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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:~神々の饗宴~
  第八話

 《縛鎖の城》の城内跡地でたき火をたきながら、セモン達は食事をとっていた。すでに周囲には夜のとばりがおり、見上げれば満天の星空がひろがり、無数の星々が光り輝いていた。

「……なかなか見られない夜景だな」
「この世界じゃ珍しくないけどな。けど……やっぱり、結構珍しいかもしれない。いつもはこんなに星が出てない」
「セモンさんの到来を歓迎しているのかもしれませんね」

 セモンは口元を緩める。今日一日で、三人の仲間たちと随分打ち解けることができた。最初はそっけなかったリーリュウも、今は随分角が取れた話し方をしてくれるようになった気がする。

「みんな、焼けたぞ」
「おお~」

 1人たき火で料理をしていたリーリュウが、何なのかよくわからない者の肉の串焼きをもってきた。

「……リーリュウ、これは……何?」
「《砂被り蜥蜴(サンドリヨンザード)》の串焼きだ」
「《非攻撃性(ノンアクティブ)モンスター》だよ。砂漠エリアによく出る」
「味は……そうですね。焼き魚にした秋刀魚近いでしょうか」

 うまそうに串焼きを食べるカズとハクガを見て、セモンも一思いに蜥蜴にかぶりつく。思ったより焼き魚っぽい味が口の中に広がった。


 空を見上げると、星々が一際輝きを強めていた。いつの間にか夜が深まっていた。

「信じられない。現実ではこの瞬間が一瞬の間の出来事なのかも、なんて……」
「まぁ、今はシステム管理(セーブ)で此処での三日が向こうの一日くらいの時間になるだけだけどな」

 セモンの呟きにカズが答える。

「あ~あ、師匠、まだかなぁ」
「焦ってはいけませんよ、カズ。この三日の内には会えるんですから」
「そうか……そうだよな」
「カズは、コクトさんの事を本当に信頼しているんだな」

 セモンがカズに言うと、「あったりまえだろ」と笑って

「師匠は俺のすべての目標なんだ。俺は師匠に追いついて、あの人を超える。それだけを目標にしてきたようなもんなんだから」

 カズは言った。

「そうか……。目標、か……。そういえば、ハクガとリーリュウには師匠はいるのか?」
「ええ。いますよ。僕にはハクアさんという師匠がいます。第三階梯六門魔術師の弓使いで、このセレーネはもともと彼女の所持品です」
「俺の師匠はシリューレという名前の風使いだ。第四階梯の六門魔術師だった」

 だった……?

 セモンはリーリュウに問うた。

「適合者としての資格をはく奪されたんだ。理由はよくわかってない。今はDTLのメンテナンスをしている。あの人はそれで充分みたいだ……」
「そうか……いや、ごめん」
「別にいい。気にしていることじゃない」

「皆さん、明日も早いんですからそろそろ寝ましょう」
「とはいっても、現実じゃぁ数時間の出来事なんだけどな」

 カズの言葉に苦笑いを返し、セモンはブランケットを取り出し、羽織った。

 目をつむる。いつの間にか、眠りに落ちていた。


 
                    *


「清文、清文」
「何だよ、琥珀……」

 隣に座る琥珀が清文をゆすり起こす。どうやら気付かないうちに眠ってしまっていたようだ。

「もう。清文ったら。映画終わっちゃったわよ」
「ああ……最後の方見てなかった」

 まったくもう、と言いながらも、琥珀は笑ってくれる。

 長い、長い夢を見ていたような気がする。とても嫌な夢だった。

 清文は、急に隣にいるコハクが何かうつろなもののように感じられてしまった。

「琥珀」
「なぁに、清文」

 琥珀の顔を見る。ちょっと上気した頬。怪訝そうに寄せられたきれいな形の眉。

「琥珀……どこにも、行かないでくれ。俺から離れていかないでくれ……」
「な、なによ、急に……大丈夫。どこにも行かないわよ」
「……約束だぞ」
「うん。約束」

 琥珀の笑顔。清文は、琥珀の笑顔が大好きだった。

 清文は安心して、その細い体を抱きしめる。


 ふいに、手の中の感触が消える。

「!?」

 見渡せば、あたりも先ほどまでの人通りの多い街並みではなく、真っ白い空間だった。

「琥珀!?」

 琥珀もいなくなっていた。必死になってコハクを探す清文。

「琥珀…琥珀……!!」

 彼女の名を叫びつづける。彼女の姿を探し続ける。どうして。どうして。いま、約束したばっかりじゃないか……
 



「逃げられないよ、清文」




 その声にハッとして後ろを振り向く。

 そこにいたのは、自分とよく似た顔をした女。清文が大嫌いな、その顔。




「逃げられないよ、清文」




 小波はもう一度繰り返す。




「お前は、私から……俺から、逃げられない」




 小波が歪んだ笑顔を浮かべる。いつの間にか何もなかった場所には、純白の城が現れていた。

「やめろ…………!返せ……!!返せ返せ返せぇ!!琥珀を返せぇえええええええ!!!!!」

 いつの間にか清文は《セモン》の姿になっていた。右手には、《天叢雲剣》が握られていた。

「うわぁああああああああああああああああああ!!!!」

 《神話剣》27連撃、《アラブル・ランブ》―――――――――――

 

                   *


「ああああああああああああ!ああああああああああああああああああああ!!!」
「セモンさん!!セモンさん!!」
「セモン!!おい!!セモン!!」
「目を覚ませ!どうしたんだ!!」
「はぁあああっ!はぁああっ!はっ……あ……」

 弾かれるように目をあけると、そこには不安げに自分を見下ろす三つの頭があった。

「ハクガ、カズ、リーリュウ……」
「ああ、やっと起きた。おはようございます、セモンさん」

 ハクガがほっとした表情を浮かべる。

「俺は……一体……?」
「すげぇうなされてた。どうしたんだよ?」
「俺達はお前の叫び声で起こされた。のた打ち回って、やみくもに剣をふるって……押さえつけるのに苦労した」
「そう、か……ごめん」

 セモンは素直に謝る。ハクガは笑った。

「いえいえ。大丈夫ですよ。それより、コクトさんがダイブしたそうです」
「マジで!?」
「はい。あと一時間ほどで合流できますよ」
「よっしゃぁああああ!!」

 カズがガッツポーズをとる。

「それではみなさん、先に進むとしましょうか」
「おう!」

 立ち上がるハクガ。威勢のいい声をあげてカズも立ち上がる。

「……セモン、行くぞ」
「ああ」

 リーリュウに促され、セモンも立ち上がる。

 あの夢。

 この世界は、単なる最新鋭仮想世界ではない。

 小波は、いったい何をたくらんでいるのだろうか。

「(小波……絶対に、お前が何をたくらんでいるか聞かせてもらうぞ)」

 歩き出した三人を追って、セモンも足を動かし始めた。 
 

 
後書き
 お久しぶりです!!Askaです。

 長らくお待たせいたしましたDAO編最新話。

 次回はいよいよコクトさんの登場です!! 
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