ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百二十四話:お風呂でキャッキャウフフ
「ガウ、ガウウ?」
『ドーラちゃん、大丈夫?』
「もうちょっと……もうちょっと、このままでいさせて……」
「ガウ!ガウガウ!」
『うん!あたしは、いつまででもいいよ!』
「ありがとう……」
ぐったりしたままヘンリーに宿の部屋に運び込まれ、ベッドに降ろされて。
そのまま眠ってしまいたい誘惑に逆らってなんとか自分にベホイミをかけて体力を回復し、心配そうに近寄ってきてくれたモモにキレイキレイしてベッドの上に招き、抱き付いてモフモフな毛皮に顔を埋めて、気力の回復を図ってます。
……ああ、癒される。
モフモフな質感とモモの優しさ、可愛さに、トリプルで癒される!
私たちの様子を窺いながら、コドランがヘンリーに問いかけます。
「おい、ヘンリー。ドーラちゃんに、なにしたんだよ。つらそーだったのがなくなってよかったけど、なんであんなんなってんの?」
「何って。褒めて、慰めただけだ」
「……ほんとにー?それだけー?なんか、変なことしたんじゃねーのー?」
「してねえよ」
「……やらしーこととか」
「してねえから。そんなの黙ってさせるわけ無いだろ、ドーラが」
「……それもそっかー」
……そう、変なとこ触られたりなんだりされてたら、断固拒否できたんですけどね!
怒って振り払えるような類いのことは何もされてないだけに、タチが悪い……!
どういうつもりなんだあれは、本当に……。
…………考えるな!
思い出すな!!
「……モモー!!」
考えを振り払うように、ぐりぐりとモモの毛皮に顔をこすり付けます。
「フニャー、フニャ、フニャ」
『よしよし、ドーラちゃん。大丈夫だよー』
「……モモー……」
前肢の肉球で器用に頭をぽふぽふしてくれるモモに、脱力して体を預けます。
「ガウ……。ガウガウ?ガウウ?」
『うーん。ドーラちゃん、もうこのまま寝ちゃう?疲れてるんでしょ?』
優しく気遣ってくれるモモの言葉に、ハッと顔を上げます。
「……ううん!今日は、モモとお風呂に入るんだから!全身しっかり洗ってあげるって、決めてるんだから!」
「ガウウ、ガウウ」
『あたしも、ドーラちゃんに洗ってもらいたいけど。魔法でキレイにしてもらったし、無理しなくてもいいよ?』
「ううん!私が、モモとお風呂に入りたいの!ずっと楽しみにしてたし、もう大丈夫だから!」
「ガウ、ガウウ!ゴロゴロゴロ……」
『……うん、元気出たみたいね!あたしも楽しみにしてたから、嬉しい!』
気力を取り戻した私を見て、ヘンリーが声をかけてきます。
「なら、風呂の前にメシだな。食堂に行くか」
直視するとまた思い出してしまいそうなので、気持ち目を逸らしながら答えます。
「……うーん。……今、踊り子さんたちに会うのは、ちょっと……。また、気力を持っていかれそうな気がするから……」
「……ああ……。なら、部屋に運んでもらうか」
「モモも、それでいい?」
私が普通に元気なら、踊り子さんのステージも見せてあげたいんだけど。
それをすると、お風呂が犠牲になりそう。
「ガウ!ガウウ!」
『うん!あたしはドーラちゃんと一緒なら、どっちでもいいよ!』
「なれば。拙者が申し付けて参りましょう」
「うん。よろしくね、ピエール」
ピエールが頼んでくれて部屋に運んでもらった夕食を取り。
踊り子さんに包んでもらった荷物を開けて、確認し。
「……」
もらったネグリジェは、最後に入れたらしく一番上に載ってたので、引っ掻き回すまでもなくすぐに取り出せたんですが。
生地が薄すぎて、これで部屋の外を歩くのはちょっと……と思うのを見越してか、上に羽織るガウンまで付けてくれてたので、それも問題無いんですが。
やっぱりちょっと、可愛すぎるかなあ……。
どうしよっかなー……。
「ガウ?ガウウー?」
『ドーラちゃん、どうしたのー?早く行こう?』
「あ、うん。今、行く」
モモがいるんだから、モモに相談して決めればいっか。
ということで、いつもの寝間着とネグリジェ及びガウンの、両方を持って。
準備を済ませて、お風呂に向かいます。
いつものように、仲間全員に付き添われて。
「……モモが一緒なんだから。送り迎えとか、もういいんじゃない?」
「だから、そういう油断がだな」
「左様。先の村人めらのように、モモ殿がお側におられても、考え無しに絡んで来る輩はおるものです。如何に強くとも人語の話せぬモモ殿では対処しきれぬこともありましょうし、入浴中の見張りは必要にござります。差し出がましいようですが、ドーラ様はご自身の魅力について、確とご自覚なされるべきかと」
「……」
ドーラちゃんの可愛さについては、完全に理解してるつもりなんだが。
これでも、まだ足りないというのか。
絶世の美女だか美少女だかという以上に、何をどう自覚しろと言うのか。
「ドーラに足りないのは、自覚よりも危機感だな。自覚も、まあそうだが」
「ふむ。言われてみれば」
「……」
危機感が足りないとか、それはヘンリーのせいも大きいと思うんだ。
十年も側でベッタリ守られて、どこでどう危機感を養えたと言うのか。
普通の女性として前世で養われていた分の危機感すら、十六年のうちに風化しつつある気がするんだが。
「まあ、危機感なんか無くても。俺が守るから、それはいいが」
「左様にござりますな。主を守るは、臣下の役目。拙者がお側を離れず、お守りすれば良いだけのこと。ドーラ様には、ご自身が守られるべき存在であることのみ、ご自覚頂ければ問題ありませぬな」
「……」
私の自立心とかその辺は、度外視ですか、そうですか。
ヘンリーはともかくピエールに関しては、パパンに対して思ったような、一生守ってくれるわけじゃ無いんだから!とかいう文句も付けづらいわけで。
その気がある限り着いてきてもらうことに異存は無いし、その気が無くなるなんてことも無さそうだし。
ヘンリーに関しても下手にその辺突っついて、一生着いてきて守るとか言われたら、どう返せばいいのか……!
プロポーズみたいだけどそうとも限らない微妙さ加減で、また私の動揺が……ってだから考えるな!!
「ガウ、ガウウ?」
『ドーラちゃん、どうしたの?』
「ピキー?」
『ドーラ、だいじょぶ?』
「……大丈夫!遅くなっちゃうから、早く行こう!」
また動揺しかけたところで声をかけてくれた二人に目を向けて、その可愛さに和んで立ち直りつつ、お風呂に到着します。
クラリスさんに聞いてたように、踊り子さんたちの専用のお風呂と違って、宿の女性用のお風呂はかなり狭いんですが。
それでも一般家庭にあるようなのよりは広いし、他に女性客もいなくて気兼ねしないし。
私とモモが二人で入るには十分な広さです。
「ガウガウ!ガウウ!」
『わー!ドーラちゃんって、スタイルいいんだねー!すっかり、オトナのオンナだね!』
「でしょー!十年ちゃんと見られなかったけど、その間も頑張って磨いたからね!」
十年離れてたとは言え、モモは私の妹のようなものですからね!
踊り子さんたちにガン見されたのと違って、視線にイヤらしさも全く無いし!
これが正しい、女同士のキャッキャウフフってもんよね!!
「モモも、かなりスタイルいいんじゃないの?引き締まってるのに、ゴツく無くてしなやかだし。他のキラーパンサーはまだ見たこと無いけど、コドランが可愛いっていうくらいだから。かなり、レベル高いと思うんだけど」
「ガウ?ガウウ、ガルルー」
『ええー?誰にでも言ってるんでしょー?コドランくんはー』
「いや、これが意外に。私以外でモモが初めてだよ、ちゃんと言ったのは」
修道院の幼女にも、あの清楚美人シスターのマリアさんにも。
他にも町ですれ違う女性に気軽に声かけてるけど、綺麗とか可愛いとかそんなことは、意外と言わないんだよね。
「ガウ?ガウウ、ガウ、ガウー」
『そうなの?なら、嬉しいけど。でもドーラちゃんの家族だから、そういう、ヒイキメ?っていうの?そういうの、あると思うー』
「あー、まあ。無くは無いかもね、それも」
「ガウガウ、ガルルルルー」
『まー、コドランくん優しいし、面白いし。恋愛するわけじゃないんだから、どっちでもいーけどねー』
「それもそうだねー。それより、どっかかゆいところ無い?ひと通り洗い終わったけど」
「フニャー!ゴロゴロゴロ……!」
『ううん、大丈夫!すっごく気持ちよかった!ありがとう、ドーラちゃん!』
「どういたしまして!私も楽しかったよ、十年ぶりに洗ってあげられて!」
大きくなったぶん労力はかかるけど、洗い甲斐があるというか!
非常に、達成感がありますね!
「ガウガウ、ガウウ!」
『じゃあ今度は、あたしがドーラちゃんを洗ってあげるね!』
「え?いや、いいよ。自分で洗えるし、難しいでしょ?キラーパンサーの前肢じゃ」
「ガウ!ガウガウ、ガルルルル!」
『大丈夫!あたしも十年で、かなり器用になったんだから!絶対ツメも出さないし、大丈夫だから!まかせて!』
自分で洗ったほうが、絶対に早いと思うけど。
なんか張り切ってるし、断るほどのことでも無いし。
強く断って、がっかりさせるのもなんだよね。
「うーん。じゃあ、よろしく」
「ガウウ!ガウー、ガウガウー」
『うん!じゃあ、いくよー!お客さん、おかゆいところはありませんかー?』
「……それは、無いけど。なんて言うか……」
野生で鍛えられた肉球だからもっと固いかと思ったのに、ぷにぷにしてるし。
全く、痛くはないんですけど。
「ガウ?ガウウ?」
『え?なーにー?痛かった?』
「いや、そうじゃなくて……ひゃ、くすぐったい!」
……肉球の感触のせいか、力加減の問題かわからないけど!
やらしい手つきとかそんなんじゃないのに、やけにくすぐったいんですが!
「ガウウ?ガウウウウ?ガウ?」
『あれ?痛くないように、弱くしすぎた?なら、これくらいは?』
「や、ちょっと……!それも、ちょっと……!」
……力が強まったせいか、くすぐったさは少なくなったけど!
そんなに緩急付けて刺激されるようなのも、それはそれで……!
「フニャー?フニャ、フニャー?」
『あれ?あれ?どうしよう、じゃあこれは?』
「や……モモ!もういい、もういいから!」
ある意味気持ちいいと思えてしまいそうなのが逆に不味いから、もうやめて!!
「ミュー……。ミュ、ミュー……」
『ドーラちゃん、ごめんね……。あたしもドーラちゃんを、気持ちよくしてあげたかったんだけど……』
またぐったりとしてしまった私に、モモがしょんぼりして謝ってくれてますが。
その発言もまたちょっと不味いので、やめてください。
「……ううん。モモは、悪くないよ。たぶん、私が悪いと思う……」
そんなピュアな発言を、汚れた思考で処理してしまうことも含めて。
モモのテクニックがどうこうより、私側の問題なような気がします。
……こんなんで大丈夫なのか、私……。
将来的な色々が……。
……いや、でも待てよ。
そういう接触の経験と言うと、ヘンリーと踊り子さんたちとカールさんの、それくらいだけど。
その時は、そこまででも無かったっていうか……。
ならやっぱり、私じゃなくてモモが……。
……いやでも、タルの中のアレは気付いたところで反射的に制裁したから考える間も無かったし、踊り子さんたちにはもみくちゃにされ過ぎてそれどころじゃ無かったし、カールさんは突然の出来事に思考停止状態でやっぱりそれどころじゃ無かったし、その後のヘンリーの時もまたおかしくなってたし。
それに服とか晒の上からと、素肌を直接とではあまり比較にならないというか……。
踊り子さんたちの時は素肌だったから、よく思い返してみると……。
……いや、やめよう!
考えても、どうにもならないし!
そんなこと考え過ぎて、ただ抱き締められただけの時に思い出しでもしたら、またおかしなことになる!!
「フニャ?フニャ、フニャー?」
『え?ドーラちゃんが悪いって、なんで?』
「いや、なんていうか、なんでもない。とにかくモモは悪くないし、もう大丈夫だから」
「フニャ?フニャ、フニャ。フニャー」
『そう?なら、いいんだけど。でもごめんね、もうしないね』
「うん……そうして……」
謝らなくていいとか、引っ張るとまたややこしくなりそうなので、そのまま話を終わらせたところで。
「……ガウウ!ガウ、ガウウ?」
『……ところで、ドーラちゃん!馬車の中で、なにがあったの?ヘンリーさんと!』
先程までのしょんぼり具合から一転、急に目をキラキラさせながら、モモが聞いてきます。
「何って。……何も、無いよ」
「ガルルー!ガウガウ、ガルルルル?」
『ウソだー!なにもなくて、あんな風にはならないでしょー?ね、どうしたの?口説かれちゃったとか?』
「いや、そういうんじゃないよ……たぶん」
「ガウウ?ガウ、ガウガウウ?ガウウウウ?」
『たぶんって?たぶんって、なに?なんて言われたの?』
「……えーと……」
洞窟で、後で女同士で話そうとか言っていた手前、言い逃れもできず。
根掘り葉掘り聞かれて、ほとんど白状させられてしまいました。
「……ガウウ、ガウガウー?」
『……それってやっぱり、口説いてたんじゃないのー?』
「……そうかな」
「ガウウー!」
『絶対そうだってー!』
「……だけど、はっきり言われてないし。……言われたら、断れるんだけど」
「……ガウ。ガウガウ、ガウ?」
『……ドーラちゃんって。やっぱりまだ、ヘンリーさんとは結婚したくないの?』
「……」
やっぱりって。
そうか、それも知ってるのか。
未来の『私』の時か。
「ガウ、ガウウー。ガウガウ、ガウウー?」
『ヘンリーさん、カッコいいと思うけど。十年前は弱かったのにすごく強くなってるし、ドーラちゃん一筋って感じだし。それでも、ダメなの?』
「……」
「……ガウウー。ガウ、ガウウ!ガウガウ、ガウウウウ!」
『……そっかー。……うん、大丈夫!あたしは、ドーラちゃんの味方だからね!ヘンリーさんがドーラちゃんをずっと守ってくれたらいいと思うから、ヘンリーさんのことも邪魔はしないけど。最後は、ドーラちゃんがいいと思うようにしたらいいと思う!』
邪魔しないって、モモの中では確定なのか。
ヘンリーが口説いてたことは。
……考えない、考えない!!
そんなことよりも、モモは私の味方だって言ってくれてるんだから!
「ありがとう、モモ」
「ガウウ!ガルルルル!ガウ!」
『うん!もしもヘンリーさんを選ばなくっても、あたしがずっとドーラちゃんを守ってあげるからね!ピエールさんたちもいるし!』
「うん。モモは、ずっと一緒だよね。……もしかしたらまた、離れ離れになるかもしれないけど」
できるのかすらわからないけど、もしも結婚したら、やっぱりあのイベントで石化するのかもしれないし。
「ガウ?……ガウガウ、ガウウウウ!」
『え?……あ、そっか。でも大丈夫、あたし待ってるから!十年間はひとりぼっちだったけど、今度はみんながいるし!ちゃんと待ってるから、あたしは大丈夫!だから、ずっと一緒にいようね、ドーラちゃん!』
「そっか。……モモは、強いね」
十年、待たせちゃったのに。
ゲーム通りなら八年か十年か、とにかくまた同じくらい。
また、待っててくれるんだ。
「……フニャー。フニャ、フニャー。ミュ、ミュー」
『……あたしが、強いのは。ドーラちゃんがいるからだよ。ドーラちゃんがいてくれれば、あたしは大丈夫なの。だからまた会えるなら、またいつまでだって待てるから』
「そっか。うん、離れても、絶対にまた会えるから。だからずっと、一緒にいようね」
「ガウウ!」
『うん!』
「それじゃ、そろそろ出ようか。みんなが待ってるし」
「ガウ、ガウウ!」
『うん、そうだね!』
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