ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百五話:踊り子さんたちと一緒
今の私は傍目には完全に、綺麗どころを侍らせて歩くハーレム男に見えてるんだろうなあ、望むところです。
と思いつつ踊り子さんたちの宿舎に向かって歩き出し、食堂兼酒場であるホールから通路に出たところで、待ち兼ねたようにクラリスさんが顔を寄せ、声を潜めて話しかけてきます。
「ね、ね、ドーラちゃん。さっき、スライムの騎士さんたちとお話ししてたけど。お仲間って、彼らなの?」
「はい、そうです」
「なら、出てくる時に目で会話してた彼。バネッサに捕まってた、彼だけど。あれも、お仲間?」
「バネッサさん?ヘンリーにくっついてた、踊り子さんですか?ヘンリーも、仲間ですけど」
「ああ、ヘンリーさんって言ったわね。聞いても名乗ってくれなかったから呼ばなかったけど、騎士さんたちはそう呼んでたわね。バネッサは、勝手に呼んでたけど。とにかく、仲間なのね。……ヘンリーさんは、知ってるのよね?あなたが、女の子だって」
「はい。それは、勿論」
「……ふーん。そっかー。なるほどね、そういうこと」
「……なんですか?」
「あ、うん。後で説明するから。いまいち、納得し切れてないところもあるし。ちゃんと、確認してからね」
「はあ。わかりました」
よくわかんないけど後で教えてくれるって言うんだから、待ってればいいか。
と、さらに歩き続けて、宿舎に到着して。
入り口に佇むマッチョな警備員さんに、チラリと一瞥されます。
「……ふん。遠目には、ちょっといい男かと思ったのに。女じゃないの、つまんないわね」
おネエさんでした。
おネエさんに、一目で性別を看破されました。
「あ、やっぱり女の子なのね。キャサリンが言うなら、間違いないわね」
とは、クラリスさんのお言葉。
キャサリンさんというのですか、このおネエさんは。
「そうね。アタシ以外なら、そうそう見抜けないと思うけど。なかなかよく化けてるんじゃないの、女にしては」
これは、褒められたと考えていいんでしょうか!
褒められたからには、お礼を言わないとね!
「ありがとうございます!もっと精進します!」
「いいわよ、しなくて。どんなに化けたところで、所詮女でしょ。興味無いわ」
クール!
クールです、キャサリンさん!
そしてこんなにマッチョで、女でなく男が好きな警備員さんが付いてるから、ここの宿舎の安全は確約されているわけですね!
「アンタが男だったらねえ。ちょっとは、楽しいことになったのに。あー、つまんないわー」
……女で良かった!
今生で初めて、心の底から女で良かったと思ったかも!
男だったら、ここに来てないと思うけど!!
「……あの。男性は、ここに近付いただけで……キャサリンさんに、楽しい目に遭わされるんですか?」
もしそうなら、仲間たちに注意してこないと。
間違っても、ここには近付くなって。
「失礼ね。礼儀正しく訪ねてくる紳士に、そんな真似はしないわ。姑息に侵入を企てるような不届き者だけよ、そんな目に遭うのは」
「……ですよね!良かった、キャサリンさんが淑女で!」
「あら、わかってるじゃない。気に入ったわ、アンタ、名前は?」
「ドーラです!」
「ドーラね。ここの娘たち以外の女なんて、すぐ忘れるんだけど。特別に、覚えておいてあげるわ。ありがたく思いなさい」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「変な娘ねえ。まあいいわ、さっさと通りなさい」
「はい!お邪魔します!」
と、キャサリンおネエさまの覚えもめでたくなったところで、宿舎の中に入って。
まずはクラリスさんのお部屋にお邪魔して、他の踊り子さんたちが持ち込んできたものを含めて、キャッキャウフフと寝間着選びが始まります。
「これなんか、いいんじゃないー?」
「あの……それは……」
ベビードールというヤツでは。
セクシーランジェリー的な。
「あー、いい、いい!意外性がいい!」
「やっぱり、女は色気が無いとね!」
「いや……それは、ちょっと……」
一体、誰を悩殺しろと言うのか。
こんな、女の園で。
「もっと、普通のでお願いします……」
「えー?つまんないー」
「いいじゃない、女同士なんだから。恥ずかしがらなくっても」
「……いや。普通に、嫌なんで」
「そうおー?じゃあ仕方ないわね、これは?」
「また、随分……可愛らしい、ですね……」
生地は薄いながら、露出度はワンピース程度のもので、まあいいんですけど。
非常に愛らしい、どこのお嬢様かお姫様かというような、少女趣味なネグリジェです。
「ええー?これは、いいでしょー?」
「ドーラちゃんみたいなカッコいい娘が、これ着たらどうなるか見てみたいし!」
「あとは、さっきのみたいのしか無いよー?」
「じゃあ……それで……」
どうもこうも、普通に似合ってしまうと思うんですけど。ドーラちゃんなら。
この姿しか見てないみなさんには、わかるまいが。
ただ、中の人の精神年齢的に、居たたまれないというだけで。
まあでもさっきのよりはかなりマシだし、コスプレとでも思えば、別にどうでも。
見るのも、踊り子さんたちだけだし。
「じゃあ、次は下着だけどー。これなんか」
「普通のでお願いします」
なんですか、そのどこぞのセクハラ装備みたいのは!
「……これとか」
「普通のでお願いします」
「……これはー?」
「……帰りますよ?」
「……じゃあ、これ」
「それで」
あるじゃないか、普通のが!
また随分、可愛らしくはあるけれども!
なぜはじめから、それを出さないのか!
と、寝間着と下着を選び終えたところで、いよいよ期待のお風呂に移動しますが。
「……」
「……」
「……」
見られてます。
めっちゃ、見られてます。
前世でも温泉とか銭湯とか好きだったし、普通に見られるならそこまで気にしないんですけど。
ここまでガン見されると、さすがに……。
「……あの。脱ぎ辛いんですけど」
「そ、そうね!ごめんね、私たちも脱ぐから!気にしないで、脱いで!」
「そ、そうよね!女同士なんだから、気にしないで!」
「……はあ」
と、とりあえず視線が逸らされたので、脱ぎ始めますが。
「……晒ね」
「……晒を、巻いてるのね」
「……巻いてて、これなのね」
「……隠れてて、わかんなかったけど。……これは……」
また、見られてます。
すごく、見られてます。
「……あの。だから、脱ぎ辛いんですけど」
「あ、ご、ごめんね!……でもさー?」
「……ねー?これは、仕方ないよねー?」
「うん、見るでしょ、これは」
……なんだよ!
言いたいことはわかるけど、見て見ぬフリをするのが!
見てないフリでチラ見するのが、大人の対応ってもんじゃないの!?
踊り子さんだからって、いちいちオープン過ぎるのもどうかと思います!
「あの」
「もー、いいじゃない!勿体ぶってないで、さっさと脱いじゃいなさいよ!ほら、脱がせてあげるから!」
「え、ちょ」
「ほらほら、良いではないか、良いではないか」
「ちょ、ま」
どこの悪代官だ!
そしてこの世界での、元ネタはなんだ!
「きゃー、やっぱ大きいー!」
「え、クラリスより?クラリスより、大きくない?ほら!これ!見て!」
「ひゃ!?やめ」
「え、でも細い!腰とか、すごい細い!どうなってんの、これ!」
「ホント、細ーい!え、腕何周とか、そんな話?」
「ちょ、抱きつかないで!」
「やだもう、可愛いー!完全に、可愛い女の子じゃないー!誰よ、男とか言ったのー!」
「あんただって言ってたでしょー!」
「言ったわよ!そりゃあ言ったわよ!カッコ良かったもん!それが何よ!こんなに可愛いって何よ!何なのよ、ずるい!可愛い!!」
「や、やめ」
「ちょっと、ずるい!あんたばっかり!私だってー!」
「やめ、やめて」
「えー、私も、私もー!えいっ」
「もう、やめてーー!!」
私のライフは、もうゼロです!!
と、ギブアップしたところで、調子に乗った踊り子さんの集団からクラリスさんによって助け出され。
クラリス姐さん……一生、着いていきます……!
と、目をうるうるさせてクラリスさんの後ろに隠れてたら、また興奮し始めた踊り子さんたちに迫られかけ。
クラリスさんが一喝して収めてくれて、クラリスさんの隣にひっついて体を洗ったりなんだりを済ませて今やっと、お風呂にゆっくり浸かってます。
「……ドーラちゃんー?……まだ、怒ってるー?」
「……」
怒ってます。
すごく、怒ってます!
クラリスさんの後ろに隠れて、他の踊り子さんとは目も合わせません!
「……そろそろ、許してくれないかなー?」
「……」
お断りします。
この後、クラリスさんのお部屋に立て籠って、他のみなさんとの接触は全力で拒否する所存です!
「……そこまで、怒ることかなー?そりゃちょっと……すごく、触ったりしたけど。ちょっと……かなり、撫で回したりもしたけど。ちょっと……激しく、揉んじゃったりもしたけど。……でも、女同士だしー」
「……」
……イラッ。
全く、反省の色が見られません!
よし、クラリスさんだけだ。
クラリスさんと、キャサリンさんだけだ、ここで記憶に残す必要があるのは。
それ以外は、抹消だ。記憶から。
「……ていうか、あんたたち。まず、謝りなさいよ。何、言い訳ばっかしてんのよ」
……クラリスさん!
やっぱり、姐さんだけです!
キャサリンさんがいない今、私の心のオアシスは、あなただけです!!
「クラリスさん……大好きです……!」
「え……?クラリス、だけ……!?」
「そんな、ドーラちゃん……!!」
「よしよし。怖かったわねー?ごめんね、私がこんなところに誘ったばっかりに」
「クラリスさんは、何も悪くないです!悪いのは、変態です!変態は、絶滅すればいいと思います!!」
「へ……変態、とか……」
「そこまで、そこまで低いの……?私たちの位置って……!」
「そうね、後で絶滅させておくからね。徹底的に再教育して、殲滅するからね。キャサリンと一緒に」
「ありがとうございます、クラリスさん!キャサリンさんも!」
「……すみませんでしたッッ!!私たちが、悪かったです!!許してくださいッッ!!」
と、何が効いたのか、突然平謝りを始めた踊り子さんたちを、クラリスさんの取り成しに免じて渋々ながら、今回に限り許すことにして。
一応、丸く収まったところでクラリスさんが忘れかけてた話題を切り出します。
「ところで、ドーラちゃん。さっきの話だけどね?」
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