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ロックマンX1st魔法少女と蒼き英雄

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第七話「ドクター・ワイリー/Dr・W」

 
前書き
ついに時空管理局と、それに同行するイレギュラーハンターが登場!
そしてタケルはゼロに勝つために特訓!! 

 
4月28日 PM8:27 鳴海市市街地結界内部にて

巨大な爆発と爆風が去り、魔導士とロックマンたちは巻き込まれてしまい、かなりのダメージを受けてしまった。そんな中で、フェイトの目の前には宙に浮くジュエルシードが目に映った。
「バルディッシュ!しっかりして……?」
バルディッシュは深手を負い機動を停止してしまった。
「……ッ!」
回収手段を失ったフェイトは、そのジュエルシードへ向け飛びかかり、ジュエルシードを両手で掴んだ。しかし、強大な力で暴走するジュエルシードを両手で押さえるには危険すぎる。
「フェイト!寄すんだ!?」
アルフがそう叫ぶが、フェイトは聞く耳を持たない。
「バカ野郎!生身でジュエルシードに触れたら……!」
ゼロが止めに駈け寄るが、フェイトは周りに魔法陣を展開し、必死でジュエルシードの暴走を抑えようとしている。
「止まれ……!止まれ!止まれぇ!」
必死で抑え、暴走する力に傷つきながらもフェイトはどうにか暴走を抑え、ジュエルシードは停止した。そして、彼女は意識を失う。
「フェイトッ!?」
倒れそうになったフェイトをゼロが抱きとめた。後からアルフも擬人化して駈け寄ってくる。
「フェイト!フェイト!?」
アルフはパニックになるが、
「大丈夫だ、意識を失っているだけだ。よく、耐えたな……?」
ゼロはフェイトを抱き上げ、彼女優しく見つめた。そして、鬼のような目でタケルとなのはを睨みつける。
「……?」
僕たちは何故か罪悪感に思ってしまうが、ゼロは何も言わずアルフと共にフェイトを抱いたまま転送して帰還した。

同日PM9:15 鳴海市住宅地高町家にて

「大出力の魔力に耐え切れるレイジングハートをここまで大破させるなんて……」
紅いビー玉の待機状態になった罅だらけのレイジングハートを目にユーノが呟いた。
一方のタケルの自室でも、
「モデルX!しっかりして!?」
レイジングハート同様の耐久力を誇るライブメタルさえもこのありさまだ。モデルXは光を失いつつ、虫の生きで喋った。
『タケ…ル……僕は……』
「もう喋らないで!?今博士のところへ連れて行くから……」
『心配……いらない……今…自己修復…機能を…起動中だか…ら……明日にまでは……今は…休ませて……?』
そう言うとモデルXは光を全て絶ち、ただの金属物質になった。
「モデルX……」
あのジュエルシードによる爆発で僕はかろうじて無傷で済んだが、ロックマンのアーマーであるモデルXはそれどころじゃない……
「モデルXは僕を守ってくれたのに……ごめん、ありがとう……」
僕はモデルXを抱きしめて静かに机へ置いた。

同日 同時刻 遠見市住宅街にて

アルフが薬を運び、ゼロが負傷したフェイトの傷の手当てをしていた。
「傷はそれほど深くない……染みるが、耐えろ?」
消毒を傷口へ振りかけて、彼女の掌へ包帯を巻くゼロ。フェイトは表情を曇らせているばかり。しかし、ゼロが巻く包帯の締め付けが強く、一瞬フェイトが唸った。
「すまない、他者を手当てするのは初めてだから……少し緩めよう?」
「ううん?平気だよ……ありがとうゼロ、アルフ。明日、母さんへ報告し行かないといけないから傷は早く治さないと……きっと心配させちゃうから?」
「母さん?もしや、それが……?」
ゼロに黙って本部へ直に報告する謎の行為。本来ならば通信連絡は魔導士でもできる。だが、それはフェイトが母親のもとへ報告するためだったのだ。
「ごめんゼロ……別にアンタを騙していたわけじゃないのさ?」
そうアルフがゼロに振り向いて申し訳なく詫びた。
「あの人が心配するかぁ……?」
アルフはフェイトの母親をそう疑った。
「大丈夫だよ、母さんは少し不器用なところがあるから……」
「フェイト、アルフ、その話を俺に詳しく聞かせてくれ?」
「「……」」
二人は戸惑いながらもゼロへ話した。話の内容はこうだ、ジュエルシードによる回収が長引き、支障がでてしまえば、報告後必ず体罰を受けることになる。今の御時世でいうと心のない親が子に与える児童虐待ってところだ。
「……なら、俺が代わりに行ってきてやる」
そういうとゼロは立ち上がるが、それをアルフが止める。
「寄しなよ?あたしでさえも怒るんだよ?」
「俺は主任Dr・ワイリーの部下だ。いくらプレシア副主任でも上司の部下には危害をくわえたりはしないだろう……?」
「ううん?でもいいの……私はお母さんに会いたいんだもん、ゼロとアルフは留守番していて?」
「フェイト……しかし…」
「フフッ、ゼロって優しいね?」
そうフェイトはゼロへ笑みを見せた。彼女の笑顔が幼馴染と一瞬重なり、ゼロは顔を赤くして目をそらした。
「いや、俺は……」
「初めは、怖そうな子かと思っていたけど、話して見れば優しそうだし、ちょっと性質が不器用だけど私より料理上手だし、任務でいつも助けてくれる……」
「……寄せ、俺は……ただ命令で戦うことしかできない兵士だ。フェイト、お前には親がいて羨ましい。俺には親と呼べる人は居ない……幼いころ主任に拾われて戦士として育てられた。常に戦うことだけを教え込まれ、情も涙も、感情全てを捨て去るよう教えられた。だが、俺はそれに抵抗があった。アイツとの出会いが切掛けで……」
「ゼロ……」
「フェイト、そこまで会いたいなら止めはしない。だが、お前の身に何かあったら……俺が駆けつけてやる。今日は明日に備えて休め?」
「ありがとうゼロ……じゃあ、お休み?」
「おお、お休み……」
フェイトはそのあとグッスリ寝た。よほどジュエルシードの回収で疲れていたのだろう。兵士として育てられたゼロならまだしも昼夜問わず睡眠の時間も掴めないフェイトにとっては荷が重すぎたのだろう。
ゼロとアルフは彼女の部屋から出、ゼロはアルフへこう言う。
「……アルフ、明日プレシア副主任の部署は何処か連れて行ってくれ?」
「え、えぇ?」
その言葉にアルフはキョトンとした。

早朝、僕はライト博士から急に呼び出され、回復したモデルXを持ち出して博士の自宅へと走った。ラボにはブルースさんとライト博士が居た。
「朝早くから呼び出してすまないタケル。ところでモデルXの具合はどうだね?」
話しの前に博士はモデルXの様態を調べた。機能は停止しているが自己修復機能が起動して完全に回復を遂げていた。この調子ならあと一時間後には意識を取り戻すに違いない。
「モデルXも無事なことで、早速本題に入ろう……」
するとライト博士はブルースさんにある設計図を持ってくるよう頼んだ。ブルースさんが持ってきたのは、博士が作ったホログラム装置。設計図は立体映像になって映し出されたのだ。この設計図は……アーマー?
「これはお前用の強化アーマーだ。モデルXは地形と戦況によって様々なアーマーを装着し、これで対応する。今回はお前に私が作り上げたアーマーを説明した後に、フットパーツ以外のパワーアップパーツを授けよう。まずは……」
まずは、強化アーマーの説明に入った。博士が作ってくれたアーマーは今のところ二種類。
一つはファーストアーマー、これは対中級イレギュラー兵器で、通常のノーマルアーマーの性能を三倍に引き出したバランスよい装備、現に僕の足に装備されているダッシュ機能のフットパーツがそのファーストアーマーの一部だ。そして二つ目は、
「二つ目はアルティメットアーマー。未だ未開発のものであるが、完成すれば恐るべき強さで敵を圧倒させる。モデルXの潜在能力、特に戦闘能力を最大限以上に引き出すことができる究極のアーマーじゃ。しかし、このアーマーは非常に強力であるがゆえに不完全でもある。モデルXの能力を限界以上に引き出す半面、かかる負担も大きい。いわば諸刃の剣だ……これは万が一に備えて使用を制限させてもらうよ?」
「は、はい……」
博士にこんな凄い強化パーツを見せられて僕は固まっていた。おそらく、博士は僕をモデルZの適合者こと、ゼロに勝たせるために作ったのかもしれない……
「あの、博士?」
僕はそのことを聞いた。
「……モデルZの子と戦う為にそのパーツを?」
「……」
博士も、ブルースさんも黙った。しかし、しばらくして博士が口を開ける。
「実に悲しいことじゃ。わしの同僚ドクター・ワイリーはライブメタルを私欲のために使い、世を支配しようとしておる」
「ドクター・ワイリー……?」
「博士の大学の頃からの同僚だったが、彼は悪の道へ走りライブメタル、モデルZの力でジュエルシードを回収し、この世を支配しようとしている。何としてもワイリーと、モデルZの適合者を抹殺しなくてはならない。被害が広まる前にね……?」
ブルースさんが言った。けど、僕はゼロ君とは戦いたくない!悪いのはワイリーという人でゼロ君は関係ないと思う……ああして強がっているけど、彼の瞳だけは孤独に見えた。まるで昔の僕のように心が弱っているんだ。本当は誰かに助けを求めているんだ……誰かのいいなりになりたくないって?
「博士……?」
「タケル?」
「博士……モデルZは…ゼロ君とは戦いたくないんです。悪いのはドクター・ワイリーであってゼロ君はその人に操られているんだと思うんです……」
「タケル……」
「ゼロ……?」
すると、ブルースさんは僕が言ったモデルZの適合者の名に心当たりがあった。
「タケル君、そのモデルZの適合者の名前はゼロっていうんだね?」
「え……はい」
ブルースさんは博士へそれを述べる。
「博士、御聞きになりましたか!?」
「うむ……奴め、事もあろうに自分の孫を?」
「え、どういうことですか?」
僕は何が何だかさっぱりわからなかった。
「タケル君、ゼロ君はワイリーの孫息子なんだ」
と、ブルースさんが答えると、僕は驚いて声に出してしまった。
「え、え!?」
「ゼロ君は十年前、両親がライブメタルの研究中事故で亡くなり、祖父のワイリーによって拾われた。しかしその後ワイリーは自信が開発したモデルZを持ち出して研究場から逃げ去った……」
一通りの事情を聴き、僕は少し黙った。もしかしてゼロ君は自分のお祖父さんと同じ目的で行動しているの?いや、違う!もしそうならあんな寂しい目をしているはずがない!きっと、訳があるんだ、僕にもわからないけど……ゼロ君はこれ以上お祖父さんに従いたくない風に見える。あのとき、僕の声を聞いて一瞬戸惑ったんだ。ゼロ君だってこのままじゃいけないことぐらい気付いているはず……
「博士、僕はゼロ君を説得させたいんです……」
「ゼロを?しかし、彼はワイリーの……」
「でも、ゼロはやりたくてやっているんじゃないんだと思います。あの事戦った時、ゼロ君の目を見ました。とても孤独で悲しい目をしていたんです。僕も、前までは同じような目をしていたから……」
「タケル……」
「タケル君……」
二人は僕を見た。そして博士が僕にこう言う。
「……なら、信じて自分らしく戦いなさい?だが、ゼロ君と対等に戦うには強い反射神経と、それによる間合いが必要だ。Zセイバーの功撃は特に機動力が申し分ない。心の神経を鍛えなくてはならない」
「心の神経……?」
「何かわしも協力してシミュレーションを開発しよう?」
「ありがとうございます、でも心当たりがありますから、もしそれがダメだったときはその訓練機をお願いします」
「心当たり?まぁ、そこは君に任せるとしよう。私もモデルZのシミュレーションの開発に全力をつくそう」
そう言って博士は僕にモデルXを返した。
「モデルXの機能にアーマーの一部となる残りの強化パーツを搭載しておいた。変身後はファーストアーマーの姿になるだろう」
「ありがとうございます!それじゃあ……」
僕は博士の自宅を後に高町家へ帰った。たぶんこの時間帯なら始まったばかりだと思う。
「あ、この音は……」
高町宅の隣にある道場では木刀の素振りの音が聞こえた。大きく風を切る音。恭也さんか美由紀さんが稽古しているはず……!
「あ、なのは?」
道場へ来て見ると、そこには隣になのはが姉の美由紀の素振りを見ていた。
「……ッ!」
僕は素振りを目に何かを感じた。風を切る音共に美由紀さんが素振りをする姿が一瞬ゼロ君のZセイバーの振り方と重なったのだ。
「……!?」
「タケル君?朝早くから何処へ行っていたの?」
なのはが横から声をかけた。
「あ…ごめん、博士に呼び出されて……」
「そう?」
「あれ?恭也さんは……」
そういえばさっきから美由紀さんしかいない。普段なら士朗さんも一緒に居るのに……
「お兄ちゃんはお父さんと遠くまで走っているの。タケル君はどうしてここに?」
「僕は……」
「あら、おはよう?タケル君。君も見学に来たの?」
「美由紀さん……あのっ」
僕は彼女に頼んでみることにした。
「反射神経を鍛えたいの?」
「はい……!」
「……いいけど、以外ね?タケル君が稽古を習いたいなんて」
美由紀は興味深そうにタケルを見た。
「タケル君……」
なのはは、タケルはこうもして特訓する理由はゼロが関係しているのだと思った。タケルも自分と同じようにフェイトと和解したいが、それには互角の力でないと彼女に近づくことはできない。鳴海温泉のときのように敗北してしまっては意味がないのだ。
「お願いします……!」
僕は美由紀さんに頼み、彼女に防具をかぶせてもらった。恭也さんが小さい頃使っていた防具だったから僕の体にピッタリだ。
「お、お願いします……」
「いいわよ?でも、短期間でそれほど強くはならないよ?最低でも感覚を少し掴めるぐらいかな?」
「それで構いません、お願いします……」
「OK!そんじゃ、行くね?」
すると、美由紀さんは木刀を片手に握った途端、先ほどまでの親しい顔から突如険しい顔になり。気がつけば僕の方は美由紀さんの木刀に当てられていた。
「構えは中々いいけど、まだ反射神経は1レベだね?」
「もう一度、お願いします……」
「うん、いいよ?」
ロックマンへ変身しない生身の僕にとって美由紀さんの一瞬の剣さばきは、あのZセイバーのように早く鋭く見えた。ロックマンになった時のような感覚を思い出し、僕は木刀を握る。
「……!」
そして、再び風を切って僕が木刀を振るう。しかし、僕の木刀は美由紀さんの黙とうを受け止めず、頭部を当てられてしまった。
「動きはまだまださけど、少しだけ形にはなって来たね?」
「も、もう一度……!」
「いいわよ♪時間が許すまで」
「はい……!」
僕は再び木刀を握った。相手は僕よりも素早い。なら、タイミングを狙うしかない。しかし、その木刀が僕の何処を狙うのかがわからない。それは目にとらわれ過ぎていることが原因だろうか?僕はそのあと、何十回も美由紀さんの木刀を食らった。当たって、当てられて、躓いたりもしたけど、時間が許す限り僕は無我夢中で食い掛った。
「もうそろそろ時間が近付いてきたし、これで最後にしよっか?まぁ、タケル君も第部下たちになって来たしいい線行っているよ?」
「……はい」
これで最後。学校から帰って続きをお願いしても続きが出来るかどうかあまり期待できない。いつまたジュエルシードがイレギュラー化するかもしれないんだ。そうしたら次こそゼロ君と徹底的に戦うことになる。貴重な最期を焦らずゆっくりと、相手の動きを目にとらわれず、聴覚と気配に任せた。肩の力を落とし、静かに、ゆっくりと目を瞑る。初心にしては身の程知らずであるが、僕は心眼を試した。
「お、それってもしかして心眼?でも、素人に会得は無難だよ?」
「構いません、お願いします……!」
美由紀さんが言うのも構わず僕は目を閉ざし続けた。そのとき、僕の体内に眠るある機能が働いた……
「ま、いいや?じゃあ、いくよ……!」
美由紀さんはそんな僕にかまわず再び木刀で僕に切りかかる。
僕は心を落ち着かせ、静かに深呼吸をする。そして耳をこらし、気配を探る。そして刹那、風が斬れる瞬間と音、そして相手の気配、僕は閉ざしていた目を開き、腹部へ飛び込む美由紀さんの木刀を潜り抜けて彼女の背へ木刀を当ててみせた!
「……これだ!」
僕はその感覚を掴んだ。心を静めたことに寄って感じた気配と風を切る瞬間の音、そして
これによって出来た間合い。
「凄いじゃん!?偶然かどうか知らないけど私の一撃を受け止めるなんて……」
「美由紀さん、ありがとうございます……!何だか掴めました」
「よかったわね!実戦でもその感覚をわすれないように?」
「はい……!」
マグレじゃない。皮肉かもしれないが、僕の超人的身体による反射能力が発揮されたんだ。
万全な思いを胸に僕は走りながら部屋へと戻った。

同日 AM8:17 遠見市住宅街マンション屋上にて

ゼロに作ってもらったお菓子を土産にフェイトは本部へ向かため屋上へ経った。
「こんなことであの人喜ぶの?」
アルフはその土産を手にとってそう疑った。
「こういうのは気持だから……」
「まぁ、行って来い……少し不安だが」
と、アルフの隣でゼロが言った。二人に見送られながらフェイトは呪文を唱える。
「次元転移、次元座標876C4419、3342B629、3583……」
と、何けたもの番号とアルファベットを唱えながら彼女の足元には魔法陣が生じた。
「……開け、誘いの扉……時の庭園、テスタロッサの主のもとへ……」
金色の柱が天を付き、フェイトは本部へと転送された。そしてその強い魔力を通学中のなのはとタケルに感づかれた。
「あの魔法は……?」
『転送魔法か……?』

同日同時刻 次元空間内にて

不気味な次元異空間を一隻の白い船が航海をしていた。時空管理局の次元空間航行艦船のアースラである。
今回はある任務によって行動を共にするイレギュラーハンター達も搭乗していた。そして、ブリッジへ向け通路を、本艦を管理する女性艦長と、隣に派イレギュラーハンターの若き上官が歩いていた。女性は時空管理局提督でアースラの艦長リンディ・ハラオウであり、彼女の隣を歩いているハンターの上官は、イレギュラーハンターの若き司令長官を務めるシグナス。
二人はブリッジへ出、艦長が状況を尋ねる。
「今回の船旅はどうかしら?」
ブリッジには管理局の乗組員のほか、二名のイレギュラーハンター達が搭乗していた。
二人のハンターの内一人はハチ型レプリロイドのホーネック、そしてもう一体はバッファロー型レプリロイドのバッファリオ。二人は初めて登場する次元艦船に興味心身であった。
「はい、今回は第三線即にて走行中です。特に何の異常もなく航行しております」
「前回のシグマ反乱以来特に目立った動きは無いようですが……」
船員はそれぞれの報告を口にする。
「ん、どうしたんだ?バッファリオ、武者ぶるいか?」
ハンター側の二名の内ホーネックは、先ほどから震えているバッファリオに尋ねた。まぁ、武者ぶるいなんて温厚なバッファリオがするはずがないとホーネックは気付いているが、
「……僕は、船には弱いんです……口からオイルが出そう……!」
「お、おいおい!乗り物酔いかよ?スンマセーン!誰かこいつに酔い止めくれます?」
「は、はい!ただいま……」
と、隣から若い女性乗務員が水と薬を持って来、それをバッファリオが受け取るが、
「あ…アリガドウゴザイバァ……!!」
踏ん張った口調と、怖い顔で持って来た乗務員のエイミが怖がってしまった。
「……騒がしい部下で申し訳ありません提督」
そんな二人を見下ろしながらシグナスは頭を抱えた。
「まぁ、愉快な方達で羨ましいですわ?」
「アレでも、A級ハンターなんですが……」
「でも頼りにしています。もし何かあった時はウチのクロノとそちらの部下が必要になりますから……ね?クロノ」
そういうと、リンディ下のハンター達二人の隣に立つ黒衣の少年へ尋ねた。
「大丈夫、わかっていますよ?艦長……」
クロノはそう言うとカードを手に持ち微笑んだが、そんな彼の隣でバッファリオが今にも吐きそうな状態で酔い止め薬を飲んでいたので微笑むというよりも苦笑いになった。

Drワイリーのアジト、高自空間内『庭の庭園』にて

不気味な自空間の中を更に不気味を増長させる巨大な岩の建築物が浮遊していた。これこそドクター・ワイリーのアジトであり、またフェイトの母親プレシア・テスタロッサが住む豪邸でもあった。そして、そんなプレシアの宮殿のような豪邸の空間から鞭で叩きつける音とその痛がる少女の唸りが静かに響いていた。
「たったの四つ……?」
銀髪に紫の唇、そして冷酷な瞳で椅子に腰かけながら拷問を受けるフェイトを見つめる母プレシアの姿があった。
「これは、あまりにも酷いわ……」
そう彼女は娘のフェイトを宥めた。フェイトは手首を拘束され、吊るされていた。彼女の体中には鞭で叩かれた切り傷が所々に見える。
「いい?フェイト……」
プレシアは椅子から離れてフェイトへ歩み寄った。
「あなたは私の娘、第魔導士プレシア・テスタロッサの一人娘……」
プレシアはフェイトの顎を抱え、こちらへ向けた。
「不可能のことがあっては駄目……どんなことでも、そう…どんなことでも成し遂げなくてはならないの……」
「はい……」
フェイトは傷ついて疲れ切った体でそう答える。
「こんなに待たせておいて、上がってきた成果がこれだけでは……母さんは笑顔であなたを迎えるわけにはいかないわ……わかるわね?フェイト……」
「…はい……わかります」
「だからよ?だから、覚えてほしいの……もう二度と、母さんを失望させないように」
プレシアの握る杖が紫状に光り、それが鞭へと変わった。
「……!?」
フェイトはそれを見て目を丸くした後、目を固く瞑った。そして、この空間にフェイトの叫び声が響いた。そんな彼女の叫びを遠くの柱に隠れてアルフは耳を塞ぎ続けてきた。
「何だよ……あんまりじゃないか!?」
アルフはゼロが来るまでこの場で待たされているが、フェイトの叫びを聞くたびに、もう我慢の限界だった。彼女はフェイトが拷問を受ける部屋の扉まで行くが、ゼロとの合流を思い出し、必死に抑えた。
(あの女の、フェイトの母親の異常さとか、フェイトに対する酷い仕打ちは今に始まったわけじゃないけど、今回のはあんまりだ!一体何なんだ!今回のロストロギアは、ジュエルシードはそんなに大切なもんなのか!?)
いずれ鞭の音が止み、プレシアはフェイトに語った。
「ロストロギアは、母さんの夢をかなえるためにどうしても必要なの……とくにあれは、ジュエルシードは他のと比べて遥かに優れている。あなたは優しい子だからためらってしまうことがあるかもしれないけど、邪魔するものがあるなら潰しなさい?どんなことをしても……」
そしてプレシアはもう一振り鞭を振りかざすが、
「……!?」
その刹那、フェイトを拘束していたロープは一瞬にして千切れ、そこにはフェイトを抱きかかえて距離を取るロックマンとなったゼロの姿があった。
「あなたは……ワイリー博士の?」
「おい?拷問にしてはやり過ぎるだろ?まるで捕虜への虐待じゃないか……!」
「親子の間に他人が口を出さないでもらいたいわね……?」
「親なら……母親なら、我が子にそんな仕打ちは無いと思うが?」
「何度も言うようだけど、親子の間に他人が口を挟まないでもらいたいわ……?」
すると、ゼロは突如背後から巨大な拳に殴られてフェイトを振り落とし、ゼロは柱にぶつけられた。
「ぐぁ……!?」
「ぜ、ゼロ……!?」
痛々しい体を起き上がらせようとしたフェイトを、先ほどの巨大な両手が彼女の体を鷲掴んだ。フェイトは両足をバタつかせて抵抗するが、巨大な両手はびくともしない。それは彼女よりも巨大で、全長五メートルもある巨体を持った人型レプリロイドであった。ゼロは吐血しながらそのレプリロイドの名を言う。
「シ……シグマ隊長!?」
シグマ、それは近日ワイリーの反抗に乗じてイレギュラーとなってハンターを裏切った最強の戦士であり、幼少のころからゼロを鍛え上げてきた彼の師匠でもあった。
「ったく、だからお前は甘ちゃんなんだよ?」
シグマの影からもう一人、紫色のアーマーに、右肩にはバスターキャノンを搭載したシグマに続く強者の戦士VAVAがゼロを見下ろしていた。
「VAVA……!」
起き上がるゼロは彼を睨みつけたが、VAVAはそれが気に障り起き上がろうとするゼロの腹部を彼の爪先が勢い良く蹴りあげた。
「うぅ……!?」
「ゼロ……前から気にくわなかったんだよ?テメェは何時も手加減ばっかしやがって!そんなんじゃ、ワイリー博士の護衛は勤まらんぞ?」
そうしてVAVAは気が済むまでゼロをいたぶり続けた。そんなゼロの姿をシグマの手に捉えられているフェイトには耐え難かった。
「やめてっ!ゼロに……ゼロに酷いことしないで!?拷問は私が全て引き受けます。だから、ゼロに乱暴はしないで!?」
「フェイト……気にするな、俺ならこう仕打ちは離れている。お前は黙って見ていろ……」
「カッコつけるなぁ!」
そしてVAVAの拳がゼロの頬を殴る。ゼロはブッ飛ばされてふたたび柱にぶつかった。
「今回はここまでで許してやる。二度と出しゃばった真似するんじゃねぇぞ?」
ケラケラと笑いながらVAVAと、口を閉ざしてフェイトを開放し、VAVAと共にこの場を後にした。
その後、フェイトを担いで酷い打撲だらけの顔でゼロが吐血しながらプレシアの部屋から出てきた。そこをアルフが急いで駆け付ける。
「フェイト!……ゼロ!?あんたどうしたのさ!?」
二人を抱えて、アルフが訳をききだした。ゼロは任務上遅れてしまい、アルフとは合流できず、あらかじめアルフに発信器を持たせておいたので先回りしてきたらしい。そして、目の前で拷問を受けているフェイトを見たのだ。
「情けないところを見せたな……部屋に、俺の師匠が居て……」
「アンタに、師匠が居たのかい……?」
「心配するな、俺よりもフェイトだ。彼女は無事だ……」
「何言ってんだい!あんたもそれどころじゃないみたいだよ!?」
「心配するな……この程度の傷は……」
「ほら、あんたもあたしの肩につかまりな?」
「……すまん」
ゼロはフェイトの片方の肩につかまり、アルフはフェイトにも叫んだ。
「酷いよ……あの女、酷過ぎるよ!?フェイトはちゃんと言われたとおりの物を取って来たじゃないか!?」
「……仕方ないよ…母さんは私のことを思って……」
しかし、フェイトは傷つかれようとも弱った声で母を庇うことを言う。
「思っているものか!そんなこと、あんなのただの八つ当たりだ!!」
「フェイト……目を覚ませ、あんな行為はただの虐待にすぎない……」
アルフも、ゼロもそう言うが、それでもフェイトは構わず、
「ちがうよ……だって、親子だもん……ジュエルシードは、きっと母さんにとって凄く大事な物なんだずっと一人で悲しんできた母さんなんだから……わたし、何とかしてあげたいの……」
「しかし……!」
ゼロが彼女の間違った認識を否定しようとしたが、フェイトは自分の足で立つと、ゼロの頬に手を添えた。
「ゼロ、お願い……もう大丈夫だよ?心配しないで……ジュエルシードを全部持ってきたから、きっと母さんも喜んでくれる。昔みたいに優しい母さんに戻ってくれる、きっとアルフやゼロにも優しくしてくれるよ……ゼロ、この任務が終わったら…一緒に暮らそう?」
「フェイト……」
フェイトはマントをし、再びあの世界へ舞い戻る。
「今度こそ、絶対に失敗はしない!」

夕暮れ時、タケルは空いた時間で恭介や士朗に頼んで今朝の復習をしていた。
「このっ……」
今のところ士朗さんの木刀を何回か避けることはできたが、やはり長男である恭也さんの木刀は美由紀さんや士朗さんよりも素早い。心眼を使わずとも数回ほど避けることはできるが、やはり気迫に寄って体が固まってしまうこともある。
「うん、だいぶ良くなった……しかしタケル君は凄いな!今日で俺や父さんの素振りを見切るなんて。ここに来る前に何か武道でもしていたのかい?」
恭也さんが驚いて僕をそう評価した。
「いえ、僕は……生まれつきこういう体質なので……」
「え?」
「それよりも、タケル君。君はどうして反射力と心眼を鍛えているんだい?もしよかったら理由を聞かせてくれないかな?」
士朗さんはそう僕に尋ねた。僕は、どう言えばいいのかとにかく自分のなりに答える。
「……渡り合えたい人がいるんです」
「へぇ?タケル君にもようやく宿敵に巡り合えたのか?」
恭也さんは笑んでタケルの肩に手を添えた。
「だが、それでこそ男だ。時間が許すまで私たちが付き合おう」
士朗さんも協力してくれて、僕は感謝と共に特訓に励んだ。

4月27日 PM18:24 鳴海市鳴海臨海公園にて

公園の茂みに落ちていたジュエルシードが突如暴走し、近くの木と融合、木は恐ろしい化け物と化した。
その現場にユーノが結界を展開し、魔導士となったなのはが駆けつける。タケルが来るまで持ちこたえるしかない。
しかし、そんな大木に数発の光弾が命中した。しかし、化け物はバリアを展開して、攻撃を無効、その攻撃を放ったのはフェイトであった。
「バリアか、小癪な……」
ゼロは腰からZセイバーを引き抜く。
「今までのと違って手ごわい……それに、あの子もいる」
そうフェイトが呟く。しかし、なのは一人しかいないことにも気付いた。今回はあのロックマンの姿は何処にもいない。
「行って!レイジングハート!」
上空からレイジングハートの光が放たれ、それが化け物へ命中する。バリアを生じているからといっても、レイジングハートの大出力の攻撃を防ぎきれることはできない。
「アークセイバー、バルディッシュ行くよ……?」
バルディッシュが釜状に変形し、その刃から光が放たれ、ブーメラン状に化け物の根を切り裂いていくが、本体には通用せずバリアで弾かれた。
「本体にバリアが集中している……なら…」
ゼロは片方の拳で地面を殴りこう叫ぶ。
「裂光覇ッ!」
すると、地面から幾つもの極太のレーザーが付きだし、それが化け物めがけて命中する。地中からの攻撃で化け物にダメージが与えられ、バリアが怯んだ。
「今だ!フェイト……」
ゼロの合図にフェイトはバルディッシュから光を放ち、化け物へ当てる。化け物は二人の魔導士による攻撃によって消滅し、ジュエルシードが姿を現した。
「ジュエルシード、シリアル7!」なのは
「封印!」フェイト
再びジュエルシードの巨大な光りが生じた。しかしこれも同時となり、ジュエルシードは両者どちらの手にも渡らずに浮遊していた。
「どうやら、ジュエルシードに衝撃を与えない方がいいようだ……」
「そうだよね、私のレイジングハートやフェイトちゃんのバルディッシュも可哀想だよ」
「だけど、譲れない……」
二人は共に杖を向けあった。すると、地上には一足遅れてロックマンに変身したタケルが駆けつけるが。
「もう戦闘が始まっている!?」
「ようやく来たか、タケル……待ちくたびれたぞ?」
「ゼロ君……」
ゼロ君は僕の目の前に飛来し、Zセイバーを向けた。僕は緊張したが、特訓を思い出し、冷静を保った。
「やっぱり、戦わないといけないの……?」
僕が悲しげにそう尋ねた。出来ればゼロ君とは言葉で和解したかったのに……
「悪いが、期待には答えられそうにない……俺は、戦う為に今日まで生きてきた一人の兵士だ!」
「……いいよ、なら僕は君の期待にこたえて全力で君と戦う!」
僕も決意を固め、ついにバスターをゼロ君へ向けた。
「いいだろう、こちらとて全力でかかる……」
「けど、ひとつ条件を言ってもいい……?」
「条件……?」
僕は戦うに当たって彼に条件を言った。なに、難しい内容じゃない。
「……もし、僕が勝てたら、僕は君と同じロックマンだということを、甘ったれた弱虫じゃないってことを認めて、そして……僕と話をしてくれる?」
この要件にゼロは口を閉じていたが、しばらくして、
「……いいだろう」
と、受け入れた。そして、二人のロックマンと、二人の魔導士が互いにぶつかり合おうとした。お互いの武器を向きあい、交わせようした刹那。
「ストップだ!」
なのはとフェイトの間にはいつの間にか一人の少年が両者の攻撃を受け止めていた。クロノである。
「おっと!そこまでだ!?」ホーネック
「戦闘を中断しなさい!?」バッファリオ
そして、僕はバスターの腕を巨大な牛?型のロボットに掴まれ、ゼロ君はハチ型のロボットの持つ槍でセイバーを受け止められていた。
「時空管理局のクロノ・ハラウンだ!」
「イレギュラーハンターのエクスプローズ・ホーネックだ!」
「同じくイレギュラーハンターのフローズン・バッファリオです!」
双方の出現に僕たちは言葉に出なかった。時空管理局?そしてイレギュラーハンター?この勢力は一体……?
「とりあえず、話を聞かせてもらおうか?」
クロノはそう問いかける。
「バッファリオ、見ろよ?ライブメタルの適合者はまだ十五にもならないガキだぜ?」
「本当だ、まだ子供じゃないですか?」
二体のハンターたちの目には、まだ幼さを持つライブメタルの適合者が映った……

 
 

 
後書き
次回予告
二つの勢力、異空間を取り仕切る時空管理局と、それに加担するイレギュラーを取り締まるロボット警察機構イレギュラーハンター。双方の組織と出会い、僕は混乱する。

次回ロックマンX1st魔法少女と蒼き英雄
第八話「イレギュラーハンター/IRREGULAR HUNTER 」

「イレギュラーハンター……?」

 
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