ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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DAO:ジ・アリス・レプリカ~神々の饗宴~
第九話
前書き
はい、皆様マキシマムお久しぶりです、Askaです。
お待たせしました!!『神話剣』DAO編、第九話をお届けします。
本日はついにコクトさんの登☆場!!それではレッツゴー!!
パチ、パチ、パチ、とたき火から火花が散る。
無表情で座るコクト。全力土下座中のカズ。苦笑いするハクガ。我関せずのリーリュウ。そしてその状況を打破するためにはどうするか、絶賛アイディア募集中のセモン。
「(なぜだ……どうしてこうなった……!)」
物語は、半日前にさかのぼる――――――――
*
《縛鎖の城》を進むセモン達は、ようやくその本丸を見据えるところまでやってきていた。
「いや~苦労したぜ」
「思ったよりも時間がかかりましたね」
「仕方ないだろう。セモンをレクチャーしながらだったんだ」
「ごめん……」
リーリュウの言葉に責められているような気がして、セモンは思わず謝ってしまった。現実世界では恐らく自分が最も年上だが、この世界では彼らの方が先輩であり、彼らの方が強者なのだ。
セモンの謝罪を聞いて、ハクガが苦笑しながら言う。
「謝らないでください。セモンさん。僕たちもいつもと違う戦いができて新鮮でしたから」
「そうだぜ?いつもなんてリーリュウが……」
「それ以上言うな」
リーリュウの険しい顔と一言。また何か黒歴史でもあるのだろうか?
「さて、それよりもそろそろ急ぎましょう。コクトさんに追い抜かれてしまいますよ」
「うお!?それはやべぇ!!師匠――――――!」
カズが一目散に本丸内部へと突入していく。
「……カズは本当にコクトさんが大好きだな」
セモンの呟きにハクガが笑う。
「別に《へんなひと》なわけではありませんがね。尊敬する人というのは大切にしたいものです」
「……ハクガ?お前たまに変な言葉遣うよな」
「気のせいですよ、リーリュウ。さぁ、行きましょうか」
背中から《セレーネ》を抜き、そこに光の矢をつがえるハクガ。リーリュウも二刀を抜き、構える。
「それじゃぁ、俺も行きますかね……」
セモンも刀を構える。
先行したカズを追って、三人も本丸内部に踏み込んだ。
*
師匠と会うため無双するカズの力は圧倒的であった。
《ノートゥング》を振り回し、機械の騎士たちをぶった切る。斬る斬る斬る斬るぶった切る。斬って斬って斬りまくる。
「おらおらおらぁああ!!退け退け――――!!」
満点のドヤ顔で大剣が振るわれる。機械の破片が飛び散り、コードがブチブチとちぎれる。
「……なんか……違くね?」
「ええ。違いますね」
「もうほっとけ。元には戻らん」
勇んで本丸に突入したセモン達であったが、カズ無双によって出番は完全に奪われた。
「もうあいつだけでいいんじゃね?」
「間違っていませんよセモンさん。全くその通りです」
「俺達は帰っていいんじゃないのか?」
「さすがにそうはいきませんよ、リーリュウ」
殺戮の嵐の後を、平和に歩いていく三人。
「(……ハクガって癒し系だよな。立ってるだけで空気が和む)」
殺伐とした空気が、暖かなものに変わっていくような気がして、セモンはハクガを見た。
もともと優しい性格の少年だった。自分よりも他人の事を優先する人間だった。きっとそれが、この世界でも発揮されているのだろう。
幼いころを知っている少年が立派に成長したのを見るのは、セモンにとってうれしいことだった。
「(……なんか、おっさん臭いな)」
ひとりでに苦笑がこぼれる。
それもそうだ。セモンは次の誕生日で十九歳になるのだ。二十歳になるまでに、日本に帰ることができるだろうか……。
「(できるかどうかじゃない。帰るんだ。それまでに絶対に)」
セモンが拳を握りしめた、その時。
何かがものすごい勢いでセモンの横を通過した。《それ》はバウンドしながら吹っ飛んでいき、セモンの少し後ろを歩いていたハクガ達のすぐ後ろに落下すると、シュー、プスプスと音を立てて止まった。
「なんだ、これ……?」
「きったねぇボールだな」
リーリュウがそれを蹴っ飛ばす。すると、ゴロリと転がったそれに、顔があることが判明した。それも結構見覚えのある。
「「「ボールかと思ったらカズだったぁ――――――――ッ!!!?」
「どうしたんですか!こんなことになって……」
「天罰だ。先行しすぎた天罰が当たったに違いない」
しかし二人の言葉には全く緊迫感がない。
「なんかひどくないか?」
「いえいえ。これが通常運転ですから」
にこやかにハクガが答えた。
しかし。
「通常運転じゃ、ない、ぞ……」
「!?」
蹴っ飛ばされていたカズが立ち上がり、言った。
直後。
ドガ―――――ン!
という凄まじい爆発音が響き、何かがセモン達の前に姿を現した。
それは長い脚をもっていた。
鋼鉄の体に、光り輝く真紅の単眼。痛々しいコードを体中につないだそれは、合計十二本の腕それぞれに全く違う武器を所持していた。
「な、何だありゃ……」
「馬鹿な……あんなモンスター、《縛鎖の城》には出現しないはず!!」
セモンの絶句に、ハクガの叫び。
「まさか……試作モンスター?実験投入されていたところに、偶然出くわした?」
「偶然じゃねぇ。たぶん俺達に課された今回の試練は、こいつをぶったおすことだ!!」
カズの声に反応したかの様に、機械がこちらを向く。
『@;、”#¥)&’(%%$』
「なんていってるのか全く分かりませんよ」
ハクガが踊るように地面に模様を描く。ジャンプした彼の足には、翼の生えた靴が装備されていた。《ヘルメス》だ。
「俺もそろそろ本気出すかな……」
カズが《ノートゥング》を両手で握る。とたん、ガキン、という音とともに刀身が巨大化した。
「……奥の手を出す必要がありそうだ」
リーリュウが《エオス》を奏でる。その音に呼び出されたかのように、緑色の風が吹く。吹いてきた風に巻き上げられるように、岩たちが寄り集まり、小さなゴーレムを作り上げる。
「俺に力を貸してくれ、《神話剣》」
セモンも刀を握りなおした。
戦闘開始。
*
戦闘は困難を極めた。
エクストラモンスターは圧倒的な強度を誇り、リーリュウのゴーレムの突進や、カズの大剣がソードスキルを放ってもダメージを一向に負わないのだ。
「月神が命ずる!矢よ、穿て!!」
ハクガが術式を組み立てる。すると、彼の前に青色の魔法陣が現れ、そこから水の矢が飛び出し、モンスターを穿つ。
あれが、《六門魔術》……。
しかし、《六門魔術》をもってしても、機械の体は傷つかない。セモンも必死にソードスキルを放ち続けるが、全くダメージを追っている気配がしない。
「大地よ、我が声を聞け!!《グランド・ストライク》!!」
リーリュウの足元に展開した緑色の魔法陣。それは周囲に広がると、地面が隆起してモンスターを穿つ。
『##$%’()(&&R%(&%$##LJb)(+HUR%$$#』
理解不可能な言語で喋るモンスター。その腕に装備されたガトリング砲が火を噴く。
「がっ!!」
カズが被害を受ける。
「カズ!!」
ハクガが瞬時に術を組み、白い魔方陣がカズを包む。たちまちカズの傷はいえるが、ハクガに目に見える疲労がたまる。
これだ。これが厄介なのだ。
絶対的な防御力と、セモン達には許されていない、現代機械による攻撃。
それが、あまりにも厄介すぎる。
「どうする……このままじゃ、やられるぞ……!!」
「くっ……!!」
その時。
壊れた天井から差し込んでいる光が、陰った。
そして。
何かが、落下してきた。
『#$#((&V&'$#&&&||&&RR=~\\¥(!?』
エクストラモンスターが衝撃波だけで弾き飛ばされる。
《それ》が立ち上がった。瞬間、セモンはプレッシャーに押しつぶされそうになる。
「な……!?」
煙が晴れた時―――――そこには、一人の剣士が立っていた。
雪ん子のような意匠の白いフードに身を包んだ、ある《ものすごく特徴的な特徴》をもつその剣士は、氷の様に冷たく光る刀を携えていた。赤い眼がキッと機械の体を睨み付ける。
「お前か。エクストラモンスターとやらは」
その声を聞いて――――今まで伸びていたカズがばっと起き上がった。
「し、師匠―――――――――――――!!!!」
この人が――――!!
カズの師匠にして、最後のパーティーメンバー……
「俺の弟子たちを散々もてあそんでくれたようだな。倍返しだ」
剣士は、腰の鞘から《冥刀・凍》を抜刀し、構えた。
「手加減してやるから、本気でかかってこい」
《黒吹雪の剣士》コクト。
『#$’(BUGDYRIKO’’%’$I))('!!!》』
エクストラモンスターが、奇怪な叫びをあげて銃を乱射する。
「危ない!!」
「まぁ見てろって!俺の師匠は最強なんだからさ!!」
カズが期待に目を輝かせる。そして、それは直後に証明された。
戦いは、一方的、そして一瞬で終わった。
コクトは《凍》を一振りすると、左腕にふれるかふれないかの距離まで引き絞り、高速で抜きはらった。
剣風。
青白い衝撃波が飛ぶ。
機械の体が、バターの様に真っ二つになり、一瞬にして吹き飛んだ。
ドガ―――――――――――――――――――ン………
閃光と共に爆発。衝撃が地面を震わせる。
「さすがは師匠だぜ!!俺達があんなに苦戦したモンスターを一瞬で!!」
大喜びのカズ。
「つ、強い……」
セモンは知らずの内に呟いていた。
「(強い……これがカズの師匠……だが……こんなに強いのに……こんなに強いのに……)」
そして、セモンの眼はコクトの頭にある、その《あまりにも特徴的すぎる特徴》に向けられる。
「(何で、ウサ耳!?)」
そう。コクトのフードからは、二本の黒いウサ耳が伸びていたのである。
*
その夜。《縛鎖の城》最奥部にいたるまでの最後の休憩ポイントで、セモン達は休んでいた。
「師匠!!ギガ☆ありがとうございました!!」
「どこかで聞いたようなセリフを吐くなカズ。それにあの程度のモンスターを四人がかりで倒せないとは何事だ」
「いやぁ、申し訳ない」
自分もどこかで聞いたようなセリフ遣う癖に……というカズのつぶやきが聞こえた気がするが、それはコクトの鉄拳がカズに振り下ろされたことによって消えた。
ハクガの苦笑に、コクトはふん、と言って、今度はセモンに目を移す。
「で、今回やっとお前が来たわけだな、清文」
「え……?俺を知ってるんですか?」
「当然だろう」
よくよく見れば、コクトの顔はどこかで見たことが有るような気がする。
ジーっとコクトを見つめるセモン。そしてやっと、その顔に思い当たる人物を見つけた。
「あ――――!!黒兄!?」
「やっと気が付いたか」
雪村黒覇。姉の雪村白羽と共に、小波の手伝いをしていた、元《ディアボロ》のメンバーだ。
「そうかー黒兄だったのか~。どーりで強いわけだ」
もともと黒覇……コクトは、2Dゲームが異様に強かった。《抜刀術》系のスキルが使えるゲームでは、高速で抜刀をして一瞬にして清文を打ち負かしたものだ。
「白姉は元気か?」
「ああ。相変わらずの世話焼きだがな、あのバカ姉は」
はぁ~っとため息をつくコクト。セモンは懐かしい日々を思い出した。そうだ。あのころから、この姉弟は仲の良いけんかをしていた。小波が「俺達も仲のいい喧嘩して~」と愚痴っていたのを覚えている。
「これで全員が全員を知りましたね。それでは、明日にむけて休みましょうか」
ハクガがにこやかに言う。
「賛成だ」
やっとセリフが回ってきたリーリュウが右手を挙げて賛成する。
セモンは昨日の様にブランケットを取り出して、くるまった。コクトだけがその場で座禅的な物を組み、目を閉じた。
今日は、悪い夢は見なさそうだった。
*
事件はその日の丑三つ時に起きた。
セモンはつんつん、と肩をたたかれた。目をあけると、カズがにやにや顔で横にいる。
この顔は。旅行とかで真夜中にいたずらしようとする奴の顔だ……!!つい先日、アスナ達が旅行に出かけている反面でキリト達と旅行に出かけたセモンは、その日の夜のキリトの顔を思い出した。そして、その後のハザードの怒りようを。
案の定、カズは肝を冷やすようなことを言い出した。
「……なぁ、師匠のウサ耳、気にならないか?」
「え……?まぁ……」
ちらりと見ると、座りながらすうすうと寝息を立てるコクトの頭で、ウサ耳だけがなぜかゆらゆら揺れていた。
気になる。非常に気になる。
「だよな。俺も気になってんだ。……さわりに行かねぇ?」
「え?……だ、だめだろ……」
「大丈夫だって。俺達が近づいたらたぶん起きるからさ、ダメもとで」
カズに押し切られる形で、セモンはブランケットから抜け出すと、コクトに近づいた。
「あれ?おきねぇ。珍しい……まぁいいや」
カズがゆっくり手を伸ばす。
「おい、やめた方が……」
時すでに遅し。
「えいっ!」
なんかかわいらしい声と共に、カズがコクトの耳をつかんだ。
瞬間。
「ゴハァッッッ!?!?」
コクトは、口から血を吐き出してどさっと倒れこんだ。
「えええええええええ!?」
「師匠――――――――――――――――――!!!!」
ウサ耳弱点――――――――!?
かくして、物語は冒頭へと至るのであった。
後書き
コクトさんはきっと皆さんに気に入ってもらえたことでしょう!←確信?
さてさて、来たる十二月十三日、ついにこの神話剣が公開から一周年を迎えます!!
BGM「「いえ~い!ドンドン、パフパフ」」
……はい。で、日ごろお世話になっている読者の皆様方に、「このキャラにこんな質問がしてみたい!!」「作者、この疑問に答えやがれ!」といった質問を募集します!!それらの質問は十二月十三日公開の『祝!!一周年』にて回答いたします。
皆様、ふるってご質問ください!!非会員の方からの質問も受け付けております!!
それでは次回もお楽しみに!質問待ってます!!
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