ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百十二話:福引きを極める
「ドーラ。……大丈夫か?」
「……もうちょっと!もうちょっとだけ、待って!」
「……わかった」
ヘンリーを急き立てて、朝から可愛らしい格好でお姫様抱っこの羞恥プレイに耐えて、部屋の前まで戻ってきたのはいいんですが。
動揺が激しすぎて私の顔色が戻らず、結局部屋の前でまたヘンリーに抱き締められてます。
……落ち着け、落ち着け。
大丈夫、もう終わった。
羞恥プレイの時間は、もう終わったんだから!!
「……よし、もう大丈夫!入ろうか!」
「……まだ、少し赤いぞ」
「言わないで!!これで精一杯だから!!もう、これで入る!!」
と、若干赤らんだ顔のまま部屋に入って心配され、戦いの余韻が残ってるとかなんとか言って誤魔化し、スラリンとコドランの可愛さに和んだところでなんとか顔色も落ち着いて。
食堂に下りて朝食を摂りながら、今日の予定を話します。
例の可愛い格好のままなのでいつも以上に注目度がすごいことになってるが、ヘンリーとピエールのお蔭で実害は無いので気にしない。
「今日は、町で用事を済ませたら南のカボチ村に行きたいんだけど。昨日助けた村人さんから、依頼を受けたから」
「依頼、と言いますと?」
「畑を荒らす化け物を退治してほしいっていうんだけどね。化け物の正体もわからないみたいだから、まずは調査することになるのかな」
ていうか、モモなんですが。
ゲーム通りならばモモがそこにいるはずなので、退治しない可能性について、それとなく匂わせておきたいわけです。
ゲームなら絶対に倒せないけど、現実問題として倒そうとすれば倒せてしまいそうで、困る。
「化け物退治とは。腕が鳴りますな」
「……まずは、調査だからね?人を襲ったって話でも無いし、本当に悪い子かわからないし。とりあえず依頼は受けたけど、改心させられるんだったら、何が何でも倒したりはしないからね?」
「流石はドーラ様。深いお考えにござります。承知致しました」
「うん、おいらみたいに、ドーラちゃんに着いてきたがるかもしれないもんね!おいらも、わかったよ!」
「ピキー!」
「依頼の話は、わかった。町での用事ってのは、買い物か?」
「うん。それと、福引きをね!まずは、福引き券を集めに行くからね!だから、とりあえずこの格好のまま出るから!」
「……おい。ドーラ」
「だから、ヘンリーとピエールは、その間は離れててね!」
「……ドーラ様?それは、どのような」
「絶対に!!近付いてこないでね!!」
「ドーラちゃん。おいらたちは、いいの?」
「うん。コドランとスラリンなら、たぶん大丈夫。でも、邪魔はしないでね?」
「邪魔?……なんかわかんないけど、わかった」
「ピキー!」
と、今一つ納得できてない様子のヘンリーとピエールを無理矢理黙らせて、朝食を済ませて荷物をまとめ、宿を引き払って道具屋に向かいます。
ヘンリーとピエールには馬車を見つつ離れた場所で待機してもらい、ついでにナンパ男が寄ってこないように警戒にあたってもらって。
「いらっしゃい、今日はどんなご用、で……?」
人の気配に顔を上げた道具屋のお兄さんが、私を認めてポカンと口を開けて固まります。
「すみません!薬草ひとつ、くださいな!」
そんな反応にも気付かぬ素振りで、無邪気な笑顔で薬草を。
最安値の商品を、一つだけ買い求める私。
「……お兄さん?薬草、……切らしてるんですか?」
反応の無いお兄さんに対して、困ったような、不安そうな顔で問いかける私に、ハッとしたお兄さんが動き出します。
「……あ、ああ!勿論、あるとも!い、今、出すから!ちょっと、ちょっと待って……わ、わわわ!」
「まあ、大変。大丈夫ですか?」
焦って商品を崩してしまったお兄さんを手伝い、散らばった商品を拾い集めて笑顔で差し出します。
「はい、どうぞ!」
「あ、ありがとう!……あ、ご、ごめん!」
受け取る時に手が触れてしまい、焦るお兄さんに合わせて、目を伏せて頬を赤らめてみます。
「あ……い、いえ……。大丈夫、です……」
「あ、う、えーと……!そ、そうだ!薬草だったね!はい、どうぞ!あ、そうだ!福引き券、おまけしとくから!」
真っ赤になってわたわたと手を動かしながらも、なんとか仕事をこなしておまけもしてくれるお兄さん。
差し出されたおまけに、顔を上げて不思議そうに問いかける私。
「福引き券?って、なんですか?」
美少女ドーラちゃんに正面から見詰められ、さらに赤くなって焦るお兄さん。
「あ、ああ!宿の地下の福引き所で、福引きができるんだよ!この町で買い物をした人に、サービスで渡してるんだ!」
「まあ、そうなんですね!楽しそう!……なら、もう一つ、買っちゃおうかな……」
「そ、そうかい?お嬢さんなら可愛いから、買ってくれるなら勿論、おまけしちゃうよ!」
「本当ですか!?嬉しい、それじゃ薬草もう一つ、ください!」
そんなわけで薬草を一つ買うごとにおまけされる福引き券を、嬉しそうに受け取る美少女ドーラちゃんの姿に、お兄さんも大喜びで商売に励んでくださり。
最初は指が触れるだけで戸惑ってたのに、段々と大胆に手を握られるようになってきたのが気になると言えば気になったが、まあ許容範囲でしょう。
正当な手段で福引き券を巻き上げる私とデレデレと相好を崩すお兄さんの姿をコドランが複雑な顔で眺め、スラリンはあくまで動じずその場にあり。
一体どこまでいけるんだろうと面白がって買い続けること九十九個、ゲームならば数値がカンストするところで、とうとう福引き券が品切れとなった模様。
「……あ。ごめん。今ので、福引き券が無くなったみたいだ」
「え、そうなんですか。ごめんなさい、少し買いすぎてしまったかしら……」
全くそんなことは思ってませんが、申し訳なさそうな表情を作って謝る私に、お兄さんが爽やかな笑顔でフォローしてくれます。顔色は真っ赤ですけれども。
「いいんだよ!お客さんに渡すために、あるものだからね!そんなこと、気にしなくっても!」
「そうなんですね!よかった!それじゃ、私はこれで。どうもありがとうございました!」
福引き券が無いならひとまずもう用は無いので、いい笑顔を見せてさっさと立ち去ろうとする私を、お兄さんが焦って呼び止めます。
「あ、ま、待って!」
「なんでしょう?」
「え、えーと……!その、君……名前、は?」
「……え、えっと……初めてお会いした男性に、いきなり教えるのは……」
また頬を赤らめて、俯いて恥じらう私。
別に名前くらい、教えてもいいんですけれども。
教えるだけでは済まなそうなので、できれば誤魔化していきたい。
「な、なら!……また、会えないかな?また、来てくれよ!」
必死に食い下がるお兄さんに、しばし戸惑った様子を見せて。
「……はい……。旅の、途中なんですけれど。もしも、また立ち寄ることがあれば。……きっと、来ます……」
俯いた状態からの上目遣いで、恥ずかしそうに微笑みながら答える私。
お兄さんが目を瞠り、真っ赤になって口元を押さえ、顔を逸らします。
「そ!そうか!それじゃ、また!待ってるよ!!」
「はい。……それじゃ」
最早こちらをまともに見られないお兄さんに最後の言葉をかけ、背を向けて店を後にします。
背中に、お兄さんの熱い視線を感じながら。
……うん、ごめん。
もう、来ない。
買い物の用事はまだあるんだけど、誰かにお使い頼むと思う。
ごめんね、福引き券だけが目当てだったの!
悪い女に引っ掛かったと思って!
気付かなければ、綺麗な思い出にでもして!
私のことは、忘れてください!!
とか思いながら店を出たところで、今までおとなしくしててくれたコドランが口を開きます。
「ちぇー。なんだよ、アイツー。デレデレしちゃってさー。おいらたちのドーラちゃんなのに、ベタベタしやがってー」
「いやいや、私がそうさせたようなもんだから。そう、悪く言わないでよ。しつこくなかったし、いい人だったじゃない」
「……ドーラちゃん!手、汚れたから!早く、キレイにして!あの、キレイキレイってヤツで!」
「いや……そこまで……いや私も実は思ってたけど……。ちょっと、ベタベタするなって……」
「なら早く!じゃないとおいらが触れないし!!」
「う、うん。キレイキレイー」
「よし、消毒消毒ー!」
「ピキー!」
と、手を清潔にしたところで、じゃれついてきたコドランとスラリンによって、お兄さんの感触はすっかり上書きされ。
私たちの姿を認めたヘンリーとピエールが、待ち兼ねたように駆け寄ってきます。
「ドーラ!大丈夫か!?妙なこと、されなかったか!?」
「あ、うん、大丈夫。いい人だったよ!薬草九十九個で福引き券が九十九枚もらえたし!運次第だけど、絶対に元は取れるね!」
「お前……そこまでやったのか……」
「店のにーちゃんが、ドーラちゃんの手にベタベタ触りやがってさー。もう、おいらたちで消毒しといたけど」
「……ドーラ。……そうなのか?」
「う、うん。……でも、受け取る時にちょっと握られたくらいだよ?そんな、言うほどのことじゃ」
「……九十九回……。……よし。殺るか」
「……左様にござりますな」
「やめて!!二人とも、本当にやめて!!」
と、今にも道具屋に殴り込みに行きそうなヘンリーとピエールを、涙目で縋り付いてなんとか引き留めて。
私の肩をガッチリと抱いたヘンリーと、いつも以上に周囲を警戒するピエールに守られながら福引き所に向かい、九十九枚の福引き券を消費し切った結果。
特賞のゴールドカードはもちろんとして、一等の祈りの指環、二等のファイト一発、三等の爆弾石、四等のすごろく券を多数。
景品を大量にゲットして、元手の薬草代約八百ゴールド程度は、余裕で回収しました!
「やった!ゴールドカードだ!これで、お得に買い物できるね!お金は大事だからね!」
「……あの道具屋には、行くなよ。もう」
「うん!お使い、お願いね!マジックシールド四つと、カメのこうら二つ!」
「わかった。きっちり、話はつけてくる」
「え?話って」
「ヘンリー殿。拙者は、ドーラ様に付いておりますゆえ。お任せ致す」
「ああ。任せろ」
「あの。ヘンリー?」
「心配するな。買い物も、きっちり済ませてくる」
「……えっと。……ひどいことは、しないでね?」
「ああ。話すだけだ、基本的には」
「あの。……道具屋さんは、なにも、悪くないからね……?」
「それには異論があるが、大丈夫だ。素直に聞けば、手荒な真似はしない」
「……うん。……いってらっしゃい……」
「ああ、行ってくる」
……道具屋のお兄さん、ごめんなさい!
私のせいで、かなり怖い目に遭わせてしまうかもしれません……!
と、道具屋のお兄さんに内心で謝りつつも、無事に買い物を済ませて。
他には、武器屋でヘンリーにモーニングスターを購入して、それまでヘンリーが使ってたチェーンクロスを私が、私とスラリンでやりとりしてた刃のブーメランをスラリンが持つことにして。
買いすぎた薬草は、別の店で売って処分して。
「これで、ひとまず用事は済んだし。あとは着替えて、もう出ようかな」
「……着替えるのか?」
「うん。さすがにこれじゃ戦いにくいし、村人さんには完全に男と思われてるから。化粧も落として、また男装していくよ」
「……折角、綺麗にしたんだから。着替える前に、灯台でも見に行かないか?」
「え?観光は、……カボチ村から戻ってからにしようかと思ってたんだけど」
モモと合流してから、と言いたいが、ヘンリー以外には言えない。
「少しだけ。どうせ今日は村に泊まるんだろうから、そこまで急ぐことも無いだろ」
「うーん。……そうだね、なら灯台だけ、見ていこうか」
あそこから見える神殿は、楽しい気分で眺められるものでは無いからね。
むしろモモが入る前に見ておいて、心の準備をしておいたほうがいいかもしれない。
折角モモと見て回るなら、楽しい気分で一日を過ごしたいからね!
後書き
実際のゲームでは、買い物するごとに毎回福引き券が貰えるわけではありません。
大体、三割くらいの確率で、ランダムで貰えるようです。
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