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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第6章:女の決意・男の勘違い
  第6話:仲間を信じて

(ガーデンブルグ)
マーニャSIDE

昨晩は宿屋へ帰ってこなかったシン……
私達もそれなりに彼の行方を心配したのだが、『可愛い()が沢山居るから、アイツも頑張ってるんじゃないの?』と朝帰りのリュカが言うので、満場一致で納得してしまい深くは考えなかった。
しかし朝食を終えた頃に城の方から通達があり、罪人として捕らわれてることが判明し皆で城へ訪れている。

シンには直ぐに再会出来たのだが、牢屋で一晩を過ごした為かなり窶れている印象を感じる。
そして再会したのも束の間、私達はシンと共に女王の前へ連れてこられた。
今回の事件の経緯は勿論、何故私達まで罪人の様に此処へ連れてこられたのか全然解らない。

呆然と成り行きを見守っていると、今回の被害者と紹介された一人のシスターと会わされ、事件の顛末を事細かに説明された。
そしてそれが終わると、堰を切った様にシンが言い訳を始め、大まかな事が解ってきた。

「お前……馬鹿なの? 何で見ず知らずの男の家に、招かれたからと言って入っていくんだよ!? 相手が美女だったとか、相手がイケメンでお前が女だったとかなら解るけど……男のお前が男の誘いに乗るって、ソッチ系なの?」
シンには悪いが、リュカの意見がもっともだ!

「俺にだってソッチの趣味は無い! ただ……リュカさんみたいな非常識な人と拘わっていると、もっとまともな人間との繋がりを求めてしまうんだ! アンタ達全員、リュカさん達に毒されて非常識集団に成り代わってるじゃないか! もう俺には拷問なんだよ……」
酷い言われ様だ。私の何処が非常識だと言うのだ?
まぁ……妹と同じ男の愛人になってるのは非常識だと思うけど……

「止めんか!」
リュカとシンが口論していると大声で止めさせ、遂に女王様が話しかけてきた。
この状態だ……きっと女王は一方的に罪を押しつけ、贖罪させようと考えてるんだろう。

私は皆に目配せをし、全てリュカに任せる旨を合図する。
商人すら泣いて値引きに応じさせる男だ……我々が下手なことを言って混乱を増大させるより、任せきって強引に罪を免れる方が賢明だろう。
それが出来る男こそリュカなのだから。

「お前達は何か勘違いしてないか? 妾は、この場に盗人を……それとその仲間等を召喚したのであって、お前等が被害者ではない。聞いてれば男に騙されたなどと戯言(ざれごと)をほざきおって……虚言(きょげん)を言ってないで、お主等の罪を認めよ! 全員で徒党を組み、シスターに下賜したブロンズの十字架を盗んだと白状せよ!」

「あちゃ~……僕達全員泥棒さんじゃん(笑)」
「何笑ってんだよ!? 俺がそんなことする訳ないだろ!」
「そうです女王陛下。彼は世界を混沌から救う伝説の勇者です! その彼が盗みなどする訳ございません。サントハイムの王女である私が、彼の潔白をお約束します」

「ほぅ……お主はサントハイムの姫君か。そう言えば何時ぞやにも『サントハイムの姫君が誘拐』の事件が起きたのぅ……しかもそれは偽者だったと言う事だ。お主も名を騙ってる偽者では無いのか? サントハイムは魔族によって滅ぼされてとも聞いてるからのぅ」

「何だと!? 私は正真正銘のサントハイム王女だ! 閉鎖された国で何も知らずに生きてきた女王が、偉そうに疑ってんじゃないわよ! ブッ飛ばすぞこのアマ!」
「ほっほっほっ……随分と粗野な王女様だ事。とても王族とは思えぬ品の無さよのぅ!」

「しょうがないよ、アリーナは姫さんに見えないのが売りなお姫様だからね(笑)」
「笑い事じゃねーぞこの野郎!」
一向に事態が改善されないのに、リュカが楽しそうにしている為、アリーナも怒り心頭だ。
(リュカ)は何時になったら例の強引さを見せてくれるのだろうか?

「まぁまぁシン君もアリーナ姫も落ち着いて。リュカさん……俺達は非常に困った状態にあるのは解ってますよね。その上で事態を改善させようとしないのは、相手が女性でフェミニスト精神が妨害してるからですか?」
何だフェミニスト精神とは?

「ん~……まぁ、そんなとこ。後でご馳走になる予定だから、今はあんまり波風立てたくないんだよね」
今更だが何て奴だ……
波風を立てたくないとか、そんな状況では無い事は解ってるだろうに!

「ではリュカさん……俺がこの場を引っかき回しても問題ないですね?」
「あはははは……お手並み拝見させてもらいましょう!」
どうやらリュカが動かないので、弟子のウルフが解決(我らに都合の良い様に)するらしい。

「何じゃ若いの……お主も何処ぞの王族で、その盗人は信頼に値すると言うつもりか?」
「残念ながらオバサン……俺は王族じゃないんですよ(笑) それに彼が勇者とか、そんなどうでも良いことを言って時間を無駄にするのも趣味じゃない!」

「ほう……では何だと言うのかな?」
「そもそも今回の窃盗事件は何故に発覚したのですか?」
ウルフは一人、我々の集団から抜け出て、女王の前に対峙する。
流石はリュカの弟子だけあって良い度胸をしている。

「先程説明があっただろう……そちらのシスターの家でブロンズの十字架を盗んでる現場に、彼女(シスター)が居合わせた為、現行犯で逮捕したからだ」
「ほう現行犯逮捕……では実際に逮捕した方は何処に居ますか?」

「メリッサ……こちらへ来なさい」
わざとらしいウルフの問いかけに、ウンザリした口調で女王が一人の兵士に声をかける。
そしてメリッサと呼ばれた兵士は、女王とウルフの間に立ち、キツい瞳で我々を睨み続ける。

「貴女がシン君をシスターの家で逮捕した兵士さんですか?」
「はい。私がその男を窃盗犯として逮捕しました!」
好意の欠片もない口調の兵士……
ウルフはどうするのだろうか?

「では……貴女が彼を泥棒だと判断した要因は何ですか? 嫌いなタイプの顔だったからですか? それとも今日は何か機嫌が悪かったからですか? ああ、もしかして月に一度のアレだったからかな?」
ニヤニヤ喋るウルフ……味方の為に頑張ってるので無ければ、しこたまムカツク口調だ!

「そんな理由ではない! 私がシスターの家の側を通ったら、家の中から『泥棒』と聞こえてきたから、慌てて室内へ入ったのだ! そうしたら一人暮らしのシスターの家にその男が居り、十字架が盗まれたと騒いでる家主(シスター)が居たのだ。だから私は窃盗犯として、その男を現行犯逮捕したのだ!」

「なるほど……では罪を認めます。彼は罪を犯しました」
「ほう、形勢が不利だと解ったか!」
ちょ、ちょっと……どうしたのよウルフ!?
盗んだことを認めちゃダメでしょう!

「勘違いしないでください。我々が認めた罪とは、シスターの家に不法侵入したことです! 窃盗罪ではない!」
「はぁ? 何を言ってる……不法侵入したのを認めると言う事は、十字架を盗んだことを認めるのと同じだろう!」

「あはははは、この国の女共は馬鹿ばかりだな! 彼が盗んだ証拠が何処にある?」
「何を言うか!? その男がシスターの家に居り、大切にしまっておいた十字架が無くなってれば、答えは一つだろう!」

「分かった分かった……俺が今、馬鹿でも解る様に説明してやるから。大人しく聞いてろよ……」
「ぐっ……腹の立つ男だな!」
「メリッサ、その者の言う事を聞いてみましょう」
今にも腰から剣を引き抜き襲いかかりそうだったのだが、女王がそれを止め話を聞く様促す。

「今から仮定の話をするから、皆も想像しながら聞く様に。では……ここが君(メリッサ)の自宅だと仮定しよう。そこに俺(ウルフ)が泥棒する為に侵入した。俺は目的の物……そうだな、その兜にしよう。貸して」
ウルフは大きなジェスチャーを織り交ぜ話し始め、メリッサから被ってた兜を借りる。

「見ての通り、俺は君の自宅で君の兜を盗んだ。そこへ君や他の兵士が、この場に現れたとする。さて、俺はどう見える?」
「どうもこうも盗人だ!」

「何で泥棒に見えるのかを聞いている! 感情で答えるんじゃない!」
「くっ……それは、兜! その兜は私の物だからだ! お前が手に持ってる兜は、私の物だ、それを持ってる時点でお前は泥棒だろう!」

「その通り! 俺は君の兜を持ってる。他人の家に侵入し、その家の物を持ってれば、それは即ち盗んだと言って差し支えない!」
「あぁなるほど……」
此処までの会話を聞いて、マリーが突然納得した。

「女、何がなるほどなんだ!?」
「本物の馬鹿ねアンタ……ウルフの説明を聞きなさい」
まだ理解出来てない兵士(メリッサ)の反応に、冷ややかな口調で続きを聞く様吐き捨てるマリー……彼女(メリッサ)は悔しそうだ。

「続けるぞ……物を盗むと言う事は、盗まれた物が存在するんだ。シスターの『泥棒』と言う叫び声を聞いて、即座にやって来たのは貴女だ。そして勿論、即座に逮捕したのも……牢屋へ連れて行ったのも貴女だ。さて……窃盗犯であるシン君が盗んだという『ブロンズの十字架』は今何処にあるのだ?」

「ど、何処にって……その男が……」
「おいおい、逮捕した時に確認しなかったのかよ!? 盗ったかどうかも解らないのに、一方的な決めつけで投獄したのかよ!? どうなってんだこの国の治安は? 女だらけだと碌に治安も維持出来ないのか!?」

「う゛……そ、その男が途中で十字架を捨てたんだ!」
「その証拠は!? 先程からお前の言い分には、証拠が一つも存在しない! 人様を罪人に仕立てるには、証拠が必要なのだと言う事を理解して頂きたい! 一方的な言い分で、他人を罪人に出来るのであれば、俺だって誰かを罪人にする……例えばお前だ! 先程も言ったが、(シン君)が嫌いなタイプの顔をしてたという理由だけで、罪をでっち上げ人生を台無しにしようとしている……とね」

流石だ……流石はウルフだ。

マーニャSIDE END



 
 

 
後書き
女王様は若いです。
ウルフよりは年上でしょうけど、若くて美人です。
だからウルフが女王をオバサンと言ったのは、怒りを煽って有利な立場に持って行く為です。

まぁ「だから何だ?」と言われればそれまでですけど…… 
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