この世界はヒーローが大勢いる!
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Heaven helps those who help themselves(天は自ら助けくる者を助く)
今年も来ているな……。
ヒーローアカデミーに入学してから一年が経ち、二年生となった俺はアカデミーの校庭を見ながら呟いた。
校庭では背広を着た数人の男達が、俺の一つ上の卒業をひかえたヒーローアカデミーの先輩達に熱心に話しかけており、中には自分から背広を着た男達に話しかけている先輩もいる。
あの背広を着た男達は複数の企業のスカウトマンで、ここに来た目的は自分達の企業の「契約ヒーロー」をスカウトするためだ。
契約ヒーロー。つまり「TIGER&BUNNY」のワイルドタイガー達のような企業と契約して、企業名が書かれたヒーロースーツを着て活躍しているヒーローのことである。
ヒーローは基本的にどこで活躍しようと自由だが、契約ヒーローは半分会社員であるため、スポンサーである企業の指示に従わなければならない。しかしその反面、契約ヒーローは契約している企業からいくつものバックアップを受けることができる。
ヒーロースーツや武器の提供。
ナビゲーターからによる最新の犯罪情報の報告。
犯罪現場への移動手段の確保。
契約料として毎月の給料の支給。(ヒーロー協会からの毎月末支払われる報酬とは別)
他にも様々なバックアップを受けられるため契約ヒーローになることを望む人間はかなりいたりする。
……こうして考えてみたら「ワンパンマン」に登場するヒーローの中にも契約ヒーローっていたかもしれないな? どう考えてもただの民間人だと入手できないような武器を持っているヒーローもいたし。
ちなみにワイルドタイガーはこの世界でも「TIGER&BUNNY」に登場した企業、トップマグに契約していた。
「あら、スカウトマンさんが沢山いますね」
後ろから声がしたので振り返ると、そこには声の主であるキャスターを含めた五人の友人達がいた。
キャスター、セイバー、アーチャーの「Fate/EXTRA」三人組にイワン。そして……エドワード。
エドワード。
「TIGER&BUNNY」で登場したイワンの親友でヒーローアカデミーの「元」同級生。「TIGER&BUNNY」ではヒーローアカデミー在籍中にある事件を起こして退学の後に服役。後に脱獄して一時イワンと敵対することもあった。
しかしこの世界では「あの事件」はまだ起こっていなくて、エドワードはこの世界でもイワンの親友をやっていた。
入学して一年も経つと生徒の間でも自然と一緒に行動するグループができる。それは俺達も例外ではなく、俺達六人はいつもこのメンバーで行動していた。……まあ、このメンバーで行動するようになるまで本当に色々なことがあったんだがな。
「あの光景を見ると新学期が来たって感じがするよな」
校庭にいるスカウトマン達を見てエドワードが冗談めかした口調で言う。話して見るとエドワードって、友達思いでいい奴なんだよね。「TIGER&BUNNY」では捕まっていて少しやさぐれていただけのようだ。
「見ろよイワン。結構デカイ企業もスカウトに来ているぜ?」
「……うん。そうだね。……でも僕には縁がない話だよね」
エドワードの言葉に答えるイワンだったが、その直後にいきなりネガティブモードに入った。やれやれまたか……。
「イワンよ。その雨に濡れたロバのような顔は止めよと何度も言っておるではないか? 余まで気が滅入ってくる」
「そうだな。イワン、君がヒーローになるべく鍛練を続けているのは全員が知っている。あまり自分を卑下するのはどうかと思うぞ?」
セイバーとアーチャーがネガティブモードに突入したイワンに話しかけ、エドワードが大きく頷くと二人の言葉に続く。
「セイバーとアーチャーの言う通りだぜ、イワン? それに今日はせっかくの休日で街に遊びに出るんだし、暗い顔はなしにしようぜ」
そう、今日はエドワードが言うようにヒーローアカデミーが休みの日で、俺達六人はこれから街に遊びに行く予定だった。
……しかしイワンとエドワードを街に出すと、「TIGER&BUNNY」であったあの「事件」が起こりそうでこわいんだよな。エドワードが退学となり服役することとなるあの事件が……。
エドワードはもう俺の大切な友人の一人で、できればあんな未来は見たくない。もし本当にあの事件が起きてもエドワードのフォローをできるように心の準備だけらしておくか。
「おい、砕。何、ぼーっとしてるんだ? おいていくぞ」
ああ、今行く。
俺は心の中で結論を出すとエドワード達の後をおって歩きだした。
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