DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第8話:真犯人を求めて、味方に虚言をする。良い気分じゃないッス
(ガーデンブルグ)
アローSIDE
「はぁ~……面倒だな」
城から城下に出た途端、彼女(イカレた方)を連れオイラ達から離れていったアニキが、深い溜息と共に戻ってきた。
一体何を話したのだろう?
「みんな聞いてくれ。俺達はこれから窃盗の真犯人を捜さなければならない。何故こうなったかを色々聞きたいだろうけど、今は先ず犯人の事を話すので聞いてくれ。マリーが以前から集めてた情報を検討した結果、『盗賊バコタ』と言う人物がピックアップされた……こんな顔だ」
此方の質問を遮る様に話を進め、今描いた似顔絵をシンに見せるアニキ。
「あ、この人です! もう少し目は優しかったし、身形も綺麗な人でしたけど、間違いなくウルフさんが描いたこの人が、俺を騙してシスターの家に招いた男です!」
「やはりそうか……この男はガーデンブルグの南にある山中の洞窟に隠れ家を持ち、其処を拠点にこの界隈で活動をしているらしい。洞窟内にはモンスターも徘徊しており、そんなとこの奥に住んでいる以上、奴もそれなりの手練れだと推測される。準備を万端にして直ちに出発したい……途次今回の件やバコタの情報の出所については話すつもりだ。だが取り敢えず出発し、シンと我々に掛けられた容疑を払拭しよう!」
そう言ってアニキは有無を言わさず行動に出る……
先ずは宿屋に戻り荷物を回収。城下で消耗品等の購入。
ただ装備品は品揃えが悪く、何も買わない事に決定した。
長時間閉鎖されてたから、この国は物資が不足しているらしい……
(ガーデンブルグ周辺)
「ウルフさん……そろそろ説明して頂けませんか? 今回の事件にリュカさんはどう関わってるんですか?」
ある程度ガーデンブルグから離れ、モンスターの襲撃も増してきた頃に、ホイミンが遠慮がちに尋ねてくれた。
オイラ達も聞きたかったのだが、リュカさんが拘わっておりアニキが不機嫌な為、聞くに聞けない雰囲気だったのだ。
「……そうだな、みんなは被害者だし知る権利があるよな! でも言っておくぞ……マリーとシン君は被害者面するな。マリーはこの騒動の発端だし、シン君は見ず知らずの男に付いていった愚か者だ。マリーが燃料を与え、リュカさんが組み立てをし、シン君がスタートさせた。知らなかった……解らなかった等の言い訳は聞きたくない!」
普段アニキはシンに対して優しいのだが、今回は随分と厳しい態度に出ている。
相当腹に据えてる様だ。
リューラの事をチラッと見たが、アニキの態度に怯えている。
「先ず、事の発端はイムルの村で不思議な夢を見た事から始まる……」
そう始めたアニキは、これまでの状況をオイラ達に説明してくれた。
それはもう、とんでもなく理不尽な状況を……
イムル村で奥さんの事を知ったリュカさんは、情報収集能力に長けている娘のマリーに、かなりしつこく居場所を聞いたらしい。
でもマリーは『知らぬ存ぜぬ』の一点張り。
だがその事はオイラ達も知っている。なんせ目の前で延々と繰り広げられた親子劇だから……
しかし根負けをしたのはマリーの方だった……
リュカさんのあまりのしつこさに、『ガーデンブルグは美女だらけの国だと言われている。行けばパラダイスなのだから我慢しろ』と言い、何とか落ち着かせようと考えたらしい。
でもリュカさんは落ち着かなかったみたいで、遂には『ガーデンブルグに家宝(国宝)の天空の盾を要求しても、簡単にくれるとは思えない。今あの国は盗賊バコタの事で問題を抱えているから、それを解決して天空の盾を要求しようと考えている。以前別の世界で出会った盗賊バコタと同じような顔だろうから、我々で捕まえて謝礼をガッポリ貰っちゃおう♥』と説得したらしい。
つまり、女王には罪人を……
俺達には天空の盾と報奨金を……
リュカさんには大勢の美女達を……
ってな事らしい。
ここでアニキが言ったよ。
『マリー……お前はリュカさんに余計な情報を与えたんだ!』
ってね。
つまり、リュカさんは打算で動く人じゃなく、自分に従い生きていると言う事。
マリーに面倒事を押しつけられると思ったリュカさんは、ガーデンブルグに着いて早々に王家へとコンタクトを取り、状況を支配出来る立場へと自らを持って行ったという……
そんな状況で起きたのが“シンの窃盗疑惑”だ。
この事件の真犯人が誰であろうと、これを機にオイラ達全員を巻き込み、盗賊バコタ逮捕に駆り出そうと、計画を立て女王に進言し実行させたという……
「でもウルフさん……その計画には欠点があると思うんですか? そもそもリュカさんが女王と接点を持てなかったら、彼はどうしたんでしょうか?」
当然の疑問をホイミンが聞いてくれる。
「無用な疑問です。あの男にしてみれば、女だらけの国など自分の国より操りやすい。城下で女兵士をナンパし、上司や国の重鎮と会わせてもらう様に頼めば直ぐだ。そして上司や重鎮等も女性だろうから、女王まではもう手前……」
「でも……いくら何でもいきなり現れた男の言う事を鵜呑みにするとは思えないんですが……」
「ホイミンはまだ人間の女性として日が浅い。だから解らないかもしれないが、あの男は男としての魅力を全て持ってるんだ! 生まれは高貴な王族なのに、幼少期は平民として育ち、剰え奴隷になった事もある。そして自らの力で生き抜く術を身に付け、人の心を読み取るテクニックも持ち合わせてる。世間知らずの女王が……また女だらけの国で生きてきた女性が、あの男の魔力に落ちない訳がない!」
凄い説得力だ……
「それにみんなも見ただろう……あの男は俺達が知りもしない女王の名前を呼んでいたんだぞ! 一瞬誰かと思ったよ『アルテミア』ってのは!? ありゃもうヤってるね! 最悪10ヶ月後には、ご出産なさる事間違いないよ、あの女王様」
マジっすか!? オイラは思わずリューラの顔を見たが、神妙な面持ちで頷いている。
「私も聞きたい事があります……」
あの人の凄さ(不条理さ?)に驚いてると、筋肉姫の彼氏が手を上げて質問してきた。
普段は出しゃばらないのに珍しい。
「リュカさんの奥さんが何処に居るのか……その事についてマリーさんは本当に知らないのですか? 話を聞いてると、多少は知ってる様に思えてくるんですが……」
確かに……リュカさんの希望通り、奥さんの下にサッサと行ってれば、こんな被害に遭わずに済んだだろうに……
「その事だけど……「ウルフ、それは私が直接話します。お母さんの居場所だけど……知ってます。確証はないけれど多分この国より船で南に行った運河沿いに『ロザリーヒル』と言われる村が在るの……そこに居ると推測してます」
「つまり……マリーはリュカ殿を謀ってたのだな?」
「ライアンさん、それには理由があります。マリーは天空の盾以外にも、天空の鎧の情報も持ってるんです。それはこの国の東の海域にある洞窟……昔海賊が宝を隠したと言われる洞窟にあるらしいと、情報を持ってるんです」
「では先にリュカ殿の奥様と合流してから、ガーデンブルグないし海賊の洞窟に赴けば良かったのではないのかな?」
確かに……リュカさんの気を満足させれば、こんな暴挙に出る事はなかったはず……
「現状から見ればそう思うのもムリはない。ですが考えてください……イムルに居た俺達がガーデンブルグを過ぎ、海賊の洞窟を過ぎ、真っ先にロザリーヒルへ赴いたら……またこの地方へ戻ってこなければならないのです。歩いて往復出来る距離ではないのですよ! 船で移動すれば数週間……最悪数ヶ月かかる。嵐でも起これば半年動けなくなるかもしれない。その間にサントハイムの人々はどうなりますか? 異空間に閉じ込められ時間をも止められて何も感じない状況なら良いが、刻一刻と衰弱していくのであればどうです? 我々はそれすらも解らないのです。それが解っているデスピサロの行方も……必ず必要になる勇者の武具を、無駄なく回収し今後に備えるのは当然でしょう! しかしあの我が儘男には、目の前の妻の事しか頭にない。この世界の平和の事を何も考えてないのですよ! それでもなお、ライアンさんはリュカさんの気を満足させれば良かったと思いますか?」
グウの音も出ないとはこの事だ。
真実を秘匿し問題を大きくさせた事で、イカレ彼女が責められるのを避けるアニキの手腕は見事だ。
ライアンのオッサンも馬鹿だとは思わないが、口喧嘩でアニキに勝てる訳がない。
誰もがイカレ彼女の所為じゃねーかと思いつつ、あの女を責める事が出来ない。
つまり、あの女を責められないと言う事は、この騒動を計画したリュカさんも、盗賊に引っかかったシンの事も責められない。
リュカさんはここまで考えて作戦を実行したのだろう。
自分を責めればそれは即ちマリーの所為……マリーを責めようとすればアニキが全力で守り、事件をスタートさせたシンは罪悪感からアニキの擁護に回る。
パーティーリーダーで、この事件を巻き起こしたシンが一手に罪を引き受ける。
良く出来た作戦だ……
アニキが師と崇めるだけはある。
オイラも見習って、あの人達について行ける様にならないと!
アローSIDE END
後書き
アロー君、只今人間の事を猛勉強中!
でもね……教材が偏ってる気がするんだけど……大丈夫かな?
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