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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第3章 さらば聖剣泥棒コカビエル
  第54話 覚醒の時

 
前書き


前回よりはだいぶ早い更新です!
それもそのはず、前回までと比べるとだいぶ短いです。
いや、前回までが異常に長かったんですけどね?
今回短いのはクライマックスの前の繋ぎ回的なところがあるからです。
ちなみに今回は大体6000字ってところですが、本来の一話における適正な長さってこのくらいだよね?
前回の20000字オーバーってのが長すぎただけで、今回やけに短いってわけでもないよね?

しかしなんというか、今回は最初から最後までどシリアスなためか書くのがなかなかつらい。
作者は基本おちゃらけ話かイチャイチャ話を書くのが好きです。
早く三章終わらせて四章書きてぇ!
四章はなかなかひどい話になる予定。
どうぞお楽しみに。

それから前回までのアンケート、まだまだ募集中です。
皆さんの意見良ければ聞かせて下さい。
今のところエヴァンジェリンのあまりの人気に作者はびっくりです!!


 

 



「今日で最後か……」

 私はそうつぶやくと同時に前後から振り下ろされてくる剣を両手の剣で受け流す。そしてそのまま2人の持つ剣を勢いの付いている方向へと叩くことにより、2人はその場でたたらを踏みかけた。しかしながらここ2週間の成果か、2人はすぐさまバランスを取り戻し、行き過ぎた体をそのまま回転させて左右から横薙ぎを放ってきた! この程度はすぐさま反応できるようになってきたわね。

 私はその場で飛び上がり、二人の剣を上に回避する。その結果二人の持つ剣は私のいた場所で衝突、威力に勝るゼノヴィアの剣がイリナの剣を手から弾き飛ばしてしまった。

「きゃっ!?」

「しまっ!?」

 慌てる2人。そしてその失敗に思わず止まってしまった2人に私は空中で回転するようにして蹴りを放つ。しかしながらここでも驚くことに2人はすぐさま反応して蹴りを避けると、一度一気に間合いを開けてきた。更にその最中にイリナも弾き飛ばされてしまっていた擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)をしっかり回収している。たった2週間だけどさすが原作キャラ、成長速度が半端ないわね。私がここまで強くなるには途方も無い時間がかかったていうのに、まったくもうっ。それにしても……

「開幕直後からいきなり2人による不意打ちってのはどうなの?」

 そう、今日の稽古を始めた途端、イリナとゼノヴィアが同時に仕掛けてきた。しかもゼノヴィアは気配を消して背後から。昨日までは一応一人一人挑んできてたんだけどな。

「……今日が最終日だからな」

「私達だって一太刀くらいは浴びせたいんだよ」

「それは分かるんだけど……でもなんていうか、剣士としてそういうのってプライドが邪魔しない?」

 特に教会の戦士なんかは乱戦ならともかくこういった試合形式だと正面から正々堂々って感じにこだわるような気がしてたんだけど。特にこの2人のような信仰心バリバリの戦士ならなおさら。あ、私はそういうの全くないからね? 龍巳相手にしてるとそんなこと考えてる余裕なんて全くない。不意打ちだまし討ちなんて当たり前。それでもまともに攻撃を当てたことなんて一度もないんだけど。

「プライドなど! とうの昔に捨てている!!」

「火織ちゃんに勝つためにも!」

 そう言って2人は決死の覚悟をしたかのような表情でまたしても2人同時に斬りかかって来た。私はその剣を時にはいなし、時には避け、できた隙に対して容赦なく攻め立てていく。しかしながら2人は一度も私の剣を浴びることなく更に攻めてきた! 前回戦った時に比べ個人の技量もさることながら、連携も上がってるわね。私達が授業受けている間何をしているのかと思ってたけど、連携の修行でもしてたのかな? まあ……

「まだまだ荒いけどね!」 

 それと同時に私はゼノヴィアの破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)をイリナの方向へと受け流す。その結果ゼノヴィアは先ほどの失敗を思い出したのか受け流された剣を止めようとし、またイリナも体をこわばらせてしまった結果、2人の動きは止まってしまい隙だらけとなってしまう。そこに私は容赦なく蹴りを放ち、まともに私の蹴りを喰らった2人はそのまま吹き飛んでいった。その瞬間

「はぁっ!」

「やぁっ!」

「ってあなた達もですか!?」

 イリナとゼノヴィアを吹き飛ばした瞬間、今度は巡と真羅副会長の2人が同時に攻めてきた!

「私達も彼女たちと同じ結論に至りました!」

「今日で最後だし、一度くらいは……!」

 そう言って斬りかかってくる2人! 個々の技量はイリナとゼノヴィアよりも若干高い。……しかしながらそこにはゼノヴィアのようなパワーはなく、何より……

「連携がなってない!」

 長年ともに戦い、なおかつここ最近みっちり連携の練習をしていたであろうイリナとゼノヴィアと比べたら二人の連携は付け焼き刃の感が否めなかった。私はまず真羅副会長に一気に近付き斬撃を見舞う。そこは薙刀にとっては近すぎる間合いのため真羅副会長はなかなか反撃してくることができず防戦一方になっていた。また、そこに巡も真羅副会長に対してフォローを入れてこようとするけど、私が常に真羅副会長を盾にするように動いているためなかなか手を出すことができずにいた。

 先ほどのイリナとゼノヴィアは連携がしっかりしてきていたからこのような戦法はなかなかできなかったんだけど、連携の甘い2人ならこのようにあっさり連携を崩すことが出来る。私はそのまま真羅副会長を蹴り飛ばし、そして巡と一対一になると少し本気の一撃で彼女の持つ刀を弾き飛ばし、そのまま巡も蹴り飛ばした。するとすぐさま

「てぇいっ!!」

 背後から早くも復活したゼノヴィアが斬りかかって来たため、私はいつも通り彼女の破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を受け流す……んだけど、何か今の感触に違和感が……

 それに気づいた瞬間私はすぐさまその場から飛び退いた! そして私のいた場所には

「てりゃあっ!!」

 という掛け声とともに破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を振り下ろし、クレーターを作るイリナの姿が!!

「くっ! これでもダメか!」

「いい手だと思ったのに!」

 そしてそのまま2人は持っているエクスカリバーを交換する。するとイリナがエクスカリバーを受け取った瞬間、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の形をしていた剣がすぐさま刀の姿に変わった! なるほど、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の姿に変えた上で剣を交換していたわけか。どうりでゼノヴィアの剣を受け流した時違和感があると思った。考えたわね。

 さて、そんな2人はまだ作戦があるのかなかなかかかってこない。最初はただがむしゃらにかかってきてたことを考えると随分と成長したわね。……祐斗もこのくらい冷静になってくれればいいんだけどな。

 一時は気持ちにある程度整理がついたのか動きが格段に良くなってた祐斗だけど、タイムリミットが迫るにつれ焦るようになり、だんだん動きが単調になってきていた。そして私の動きについて来られなくなり、その結果さらに焦って動きを悪くする悪循環。ここ最近は本当に調子が出ていなかった。

 そしてエクスカリバーが借りられる最後の今日、朝目が覚めてみると今日の朝は休むというメールが。……祐斗、大丈夫かな?

 私はそう思いつつ、イリナとゼノヴィアが動き出した瞬間、こっそりと後ろに回りこんで斬りかかってきた巡と真羅副会長の斬撃を避けた。まさかの4人がかり!?







   ☆







 校庭では真羅副会長と巡さん、紫藤イリナとゼノヴィアの4人に斬りかかられつつもそれを難なく捌く火織さんがいた。そんな彼女を僕は校舎の屋上から見下ろしていた。

 この2週間、僕も僕なりに頑張ったつもりだし、強くなったという手応えも感じた。でも……それでも火織さんには届かなかった。真羅副会長のお陰で一時は気を持ち直して少しは火織さんに近付けたと思ったけど、ここ最近は近付くどころかまた遠のいてしまった。

 真羅副会長のお陰で僕に足りないものは分かったつもりでいた。でも、それでも火織さんには、エクスカリバーには届かない。こうして一時離れてみても、気持ちが逸るばかりで一向に何もつかめる気がしない。……これでは復讐するために僕を逃してくれた同志のみんなに顔向けできないな。

 今日の放課後をもって火織さんの持つエクスカリバーは教会に返還されてしまう。これを逃せばもう二度とこのようなチャンスは巡ってこないだろう。悪魔の長い人生だ。その内またエクスカリバーと巡り合えるときはあるかもしれない。……でも、おそらくその時の使い手も火織さんほどではないだろう。またその時その使い手を倒せたとして、使い手は倒せてもエクスカリバーを倒すことにはならないだろうし、となれば皆の復讐を果たせたことになるかも疑問だ。

 それに今回のように後々問題にならないような機会が訪れるとも思えない。今回のことはなかったことにするということで教会から来た2人とは合意を得ているからだ。今回のように悪魔に稽古をつけてもらったなんて、彼女たちも上に知られるわけにはいかないからね。僕達にしても教会のエクスカリバーを振るって教会の戦士を鍛えたということはあまり知られていいことではない。だから部長と会長、教会の2人で今回のことは無かったこととして合意が得られた。

 シナリオとしてはこの2週間、教会の2人がコカビエルとの激戦を繰り広げた末に勝利し、僕達悪魔とは何もなかったということになっている。また彼女たちは、コカビエルの手からエクスカリバーを無くすためなら最悪破壊してもいいという許可まで貰っているとのことだ。だからこそここで僕が壊してしまっても、誰も責められることはない。なにせ今回のことに悪魔は関与していないんだから。

 ……でも今のままでは破壊なんてとても出来そうにない。この2週間で僕と火織さんの差、そして僕の創る魔剣とエクスカリバーの差を僕は思い知らされた。昨日から一睡もせずにどうすればいいか考え、今朝も稽古を休んでまでこうして見ることに徹しているけれど……突破口は一向に見えてこない。

 あの時、皆が必死になって僕を逃してくれた。皆の無念を晴らす最後の希望として。そして悪魔になってまで生き残り、こうしてチャンスを掴んだくせにこのザマだ。……僕は、生き残るべきではなかったのかもしれない。僕より優秀な同志はいっぱいいた。彼らが生き残っていれば、僕のようにこんな………………こんな無様な姿なんて晒していなかっただろうに………………本当、どうして僕だったんだ………………







   ☆







 俺の目の前ではついに最後の稽古が始まった。時は放課後、もう何度目になるか、木場は火織に斬りかかる。いつもはこの時間俺は白音ちゃんに組手の稽古をしてもらってたんだけど、流石に今日はもう手に付きそうにないんで完全に見学に回っていた。それは部長や朱乃さんもそうだったらしく、今日は黒歌姉に稽古をつけてもらっていない。更に今日はいつもいない会長まで仕事を休んで見学に来ていた。グレモリーとシトリー眷属勢ぞろいだよ。

「で? 祐斗、朝は休んでなにか分かったことでもあった?」

 木場の斬撃をいなしつつ語りかける火織。それに対して木場は

「……そんなの!」

 歯をギリッと食いしばりつつ叫んだ。

「そんなの分かるもんか! ただ僕はエクスカリバーに復讐するために生き残った! なら僕のやるべきことなんて決まっている!」

 そう叫びつつ火織に更に斬りかかっていく木場。

「同志たちの無念を晴らすためにも……!!」

 しかしながらその剣閃は俺が見ても分かるほどにただがむしゃらなものだった。

「……はぁ」

 それに対して火織はただため息を付き、その瞬間ドゴォッ!! という凄まじい音とともに木場を蹴り飛ばした。

「ゲホッ! ゲホォッ!」

「祐斗、あなたの剣は見るに耐えないわ。ねぇ、みんなの言葉は、想いはあなたには伝わらなかったの?」

 その言葉に答えることができずそのままうずくまる木場。その時

「がんばれぇっ!!」

 その言葉を発したのは意外や意外、この中で一番おとなしそうな生徒会の草下さんだった。それに続くようにして

「立ちなさい木場くん!」

「祐斗! あなたならやれるわ!」

「木場さん! しっかり!!」

「頑張ってださい祐斗さん!」

「負けんじゃねぇよ木場ぁっ!」

「貴様はその程度ではないはずだ木場祐斗!!」

 口々に応援しだすみんな! あのゼノヴィアまでもが木場を応援してる! ……しかし、未だに木場はその場から動けずにいた。くそっ! 木場には俺達の言葉じゃ届かないのかよ!?

 そんな木場に更に火織は語りかける。

「祐斗、あなたはエクスカリバーに復讐することこそ同志たちの意志だって言ってるけど……本当に彼らがあなたに望んだのは復讐なの?」

 それを聞いた瞬間……木場がものすごい速度で再び斬りかかった!

「火織さんに……! 貴様に何が分かるっていうんだ! 貴様なんかに! 恵まれた貴様なんかに何が分かるんだ!」

 そう言いながらがむしゃらに斬りかかる木場は……泣いていた。

「同志たちはみな死んだ! 僕1人を残して! なら彼らのためにも僕は復讐するしかないじゃないか!」

 その言葉を聞きながら黙って木場の剣を受け止める火織。そして……

「仮に同志たちが復讐以外を僕に望んでいたとして! じゃあ僕はそれをどうやって知ればいいんだ!!」

 儚い音と共に木場の振っていた魔剣は砕け散った。

「誰でもいい、頼むから…………教えてくれ………………」

 そしてそのまま膝をつきうなだれる木場。俺はこの時になってようやく分かった。俺達の想いが伝わらなかったんじゃない。いや、木場のことだ。俺達が如何に木場を心配して、応援していたか分かっていたはずだ。でも前提が違った。そもそも木場は、自分がどうすればいいかを見失っていたんだ。

 今の木場に想いが届くとしたら……それはもう死んでしまった同志たちを措いて他にいない。でもそれが不可能な以上、いったいどうすればいいんだ……。

 俺達はもうどうすることも出来なかった。今度こそ心が折れたかのようにうなだれる木場の声をかけることさえ出来なかった。友達なのに……仲間なのに……なのに俺達は……俺には何も…………!







 パァァァアアア………………







 そんな時……







 それは突然起こった……







 まるで木場を包み込むようにして暖かな光が……







 そしてその光が発せられているのは……







 その光の出処は……!







「胸が……光ってる!?」







 火織の胸が光り輝いているだとぉっ!?


 
 

 
後書き


次回予告

「ウソ……じゃあ私の胸にあるこれも……!」

「そんな……バカな!?」

「なんて……なんて酷いことを……!」

「にゃっははは、準備しといた甲斐があったにゃ」

「これは……一体何を始めるつもり!?」

 次回、第55話 聖魔剣

「さあ……始めましょうか!」


 
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