もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
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四駿騎士KUROE・第10話
前書き
心の中の悪魔が「金貰ってるわけでもねえのにそんなもん書いてんのか?」とニタニタしながら聞いてきた。
心の中の天使が「継続は力なり、だぞ!」と無駄に精力的に励ましてきた。
邪魔で小説書けなかったから二人とも追い出した。ざまぁ。
11/19 調整
2015-12/21 調整
「いやだなぁ~、嘘なんてありませんよぉ。善良な市民である俺達がそんなせこい真似するわけないじゃないですかぁ~」
「それはまぁいいわ。問題は報酬の方、流石に保護者を通さず直接子供に現金を渡すのはいろいろ問題があるわ」
「あ、そっちですか?」
「貴方達はそうではないでしょうけど、私達の世界では十代の労働者はそこまで珍しいものではないわ。報酬を与えるに見合う仕事もしているならば支払自体には何の問題もないの」
「まぁ確かに、急に金使いが荒くなったら不審がられてもおかしくは無いですねぇ。ではこういうのはどうでしょう?」
現在僕らは次元航行艦あーすらと言う船でジュエルシード確保報酬の交渉をしていた。来てるのは交渉役の由良君と護衛の僕。宇宙戦艦なんてSFの世界ですね。
でも僕は当然ながら難しい話は分からないので、何やら大人の会話をしている由良君とリンディさんを尻目に別の事をしています。
「・・・実際にはデバイスなしで魔法を使う人も多いんだけど、戦闘になるとどうしてもこっちを使った方が有利なんだ。通信補助とかいろいろできるから結果的に魔力の節約になるしね」
「そうなんですか」
「・・・まぁ君のリンカーコアのサイズは僕の2倍くらいあるからそう簡単にスタミナ切れは起こさないと思うけど」
一緒に部屋にいたニルスさんと主に魔法についてとかデバイスについてとか。今まで詳しく知ろうとしなかっただけに貴重な時間だ。ニルスさんは一つ一つの説明がとっても丁寧ですんなり頭に入ってくる。そんなに歳離れてないと思うけど学校の先生みたいだな、と想ってたらニルスさん教導免許既に持っているらしい。マジっすか。
それはともかく魔法だ。先ずデバイスというのは魔法を使う時に補助してくれる凄いツールなんだそうだ。僕のデバイスことゼルギウスさんは「インテリジェントデバイス」という頭いいデバイスの一種らしい。正式名称はブラックナイトだっけ?
で、魔法は基本的にプログラムで形成されコントロールされる。そのプログラムは自分の頭の中で組むことも出来るけど、デバイスにインストールし手置けばそれをする必要が無いとか。
「ゼルギウスさん、ゼルギウスさんはどんな魔法使えるの?」
《転送、転写、一応飛行術式もある》
「えらく偏ってるけどかなり高度な術ばかりだね。飛び道具はないのかい?」
《無い。寄って斬れば問題ない》
「斬るの、僕なんだけど・・・」
それに例え非殺傷なる便利なものがあるからって、当たり所が悪ければ血が出てしまう。剣なんか鍛錬以外では振らないのが一番だ。・・・最近矢鱈とお兄ちゃんたちが二刀流を教えようとして困ったりもしてるが。
剣を交えればわかるのだが、お兄ちゃんもお姉ちゃんも稽古が好きすぎる。そのまま木刀と結婚してしまいそうだ。でもお兄ちゃんには恋人がいるそうなのでそうならないらしい。・・・お姉ちゃんは?とは聞かなかったけど。僕は空気が読める子なんです。
「うーん・・・管理局と関わるにせよ関わらないにせよ、流石にもう少し魔法を学ぶべきだねぇ・・・自分は大丈夫でも他人を助けるときに必要になったりするんだ、こういうの」
「他人を、助ける・・・」
ふと思い浮かべたのは妹のなのはとか、友達のすずか嬢とか。学校の友達だって守りたいし、今まで兄妹っていなかったから、昔誰かがやってくれたように僕も守ってあげられるかな。知らずの人も危険に晒されてるなら守ってあげたいけど。
騎士の仕事は良く分かんないけど、人の笑顔を守るのはきっと騎士道とかに反しないよね?
「所で気になってたんだけど、君は妹さんとかいる?」
「いますけど」
「君の妹さん、名前はなのはって言うんじゃ・・・」
「・・・・・・ひょっとして、ここに来ました?」
「今日も来るよ」
・・・・・・・・・・・・忘れてた。そういえばなのはは魔導師だってゼルギウスさんが言ってたじゃんか。完全に忘れてたって言うか聞きそびれてたよ。そしてここに来てるっていう事は、最近帰りが遅いのは此処で魔法を教わってるからか、それともお手伝いでもしているのか。家族に黙って。お父さんお母さんお兄ちゃんおねえちゃんに加え僕まで心配させて。
不思議とイライラがこみ上げてくる。近くにいる人に隠し事されたことはあんまりなかったせいか、どうにも裏切られた気分が大きい。背中からぶわりと湧き出るオーラにニルスさんの顔が引き攣っているが、これは家庭内の問題なので口出し無用です。
「・・・おしおき決定」
「て、手心は加えてあげてね?」
隠し事をした罰は重いよ?・・・え、僕?別に言わなくてもいいと思ってたのでノーカンですが?
「誓約書は受け取ったけど、ホラ。もしも不測の事態が起きた時のために質というか、目に見える担保が欲しいんですよねぇ~?」
「用心深いにも程があるわよ?そこまで疑われたら大人として傷つくわ。という訳でスイス銀行にほら、こんな感じでどう?」
「なぁんだ話が分かってらっしゃる!でももう一声欲しい所ですねぇ・・・」
「そう言うと思ってたわ。実はね、こんなのを考えてるんだけど・・・」
「へぇ・・・」
大人の交渉はまだ続いている。由良君はどれだけ報酬が欲しいのだろうか。
= = =
ぞくり。
「・・・どうしたの、なのは?」
「え?あ、ううん!何でもないよ!」
「?」
魔法の訓練をするために待ち合わせの場所へ向かう途中、偶然出会ったフェイトと談笑している最中、未だかつて感じたことのない悪寒が背中を駆け抜けた。・・・気のせいだろうか?それとも家族の身に何か起きたのか・・・(←惜しい)
「えっと、何かスポーツしてるのかって話だったよね?私、運動がてんで駄目なの。だからスポーツは全然やってないよ?」
「・・・嘘」
「へ?」
フェイトが先ほどまでよりも若干鋭い目でなのはを見つめていた。脚も止まっている。
「なのはの手には肉刺があった。あの肉刺の付き方は趣味や癖で付く物じゃなくて何か硬いものを握って出来る肉刺」
「そ、そう言われても・・・」
「言えないの?」
「・・・・・・」
まさかつい最近出会った女の子に「実は魔法少女してます」なんて言って通じるとは思えない。かといって下手な嘘をつくと余計に信頼を失うし、友達に嘘はつきたくない。唯でさえアリサやすずか、苗には何度か魔法関係で嘘をついている。
なのはの沈黙に、フェイトは暫く見つめた後、静かに目を閉じた。
「・・・そうだよね。こんな最近会ったばかりの身元も知れない子にそんなこと教える義理は、無いよね」
「・・・え?」
「ごめんなさい、たかがこの前会ったばかりの分際で、急にこんな話して。信頼が無いなら自分で勝ち取るから、気にしないで」
「ええ?ちょ、ちょっと待って・・・!」
ツインテールの角度が40度ほど下降し、見るからにしょんぼりしているフェイトになのはは焦った。フェイトの発言明らかには「自分には信用が無いから教えてもらえなくてもしょうがない」という意志が籠っている。無論なのははそんなつもりで言ったわけではない。何せ家族にも秘密にしている事なのだ。むしろたった2回しか会ったことが無いのに手肉刺の事をあっさり見抜かれたことに関心している位である。
しかし、言えない。魔法でそれなりに危ない目に遭ったことも管理局の人から言われた守秘義務もあって、どうしてもいう訳にはいかない。かといってここで言わなければフェイトは「本当に信頼が無いんだ」と勘違いして悲しむだろう。
「ち、違うのフェイトちゃん!これは秘密で・・・」
「秘密?」
「そ、そう!秘密の特訓なの!だから言えないの!」
見事なまでのごり押しだが、子どもの言い分としては悪くないかもしれない。子供というのは何かと秘密を作りたがるものだ。秘密基地がその最たるものだろう。
秘密という言葉に響きに何所か理解できる所があったのか、フェイトはツインテールの角度を20度ほど復活させた。
「秘密・・・そっか。秘密の特訓なら仕方ないね。私もいろいろ秘密の特訓した事あるし」
「だよね!でも秘密の特訓していることはここだけの秘密だよ!」
「ここだけの、秘密・・・!」
秘密の共有、と言えるかどうかは甚だしく疑問だが、友達というものを本や物語でしか知らないフェイトには特別な響きに聞こえたようだ。ツインテールの角度が更に30度上昇し、上機嫌状態になった。分かりやすいなぁ、と苦笑いしながらもどうにか誤魔化せた事に安心したなのはだった。
・・・が、残念なことになのはの受難は未だ始まってすらいないことに、彼女は気付いていない。
= = =
「ん?バリアジャケット無いのか?」
「ありますけど、見た目が全身甲冑なので展開しているのは剣だけです」
妹へのドッキリ敢行下準備で僕は訓練スペースへ移動して来た。ついでにニルスさんに加え暇してたらしいクルトさんとマリアンさんも寄ってきてやんややんやしている。淡い桜色の髪を後ろで結わえたマリアンさんはリボンの端にぶら下がってるゼルギウスさん本体をつついて揺らしている。一緒に僕のヤシの木みたいな髪もゆらゆら揺れる。気のせいか、遊んでません?
「アームドデバイスを二つ内蔵したインテリジェンスデバイスって意味わかんないわよ。誰が作ったのかしら本当・・・」
「というかこれデバイスなのかな?剣の方なんかロストロギアと言われた方がしっくり・・・」
『提督!艦内に2つの小型ロストロギア反応が!!』
『狼狽えるな!管理局軍人は狼狽えない!!』
『提督が砂糖の容器にお茶入れ始めた!?』
『母さん逆、逆!!』
「・・・バリアジャケットは複数パターン用意することが可能だ。ほれ、ここの設定で・・・」
「クルト。君のスルースキルは前々から尊敬に値すると思っていたけど偶には気にしようか」
「それはお前の仕事だろ。俺はやらんぞ興味ないし」
「アンタ究極に自己中よね。ニルスの爪の垢を煎じて飲んだら?」
「汚いから断る」
「ちなみにそう言うマリアンは気にしてくれるのかな?」
「私より適任がいるからやんない」
「・・・だよねー」
大体3人の人間関係が見えてきました。ニルスさん頑張ってください。草葉の陰で応援してます。
《少年、草葉の陰とは冥府の事だぞ》
『一回死んでますから』
《言い得て妙だが今は生きているだろう?》
それは確かに。家族もいるし今だってこうして妹のために準備を・・・あ、ジャケットアーマー形成の準備が出来た。
ライダー・・・変・身!!ピュインピュインピュインとよく分からない擬音を立てながら僕の服装が変化していく。
両腕は黒塗りの篭手に、両足も同じく黒いブーツ。だが何故か体の要所に付けられたプレートは赤いカラーリングだ。何でだろうか?用途の解らない幾つかのベルトで留められた簡素な上着の胸部には、これまた鎧とは違い赤のプレートが張り付いている。縫い目ないのにどうやって張り付いているのかが謎で仕方ない。仕上げとばかりに背中に外側黒で内側赤のマントがばさりと揺れてバリアジャケット軽量化バージョンが完成した。
「厳ついなぁ・・・聖王教会の”自称”騎士どもより余程騎士っぽいぞ」
「君はまたそうやって教会の悪口を・・・」
「でもせっかくの鎧もこのあどけない顔とはミスマッチだわ」
マリアンさんが無遠慮に頬をプ二プ二つついてくる。クルトさんとニルスさんに比べて明らかに年下なマリアンさんは地球で言う飛び級をしたらしく、他の2人より3歳若いらしい。女性に年を聞くのはマナー違反なんていうが、まだ子供ほどの年なら大して関係ないなと思った今日この頃。
それはさておき。
「なのは、いつ来ますか?」
「既に艦内にいるよ。さっき呼び出し下からもうすぐ来るよ・・・手加減してあげてね?」
なのは、お兄ちゃんは怒ってますよ。おこどころじゃなく激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームですよ?何に怒っているか良く分からないほど怒ってます。よってこれから行われるのは・・・お仕置きと言う名の憂さ晴らしなどではありません。
「・・・絶対聞いてないな」
「私も昔お兄ちゃんに隠し事して大変なことになったわ。兄妹ならよくあることよ」
「いや君の所のお兄さん方は明らかに別格だからね?」
なお、マリアンの兄は二人おり、長男の渾名が『爆砕神父』で二男の渾名が『暴走兵器』だったりする。
――なのはが訓練場にたどり着くまであと1分。
後書き
文字数的に多くなったので分割です。
次回「もしもチートなのは外伝」に続く。
ちなみにマリアンの言うお兄ちゃんは2人の兄の内長男の方です。設定だけだけどぶっちゃけかなり化物です。
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