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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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妹達
  Trick54_超ピンチですよ?



信乃が『絶対能力者進化計画(レベル6シフトけいかく)』を見て30分後、2人はとある施設の前にいた。

シノブちゃんこと、布束砥信が捕まっているとされる施設だ。

信乃の知り合いの探査者(シーカー)、ちぃくんこと、綾南 豹(あやみなみ ひょう)からの
情報により、この施設を割り出した。

『絶対能力者進化計画』は学園都市の第一位、一方通行(アクセラレータ)
レベル6へと昇格させる計画。

そのために学園都市の裏、暗部の技術を集められて作られた御坂美琴のクローンを
2万体を殺害することで実行される。

現在、2万体の半数は殺害が終了し、今晩に10032次実験が予定されている。

そんな最新情報の中に、以下のものがあった。
・8/19 『学習装置』の監修協力者である「布束 砥信」が反乱を実行
・8/20 「布束 砥信」から『学習装置』についての情報を取得を行う
 第423研究所にて実施予定


そして信乃と美雪は第423研究所に到着していた。

「美雪、準備はしてきたと思う。

 だから準備は良いかとは聞かない。でも、覚悟は良いか?」

「・・・・ぅすーーー、ぁはーーーー

 ん。覚悟できた。シノブちゃんを助ける」

「よし、行くぞ!」

手に持ったデバイス(ノート型PCより2周り小型なもの)を操作する。

監視カメラや赤外線センサーなどの侵入者セキュリティを誤魔化して
中へと入っていく。
警備員など人間(アナログ)のセキュリティには、信乃が魂感知を使って人間を避けて
移動していき、問題なく目的の部屋へと到着した。


「美雪、ここが目的の部屋だ。

 もうすぐだから落ち着けよ」

「・・・・・ん」

今すぐにでも、親友を助けるために突撃しそうな美雪を信乃が諌めた。

「それじゃ、確認するぞ。
 部屋の中の人は4人。
 配置的に考えて、奥にいる2人がシノブさんと、薬で強制的に情報を取り出す人。
 入口付近にいる2人はその手伝いか、護衛とかだと思う。

 護衛の2人の内1人は魂が大きく感じる。おそらくは能力者の可能性がある。
 俺は護衛の2人の相手をする。

 美雪はこの催涙ガスがでる缶を奥に投げて、効き始めたら置くに行ってシノブさんを
 運びだせる状態にしてくれ。その着けている仮面は小型のガスマスク機能が付いているから
 大丈夫だ。

 シノブさんが拘束されていた場合はバンドを外したり、注射針も同じように頼む。

 行くぞ」

「ん!」

デバイスをワンタッチ。ハッキングシステムを起動。
同時に電子ロックの扉が開かれた。

信乃が先行して部屋へと入る。美雪も直後に入り、布束のいる奥を見た。

幸いにして、薬の投与は始められる前であり、丁度注射針を持って準備しているところだった。

美雪はその2人に向かって催涙ガス缶を投げる。

プシュー、と白い煙が瞬く間に部屋の奥へと広がっていく。

「な、なんなの!?」

持っていた注射針を落とし、ガラス管が割れる音と驚く女性の声が聞こえたが、間もなくしてバタリと人が倒れる音がした。

その間に信乃は、入口近くにいた護衛の2人に突撃した。

2人の内、1人はチンピラ、スキルアウトと思われる風貌の男。
恐らくはこの仕事だけの使い捨ての人員の可能性がある。

もう一人は信乃が能力者と予想していた人物だが、予想と違っていたのは
まだ中学生ほどのパーカーを被った少女ということだった。

能力者は年齢に絶対比例していない事は、信乃も知っている。
そして世界や組織の裏側でも実力さえあれば、性別や年齢に関係なく現場に出る事も承知している。

だが、やはり少女と呼ばれる年代の女性が、この場にいる事に良い気持ちはしなかった。

(俺のフェミニストも考えものだな。こんな場面で毎回、心が揺らいだら霧が無い)

女性に優しくと育った信乃にとっては、多少なりとも苦痛を感じる。
もちろん、命を掛けた場面では躊躇などないが、それでも多少の苦痛が隙になる事もある。

「なんだお前!?」

「さぁ? 誰でしょう?」

信乃が出した隙に、驚きから回復したスキルアウト風の男が腰から武器を取りだした。
振ると適度に伸びたそれは、折り畳み式の警棒。手元のスイッチを操作すると
パチパチとした電気の音が鳴っているのでスタン警棒だろう。

信乃は殺気を放つ。その一瞬をおいて、突撃を仕掛ける。

「く、くらえ!」

殺気を放たれた男は反応し、警棒を振る。
だが、それは信乃の計算の内。殺気と突撃のタイミングを一瞬ずらしたのは
そのためだ。

振った警棒に合わせて、警棒の持ち手の端を掴む。
間合いは人間にとっては遠いが、A・Tには充分に有効範囲。

持ち手は当然、電気を通さない。そこを掴み、一本背負いの要領で投げる。

「ほい、一本。さて、お嬢さん。あなたも相手になります?」

「その丁寧な話し方、超ムカつきます」

少女はパーカーを外して信乃を睨みつけた。

(さて、どう戦おうかな?
 戦闘で厄介なことベスト5に入るのが、相手の能力が解らないってことだよね)

スキルアウトとは違い、すぐには突撃しない。

性別:女性。年齢:10歳前後。体格:華奢。武器:所持なし。

しかし、これから開始される戦闘に緊張を感じない。
戦闘が日常と化している少女、と信乃は予測した。

(シノブさんや美雪の事があるし、相手の能力を調べる時間なんて無い。
 緊張していないってことが余裕の表れだとしたら、その余裕をついてみるか)

腰を落とし、スキルアウトが持っていたスタン警棒を構える。

「いきますよ」

「別にいつでも」

少女は変わらずに返事をする。

足に力を入れる。A・Tを使い地面を踏み締める。
発生するのは超小型モーターながら原付バイクと同等以上の力を持つ推進力。
自重がなく、あるものは推進力から生まれる超加速のみ。

それを近距離で行えば、追う事はできない。

狙うは左側に回り込んでからの打撃。

「速い」

(良し! 反応が追いつけていない)

超加速により、予想通りに回り込む事に成功した。
僅かながら少女も反応し、左腕を信乃に向かって伸ばす。

スタン警棒のスイッチを入れ、それを少女の腕に突くようにして攻撃をする。
振るうのではなく突く。それが信乃が最低限の手加減による攻撃だった。

だが、それは意味を持たない。
手加減も、攻撃すらも意味を持たない。

それに信乃が気付いたのは、攻撃が当たる直前だった。

 バキャ

「な!?」

警棒が拉げて折れた。例えコンクリートの壁に対しても、今の突きであれば
信乃の手が痺れるだけで警棒には損傷は無いはずだ。だが、完全に折れた。

「速くても超無駄です」

防がれたからではない、攻撃されたからだ。少女の能力によって。

(俺の攻撃に対して何かしらの反応があると思ったけど、能力が発動した瞬間は無かった!
 能力を発動させたんじゃない、既に発動していた。常時発動型の能力か!)

気付いた瞬間に手を引いた。

「ヤバイので、ここでは逃げさせてもらいます」

「逃げられると思うのですか?」

少女が腕を振る。その対象は信乃ではなく、信乃たちが入ってきた入口だ。

たったそれだけで入口は完全に破壊された。

「これで逃げ道はなくなりました。超ピンチですよ?」

布束砥信の救出に立ちはだかったのは、都市の暗部の人間。
≪アイテム≫の構成員。大能力者(レベル4)の窒素装甲(オフェンスアーマー)

 絹旗 最愛 (きぬはた さいあい)



つづく



 
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