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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百十一話:充電の時間

「……ヘンリー。あの。……ごめんね?」
「ん?何がだ?」
「昨日。嫌がってたみたいだったのに、置いて行っちゃって」
「ああ。いいよ、そんなの。嫌がってるって、わかってたなら」
「え?……なんで?」

 嫌がってたのを、見捨てたみたいなものなのに。
 わかってて置いてったって、ダメじゃね?それ。
 普通に、置いてかれた側から見たら。

「さっき、あの女がいる時に色々言ってたの。結構、本音だったよな?」
「う、うん。まあね」

 嘘で固めようとすると、逆に難しいし。
 嘘では無い本音を、言い方でそれらしくするのがいつもの手口ですけれども。

「踊り子を見るのにお前が邪魔になるとか、俺が他の女と一緒にいてもいいとか。俺が幸せならって、あれも」
「……うん。……そうだね」

 いや、実際。
 色々ありますよね?男性には。
 鼻の下を伸ばして色っぽいステージを見るなら、やっぱり隣に女性とかいないほうが。
 場合によっては大人の関係にも発展するかもしれないのに、恋人でもなんでも無い女が邪魔をしてしまっては。
 あと後半に関しては、完全に嫁を探しに入ってますからね。

「あんなので、喜んでるなんて思われたら困るけど。嫌がってたってわかってたら、いい」
「いや……だけど……」

 バネッサさんは、割とダメな感じだったけれども。
 例えばの話、クラリスさんみたいな人だったら、そう悪い気はしなかったのでは。

「俺も、本音だったから。俺は、お前がいればいい」
「へ?」

 え?なに?
 いきなり、なに言ってんの?

 似たようなことは前も言われたけど、ちょっとかなりニュアンスが違うっていうか。
 前は単純に一緒にいたいみたいな感じだったけど、他の女性は要らなくて私がいればいいとか、完全にそういう対象みたいな。


 ……ちょっと、色んな動揺が収まってないせいか、また顔が熱くなってきた。

「……また、顔。赤いな」
「へ、ヘンリーが変なこと言うから!……それより!嫌がってたら普通、助けろとか思わないの!?いつも、私は助けてもらってるのに!」
「あんなのに、ドーラが絡まれたら困るし。良かったよ、あれで」
「ま!また!ちょっと、今、動揺してるから!やめて!そういうの!!」

 なに!?
 自分が困ってる時すら、私優先!?
 どんだけだよ!
 どんだけ、私が大切だよ!!

 と、私が散々動揺して赤くなってるのに、ヘンリーの耐性はこんな時もしっかり作用してやがるようで。
 顔色も変えずにまじまじと見られてるのが、憎ったらしい。

 ……やっぱり、私にも反応しないんじゃないの?
 うん、やっぱり気のせいだ。
 本当に私が好きなのかもとか、完全に気のせいだ。
 そう言えば今日は、抱き締められたりもしてないし!

「……ドーラ。今日……ほんと、可愛いな」
「はあ!?」

 このタイミングで可愛いとか!

 なに!?
 何に関して言ってるの!?
 この格好!?
 反応ですか!?

「……何、驚いてんだよ。さっきも言っただろ」
「演技でしょ!?あれは、演技の一環でしょ!?」
「いや、だから。俺も本音しか言ってないって」
「いや、だって!確かに、ドーラちゃんは可愛いけど!いい歳して、こんな、少女趣味な」
「似合うんだからいいだろ。可愛いよ、お前は」
「やめて!!もう、やめて!!」

 ここでドーラでなくて、お前とか!!
 急所を的確に突いてくるのは、やめてください!!

「……ドーラ。あの魔法、かけてくれないか?綺麗にするやつ」
「う、うん!キレイキレイー……って、何、いきなり!?」
「……汗かいて、汚れてたから。あのままだと、抱き締められないし」
「……はああ!?」

 え、なに!?
 汚れるから?
 私が、汚れるから?
 遠慮して、しなかったの!?
 我慢してたの!?

「綺麗になったから。……抱き締めても、いいか?」
「何!?なんで、聞くの!?いつも、そんなの聞かないのに!?」

 今日に限って、なんで!!

「……あの女にされるのは、嫌がってたし。俺も嫌なら、やめる」
「う……い、……嫌じゃ、……無いよ……」

 踊り子さんたちみたいに、揉みくちゃにされるとか無いし。
 正直、落ち着くのもあるし。

「なら……いいか?」
「う……な、なんで、その、……抱き締め、たいの……?か、可愛い、から……?」

 ……ドーラちゃんが可愛いのはただの事実ですけれども、お前が可愛いとか言われた後に自分でこんなこと言うとか!
 言ってしまったがどうなの!?
 図々しくない!?

「それもあるし。あの女の相手で、疲れたから。充電したい」
「じゅ……充電……」

 バネッサさんにぶつけたせいでと言われたら、断る選択肢は無いんですけれども。
 それで充電できるとか言われると、また……!!

「ドーラ。いいか?」
「…………うん…………」

 動揺し過ぎてもう顔が、赤いどころでは無いと思うんですけれども。
 ヘンリーの顔が、全く見られませんけれども。
 抱き締められたら顔も見えないし、意外と落ち着くかもしれない。

 と、俯いたままでいたところを、そっと抱き締められます。

 ……なんだ、このソフトな接触は!
 こんなところも、いつもと違うの!?
 まだ、私を動揺させるつもりか!!

 と、心拍数を上げつつ顔の熱を持続させていると、徐々に腕に力が込められて、結局いつも通りに強く抱き締められます。

 ……はあ、ちょっと落ち着いてきた。

「……いつもと、においが違う」
「におい!?」

 …………落ち着いたところなのに!!

 なにそれ!?
 そんなの、記憶してるの!?
 コドランでもあるまいし!

 え、私、ヘンリーのにおいとか覚えてたっけ?
 いや、覚えてないと思うけど、そんなこと言われるとまた意識して覚えてしまって、っていうか

「……あの。……においって。……どんなの?」

 臭かったらどうしよう。

「どんなって……いい匂いとしか。あとは」
「いや、いい!それなら、いいの!説明とか、いいから!!」

 それが確認したかっただけなんで、具体的に描写されても困る!
 また、動揺する!!

「そうか。今日は……化粧、してるのか?」
「……うん。あとは、お風呂にあった石鹸とか借りたから。香り付きのヤツ。そのせいもあるかも」
「そうか」
「あの……大丈夫?そういう匂いって、好き嫌いあるけど」
「大丈夫だ。お前なら、なんでもいい」
「……!」

 くっ……!また……!!
 なんなの、今日のヘンリーは!?
 いや、おかしいのは、私か!?

「……やっぱり、昨日は置いて行かれて良かったな」
「……なに?あらたまって」
「お前の可愛いところが見られたから」
「……!!」

 本当に……!!
 本当に、今日はもう……!!

「……ドーラ。心配して、来てくれたのは嬉しいけど。俺のために、無茶はしないでくれ」
「……無茶でも無かったじゃない。口でも、力でも。その辺の女性とか、私の敵じゃないし」
「……いや。女でも、結局別の危険があっただろ……」
「……」

 確かに、あれは予想外だった。
 可愛すぎて、女性に襲われるとは。
 しかも、恋敵ポジションにあった人に。

「多少時間がかかっても、俺も自分でなんとか出来るから。俺は、大丈夫だ」
「……」

 私が、そう言っても。
 ヘンリーだって、私を守るくせに。
 こういう時は、女がいたほうが。
 絶対に、話が早いのに。

「……こんな時くらい。私にも、頼ってよ」
「……ドーラ。お前を、俺のせいで、傷付けたく無いんだ」
「そんなの、私だって同じだよ。ヘンリーが、私を守るって言うなら。私にも、ヘンリーを守らせて。それで危なくなったら、ヘンリーが助けてくれるんでしょ?今日みたいに」
「……」
「……ダメ?……私が、そうしたいって言っても?……そんなに、嫌?」

 俯かせていた顔を上げて、ヘンリーの顔を見上げます。

「……」
「……ヘンリー。……お願い」
「……」
「……どうしても、……ダメ……?」

 一方的に、守られるだけの関係なんて、嫌なのに。
 それでもどうしても、ダメなの?
 そんなに大変なことをするっていうわけじゃ無いんだから、これくらい、いいって言って欲しい。

 と、懇願するように見詰めていると。

「……ああ、もう!わかったよ!ホント可愛いな、お前!!」
「へ!?」

 見上げてた顔を抱え込むように、さらに抱き寄せられました。

 ……今、また。
 ヘンリーの顔が、赤くなってたような。

 ……そうか、耐性があっても、なる時はなるのか。
 それは、そうか。だって人間だしね!

 ……って、やっぱり私にしか反応しないの!?
 ……いやいや、待て待て。
 他の女性でも同じような状況になれば、……他の誰と、こんな状況になるって言うんだ!
 ダメじゃん!!

 …………と、ともかく!

「……えっと。なら、いいんだね?」
「……俺が、いる時にしろよ。一人でやるな」
「うん。わかった」

 基本的には、ヘンリーもいたほうが話は早いからね!
 女同士の一対一の対決というのも捨て難いが、襲われる危険を冒してまで試したいものでも無い!

 それじゃ、それはそれでいいとして。

「……あの。そろそろ、戻らない?みんな、待ってるし」
「……もう少し」
「……まだ、終わらないの?……充電」
「全然、足りない」
「ぜ……全然、なの……?」

 よくわからないけど、結構時間は経ってるような気がするんだけど。
 満タンになるまで待ってたら、人通りが増えて大変なことになりそうな……。
 今だって、かなり見られてるし……!

「いや、やっぱり。もう、戻ろうよ。この後の予定もあるし、あんまりのんびりもできないし」
「……」

 ダメなのか。
 全然だからか。

「……えーと。なら、アルカパの時みたいに。部屋まで、抱いてってもらうとか。それなら、移動中も充電できるし」
「……」

 思い付きで言ってみたら、無言で抱え上げられました。

「……って!ホントにやるの!?」
「……このままここで抱き締められてるのと、どっちがいい?」
「……こっちで……」

 まだマシだと思ったからこそ、思い付いたわけなので。
 まだ、人通りが少ないうちに帰りつける分、マシです。

 ……しかし、前回よりも格好が可愛すぎる分、お姫様抱っことかハマり過ぎてシャレにならない……!!


 と、折角収まってた動揺がまた復活してきて真っ赤になり、ヘンリーの首に抱き付いて首筋に顔を埋め、周りの視線から逃れるようにして、部屋に連れ帰られます。

 ……顔さえ、顔さえ見られなければ!
 気分的には少しだけ……ほんの少しだけ、マシな、気がしないことも無いんだかどうなんだか!

 ……大丈夫!
 用事を済ませたら、今日のところはこの町は出るんだから!
 旅の恥は、かき捨てなんだから!! 
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