“死なない”では無く“死ねない”男
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話数その15 普通ではない
前書き
今回晋がとる戦法は、嫌いな人はとことん嫌いな戦闘方法になので、かなり好みが分かれると思います。
爆音が響くたびに臓器が飛び散り、その臓器の一部にも仕込んである爆弾が更に破裂し、肉片をまき散らす……この晋特性“臓物グレネード”は、もはやスプラッターの域を超えていた。しかも、足りないと思ったら自分の腹から臓器を引っ張り出して来て爆弾と共に投げたり、挙句の果てにはグレネードを加えて自分の頭を投げてくるのだから、タチが悪いにもほどがある。
おまけに、本人はどれだけバラしても死なないと来た。
「あ…あは…あははははっあはははははははは~!!」
その所為か、戦闘開始から数分と経たぬうちに、ネルは狂乱状態になってしまった。傷だらけの体とうつろな目で、あさっての方向にチェーンソーを振り回している。
「いやだ……もういやだよ……助けて…助けてライザー様ぁ……ぶあっ!? い、いやぁ…」
狂ってすらいないものの、イルはもう既に戦意を喪失している。
「……根性ないな、お前ら」
自分の臓器を引っ張り出してきたり、“明らかに晋の物ではない”臓器が混じっていたり、いきなり飛び散った肉塊が爆発するなど、もはや根性云々の話では無いのだが、晋は呆れ顔で“臓物グレネード”を再び取り出し、ポーンポーンと投げては掴むを繰り返す。
「やめて―――やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてぇ!?」
「あひゃっあははははははっうひゃやあ! あひははははっひひはははあひゃははははぁ~!!」
「……五月蠅ぇなぁ……」
殺しても死なず、あまつさえ自分の体を武器に使う。歴戦の戦士ならいざ知らず、子供である彼女達には耐えられなかったようだ。
「……まぁ、一応は終わりか……そっちはどうだ?」
「っ!」
「う……ぐっ」
「あ、……ああぁぁ…」
「うげええぇぇっ…」
こんな状況を作り出したにもかかわらず平然としている晋を見た兵藤達は、それぞれ嫌悪の表情を向ける。 ミラは何故か裸になっていたが、そんな事を構っていられないと言わんばかりに呆然とし、雪蘭は耐え切れず嘔吐してしまっている。
「……もう、終わってんのか……なら、もちっと嬉しそうな顔すりゃいいのに……」
笑顔を作れない状況を作り出した本人が笑顔になれというのだから、無茶ぶりにも程がある。それに本人も気づいたらしく、すまんと言って謝るがそれは慰めにすらならない。
そんな状況を知ってか知らずか、グレモリーから通信が入った。
『皆聞こえる? 今すぐにそこから離れてちょうだい、朱乃が魔法を放つわ!!』
『『……了解』』
『……あいよ』
グレモリーの通信に答えると、晋と兵藤と塔城は体育館から飛び出る。 そして、体育館に特大の雷が炸裂し、体育館は瞬く間に瓦礫と化した。
『ライザー様の“戦車”一名、“兵士”三名、戦闘不能』
「うふふ、やりましたわね……あら? 皆さん、どうしたんですか?」
嬉しそうに兵藤達へと笑いかける姫島だったが、兵藤達の表情が優れない事に気が付き、疑問を抱いた。
「……気にすんな、俺の思いつき第一弾が、グロテスクすぎて黙っちまっただけだ……多分」
「……そう、ですか」
味方の戦意すら削ぐ思い付きとは一体何だったのだろうか……そう姫島は考えるも、その証拠は体育館のなれの果てと共に埋まってしまい、転送されている。
と、唐突に晋が上を向き、それにつられて他の者たちも上を見る。するとそこには―――
「どうやらバレたみたいね……でももう遅いわよ!」
此方へと手を翳した、魔女のような格好のフェニックス眷属の女性が居た。 そして突如として爆発が起き、塔城と晋はその爆発に巻き込まれてしまう。
「撃破」
にやりと笑う魔女姿の女性。しかし、
「あ~……くそ、煙い…」
その直後に別に何ともない様な顔をして平然と立ち、煙たさでダルそうにしている晋を見て目を丸くした。 まさか外れたのかと塔城の方を見るが此方はボロボロで倒れ込んでいる為、確かに命中した事が分かり余計に驚愕する。
「な、なんで……何で人間の方が無傷なの!?」
「……あいつらの中では、人間=弱いなのな……何となく分かってたけどよ……」
彼女の質問には答えず、晋はブツブツと独り言を呟く。
『リアス様の“戦車”一名、戦闘不能』
直後に塔城が光に包まれて消え、グレイフィアの声が塔城のリタイアを告げた。
「……そんで、これからどうすんだ…? 俺、空飛ぶ相手は無理だぞ」
「私がやりますわ。イッセー君と灰原さんはグラウンドへ向かってくださいな」
「分かりました! ……絶対勝つからな、見ててくれよ小猫ちゃん」
(……別に死んだわけじゃねぇだろ)
余計な突っ込みを入れながら、晋は兵藤について行く。 ふとこちらを向いた兵藤が、走りながら晋に聞いてきた。
「なぁ、灰原」
「……なんじゃい」
「お前、何時もあんな戦い方なのか?」
「……そういう時もあったり……まぁ、その時々によるな」
「まだ、お前の思い付きってのはあるのか?」
「……有るにはあるぞ。……安心しろ、第一弾ほどひでぇもんじゃない……」
「信じられねぇよ」
「……だろうな」
会話を交わしながら、二人はグラウンドへと急ぐ。
緊張感の無い雰囲気バリバリの晋に対し兵藤は、本当に恐ろしいのは敵であるライザーでは無く、この灰原晋という同級生ではないか……と、警戒するのだった。
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