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戦国異伝

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第百四十五話 安土築城その二

「さすれば小田原程でなくとも」
「大きな城になるな」
「はい、相当の」
「だからじゃ、天下を治めるに相応しい城の一つにするのじゃ」
「だからでございますか」
「うむ、そうじゃ」
 信長は確かな笑みで丹羽に答える。
「堅固じゃがそれでもな」
「政ですな」
 丹羽はここでこれを話に出した。
「それを考えてですな」
「城を築く。ではじゃ」
 信長はこれまでこの場で主に話した丹羽を見据えてだ、こう彼に告げた。
「では五郎左よ」
「はい」
「御主を奉行とする」
 城を普請するそれのだというのだ。
「よいな」
「畏まりました、それでは」
 丹羽も信長の言葉にそのまま応える。
「慎んでお受けします」
「さて、近江に城を築き」
 そしてだというのだ。
「摂津辺りにもな」
「さらにですか」
「城を」
「そうしたいな」
 こう言ったのである、ここで。
「それで都を二つの城で護りたい」
「まさに比叡山と高野山の様に」
「そうしてですな」
「そうじゃ、その城も結界する」
 次に築く城もだというのだ。
「そして都とこの国を護るのじゃ」
「何と、そこまでお考えとは」
「流石は殿ですな」
 皆信長の話に驚いて言う。
「やはり気になる」
「あの者達ですな」
 すぐに信行が言ってきた、怪訝な顔で。
「津々木に」
「うむ、杉谷善住坊といったな」
 それに無明である、信長が言うのは。
「あの者達のことがな」
「どうしてもですか」
「気になる」
 そうだというのだ。
「何か国によからぬものがまとわりついておる気がするからな」
「この国では古来まつろわぬ者がおりました」
 平手が彼等の名前をここで出した。
「古事記や日本書紀にありますが」
「あの者達か」
「はい、悪路王や両面宿儺もそうだったかと」
「他にもおったな」
 信長はそうした書も読んできている、それで平手に対して応えたのである。
「鬼だの土蜘蛛もそうじゃな」
「そう言われております」
「そうした者達が生き残っておるとは思えぬが」
 この世にはだ、最早だというのだ。
「しかし妙な者達がおるのは確かじゃ」
「そしてそうした者達のことも考えてですか」
「城もまた結界とする」
 そのことも考えてだというのだ。
「わかったな」
「はい、それでは」
 平手もまた信長の言葉に応える、かくして城のこともまた決まったのだった。 
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