戦国異伝
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第百四十五話 安土築城その三
すぐに丹羽が総奉行となり近江の南に巨大な城が築かれだした、この話を聞いて義昭はまたしても飛び上がらんばかりに驚いた。
「何と、朝倉を倒して終わりではないのか」
「左様です」
細川ガその義昭に答える、彼は今も織田家の青い服と冠を身に着けている。
「そうされています」
「何と、そしてその城はか」
「山全体を城とし多くの石垣や城壁のある」
「巨大な城か」
「それを築かれようとしています」
信長が、というのだ。
「そして櫓、いや」
「いや、何じゃ?」
「天主というものを造るとか」
「天主!?何じゃそれは」
「まさに城の中心となる大きな塔の様なものだとか」
信長がそれも築くことを考えているというのだ。
「そう仰っています」
「話がわからなるぞ」
義昭は天主という言葉を聞いたことがなかった、それで目を丸くさせて細川に対して言ったのだ。
「塔の様なものか」
「その様です」
「では五重塔の様なものか」
「何でも松永殿の居城信貴山城にある」
「あ奴か」
義昭は今も松永を嫌っている、兄の仇だから当然であるが信長に何度も殺す様に言っているのだ。しかし信長はまだ彼を傍に置いているのだ。
「あ奴の城か」
「そこに天主という本丸の中心に巨大な何重もの櫓の大きい様なものがあります」
「ではそれをその城にも置くのか」
「そうお考えです」
「ふむy、城の本丸にか」
こう聞くと義昭にもわかった、このことは武門の棟梁だけはある。
「置くものか」
「そうです」
「ではな」
それではと頷いてだ、義昭は細川に応えた。
「そのことはわかった」
「では城が出来た暁には」
「余がその城に赴きじゃな」
「そして祝われるべきかと」
「わかったわ」
嫌々という顔だったがそれでもだ、義昭は細川のその言葉に頷いた。
そうしてだ、その顔で言ったのである。
「右大臣には近江でこれまで以上に天下の為に尽くせと伝えよ」
「畏まりました」
「越前と近江のことはご苦労だった」
戦とその後の仕置のことも後からだが許した。
「この言葉も伝えよ」
「さすれば」
「全く、戦の次は城か」
戦国の世ではどちらも常だがそれでも言う義昭だった。
「銭を使ってばかりだというのに銭も尽きぬではないか」
「八百八十万石ですから」
「それだけの力があるか」
「はい」
朝倉を降し浅井を取り込んだ、それによりさらに大きくなったからだというのだ。
「ですから」
「ふん、ならよい」
義昭は口を尖らせて述べた。
「銭があるならな」
「それで公方様にもです」
「余にもか」
「右大臣様より贈りものが」
それがあるというのだ。
「黄金に宝が」
「わかった、貰っておこう」
こういうことには遠慮しない義昭だった、将軍として贈りものなり貢ぎものを受け取るのは当然だとも思っているのだ。
だがそれを受け取ることにしてからまた言うのだった、その言うこととは。
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