インフィニット・ストラトス 復讐を誓った血継限界の転生者
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約束と嘘
今日もすごいことになったな。二組のクラス代表が中国の代表候補生の転校生に変わって、その転校生が一夏の幼なじみだなんてな。世界は広いようで狭いって事だな。放課後になると、その転校生は俺の前に現れた。
「あんたが二人目の男性パイロットね。私と戦いなさいよ!」
「いきなり人の前に現れて何言ってんだお前。悪いが先約があるんだ、今お前の相手をしているヒマは無い」
「相手をする気も無いが」と付け加えて、簪の待っている整備室に向かおうとするが、転校生は退こうとしない。
「なら、その先約の相手の名前を言いなさいよ。私が先に変わってもらうから」
「……さすがは武に関して歴史と文化が豊富な中国様だな。狙った獲物を仕留める為なら、恥じや礼儀を捨てるのか。ご立派だな」
「な、なんですて!!」
「言葉通りの意味だ。お前そんなことして恥ずかしく無いのか?まぁやってる時点で恥ずかしく無いんだろうが、そんなことやってるヒマがあるなら、一夏に差し入れでも持っていてやればどうだ。きっと喜ぶぞ」
俺がそう言うと、転校生は顔を赤めながら考え出してしまった。俺はそのうちに整備室に向かった。
ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー
「悪いな簪。遅れた」
「何かあったの?…いつ時間通り来るのに」
「中国人の不良に絡まれた」
「それって…二組に転校してきた人?」
「え、ああそうだよ。ツインテールで猫みたいなヤツだった」
俺は作業に取りかかる準備を始めると、しばらく黙ってから簪は口を開いた。
「その人って、強いのかな…?」
「さぁどうだろうな。多分ISは第三世代型だろうし、そこそこ強いんじゃないのか?」
「もし、その人と燐が戦うことになったら…どっちが勝つと思うの?」
「多分、俺じゃないかな?やってみなきゃ分からないけど」
そう言うと簪は、クスクスと笑いながら作業をしていた。俺達はその話題を済ませて作業に集中した。
ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー
そして今日の作業も終わり、俺達は『打鉄二式』の完成具合のデータを見ながら寮の廊下を歩いている。
「完成具合は、30%くらいか。このままじゃクラス対抗戦に間に合わないな。簪も出るんだろクラス対抗戦」
「うん…その時は『打鉄』を使うから大丈夫」
「そうか。けど、まだいくつか専用機持ちだけの行事があるだろうし、あと何人位か人手がほしいな」
「うん。けど……その…」
なんか歯切れが悪いな簪の奴。なんか他の奴が来たらマズいことでもあるのか?
「私は…燐と…ふた」
「最っっっ低!女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて、男の風上にも置けないヤツ!犬に噛まれて死ね!」
簪が何か言おうとした瞬間、横の扉の中から大きな怒鳴り声が鳴り響いた。その部屋の番号は1025室。一夏と箒の部屋だ。その部屋からあの転校生が出てきて、不機嫌そうな顔をしながら、ズカズカとどこかに行ってしまった。
「また一夏か。悪い簪、先に帰っていてくれ。俺ちょっとこの部屋に何があったのか聞いてから行くから」
「う、うん分かった…早く帰ってきてね」
「あいよ」
そして、簪と別れ一夏の部屋に入ると箒と一夏が何かしゃべっていた。
「一夏、また何か揉め事か?代表候補生とは二回目か。何してたんだ」
「いや、俺は鈴との約束を覚えてたんだけど、何でかアイツがいきなり怒りだしてな。あ、鈴ってお前のほうじゃなくて二組に転校して来た、凰鈴音のほうな」
「お前がちゃんと女子との約束を覚えていないのが一夏。男として恥を知れ!」
「箒まで怒りだして、『馬に蹴られて死ね』て言うんだ」
さっき『犬に噛まれて死ね!』とも言われたけどなお前。ちなみに俺の母方のじいちゃんは生前、馬に顎を蹴られて三途の川を見たらしい。ただの旅館経営者に何でそんな経験があったのかは知らないが。
「そんな事より、その約束の内容は何なんだ?」
「確か、『鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を奢ってくれる』って約束なのに意味が違うっていうんだ」
「一夏!お前はまだそのようなことを言っているのか!」
毎日酢豚を奢ってくれる、か。あの凰は一夏のことが好き。それで料理の腕が上がったら毎日酢豚を食わせる。毎日、食わせる……これ『自分の料理の腕が上がったら毎日みそ汁を食べてくれるか?』って言う、逆プロポーズじゃん。
「……一夏。男として男の端くれにも置けないお前に言っておきたいことがある」
「なんだよ?改まって」
「牛にみぞおち蹴られて死ね」
「燐までいきなりなんだよ!」
「一夏、俺は今聞いただけですぐに気づいたぞ。なのに昔聞いて、さらに凰や箒に違うって言ってのにお前はまだ気づいていない……救いようがないなお前は」
「じゃあ教えてくれよ!」
「さすがにこればっかしはな。もう俺帰るわ」
俺はそう言って、一夏に答えを教えることなく自室に帰った。
ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー
「ただいま」
「おかえりなさい。どうだったの…」
「ああ、くだらないことだったよ。簪は何見てるんだ?」
簪がケータイで見ている物が気になって聞いみた。何の動画だろう。
「ヒーローアニメ…」
「へー。お、このアニメ俺よく見てたよ。懐かしいな」
俺は簪の顔の横から覗いて見ると、昔よく見ていたヒーローアニメであった。
「……燐もアニメ見るんだね…ちょっと意外」
「そうか?まあけど、男は一度位ヒーローに憧れるもんだよ」
「じゃあ今も憧れること……あるの?」
「いや、もう無いよ。第一俺、ヒーローってガラじゃなしな」
「そんなことない!」
簪はいきなり大きな声で否定してきた。
「燐はやさしいしくて強くて、ヒーローみたいだから……」
ハッと簪は自分が無意識に大きな声でしゃべっていたことに気づいて、言葉を顔を赤くしながら止めた。
「ありがとう簪。そう言ってもらって嬉しいよ」
俺は簪の頭を撫でながら言うと簪は顔をさっき以上に赤くしながら、俯いてしまった。その時、俺のケータイが鳴り始めた。
「おっとメールだ。……簪、俺明日から2日、3日、所属の企業に行かないといけなくなったんだ。手伝いが出来なくなるんだ」
「だ、大丈夫だよ」
「そうか、悪いな」
そのあとすぐ、簪はバスルームに入って、シャワーを浴びている最中に俺はもう一度、届いたメールを見ながら簪の言葉を思い出していた。
「ヒーローか……俺はそのヒーローにやられる敵キャラだよ、簪」
本当はそのメールは俺達、紅原三兄妹が作った組織、『暁』として動くためのメールだった。
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