普通の人間には入れない細工が施してあるその場所に普通の人間である俺が入れる理由は……前作を見た人はお察しだと思う。
「失礼しますよ~っと」
「あら箒。また来たのね」
「……どうも、先輩」
「お、今日はお前らだけか。朱乃もいないのは珍しいな」
俺を出迎えたのは諸悪の根源にして同級生のグレモリーと、その後輩の塔城だった。いつもはあと何人かここに屯しているのだが、今は用事でいないのだろう。まぁ今はそんなことはいい。どうせ大した用事はないし、ちょっと知的好奇心に駆られてやって来ただけだ。
「で、今回は何しに来たの?契約?それとも契約?」
「お前は悪徳業者か。ちょっと気になることがあって聞きに来ただけだ」
「先輩。私と契約して魔法しょ……」
「お前も悪乗りするなっつーに」
この部室の連中は、悪魔の事を知ってるくせに何も契約しない俺をなんとかお客様に仕立て上げようとしている。人と悪魔は契約関係で繋がるのが基本だからだ。俺みたいに何の力もないのに悪魔の世界にずけずけと入り込む偏屈人間のほうが珍しいらしい。
頼むことなぞ特にないのだがと思いながら部室のソファに座ると、何故か左右を挟む形でグレモリーと塔城が積めてくる。美少女二人をはべらせているとも見えるが……これアレか、契約するまで閉じ込めて外に出さないっていうタイプの違法契約じゃないのか?
「まぁいいや。それで聞きたいことなんだが……」
「ちょっと箒。女の子二人と肩が触れてるのにそのリアクションって……貴方ひょっとしてソッチ系なの?」
「枯れてるんですか?いい薬あげますよ……ちょっと効きすぎるくらいに」
「お前らいよいよ俺に遠慮なくなってきたよな………」
俺は地味子系が好みなのでキミらは好みじゃありません、とか言った方がいいんだろうか。だが俺は不思議とこいつらには思春期男子的な悶々とした感情を抱かない。やっぱりこいつらを疑ってた期間が長かったせいだろう。
閑話休題。
「聞きたいのはソロモン72柱のことだよ」
塔城が暇を持て余してどこかへ行ってしまったが、漸く本題だ。
ソロモン72柱というのは旧約聖書に記された古代の王ソロモンが使役したと言われる72の強力な悪魔の事であり、グレモリーもその72柱の血を継ぐ悪魔だ。ここまではいい。
「で、先当たって聞きたいんだけど……お前らがこの部屋に彫り込んだ魔方陣とかチラシに書いてある魔方陣や手順。これって『ゴエティア』に則ったものだよな?」
「ええ。魔導書、ゴエティア。人が悪魔と契約する方法が記された本。私たちはこれを基に無駄を省いて極限まで簡略化したものを使っているわ」
「ゴエティアの内容はソロモン王に由来するんだったよな」
「そうよ。聖書に記された古代の王、ソロモンが構築した式が元になっているわね」
ここでクエッション。
「つまり72の悪魔を使役したソロモン王って実在したわけ?」
「………………………した、事になるわね」
「…………お前さてはその辺のこと知らないな!?」
「し、しました!実在しました!!」
完全に今気付いたようなリアクションを見せていたが、こいつさては今まで考えたこともなかったようだ。しかしソロモン王が実在したとなると、凄い話になってくる。
何せ伝承ではソロモン王が悪魔を使役できた理由は、いわゆるキリスト教の唯一神ヤハウェが彼に知恵を授けられたからとなっている。
ソロモンはその知恵を駆使して地獄の軍団を率いる72の悪魔貴族たちを使役し、更には天使までも使役したと言われている。神の使いと悪魔を同時に従えてしまったのだ。間接的ながら、ヤハウェは人間を通して悪魔と天使を同じレベルに落としてしまったことになる。
つまり地獄の悪魔連中はみな人に大人しく従っていたわけで、それと敵対する神の使いも彼に従ってたわけで………?
「ソロモン王バケモノじゃねえか!!神と悪魔の戦争どころじゃねえよ!!」
「お、落ち着くのよ箒!それはあくまで聖書以外で残った伝承であって、本当にソロモン王がそんな人間だったかは……!」
「でもゴエティアはソロモン王に由来するんだろ?」
「それは……うん」
その後も議論は紛糾し、最終的には箒の「この話はなかったことにしよう」の一言で終了した。
ソロモン王の伝承がどこまで本当で、どこからが嘘かは謎のままである。
ちなみに偽典では、大天使ミカエルがヤハウェの命であらゆる知識の詰った指輪をソロモンに渡したらしい。それこそが「ソロモンの指輪」と呼ばれるものであり、天使も悪魔も精霊も使役する上に動植物の声まで聴けると言うとんでもない代物だったようだ。(実際にはラジエルの書とか鍵とか諸説ある)
伝承には「悪しき魔神(悪魔や悪霊)も良き魔神(天使のこと)も呪文で強制的に従えさせる」とある訳だが、いくらソロモンがイスラム教における預言者の一人だったからってそんなもの渡すだろうか?
天使と悪魔の対立構造の前提が揺らぐため、多分この世界のソロモン王はそこまで出鱈目な存在ではなかったのだろう、と俺は自分を納得させた。
翌日になってソロモンの指輪が実在すると言う衝撃の事実が判明して、しかもその指輪が掃詰家の倉庫からポロッと出て来て世界がパニックになるとは、この時の俺達はまだ知る由もなかったのだ。
劇場版ハイスクールD×D 実家倉庫のソロモン!鋭意製作中!(うそです)
= 素朴な疑問mk-2 =
それはゼノヴィアとイリナとかいう二人が唐突に部室にやってきたときの事。
俺はふと疑問に思ったことを口にした。
「……え?天使ってヴァチカンに降臨してんの?」
「当然だろう。ヴァチカンはキリスト教の総本山だぞ?」
「でもキリスト教の聖地ってイェルサレムだろ。降臨するならイェルサレムに来るのが筋じゃねえの?」
「え……そ、それは……」
キリスト教にはいくつかの聖地が存在する。だがその中でも最も重要な場所と言えば、やはりイェルサレムだろう。なにせそこはイエス・キリストの処刑、埋葬、そして復活が為された場所なのだから。
「あ、でもそうなるとややこしくなるな……イェルサレムはユダヤ教とイスラム教の聖地でもある訳だし。降臨するなら三宗教全部が同意する状況じゃないと宗教戦争始まっちゃうな」
ややこしい話だが、実はキリスト教というのは元を辿ればイェルサレム近所に存在した民間信仰なのだ。
その民間信仰を宗教化したのがユダヤ教であり、ユダヤ教に異を唱えたりで派生したのがキリスト教。そしてその二つが西洋化してしまったのが気に入らないと原点回帰を目指したのがイスラム教である。つまりこいつら、原点と信仰する神は同じなくせにバラバラな方向に進んでしまった困ったちゃん達なのだ。
(……ちなみに「ヤハウェも仏も神の一つだろ?」と平気な顔でブッ飛んだ事をのたまうのが日本の神道だったりする。海外からしたら常識外れも甚だしい八百万信仰の安定性である)
で、原点が一緒なだけあってこの3つの宗教は「イェルサレム」という聖地だけは共通している。奇跡は大体ここで起きるので、ここが神に近いと言う訳だ。というか昔はこれを巡って十字軍が戦争しまくってたから譲歩しようということで不可侵になった場所だ。
ちなみにユダヤとキリストは聖典が同じであり、イスラム教も聖書の一部を取り込んでいるため、その経典もだいたい天使が共通である。
「ということは天使はキリスト教に色々口を出しつつユダヤ教とイスラム教の聖地にも顔出してるのか?でないと同じ神を信じる信徒に不平等だしな」
「あれ?なんかややこしい事になって来たわよ?」
「ヴァチカンにだけ顔を出しているとなると、キリスト教は他二つが間違っていると確信することになりますわ」
「つまりどういう事だ?俺、なんか頭がこんがらがってきた……」
「キリスト教は大義名分を得て他の2宗教を滅ぼす口実が出来る」
「そ、そんな……流石にそれは大袈裟では?」
「だから大袈裟にしないように三宗教の間で口裏合わせしてるのかもよ?」
「わ、私達はそんな話は聞いていないぞ!」
早速議論がカオスな様相を呈してきた。
そして結局答えが出ないまま――
「神はとっくに死んでいるのだよ!!」
「あー、なるほど!それで天使側でも揉めてたのかー!」
「道理で同じ神を崇める宗教が分裂する訳だ。神が不在ではしょうがないな」
「謎は全て説けたわね!これで今日は枕を高くして眠れるわ!」
「いやー胸のとっかかりが取れた……」
「すごく、納得」
「あ、あれ?おい貴様ら!というかそこの聖剣使い!少なくともお前は納得したら駄目だろ!!」
自分の与り知らない所で堕天使コカビエルをピエロにした箒であった。
ちなみにライザーが訪れた際には「フェニックスって72柱の中でも一番中途半端なポジだよな。キリスト教と関わりあるし、絶対いつか悪魔側を裏切るな」とか「人間形態のフェニックスってすげえ声が汚くて聞くのもおぞましいんだってさ。クトゥルフ神話みたいだな」とライザーがフェニックスであることを知らずに言いまくった結果、ライザーが泣きながら帰ってしまうという事態を引き起こしていたりする。
真実暴くマンこと箒はその後も舌戦で次々に出会った人々の心を的確にブレイクし、後に「72柱の一角であるカイム(悪魔界No,1の弁論家)の末裔ではないか」とまで言われたとか。
後書き
どんなにパワーインフレしても戦えるぞ。やったね!
という感じで思いついた内容をやっちゃいました。
ページ上へ戻る