ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百三十六話:先生と助手と新婚さん
「ルラムーン草ですね!聞いたことがあります!生まれつき適性のある以外の魔法をどうしても使おうと思えば、後天的に適性を身に付けるしかないと!その適性を身に付けるために、必要不可欠な薬草であると!確かに、失われた古代の呪文を復活させて身に付けようと思えば、絶対に必要になりますね!さすが、先生です!」
やたら説明くさい私のセリフに、ベネット先生が力強く頷きます。
「うむ!さすがは、我が助手じゃ!よく勉強しておるの!その通り、失われた魔法の理のみをいくら知ろうとも、その呪文を習得し得る適性が無ければどうにもならぬ。各々の呪文の適性を身に付けるために必要な材料は其々に異なるが、どの呪文においても絶対に必要になるのが、そのルラムーン草じゃ!古い文献から得た知識じゃて、そなたのような若い娘が知っておるとは驚きじゃが。そなたを助手としたわしの目に、狂いは無かったということかの!」
さらに補足的な説明を重ねてくれる先生に、すかさず同意します。
「そうですね!さすが、先生です!」
ベネット先生発で、歴代の『私』から引き継がれた知識ですからね!
完全に、ベネット先生の手柄です!
「我が助手よ!ならば当然、知っておるの?ルラムーン草を間違いなく見付け出すために、気を付けることとは何じゃ?」
「はい、先生!日中はよく似た他の雑草との見分けが付かないため、ルラムーン草に特有の、夜間に光る性質をもって区別すること!つまり、夜に採集することです!」
「その通り!さすがは、我が助手じゃ!」
「ありがとうございます、先生!」
正しい答えを返した私に満足そうに頷き、ベネット先生が改めて地図の印を指し示します。
「冒険者らから入手した情報を精査した結果、ルラムーン草があると思われる場所は、ここじゃ!」
ポートセルミからずっと西に進んでたどり着いたルラフェンよりもさらに西、大きな湖を抱え滝が流れ落ちる台地を北から回り込んで、大陸の南西の端に位置する場所が、地図上に示されています。
「町や村は愚か、洞窟すらも何も無い大陸の外れゆえに、足を伸ばす者も少なく、情報としても不確かなものじゃが。可能性として残されておるのが、もはやこの場所しか無いのじゃ。このような僻地を、しかも夜間に捜索せねばならぬとは。本来ならば、そなたのような若い娘に頼むべきことでは無いのじゃが……」
ここで躊躇いを見せ、言い淀むベネット先生の手を、力強く握ります。
「お任せください、先生!私は女ですが、それなりに旅をしてきた者として、腕には覚えがあります!仲間たちもおりますし、何より先生のお力になりたいのです!」
手を取り、熱い目で見詰めながら訴える私の手を、ベネット先生も感動したように握り返します。
視界の端でヘンリーがピクリと動いて一瞬殺気を感じたような気もしますが、すぐに消えたので気のせいということにしておいてやろう。
先生も気付かなかったみたいだし。
ともかく、ベネット先生が熱く応えてくれます。
「よし、我が助手よ!そなたを信じて、任せよう!そなたらの帰還に合わせて体調を整えるために、わしは寝て待つことにするが!必ず、無事に帰るのじゃぞ!」
「はい、先生!後は私たちに任せて、ゆっくりとお休みください!必ず、ルラムーン草を持って帰ります!ですから、どうか!見事役目を果たした暁には!……その、……私の、お願いを、……聞いて頂けませんか……?」
この研究に協力するのだって私の利益になることなのに、引き換えみたいに協力を求めるとは。
ちょっと図々しかったかな、と思って、強く握っていた先生の手をそっと握り直しつつ、ついつい上目遣いになる私。
またヘンリーから一瞬殺気を感じたような気がして、そのせいなのか何なのか、ベネット先生が挙動不審になります。
「な!?なんじゃ!?…………いかん、いかんぞ、我が助手よ!!わしとそなたとでは、余りにも年齢が!!早まるで無い!!そなたなら、他にいくらでも、若くて良い男が」
何を言ってるのかよくわからないが、私のお願いがベネット先生の利益にならないのは、きっとそうだろう。
面倒事を押し付けられそうになって、動揺するのも致し方ない。
そっと握った手を胸元に引き寄せ、正面から目を合わせます。
「……先生が、古代の魔法の研究を専門とされているのはわかっています。現在でも普通に使われている普通の魔法の、生まれついての適性以外のものを身に付けようとすることは、先生の探究心を満たし得るものでは無く、時間と労力の無駄以外の何物でも無いでしょう。でも私には、どうしても必要なことなんです。魔法の研究に熟練し、薬草の選別も調合も間違いなく行える先生のお力が、必要なんです。どうか、お力を貸してください。私には先生が、必要なんです!」
なおも熱心に訴える私に、先生の顔がどんどん赤くなっていきます。
そんなに嫌なんだろうか。
しつこさに怒って、頭に血が上った感じだろうか。
「早まるな、我が助手よ!!確かにそなたは美しくも愛らしく、それでいて女らしいというか包容力を感じるというか、ともかく大変に魅力的じゃが!!じゃが、しかし……ん?何と申した?」
急に何かに気が付いたように、ベネット先生が聞き返してきますが。
聞き逃したならば、何度でも言いますとも!
「私には、先生が!!必要なんです!!」
「……その前じゃ」
「お力を貸してください!!」
「……さらに前」
「……魔法の研究に熟練し、薬草の選別も調合も間違いなく行える先生のお力が、必要なんです」
だっただろうか。
どういう順番で何を言ったかそんなに細かく覚えてないので、あんまり遡られても。
ベネット先生が何とも言えない表情で私を見詰め、次いで何故かヘンリーに視線を移します。
「……そなた。……苦労するの」
「…………はい」
諦めきったような視線を交わし、二人がなんだか通じ合ったようですが。
ヘンリーもとうとう、先生の偉大さに気付いたんだろうか。
なんか口調が改まってるみたいだし、きっとそうだろう。
「……話は、わかった。我が助手よ、わしの研究に協力してくれるそなたへの、協力の手間を惜しむ訳も無かろう。安心して、行って来るが良い。この研究が完成した暁には、勿論そなたの力となろう」
「本当ですか!?」
すっかり落ち着いた様子のベネット先生が承諾してくれたのに喜んで、思わず飛び付きますが。
「ありがとうございます!本当に、……あれ?」
「……ドーラ。……お前な……」
先生に向かって飛び付いたはずが、何故か割り込んできたヘンリーに抱き付いてました。
「……なんで、ヘンリーなの?」
「……その先生が、困ってるからだろ。自覚が無いのも、いい加減にしろ」
セクハラじいさんとか、年齢的に不味い人ならしないが。
年齢的にも人格的にも先生ならいいかと思ったんだけど、不味かったんだろうか。
問題のベネット先生に目を向けると、微妙な顔でこちらを見ています。
「……先生。……ご迷惑でしたか?」
「……ある意味、そういうことになるかの」
「……申し訳ありませんでした」
「謝られるには及ばぬが。世の中には年甲斐も無く若い娘を娶る盛んな老人もおるでの、その気が無いなら無暗にそのようなことはするでない。わしとて、枯れ果てたという程でも無いからの」
「……わかりました」
そうか、紳士として手出しをしないということと、そういう興味が無いということとは別のことか。
それでも妙な触られ方をしないなら、親しみを感じてるおじいさんに抱き付くくらい私的には別に問題無いんだが、される側の問題があったのか。
一律ダメって話でも無いと思うが、喜びのあまり周りが見えてなかった点は否めない。
よし、反省した。
今後は気を付けよう。
「……では、先生。早速、行ってきます。帰りは明日になると思いますし、先生もごゆっくりお休みください」
「うむ、気を付けての。他の物の準備は既に万全じゃて、いつ戻ってもこちらは問題無い」
「わかりました。それでは、また明日」
すっかり何かを悟ったような顔になったベネット先生と別れて、夜営の準備のために商店街に向かいます。
野宿とかしたこと無かったから、道具の準備もほとんど無いからね。
今回が済んでもまた使う機会はあるかもしれないし、どうせ夜にならないとルラムーン草は探せないんだからそれほど急ぐことも無いし。
馬車があるから多少荷物が増えても困らないし、折角だから色々と揃えておこうというつもりで。
商店街に着いて、見慣れたものから目新しいものまで色々な道具があるのに目を引かれて、ついつい動き回ろうとしますが。
「だから、一人で動くなって。俺も見るし、一緒に動けばいいだろ」
ベネット先生への対応が良くなかったのか、また過保護感が増した気のするヘンリーに、ガッチリと捕まえられます。
さっきのは私が悪かったみたいだし、これは致し方ないだろう。
元々離れようという明確な意思があって動いていたわけでも無いので、素直に従って道具を選び始めます。
「……包丁は、これでいいかな?」
「そうだな。何種類も持ち歩くのも面倒だし、それでいいだろ。二つはあったほうがいいから、それとこれにするか」
「うん」
くっついたまま道具を選ぶ私たちに、店のおじさんが声をかけてきます。
「新婚さんかい?熱いね!まとめて買ってくれるなら、安くしとくよ!」
「……」
こんなにくっついて台所用品を買い求めるとか、確かに熱々新婚夫婦以外の何者にも見えないだろうけれども。
事実とは明らかに異なるわけだが、さて何て答えるべきか。
と一瞬迷った私を、ヘンリーがさらに抱き寄せて答えます。
「ありがとう。コイツの料理は美味いんだが、この店の道具ならもっと美味くなりそうだな。この包丁と、そっちの鍋と。安くなるなら、食器も買っていくかな……」
「お、太っ腹だね、ご主人!奥さんも可愛いし、それなら大負けに負けて、これくらいで」
「それくらいか。さて、どうするか」
なんか値段交渉が始まりました。
そうか、新婚さんだから負けてくれるという話の流れだったから。
実際に新婚さんじゃなければ負けてくれないとも限らないが、そういうことにしたほうが話が早いのか。
ならば私も可愛い新妻として、甘えた仕草の一つも見せたほうがいいのか。
「……ヘンリー。あの食器、素敵だから私も欲しいけど。でもちょっと、予算が足りないかな……」
ヘンリーに甘えかかりつつ、店のおじさんと食器をチラリと、残念そうに見やります。
たちまち、店のおじさんの顔が赤くなります。
「そ、そうかい!?気に入ってくれたのかい!そうだな、それなら特別だ!全部まとめて、この値段でどうだ!」
「え、いいんですか!?……でもやっぱり、まだちょっと……予算が……」
一瞬顔を輝かせ、またすぐに沈んだ様子で悲しそうに食器を見詰める私。
この値段でも別に買えるけど、まあ折角だし。
正直、そこまで色々取り揃えなくてもという気もするし。
あわよくば、安く買えるなら程度で。
打ち沈んだ様子を見せる私を、ヘンリーが優しく慰めます。
「ドーラ、そんなに悲しそうにするな。これくらい、何とか買えるから」
「でも。他にも色々、必要だし。……やっぱり、今回は」
自分に言い聞かせるようにする私の言葉を、慌てたように店のおじさんが遮ります。
「待った待った!!可愛い奥さんのためだ、本当に特別だよ?内緒にしてくれよ?……この値段で、どうだ!!」
「ええ?いいんですか!?……でもこんなに安くしたら、お店が困るんじゃ……」
不安と期待の入り交じる目で食器とおじさんを見比べる私に、おじさんが胸を叩いて請け合います。
「大丈夫!確かに儲けはほとんど無いが、これでもそれなりにやってるんだ!在庫の入れ替えと新婚さんのお祝いを兼ねてると思えば、何てことは無い!いいから、持ってってくれ!」
「ありがとうございます!……ヘンリー、買ってもいいかな?」
「ああ。折角だから、買わせて貰おう。ありがとう、オヤジさん。貰うよ」
「毎度あり!奥さん大事にしてやれよ!幸せにな!」
食器類をまとめて買い揃えて、碌に儲けも出てないだろうに満足そうに見送ってくれるおじさんの様子に、今さらながらに罪悪感を覚える私。
「……ヘンリー。……良かったのかな?」
「いいだろ、別に。……そのうち本当にするし」
「え?」
ボソッと呟かれて、後半聞こえなかったんだけど。
「いいから次、行くぞ。道具だけあっても仕方ないだろ、材料も無いと。毛布なんかも買っといたほうがいいだろうし」
「そうだね。行こうか」
済んだことだし、おじさんも嬉しそうだったし。
気にしても仕方ないし、急がないとは言ってもあまりのんびりもできないし。
さっさと準備を進めますか。
食材や毛布の他にも、細々とした必要そうなものを買い込んで。
準備が整ったところで町を出て、ルラムーン草があるという大陸の南西の外れを目指します。
今回の研究以外でも、色々と必須なアイテムだからね!
気合い入れて探さないとね!!
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