ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百四話:女ですみません
踊り子さんたちに向かい、微笑みかけます。
「この港町の夜の華たる、美しくも艶やかな皆さんに、お誘い頂けるとは光栄の至りです。しかし、私の側にちょっとした事情がありまして。皆さんのご期待に、お応えすることは出来ないかと」
私のイケメンスマイルと褒め言葉に頬を染めて恥じらう踊り子さんに、同じく顔は赤らめながらも断りの気配に眉を顰める踊り子さん。
「そんな……あなたのほうが、よっぽどお綺麗なのに……」
「調子いいこと言ってー。上手いこと逃げようってんでしょー?誰か、いい人でもいるんじゃないのー?」
「……私!私、一晩でも!あなたなら、遊びでもいいですから!」
「待ちなさいよ、この尻軽!私なら、本当にあなただけですから!誰にでもこんなこと、言うわけじゃないから!」
「ひどい、なんてこと言うのよー!彼に誤解されたら、どうしてくれるのー!」
みなさん、積極的ですねえ。
イケメンぶりを見せ付けて期待を持たせてしまって、悪いことをした。
困ったような微笑みを浮かべて、また口を開きます。
「そういうことでは無くて。皆さんだからお話ししますけど……内緒にしてくださいね?」
私の思わせ振りな物言いに、騒いでいた踊り子さんたちが口を閉じ、こちらに注目してくれたところで、改めて口を開きます。
「実は、私。……女、なんです」
聞き逃さないよう、十分に間を取って告白してみましたが。
しーんと静まり返り、踊り子さんたちから反応がありません。
……あれ?
驚くなり疑うなり笑い飛ばすなり、なんか無いの?
もしかして、痛いヤツだと思われたとか?
「あの。……皆さん?……聞こえませんでしたか?」
恐る恐る問いかけてみると、踊り子さんの一人、クラリスさんがおもむろに口を開きます。
やはり、売れっ子だけあって芯もしっかりしてるんですかね!
「……たぶん、聞き間違いだと思うけど。なんだか……あなたが、……女、……だとか」
「はい。そう言いました」
「……冗談よね?似合いすぎて、笑えないんだけど」
「いえ、本当に。私は、女です。……見えませんか?」
「……いいえ。言われてみれば……男にしてはやっぱり綺麗過ぎるし、ていうか私たちよりよっぽど綺麗だし、……でも、そんな格好して……あんなに、強くてカッコ良かったのに……今も、カッコいいのに……。……女なの?……本当に?」
「はい、本当に。……なんだか、すみません。思ったより、衝撃を与えてしまったようで」
なんか、すごい確認されたし。
簡単に考えてたけど、もしかして割とひどいことをしてしまったの?私。
とりあえず謝ってみたけど、許されないレベル?もしかして。
俯いて黙り込んだクラリスさんから気まずい感じで目を逸らし、恐々と他の踊り子さんの様子を窺ってみると。
「女……え……女……?……って、なんだっけ……?」
「そっかー……女、なのかー……。運命の恋だと、思ったのになー……。例え実らなくても、いい思い出にできるって……。そっかー、勘違いかー……」
「もうこの際、女でも……!いやダメよ、そんな不毛なことは!血迷うな、私!!」
「そ、そうよね……こんなに綺麗でカッコいい男が、実在するわけが無かったわよね……。妄想が現実になって、一瞬で消え失せた、それだけの話よね……。うん、得したと、思えないことも無くも無い、かも……」
みなさん、虚ろな目でなんかブツブツ言ってます。
……すみません。
本当に、すみません。
……もう、逃げてしまおうか。
……どこに?
宿はここだし、どこにも逃げようが無いんですけれども。
こうなったら、馬車で一晩明かすか。
いや、それはそれで別の危険があるし、とりあえず部屋に逃げ込もう、そうしよう。
というわけで、踊り子さんたちの隙間に向かってそろそろと移動を開始しながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声で、また謝罪を繰り返します。
「本当にー……すみませんでしたー……」
と、何に反応したのか、踊り子さんたちが一斉に顔を上げます。
バッと音の鳴りそうな勢いに、思わずビクッとして固まる私に、踊り子さんたちが迫ります。
「ひいッ!す、すみませんでしたーー!!」
「お姉様!お姉様ね!」
「強くて綺麗でカッコいい女の子!うん、それはそれでアリよね!恋じゃなくてもね!憧れの存在って、アリよね!」
「女なら女で!女同士のお付き合いがあるものね!振られるとか無いし、それはそれでいいものよね!」
「こんなに綺麗なのに、強くてカッコいい女性だって!現実には、普通は存在しないわよね!うん、やっぱり得してるわね、私たち!!」
「え……?」
……許された?
もしかして許されたの、私?
港町で一夜の逃亡生活を、送らなくてもいいの?
気が抜けて呆然とする私に、またクラリスさんが声をかけてきます。
「ねえ、女なんだったら!私たちの宿舎にいらっしゃいよ!女同士、語り合いましょう!」
「え……?」
パーティが男ばっかりだし、それはかなり魅力的な申し出なんですけど。
でもなあ。
キラッキラした瞳で私を見詰める踊り子さんたちを見るに、どうも散々いじられそうな。
オモチャにされそうな気配を、ひしひしと感じるんですけど。
「……折角ですが。仲間が待っていますし、この後の旅の予定もありますから」
「あら、いいじゃない。お仲間も、この宿に泊まるんでしょ?私たちの宿舎も同じ建物の中だし、何かあればお互いすぐ呼びに行けるんだから。この後って言っても、今夜のうちに何かあるわけでも無いでしょうに」
いやー、その通りなんですけど。
でも別にただの言い訳なんであって、単純に気が進まないっていうか。
そんな私の様子を察してか、クラリスさんがさらに口を開きます。
「私たちの専用のお風呂は、広いし綺麗なのよ!」
……何?
広くて綺麗な、お風呂?
ピクリと反応した私に、クラリスさんがニヤリと色っぽく口元を歪めます。
「この宿にも、お風呂はあるけど。男の客が多いから、女性用は狭くて質素なのよね」
そうか、それは由々しき問題だ。
入れないよりはマシとは言え、設備が充実してるならそれに越したことは無いからね!
もはや勝ちを確信したような表情で、クラリスさんが畳み掛けます。
「宿舎に警備員が付いてるから、覗きの心配は当然無いし。あなたが来てくれるなら、取って置きの秘湯の華も、使っちゃおっかなー?」
秘湯の華!
というと、ビアンカちゃんがいるはずの村の名産品である、アレですか!
こんなに離れた場所では、さぞかし入手困難でしょうに!
こんなところで、先行体験できるとは!
「あなた。お名前は?」
「ドーラです!」
「ドーラちゃん。どうする?無理に、とは言わないけど。でも、来てくれたら嬉しいんだけどなー?」
「是非お邪魔させてください、クラリスさん!!」
流石、人気ナンバーワンの踊り子さんです!
気持ち良いくらい、コロッコロ転がされました!!
「あ、でも。着替えを取りに、一旦部屋には戻りますね!」
「貸してあげるわよ、そんなの。女同士なんだから、遠慮しないで」
「そうですか?それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいますね!それなら、仲間に一言断りに」
「それには及びませぬ、ドーラ様」
「……ピエール!聞いてたの?」
「失礼ながら。お話が終わりますのをお待ち申しておりました都合上、自然と耳に。先程は、お疲れ様にござりました。あのようなつまらぬ者を相手に、ドーラ様のお手を煩わせてしまうとは。申し訳もありませぬ」
いつの間に近付いていたのか、ピエールの他にスラリンとコドランも、そこにいました。
「いいよ、そんなの。私もたまには暴れたいし。それと、説明の手間が省けて良かった。今夜は踊り子さんたちのところに泊まりたいんだけど、いいかな?女性ばっかりだし、警備員さんもいて安全みたいだし」
「勿論にござります。ごゆっくり、お楽しみなされませ」
「ありがとう。スラリンとコドランのこと、よろしくね」
場合によっては、ヘンリーも戻らないかもしれないしね!
保護者二号であるピエールには面倒をかけるが、よく頼んでおかないと!
「承りましてござります」
「ちょっとちょっと、ドーラちゃん!おいらまで子供扱いは、やめてほしいなー?」
「あれ?子供って言ってなかった?自分で」
「そーだけどー!それとこれとは別ってヤツだよー!」
「調子いいなあ。でもそれはそれとして、お風呂とか一人じゃ入れないでしょ?コドランも、スラリンも」
「あー。そーいうことね!おいらもホントは、おねーさんたちと一緒がいいけど。いい子でお留守番してるから、楽しんできてね!」
「ありがと、コドラン」
「ピキー!」
「スラリンも、ありがとう。じゃあ、また明日ね」
と、少し離れて待っててくれた踊り子さんたちの方に向かおうとすると。
「ドーラ様。……宜しいので?」
ピエールに、呼び止められました。
「……何が?」
「ヘンリー殿にござります」
「……ヘンリーも、大人なんだから。私が、口を挟むようなことじゃ無いでしょ」
恋人とか、そんなんじゃ無いんだし。
「……そうにござりますか」
「ピエールも、広い心で見守ってあげてね。大人として」
帰らなかったとしても、お説教とかやめてあげてください。
「……御意」
「それじゃ、おやすみ。また明日」
「は。おやすみなさいませ、ドーラ様」
ピエールたちを置いてまた歩き出し、離れたところで踊り子さんとごちゃごちゃやってるヘンリーに目をやって。
ヘンリーと目が合い、なんか必死な感じで訴えられます。
……聞こえないが。
……違う!これは、違うから!
とかなんかそんな感じ。
うんうん、わかってる、大丈夫。
今のところ一方的に言い寄られて纏わりつかれてるくらい、わかってる。
そんな軽い感じで女性にちょっかいかけたり受け入れたりするようなヤツでは無いって、そんなことはわかってる。
でも若い男の性として、うっかりその気になっちゃうかもしれないのも、大人としてわかってるから!
本気の恋に落ちても、一夜の過ちを犯してしまっても!
温かく見守るなり気付かないフリで流すなりできる程度の理解は、あるつもりだから!
だから、何も心配しなくていいんだよ!
大丈夫、ちょっと微妙だなその娘とか思ってても、ヘンリーが選んだ相手なら!
ちゃんと、祝福できるから!!
という意思を込めて生暖かく微笑みかけ、踊り子さんたちと合流して宿舎に向かいます。
とは言え、彼らが具体的にどうなるかとかあんまり想像したり確認したりしたくないので、クラリスさんに誘ってもらえて、今夜は良かったかも。
こちらはこちらで、女同士!
久しぶりの女子トークを、楽しむとしましょう!!
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