この世界はヒーローが大勢いる!
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Long awaited rain after a long spell of dry weather(干天の慈雨)
人の願いや希望というものはえてして叶わないものなんだな、と俺は目の前の光景を見ながら思った。
俺の前には大勢の野次馬と数名の警察官による人垣ができており、その向こう側では……、
「車はまだか!? こいつを殺すぞ!」
分かりやすい格好をした銀行強盗が、これまた分かりやすい台詞を言いながら人質に銃を突きつけていた。
ついさっきまで俺はキャスター、セイバー、アーチャー、イワン、エドワードの五人とそれなりに楽しく街で遊んでいたのだが、何やら騒ぎがするので来てみるとこの事件現場に出くわしたのだった。
……あれって俺の記憶違いじゃなかったら「TIGER&BUNNY」でエドワードが刑務所行きになる原因となった銀行強盗事件の犯人だよな? この事件は起こらないでほしいなと思った矢先に本当に事件が起こるとかふざけるなよ。
「……おい、皆。行こう。俺達が何とかするんだ」
俺が世の無情さを呪っていたら正義感が強いエドワードが口を開いた。原作だとこの後、エドワードが一人で強盗から銃を奪い取ろうとして、逆に自分が人質を誤射してしまうんだよな。
「で、でも外で能力を使うのは校則で禁止されて……」
「だったら能力を使わずに人質を救出すればいい」
「うむ。余達ならあの程度の雑魚、何とでもなろう」
原作と同じ台詞を言ってためらうイワンにアーチャーとセイバーが反論する。こう言っては悪いが、セイバーはともかく、アーチャーが積極的なのは少し意外だった。
「俺が能力を使って後ろから行く。皆はどうにかして犯人の注意を引いてくれ」
エドワードの頼みに俺は思わずため息をはいた。このままだと原作通りにエドワードが刑務所行きになるかもしれない。ここは俺も協力するしかないか。
分かった。とりあえず俺が小さな爆発をいくつか起こして犯人の注意を引き付ける。その間に人質を助けてくれ。
「んー、それだったら私も協力しましょうかね? 私の能力だったら犯人の銃を取り上げることもできるかと」
口に指を当てながらキャスターが提案してくる。確かにそれだったらエドワードが誤射する危険性も減るかもしれないな。よし、じゃあその方向で。
「ありがとよ、砕、キャスター。それじゃあ行く……ぜ……?」
ゴッ!
作戦が決まったところでエドワードが行動を起こそうとしたとき、突然何かを殴るような打撃音が聞こえた。
「……人が……飛んでる……」
イワンが空を見上げながら呟いた。って、人が空を?
そんな馬鹿なと思いながら俺達も空を見上げてみると……本当に人が、っていうかさっきまで人質に銃を突きつけていた犯人が地上から十数メートル上空を飛んでいた。
…………………………ドシャ!
十秒かけて空から地上へと返ってきた強盗は、体を強く地面に叩きつけてそのまま動かなくなる。……死んでいないよな?
あまりに突然な展開に俺達だけでなくこの場にいる全ての人が声を失った。い、一体誰がこんなことを……あ、あの人は!?
俺は解放された人質の隣に立っている一人の男の姿を見て目を丸くした。恐らくはあの男が犯人を十数メートル上空まで文字通り「殴り飛ばして」人質を助けたのだろう。
あのだらしない上下ジャージ姿。死んだ魚のような瞳。抜け毛が目立ち始めている頭髪。……間違いない。
サイタマ。
「ワンパンマン」の主人公の姿が俺の目の前にあった。
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