戦国異伝
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第百四十五話 安土築城その一
第百四十五話 安土築城
朝倉家を降し浅井家を家臣団の中に加えた織田家は岐阜において正式に全ての決をした、信長は岐阜城で全てのことを話した。
その場には織田家の主な者達、今は浅井の紺色の衣の者達も入れてそのうえで話していた。誰もが信長の話にこう言った。
「はい、では越前は前波殿を守護としてですな」
「朝倉家のご一門の方々に分けて治めて頂く」
「そうされるのですな」
「そうじゃ、そして近江の北は浅井家に二十万石を与え」
即ち長政にそうするというのだ、近江の北の四十万石のうちの二十万石をだというのだ。
「残り二十万石を浅井の家臣達に与える」
「我が家と同じですな」
元親がここで信長にこう答えた。
「そうですな」
「その通りじゃ」
信長もこう元親に答える、実際に土佐の四十万石も元親が二十万石を受け後の二十万石を長宗我部の家臣達が受けているのだ。近江の北もそうしたのだ。
そのうえで浅井の家臣達のそれぞれの割り当ても信長の口から話されたがその決も的確で誰も異を挟まなかった、そして。
信長はその決に異論がないことを確かめてだ、そのうえでこう一同に述べた。
「では次は新たな城のことじゃ」
「あの近江の南に築く城ですな」
ここで最初に応えたのは丹羽だった。
「殿の新たな居城となる」
「そうじゃ、そこじゃ」
信長もその通りだと答える。
「そう考えておるがな」
「では観音寺城を支城としまして」
そしてだとだ、丹羽は信長に彼の考えを述べていく。
「そのうえでその城を築かれてはどうでしょうか」
「観音寺城は壊さずにじゃな」
「はい、そのまま置きいざという時の備えにされては」
何かあればそこから兵を出しそして逃げ場所にする、そうしてはどうかというのだ。
「あの城は堅城、壊すには勿体のうございます」
「そうじゃな、では観音寺城を支城としてじゃ」
信長も丹羽の考えを取り入れてそのうえで述べていく。
「その傍に城を築こう。それでじゃが」
ここで信長は驚べきことを言った、その言うこととは。
「石垣には廃寺なり何なりの墓石や地蔵を集めよ」
「!?殿それでは」
「祟りがありますぞ」
「幾ら何でもそれは」
「あまりにも」
「そう思うか」
信長は今の自身の驚く彼等に笑みを浮かべた、そのうえでこう言ったのだった。
「墓石や地蔵には力が備わっておるな」
「はい、霊力が」
「それが」
「それを集めるのじゃ」
そしてそういったもので石垣を築くというのだ、城の。
「力をな」
「では結界ですか」
「石垣を結界とされますか」
「石垣だけではない、城自体をな」
巨大な結界とするのだ、それはさながら。
「比叡山や高野山の如きな」
「何と、城自体をですか」
「そこまでの結界にされますか」
「比叡山や高野山に比する」
「それ程までのものに」
「そうじゃ、無論守りも固い城にする」
このことも忘れていない、城ならば堅固にするというのだ。
「よいな」
「畏まりました、では」
「それもまた」
「場所はそうじゃな、目賀田山じゃな」
その山に城を築くというのだ。
「あの山自体を城とするぞ」
「目賀田山をでございますか」
このことには丹羽も驚いた、それで言うことは。
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