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エターナルトラベラー

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第七十一話

 
前書き
登場キャラを最小にしてのsts編です。
SAO編以降に士郎さんと桃子さんが話題に出ていなかったのですが、実は…と言う事です。 

 
皆さんは転生と言うのをご存知でしょうか?

私はあまり信じていませんでした…実際に経験してみるまでは。



私の名前は『高町ななな』

周りからは『ななちゃん』と呼ばれてます。ミッドチルダにあるst.ヒルデ初等科3年生です。

さて、苗字でお気づきの方も居るかも知れませんが、私はなんと高町なのはの妹と言う事なのです!

しかも前世の記憶もありますし、リリカルなのはは私が死ぬまでに出ていた『Vivid』及び『Force』までは記憶にあります!

高町なのはの妹に生まれたと言うときは、混乱したけど、落ち着いたらかなり喜んだものです。

だって、なのはやフェイトの出会いとかを間近で見れるかもしれないし、一緒に戦ったりとか、管理局の仕事は面倒そうだなぁとか考えたりした物です。

しかし原作のP・T事件や、闇の書事件に関われるかもと言う望みは目の前になのはお姉ちゃんとフェイトお姉ちゃんが現れた瞬間に崩れ落ちました。

だって、すでに9歳くらいだったのだもの…

二つの事件が終わっているのかいないのかに関わらず、私0歳…どうやっても無理ジャン!

しかもっ!

しかもですよっ!この世界に私よりも早く現れた転生者によってすでに改変されていたなんてっ!

フェイト・T・ハラオウンだったはずのフェイトお姉ちゃんの名前は御神フェイトだし、八神一家はすでに地球から離れ、グレアム提督のもとミッドチルダで生活しているとの事。

その時の私の絶望と言ったらもう…

でも私はまだポジティブだった。

まだsts編があるじゃないっ!

それに将来かっこよくなるのは保障済みのエリオ君が居るじゃない!と。

そこで私は『はっ!だけど私にリンカーコアが無ければ結局関われないじゃんっ!』と言う事に気が付いて、一生懸命意識を集中して魔力を感じようとしたの。

だけど、これが思わぬ結果を招く事になった。

私が一生懸命感じ取ろうとしていた事が切欠で高町家を暴発した私の魔力が吹き飛ばしてしまったのだ。

なんとか内部破壊のみで全壊は免れたけれど、ガラスは割れ、私物は吹き飛ばされて粉々に…

…後で冷静に考えれば当たり前だった。

だって私、魔力術式とかまったく知らなかったもの。魔力制御すら出来ないのに一生懸命感じ取ったり開放しようとしてたりしたらそりゃ暴発するよね…

消防車が駆けつけたり警察が来たりしたが、奇跡的に死傷者はゼロ。

瞬間的になのはお姉ちゃんがシールドで守ったそうだ。

しかし、これで魔法が家族にバレる事になったらしい。

先の闇の書事件ではバラさなかったようだ。

行き先が無く、しばらくの間居候させて貰っていた御神家で高町家全員を前に転生者であろうアオお兄ちゃんが四苦八苦しながら説明していた。

さて、普通なら次からやらないようにすれば良いだけだったんだけど、私がまだ赤ん坊だった事が問題になる。

どうやら私の魔導資質はSSSオーバーらしい。

一応リミッターを掛ける事も出来るらしいのだが、完全封印だとまだ赤ん坊の私にどんな影響が出るか分からない点、さらに赤ん坊ゆえにまた今回のような事が起こらないとも限らない点が問題になった。

そこでアオお兄ちゃん達はハラオウン一家を頼ったらしい。

リンディさんに事情を説明すると回答は物心が付くまではミッドチルダか、それに並ぶ管理世界で過ごした方が良いだろうと言う事だった。

私も物心…と言うか、ちゃんと魔法の勉強が出来るまで二度とやるつもりは無いが、その当時の彼らにしたらいつ爆発するかもしれない爆弾を抱えているようなものだったのだろう。

結局私とお父さんとお母さんはミッドチルダに移住する事に。

え?他の兄弟はどうしたかって?

恭也お兄ちゃん、美由希お姉ちゃんは成人も近いので今更別の世界での生活なんて想像できず、なのはお姉ちゃんも断固拒否だったそうだ。

恭也お兄ちゃんは忍さんがいるし無理だとしてもなのはお姉ちゃんは魔導師だし付いてくるものと思っていたのだけれど…アオお兄ちゃんと離れたくないそうだよ…アオお兄ちゃんェ…

結局お姉ちゃん達は御神家に居候…恭也お兄ちゃんは抵抗したようだが忍さんに月村家に連れて行かれちゃった。

どうやら忍さんに手放す気はないようである。

それに大学を卒業したお兄ちゃんは正式に結婚して月村姓になって、今や子供が居るんだよ。

話がそれた。

結局私の所為でお父さんとお母さんは翠屋を松尾さんにゆずり、金目の物はお金に変え、それをリンディさんの手引きでミッドチルダの貨幣に換えて貰って子供の養育費と当座の生活費に変えてミッドチルダに移り住んだ。

一応生家である海鳴の家は私が大きくなったらまた海鳴に戻るかもしれないと、管理を御神紫さんに任せて手放さなかったようだけど。

しかしお金が足りず、管理局から援助して貰う代わりとして私が成長したら管理局従事5年の勤労が約束されてしまったが、私の自業自得だし私に文句は無い。

ただ、お父さんとお母さんは私の未来を束縛してしまう事をどうにか避けようと必死に頑張ったのだが、まったく別の国に行くにあたり、保障や保険を期待できる訳もなく(自国民でも無いし、税金を払っている訳でもないのに国庫は使えないでしょう)…それでも管理局内の制度として、私みたいなケースが過去にも有ったらしく、管理局従事を約束する事での無担保での借金となったわけだ。

その借金も私が5年間働けばチャラと言うものだし、その後の人生は好きに生きて良いらしい。

ただ、その五年で管理局内部に引き込んで手を離さないようにするんだろうけどね。

あー。自分の事ながら面倒な人生になりそうだ。


それでも楽しみながら第二の人生を送っていたのだけど、状況が動いたのはやはりそろそろsts編が始まろうかと言う頃。


「新設の部隊に参加して欲しい、ですか?」

そう、私ははやてさんの話を聞いて呟いた。

ミッドチルダにあるマンションの一室に招き入れた八神はやてさんが私達家族を集めて話があるとの事で、お茶を出して話を聞いたら六課への勧誘話だった訳だ。

「だが、まだなななは9歳なんですが」

お父さんがすかさず反論する。

このミッドチルダは比較的就業年齢が低いとはいえ、元々日本人のお父さんには受け入れがたい現実だった。

「わかってます。しかし、この話はそう悪い物では無いと思いますが」

そうなのだ。

管理局従事5年が決定されている私だが、この六課への入隊と一年間の実働期間が過ぎれば先の約束は反故になるとの条件だ。

相手の好意からくる物だけにお父さん達も断りづらい。

確かに幼少の1年で将来の5年が自由に出来るのは一考の余地がある。

まあ、はやてさんにしてみれば幼いながらもSSSの魔力量を持つ私を戦力として組み込みたいのだろう。

その事で色々無理をしてこの好条件での勧誘なのだ。

「しかし…」

お父さんが渋る。

だけど、私は…

「お父さん。私行きたい」

「ななな」

沈痛な表情を見せるお父さんには悪いけれど、私はこのチャンスを逃す事は出来ないの!

だって六課に行けばエリオ君に会えるでしょ!

だから行かないなんて選択肢は私には無いのよ!

その後お父さんとお母さんを説得する。

それはもう、必死にあの手この手を使って。

「……ななながそこまで言うのなら、仕方ないのかな?桃子さん」

「ええ、子供の成長は早いものね」

よしっ!説得成功。

こうして私は機動六課への入隊が決まった。


さてさて、生エリオ君である。

それはもう、カッコかわいかったわ。



さて、後は原作知識を使って事件を良いように…いいように?

しまったーーーー!?

余りにも考えないようにしていたから初めから破綻している事に気が付かなかったの。

そう、今のこの部隊にはなのはもフェイトも居ないのである。

え?キャロちゃん?

彼女は海鳴の御神の家の子になっているらしいですが何か?

それを認識したのがコール名を聞いたときだ。

私、ソード3だって…

ソード…

シグナムさんが部隊長なのである。ついでに副隊長は居ない。

ついでにソード2がエリオ君、ハンマー2がスバルさんで3がティアナさんだ。

ハンマーよりはマシだったと心底安堵したものだ。

しかし私の魔力がSSSなので隊長達にリミッターを掛けてもこれで保持戦力ギリギリだとか…

私達の訓練は本局から出張してくれるハイゼット・グランカーゴ一等空尉とヴィータ隊長が見てくれるらしい。

だれ?ハイゼットさんって。

私の記憶にはまったく出てこない所をみるとモブキャラだよね…

だ、大丈夫かな…

そんなこんなでも、フォワード新人達を集めての最初の訓練。

レイヤー構造の建物にガジェットが数体飛んでいる。

首に掛かった宝石タイプの私の相棒を取り出す。

「行くよ、ガンブレイバー」

『スタンバイレディ・セットアップ』

足元にベルカ式の剣十字の魔法陣が浮かび上がり、待機状態を解除。

バリアジャケットは展開が許されていないので服はそのままだ。

片刃の刀身に機械的なフォルム。

小烏造りの剣先には左右にいくつもの排出口を備え、魔力弾の発射や余剰魔力の排出を行う。

グリップはマスケット銃のような曲線を描き、人差し指を引っ掛けるようにトリガーがあり、その上には魔力カートリッジ用のシリンダーが設置されている。

リボルバー式で最大装填数は6発。

そうだなぁ、ECディバイダーが一番形状としては近いかもしれない。

このデバイスは射撃も斬撃もと欲張ってアオお兄ちゃんに無理を言って作ってもらって特注品だ。

ハーレム野郎で「リア充爆発しろっ!」と心の中で日々怨嗟していた私だけど、この子を作ってくれた事だけは大いに感謝しよう。

「えっと、なななとエリオだったかしら」

「「はい」」

ティアナさんの問いかけに私とエリオくんの返事が重なった。

「エリオは接近タイプよね?…あなたは射撃タイプかしら?それとも接近タイプ?」

私のデバイスを見ただけでは判断がつかなかったのだろう。

「どちらもそこそこやれます」

「そう、それじゃあんたはあたしと一緒に今回はバックスでスバルとエリオの援護でいきましょう」

「はいっ!」

ティアナさんとスバルさん、私とエリオくんに分かれて二グループに分かれたガジェットドローン1型を追う。

空を翔る私とエリオくん。

…あれ?

エリオくんって空飛べないよね?

どういう事?

「僕が先行します。援護をお願いして良いですか?」

「えっと、はい…」

空中から一気にガジェットへと接敵して一刀の基に切り裂いたエリオくん。

それでも何体か逃げちゃって…

「ガンブレイバー」

『シューティングフォーム』

グリップ部分が折れ曲がり、バレットが伸びてより銃の形態に近くなる。

左手で銃身を支えると薬きょうが排出される。

『ロードカートリッジ・アクセルシューター』

本当はシューティングフォームで無くても撃てるけれど、制御と射撃性能を向上させているこっちを今回は選択。

私はシューターを強化してガジェットのAMFを上回れる強度まで強化。

「シュートっ!」

カチッと小気味のいい音を立てて一発のシューターがガジェットに迫る。

その一発は一体のガジェットを貫き、そのまま誘導して二体目も撃破する。

プシュー

『ブレイドフォーム』

余剰魔力を排出してフォルムチェンジ。

初めての訓練は特に問題も無く終了した。

ティアナさんとスバルさんには目立った違いは感じられないけれど、エリオくんは違いすぎる。

これはいったい…?

もしかして彼は…私と同じ…?



訓練が終わり、昼。

昼食と皆との友好を深めるために新人フォワード陣4人で六課内に設置されている食堂へと移動した。

内装は硬いイメージの社食と言うよりは、こじんまりとしたお洒落な喫茶店と言った所。

「わー、ティア、みてみて。ケーキまで置いてあるよ」

「ちょっとスバル。少しは落ち着きなさい」

ショーケースの中にある幾つかのショートケーキやシュークリーム。

確かに社内食にしては豪華だよね。

「何名様ですか?」

唐突に声を掛けられて振り向くと、そこにはウエイトレス姿の金髪ツインテールの女性が待っている。

「え?あっえっと…」

「四名です」

困惑する私を放って置いて、ティアナさんが答えた。

「それではお席のほうへと案内しますね」

そう、何てことも無いような感じで席へと案内するその女性。

「ちょっちょちょちょ…ちょっとまってっ!」

私の声に皆の視線が集まった。

うっ…と少し臆されながらも私は疑問を口にした。

「何でここにフェイトさんが居るの!?」

そう、私の目の前に現れたのはフェイトさんだったのだ。

「え?何でって、ここで働いているから?」

「そう言う事じゃなくて!?」

「あれ?なななは知らなかったの?」

知らなかったって何が?

「私達が六課に一年間出店するって」

え?

私の混乱をよそにエリオくんがフェイトさんに話しかける。

「フェイトさん、お久しぶりですね」

「うん、エリオ。お久しぶりと言うほどでも無いよね。この店を出すために結構はやての所には顔を出してたし」

「はい」

うん?

八神部隊長の家に顔を出すのとエリオくんと面識があるのがどう繋がるっていうの!?

だれか私に教えてよ!だれかーっ!







どういう事と厨房まで突撃した私が目にしたものは、忙しそうに働いているアオお兄ちゃん、なのはお姉ちゃん、ソラお姉ちゃんと、シリカ姉ちゃん。

キャロと紫さんはいないようだけど、アオお兄ちゃん関連がほぼそろっていた。

「ななな、厨房は関係者以外立ち入り禁止だよ」

掛けられた声に顔を向ける。

「アオお兄ちゃん…いったいこれはどういう事なの?」

「…テンプレと言うものらしい」

は?

「っ確かにっ!六課食堂入りはテンプレではあるけれど、普通教導官入りじゃない?」

私が発した言葉にアオお兄ちゃんの目が細められた。

あっ…私自身は今まで誰にも自分が転生者だって言った事は無かった事を今更ながらに思い出した。

しまったっ!と思ったけれど、アオお兄ちゃんは追及することは無かった。

「まあ、諸事情によって一年間、俺たちがここで翠屋ミッドチルダ二号店を営業しているって訳だ」

何でも無い様にそう言った。

関係ないことだが、翠屋ミッドチルダ一号店はお父さんとお母さんが経営している。

「って訳で、ここは立ち入り禁止だし、忙しいから戻った戻った。話は後で聞いてあげるから」

そうアオお兄ちゃんは言うと、私の背中を出口に向けると、ぐいぐいと押し出した。

席に戻ると、困惑顔のスバルたち3人に出迎えられる。

「何か有ったの?」

と、ティアナさん。

「あ、えっと…知り合いが居たものだからびっくりしちゃって…」

「そうなんだ。確かにこんな所に知り合いが居たらびっくりするよね、世間は狭いって言うかさー」

そう、うんうんと納得するスバルさん。

いや、まぁ…そうなんだけど…そうじゃなくてっ!

あーっ!もうっ!なんかもやもやするーっ!

一応この翠屋二号店は一般にも開放されているようだった。

とは言え、こんな辺鄙な所にはほとんど誰も来ないから、結局六課の貸切と言っても過言ではないだろう。

出された料理はとても美味しかったと今日の日記帳には記載しておこう。

スバルさんなんかはショーケースの中のスイーツを買い占める勢いで食べていて、フェイトお姉ちゃんからストップが掛けられたというからその美味しさが伺えただろう。


夜。

私は緊張した面持ちで一つの扉の前に居る。

局員と言う訳では無いのだろうが、こんな辺鄙な所と言うことで隊舎に部屋をもらったのだろう。

うっ…おなか痛くなってきた…

だけど後回しに出来るものではないし、覚悟を決めて私は呼び鈴を押した。

ブーッと言う音の後に「どうぞ」と言う声がかかり、部屋のロックが解除された。

シュィーンと扉がスライドし、私は中に入った。

中は私なんかの部屋よりもかなり広い1人部屋。

見渡せばL字ソファやキングサイズのベッドなんかも伺える。

おいこの野郎、そのベッドで何をするつもりだ。

ペド野郎だったらどうしようかと少し身の危険を感じつつも、促されるままにソファに座る。

「昼間はすぐに追い出してしまって悪かったな。でも厨房だったし、中に入れるわけにはいかなかったんだよ」

「あ、うん…私も悪かったから」

いきなり本題をと意気込んでいた私は少し毒気を抜かれる。

「なのは達にはもう会ったか?何ならみんなここに呼んでも良いんだけど」

「あ、ううん。それはもう少ししたら私が自分で行くから…それよりも」

「うん?」

この野郎、とぼけるつもりか?

しかし、ここでしっかり確認しなければならない。

「アオお兄ちゃんって転生者だよね?」

直球勝負。

緊張で体が震える。

「そう言うなななもそうなんだろう?」

「…うん」

これはただの確認。決定事項。

だから本番はここから。

「あなたは何のために六課(ここ)に来たの?」

アオお兄ちゃんは少し考えるしぐさをした後に言った。

「それは俺もなななに聞かなければならない事だ。俺が答えたらなななも答えてくれるのか?」

アオお兄ちゃんのその問いかけに私はこくりと頷いた。

「責任を取りに…かな」

「責任?」

いったい何の?

「俺の生まれた場所が…と言い訳したいが、結局は自分が選んで彼女達と関わった。その結果、その責任」

なのはやフェイトが管理局入りしていない現実は分かっている。

しかし…

「それだったら教導官になるべきでしょう?」

普通はそっちでしょう?

確かにこっちのルートもあるけれど、普通皆で管理局入りするでしょう?

そして教導官として六課に配属されるはずだ。

「…うーん。俺たちはね、自分の持っている技術を教える事は出来るだろうけれど、他人を導く事には向かないんだよ」

「は?」

どういう事?

「そう言う事に関しては未来のなのはは優秀だった。俺たちでは彼女達の長所を伸ばす事は出来ないだろうからね」

意味が分からない。

…分からないが、つまりは教導官には向かなかったという事だろうか。

「さて、今度はなななの番だよ」

え?

私?

私の理由。

私の動機。

それは…

「…………」

沈黙が流れる。

「言いたくないのかな?それでも推察は出来るね。外れて欲しいとは思っているけれど」

そう言ってアオさんは語り始めた。

「ななな。君の目的は機動六課に参加する事だ」

………

「いや、違うか。君は物語の主人公のようにありたかった。だから、危険だと分かっている機動六課に参加した。物語のキャラクターに会いたいと言う願望もあっただろうね」

図星だった。

私は機動六課でなのはやフェイトに教えを乞い、成長し、ナンバーズを打ち倒し、あわよくばエリオくんと恋仲になりたかった。

「っでもっ!それはあなたも一緒じゃないっ!」

私の精一杯の抵抗に、一度目を閉じてからアオお兄ちゃんは答えた。

「…そうだね。結果を見れば、確かに俺がしてきた事はそう言う事だ。だからこれは同属嫌悪とでも言うべきだろうか?
だけど俺は君のような考え方をする転生者が大嫌いだ」

…っ!

その言葉に私はショックを受け、体が震えた。

嫌いなんて言葉、転生して初めて面と向かって言われたような気がする。

しかし、冷静になって考えると、彼の言葉は他にもそう言った考え方をした転生者に会ったことがあるような言い方だ。

「別になななと敵対する訳ではないよ。ただ、もし俺が優先する事となななの主張がぶつかったら、俺は俺の事情を優先する。たとえ君と戦う事になってもね」

それはある種の宣戦布告だった。

彼はそれ以上は何も言わず、この時の私との話し合いは終わった。


部屋に戻り、先ほどの事を考えていた。

彼が言う責任とはなんだろうか?

無印、A’sともに彼が関わっている事は想像に難くない。

無印で大きく変わっているとしたらフェイトの存在だろう。

フェイト・T・ハラオウンになるはずの彼女は今や御神フェイトだ。

テンプレよろしくフェイトの親権を奪ったに違いない。

しかし、過去へのトラウマなどがまったく無いのはどう言った事だろうか?

フェイトやなのはの根本的な性格は原作のままなのだが、会う度に違和感を感じるのはその思考。

身内と他人の線引きをきっちりしている所がある。

知らない誰かを自ら赴いて助けようなんて考え方はしていない。

さすがに目の前で倒れたりしたら助けるだろうけれど…

原作にある、「誰か(不特定多数)の役にたちたい」と言う考え方は無いようだ。

そのズレはおそらくアオお兄ちゃんやソラお姉ちゃんが原因だろう。

彼らの考え方はどこか醒めて、悟っている部分を覗かせる。

その影響を受けて、と言うことだろう。

だから彼女達は管理局に入局すると言う選択肢が最初から無かったのではないだろうか?


A’s編。

どう言う経緯をたどったのか、もはや推察も出来ないが、リィンフォースアインスが健在でツヴァイが生まれていない事から見てももはや原作のげの字も無かったのではなかろうか?

なぜツヴァイが居ないのか。これの理由は簡単だろう。

アインスが居るからだ。

ツヴァイ製作の動機が無い以上ツヴァイは作られない。

それでも作られる二次はいっぱい有ったが、まぁ…オリ主が介入した時点で普通なら原作のリィンフォースツヴァイは生まれまい。


そしてブランクの10年。

なのはとフェイトが管理局に入らなかったと言う事はどういう事だろうか?

フェイト関連でエリオくんとキャロがまず六課参入理由が無くなる?

だけどエリオくんは六課に参加しているよね。これは後で調べてみないとかな。

キャロは彼の介入があったことは確実だ。

今は地球で平凡な生活を送っている事だろう。

なのは関連はどうだろうか?

スバルとギンガが空港火災で命を落としていない所を考えると、他の管理局員に助けられたか…あるいは…

そしてsts。

ヴィヴィオ。

聖王化したゆりかご内のヴィヴィオをなのは、フェイトを抜いた地上局員で助け出す事ができるか?

…わからない。

けれど無理そうではある。

彼が言った責任とはいったい…







もやもやしつつも時は過ぎて『ファースト・アラート』

スバルさんとティアナさんは今朝渡された新しいデバイスでの出撃だ。

「それじゃ、空はあたし達が抑えておくから、新人どもっ!しっかりやれよっ!」

「大丈夫だ。今日までの訓練を思い出せ。今度の任務なぞどうという事は無いだろう」

そう言ってヴィータ隊長とシグナム隊長がヘリコプターからテイクオフ。

空のガジェットの殲滅にあたる。

さて、私たちの番だ。

隊長たちを見習って空中でバリアジャケットを展開する二人。

あれ?

そのバリアジャケットだけど、私の記憶と全然違うのだけど!?

しかし、それも仕方が無い。

だって、私が知っているあのバリアジャケットは原作なのはとフェイトのバリアジャケットを基にしたものだ。

彼女達が協力していない今、変わってくるのは当たり前。

むしろ、ヴィータ隊長やシグナム隊長の物に近い。

「次はチビどものばんだ。しっかりやれよっ!」

ヴァイスさんの激励。

「「はいっ!」」

「ソード2エリオ・モンディアル」

「ソード3高町ななな」

「「行きますっ!」」

一度やってみたかったのよね。この空中でのデバイス展開。

ティアナさん達とは反対側に接岸して内部をガジェットを駆逐しつつ掛ける。

出てきた大きなガジェットドローン。

「はああああっ!」

斬っ

エリオくんの気合の一撃で触手をぶった切る。

私はその隙にカートリッジをロード。

『ロードカートリッジ・ブレイクブレード』

剣先をさらに覆うように魔力刃を形成させる。

「どいてっ!エリオ君」

「うんっ!」

エリオくんとスイッチするように前に出て、気合と共に振り下ろす。

「はあああああぁあぁぁぁっ!」

『ブレイク』

引き金を引くと、刺さった剣先が爆発。

こちらに飛び散る残骸はバリアでガード。

うん。問題なく撃墜。

「目的地はこっちみたい。急ごう、エリオくん」

「…あ、うん」

なんか私の力技に少しビックリしていたみたいだけど、そんな表情もかわいい。

その後、問題なくレリックは回収。事件は終結した。

さて、『ホテル・アグスタ』だ。

今回のこの事件の注意点、それは…ティアナさんだよね。

例のあのミスショットだ。

確かにあのミスショット事件はティアナを成長させたけれど、それはなのはの撃墜話があったからだ。

アオお兄ちゃん達、責任を取るって言っても何もしていないじゃないっ!

憤りながら私はティアナさんの同行をさりげなくチェック。

ガジェットが襲撃してきて、結局私は別の場所に回されちゃったからティアナさんのフォローは出来なかった。

どうなった?とひやひやしながら戻れば何事も無かったかのように仕事をこなしていた。

あ、あれ?これはいったい…どういう事?


とりあえず、ティアナさんにミスショットは無かったらしい。

むしろ多くの戦果を上げたとか…

おかしい…何かがずれている…


『ホテル・アグスタ』が終わり、ミスショットが無かったためにティアナさんの焦燥もないようで、次は『機動六課のある休日』になるだろう。

これは密かに楽しみにしていた。

だって、エリオくんとデートが出来るんだもん。

確かに途中でヴィヴィオ発見イベントがあるのはしょうがないけれど、それでも楽しみだ。







機動六課内にアラートが鳴り、緊急出動が告げられた。

どうやらレリックが発見されたらしい。

あ、あれ?私とエリオくんのデートは?

て言うか休日話はどこへいったの!?

レリック回収の為に地下水道へと降りる私たちフォワード陣四人組。

途中、襲い来るガジェットを蹴散らしつつ進むとギンガさんと合流し、さらに奥へ。

「あれってっ!」

何かを見つけたギンガさん。

地下水道の中央にアタッシュケースのようなものが一つ落ちていた。

「あれがレリック…」

急いで私が回収に向かう。

ケースを持ち上げ、振り返り、回収した事を伝えようとした時に急にエリオくんが何かに気づいて翔ける。

「危ないっ!」

キィンっ

ザッ

バシャバシャと水路を掻き分けて着地したエリオくん。

「エリオくんっ!大丈夫!?」

「大丈夫だけど…」

対峙するのは人型の甲虫。

「私が行きますっ!援護をっ!」

そう言って駆け出したのはギンガさんだ。

リボルバーナックルから薬きょうが排出されてその回転が増す。

「はぁぁぁぁぁぁあぁあぁあっ!」

甲虫…ガリューに迫るギンガさんのコブシ。

しかし相手もさるもの。簡単には食らわない。

相手の速度はとてつもなく速く人間離れしている。

…あ、人間じゃないか。

その後、スバルさんとエリオくん、さらにティアナさんの援護が入ると流石にガリューは劣勢のようだ。

『マスター。ガジェットの反応です。その数6機』

「え?」

ガンブレイバーが接敵を感知して知らせてくれた。

地下水道内に現れるガジェット。

「ガンブレイバーっ!」

『シューティングフォーム』

ガシャンと変形してカートリッジをロード。

『アクセルシューター』

「シュートっ!」

カチっと音を立てて引き金を引く。

一発二発三発。

けん制に放ったシューター。

AMFに弾かれて碌なダメージは無い。

「っ!」

『ブレイドフォーム』

ガシュ

さらにカートリッジをロードして魔力刃を形成する。

「はっ!」

左手はケースを手に持っているのでいまいち威力は足りないが、それでも手前のガジェットを倒す。

「なななっ!」

「エリオくんっ!」

エリオくんがこちらへと援護に来てくれて残りのガジェットを撃破する。

しかし、形勢は若干劣勢。

その時、真上の岩盤をぶち抜いてヴィータ隊長が登場。

「おらあああああっ!」

肥大化させたグラーフアイゼンでガリューをぶん殴って黙らせる。

「ヴィータ隊長っ!」

「おう、おめーら、怪我はねぇか?」

「はいっ!」

全員で大丈夫だったと答えた。

すると地下水道内が揺れ始めた。

も、もしかしてっ!これって地雷王!?

ルーテシアやアギトの姿を見てないけれど、もしかしてすでに外?

激しくなる振動。

「ひとまず脱出だっ!」

ヴィータ隊長のその言葉で全員ヴィータ隊長が空けた穴を登って脱出。

遠くにこの振動の首謀者と思われる召喚虫と召喚師を発見する。

小さい人影も見える事からきっとあれがアギトだろう。

その後の展開としては私がバスタークラスの砲撃で地雷王を無力化。

その他のメンバーでルーテシアとアギトの無力化に成功した所まではよかったのだが…

ここで私の予想をはるかに上回る展開が起きる。

『上空に巨大魔力反応』

ガンブレイバーからの警鐘。

「へ?」

と見上げた先には二十歳ほどの青年がこちらを見下ろしていた。

甲冑を展開し、右手に持った西洋剣のようなアームドデバイスを掲げている。

『エクスプロズィオーン』

薬きょうが排出され魔力が炸裂する。

や、ヤバイっ…アイツの魔力、私と同じくらいだっ!

「エクスーーーカリバーーーーー」

なっ!?

そう叫んで振り下ろされた剣先から魔力砲が放出され、私たちを襲う。

「みんなっ!私の後ろにっ!」

「う、うん…」
「お、おう…」

『プロテクション』

ガシュガシュガシュ

さらにカートリッジはフルロード。

さらに全員でバリアを張って衝撃に備える。

「きゃーーーーーーっ!」
「わーーーーーっ!」
「なんてバカ威力っ!」

閃光が当たり一面を包み込み、辺り一面を破壊する。

バリバリバリッ

「も、もたない…」

パリンッ

私のプロテクションが割れれば後は堰を切ったようにバリアを割られ、砲撃が私たちを襲い、そこで私の意識は途切れた。







目を覚ますと病院で、一応あの敵の攻撃は非殺傷設定だったようで目立った外傷は皆なく、しばらくすれば退院できるらしい。

ベッドの上で上半身を起こし、同じ部屋に収容されていた新人フォワード陣と話す内容はやはりあの襲撃者の事。

見舞いに来た八神部隊長に問い詰めてしまった事は仕方の無い事だろう。

それで返ってきた答え。

「皆が遭遇した敵はエルグランド・スクライア言うんよ」

スクライア?

「彼が最初に現れたのは10年前。管理外世界で民間人に向けて魔法を行使し、その後ロストロギアで小規模次元震を起こした後、逃走。その後ミッドチルダでちょくちょくその姿を見かける事になるんやけど、駆けつけた局員を悉く撃墜。魔力資質は推定SSS」

「SSS…」

皆一様に押し黙った。

SSSと言えば私もそうだが、化け物と揶揄されるレベルだ。

「そんな人が何であんな所に?」

ティアナさんが八神部隊長に問いかけた。

「さあ?」

「さあ?ってっ!調べはついてないんですか?」

「やつの目的が何処にあるのかは分かってへん。その動機も不明なんや…しかし、今回のレリック事件と関係が有る見たいやし、彼の逮捕もウチの管轄になるかもしれへんな」

どうしようかと難しい顔をする八神部隊長。

「勝てるんですか?」

「私かて総合SSランク魔導師や。シグナム達と一緒なら天下無双やで」

そう笑って言っていたが、やはり不安は大きいのだろう。

エルグランド・スクライア。

私の記憶に存在しない敵。

おそらく転生者かアオお兄ちゃんが関わった事による弊害か。

…たぶんどっちもかな?

後で確かめなくちゃちゃ。

病院を退院して、一息ついてから食堂に向かうと、その一角から子供の声が聞こえた。

誰だろうと思って覗けばなんとヴィヴィオがいるじゃないか。

シリカお姉ちゃんに一番なつき離れようとはしないようだが、テンプレゆえかアオお兄ちゃんの事を「パパ」と呼び、ならばと自分をママと呼ばせたがるソラお姉ちゃんたちが印象的だった。

ちっ、オリ主自重しろっ!

原作ではママが二人だったヴィヴィオ。

どうやらこの世界ではヴィヴィオのママは4人に増えそうだと感じたのだった。


退院した日の夜。

また私はアオお兄ちゃんの部屋へと来ていた。

いつかの様に部屋へと通された私。

挨拶もそこそこに本題に入る。

「私達を襲ったSSS魔導師の事なんだけど。アオお兄ちゃんは何か知ってる?」

問いかけた私にやはりその話題かと言った表情。

「エルグランド・スクライアの事?」

「そう。スクライア姓って事はユーノの?」

「同じ部族だろうね」

スクライア一族への転生か。

見た所なのは達原作主人公と同じ年回り。…と言う事は。

「…無印編でユーノに成り代わり?それとも同行?そんな所がテンプレだけど…」

どっち?と問いかければ前者だったようだ。

無印編はジュエルシードに捕らえられて暴走。ほぼ出番は無かったようだ。

その後ジュエルシードを奪いアオお兄ちゃん達を襲撃するも失敗。

これはアオお兄ちゃんに対する嫉妬だろうね。

自分がハーレムを築くはずが既に手遅れだったようだし。

ここで原作介入を諦めれば良かった物を…今回のこれを鑑みるに数の子ルートへと変更したようだ。

「俺達もその結論に落ち着いた。それにしてもある意味すごいな。隠れている犯罪者に接触なんて、普通は出来るものじゃないのに」

本当にね。いったいどうやったのか。

蛇の道は蛇。

裏関連の仕事をこなしつつ情報収集したとか?

しかしそれは立派な犯罪者だろう。

原作通り六課が勝った場合、犯罪者として逮捕されると言う事が分かってないのかな?

もしくは軽く考えているか。なんだかんだでナンバーズの半分以上は釈放されているからね。

だが、間違ってはいけないのは、彼女らに情状酌量の余地が有ったからだ。

そこの所は気付いているのか?…気付いていたら数の子ルートになんか行かないか。

と言う事はエルグランドがスカリエッティ一味の仲間入りした原因は目の前の彼にあるのか。

そっか、以前聞いた責任と言うのは…

「責任ってそう言う事か。エルグランドをあなたが相手をするってことね」

そのためにわざわざ六課内部に出店したのだろう。

しかし…目の前のアオお兄ちゃんは心外そうな顔をしている。

「え、なんで?」

「だって、アオお兄ちゃんの所為でしょう?そのエルグランドって人が敵に回ったのって」

「ああ、つまりなななは歪められた原作を正せと言いたいのか」

「そうよ」

「しかし、その言い分を聞くと、俺はまず君を排除しなければならなくなるんだけど?」

「え?」

何を…?

「エルグランドの行動も、その動機も、なななのそれと大差ないと思うんだけど?」

私がエルグランドと…同じ?

だ…だめっ…これ以上は考えちゃダメ…

「とりあえず、諸事情により俺は…と言うよりなのは達を含めた俺達はエルグランドと会うことが出来ない」

だから無理だと語る彼。

「な、なんで?」

かすれる声で何とか問うた。

「俺とエルグランドは二度と出会えないように運命が決定されている。これはもはや覆しようがない。だから俺達が捕縛する事はできないんだよ」

意味が分からなかった。

分からなかったが、彼はそれ以上説明する気は無いようで…

私も混乱している状況なのでその日はアオお兄ちゃんの部屋を辞し、自室で何も考えないように眠りについた。

今日話した事を忘れるように…


さらに時は過ぎて、公開意見陳述会が開催される日。

つまりヴィヴィオが攫われ六課が襲撃される日だ。

私達は内部警備の為に預けられたデバイスを届けるために合流地点へと向かう。

通路を進むとウェンディとノーヴェと接敵する。

それを何とかいなして逃走し、隊長達との待ち合わせ場所へ。

そこに向かうと私達は戦力を分断する事に決定し、空が飛べる私とエリオくんは機動六課へと急行する。

「なななっ危ないっ!」

「へ?」

私の前に庇う様に現れてシールドを展開するエリオくん。

『プロテクション』

私の戸惑いで判断が遅れた所をガンブレイバーが独自に判断。シールドを展開したその直後、私達は閃光に包まれた。

やばいっ!割られるっ!

「ストラーダっ!」

「ガンブレイバーっ!」

『ロードカートリッジ』

カートリッジをフルロード。

二人でカートリッジでシールドを強化し、なんとかその砲撃に耐えた。

「いったい何!?」

視線を向けえると、そこにはいつかの騎士甲冑の男。

「エル…グランド…」

私のつぶやきに返すことなくこちらを見下ろしているエルグランド。

「エクスカリバー」

『エクスプロズィオーン』

薬きょうが排出された圧縮された魔力が炸裂する。

「よお、高町なのはのまがい物」

そう言ってこちらへ翔け降りてくるエルグランド。

「うっ…くっ…」

エリオくんは先ほどのシールドの展開で突き出した右腕を、すべてを軽減できなかったらしく負傷している。

「どいて、エリオくんっ!」

『ブレイクブレード』

ガンブレイバーに魔力刃が形成される。

「はっ!」

「くっ…」

ガキィンっ

垂直に振り下ろされたエルグランドの攻撃を何とか受け止める。

「なんでお前はそこに居るっ!機動六課(そこ)に居れる!?俺は無理だったと言うのにっ!」

「くうっ…」

エルグランドの膂力が増し、私は押され始めた。

「どうせ貴様も俺と同類なんだろう!?ええっ!?」

「ちがう…私は…あなたとは…」

「違うとは言わせねぇっ!お前の事は調べたからな。
高町ななな。本来は生まれるはずの無い高町家の三女。ゼロ歳で魔力事故を起こしミッドチルダへ移住」

どこまで調べたと言うのか。

「生活常識は両親が教えるまでも無く、赤ちゃんの時には夜泣きもしなかったそうだな。魔法への関心は異常に強く、訓練開始は3歳。機動六課への参加は渋る両親を自身で説得しての事だそうだな。
これだけ出揃っていて転生者じゃないと疑わない方が異常だろう?」

何?その理屈。

一方的過ぎるっ!

けれど、当たっているので反論できない。

「だったら何?それがあなたに何か関係あるわけ?」

ぎりぎりと押されるガンブレイバーを気力で支えて言葉をつむいだ。

「何でまた俺ではないんだっ!」

「え、あ?きゃーーーーーっ」

怒声と共に込められた力が増し、支えきれなくなって私はそのまま海上へと叩きつけられた。

「なななっ!」

エリオくんの叫び声が聞こえる。

海中に落ちた後も頭上から雨のように降り注ぐスフィアに、海中からの脱出がままならない。

まずいっ…息が…

これ以上はまずいと思ったとき、突如として攻撃がやんだ。

「ぷはっ」

この気を逃さず浮遊すると、エリオくんがエルグランドに接近戦を仕掛けていたようだ。

「はあああああっ!」

「その程度の魔力で俺に敵うと思っているのかっ!」

ガシャンガシャンとぶつかり合う二人のデバイス。

「魔力だけが強さの全てじゃないっ!」

エリオくんの反論。

「…嫌な言葉だ。…身に染みてるよ」

過去に何が有ったのだろうか。

「だが、それでも魔力の差は縮める事が難しい事も事実っ!」

そう言うとデバイスに更なる魔力が集められる。

やっ、ヤバイっ!エリオくんがやられるっ!

「ガンブレイバー」

『シューティングフォーム』

さらにカートリッジをロードする。

『ディバインバスター』

「ディバイーーーーン、バスターーーーー」

ゴウッと襲い掛かった私の砲撃魔法はエルグランドに直撃し、エリオくんは辛くも攻撃から逃れる事が出来た。

シューっ

余剰魔力が排出する。

「ありがとう、ななな」

「うんっ!」

それにこれならいくらかのダメージは負ったはず…

しかし、現れたエルグランドに損傷らしい損傷は見当たらない。

「……まだまだだね」

「そうみたいだ…」

逃げようにも相手は私達を逃がしてくれるような気配は無い。

管理局からの援護も今この状況では期待できない。

これは覚悟を決めないとダメかな…

「ガンブレイバー…フルドライブっ!」

『エクセリオンモード』

「なっ!?」

私のフルドライブのコールに驚くエリオくんをよそにガンブレイバーのフォルムは変形し、魔法刃を纏わせたその形状は重槍。

『A.C.S.スタンバイ』

コーン部分が長く設定された突撃槍に後方に伸びるようにフィンが突出している。

「私が行くからエリオくんは援護をお願い」

「そんなっ!ボクが行くよっ!」

「ダメ、エリオくんじゃたぶんあいつのバリアを貫けない」

「………くそっ…」

事実を突きつけた私の言葉に力不足を感じたエリオくんは悪態をついた。

「行くよ、ガンブレイバーっ!」

私の掛け声と共にA.C.S.が起動してすごい速度でエルグランドへと迫る。

迫り来るシューターは前方に展開したシールドで防御。

それでも全てが防げるはずも無く、被弾しながら直進する。

「あああああああああっ!」

「ふんっ!」

展開されたバリア。

『ロードカートリッジ』

突き破ろうと魔力を込める。

「なめるなーーーっ!」

『エクスプロズィオーン』

エルグランドもシールドを強化。さらに隙をうかがうようにスフィアが展開され、射出体制に移行した。

マズイっ!と思ったときに私を助けてくれたのはエリオくんだ。

「はあああああぁっ!」

気合と共に私の反対側から振り下ろされるストラーダ。

反射的に反対側にも展開されたシールド。

その展開でスフィアの発射が1テンポ遅れた。

『シュート』

しかし、次の瞬間放たれたシューターは弧を描き、私達に着弾する。

「わああああっ…」

吹き飛ばされていくエリオくん。

「くぅっ…」

私は構わずにバリアを貫く事に全力を注ぎ、シューターを被弾しつつも槍先だけバリアを破る事に成功した。

「エクセリオーーンバスターーーーーっ!」

「お前がその魔法を口にするなっ!紛い物がっ!」

渾身の力で打ち出した砲撃魔法をエルグランドはデバイスを握り締めると力任せに切り裂いた。

うっうそっ!?

バスターを切り裂いた刀身が私に迫る。

『ブレイク』

魔法刃を爆発させて自身のダメージも省みずに剣の軌道をそらし、その爆風で距離を取った。

額から血が流れる。

少し切ったようだ。

「はぁっ…はぁっ…はぁ…」

大量の魔力消費で息が上がる。

魔力量は互角のはずなのに…

エルグランドは大量のシューターを弾幕代わりに放つと、こちらに向かって距離を詰めてくる。

振り上げた西洋剣のデバイスを縦横無尽に振り回し、私を攻撃する。

「うっ…くっ…」

弾幕はシールドで弾き、剣戟はガンブレイバーで打ち払うが、どんどん押されていくのが分かる。

「あははははっ!弱い、弱すぎるっ!こんなもんだろう!?普通はっ!なのに何で俺はあの時負けたんだっ!?」

エルグランドの独り言。独り言ゆえに言ってる意味が分からない。

しかし、理不尽な怒りを受ける私にはたまったもんじゃない。

だんだん捌き切れなくなってくる。

「なななーーっ!」

後ろからエリオくんの攻撃がエルグランドに迫る。

「うるさいんだよっ!ガキがっ」

「くっ…」

それでもエリオくんはエルグランドの攻撃を何とか受け、応戦している。

標的が移った事で、一時私への攻撃がやんだ。

『マスター。このままではマスターたちがやられます。グングニールの使用許可を』

ガンブレイバーからの提案。

「だっダメだよっ!あれはっ!あれは…あれだけはっ!」

『しかし、二人を救う方法がそれしか思いつきません。他にあの者に勝てる手段が存在しますか?』

くっ…たしかにグングニールは私の最大の攻撃魔法だ。

だけど…

『考えている時間は有りません。エリオさまがあの者の相手を引き受けていてくれる今しかチャンスは無いのです』

「そんなっ!きっと何かっ手段が…」

そう否定する私を無視してガンブレイバーはグングニールの術式を起動する。

『ファイナルリミット・リリース』

「ガンブレイバーっ!?」

『どうか、私の最後のわがままをお聞き下さい』

どうあってもガンブレイバーの決意は変わらないようだ。

「ガンブレイバー…ごめんね…」

『お気になさらずに』

涙腺から涙があふれるのが止められない。

それでも私は毅然と目を見開き、魔力素を集束する。

集束した魔力素を圧縮して魔法刃を形勢。何重にも重ねるように展開する。

時間にして十数秒。

エリオくんが稼いでくれた時間で準備が整った。

「エリオくんっ!離脱してっ!」

私の声が聞こえたエリオくんは攻撃を中止し、全力で離脱する。

エルグランドはこちらを見上げ、私が集めた魔力の大きさに驚愕の表情を浮かべる。

「グング…ニール」

私はガンブレイバーを大きく後ろに引き絞り…エルグランド目掛けて投げつけた。

「くっ…」

そのガンブレイバーから迸る魔力に受け止められないと思ったエルグランドはガンブレイバーを避けようと飛ぶが…

甘いよ…

神話の時代の武器の名前をもらったのは伊達や酔狂からじゃない。

それに見合うだけの効果と威力があるから。

…一度投げ出されたガンブレイバーは自身にこめられた魔力を使い目標に向かって追尾する。

その魔力が尽きるまで何処までも相手を追い続けるだろう。

「な!?」

逃げ惑うエルグランドをついに捕らえたガンブレイバー。

しかし、エルグランドもやられはしないとシールドを展開する。

しかし…

『ロードカートリッジ』

装填されてたカートリッジを全て推進力に替えてエルグランドのシールドを突破にかかる。

数秒の拮抗の末シールドを破り…

「ブレイク…」

ドーーーーンっ

あたり一面を閃光が包んだ。

グングニールは私が持つ中で最大射程、最高威力の魔法だ。

しかし、投擲魔法であるために射出してからの制御などは本来ならば難しい。

…しかし、デバイス自身が制御すればそれも可能になる。

つまりガンブレイバー自身が制御し、目標を追うのだ。

だが、高威力攻撃の為に圧縮した魔力が開放された時…この世界のどんな素材を使おうともそのフレームを維持する事は出来ない。

…つまり。

「うっ…ぐすっ…はっ…ごめん、ごめんね…ガンブレイバー…」

私を助けてくれた私の大切な相棒。

彼女はもう…居ないのだ。

その事実に私は声を張り上げ、臆面もなく泣いた。

泣き疲れて飛行魔法がキャンセルされようとした時、誰かに抱きとめられたような感覚は覚えている。

「なななっ!」

エリオくんの私を呼ぶ声を最後に私は意識を失った。







「知らない天井だ…」

目を開いての第一声がそれとは…自分の事ながらよくもまぁ…

「なななちゃんっ!」

上半身を持ち上げた私を横合いから抱きついた女性。

「お、お母さん?」

「もうっ!心配したんだからね?」

ぎゅっと私を包み込むお母さん。

その隙間から外をのぞけばお父さんがこちらを心配そうに見ていた。

「お父さん?」

「ああ、そうだ。あんまり心配かけるな…」

白を基調とした内装の室内に、幾つかのベッドが並んでいる。

ここは病院だろうか。

少しずつ記憶がよみがえっていく。

公開意見陳述会が襲われて、私とエリオくんは機動六課に急行して。

「あ、そうだ…ガンブレイバー…」

ガンブレイバー…私達の為に…

『おはようございます、マスター』

「ガンブレイバー!?どうして!?」

『その質問の意味が分からないのですが』

胸元に待機状態で架けられているガンブレイバー。

本人になぜピンピンしているのか聞けば、そもそも公開意見陳述会以降の記憶は無いらしい。

つまり、エルグランドに襲われたあたりのデータはすっぱりと無いと言うことだ。

なぜ?どうして?と言う疑問が浮かぶ。

だけど…それよりも…

「よかったよぉおぉぉぉぉぉ」

『落ち着いてください、マスター』

良かった。

大事な相棒を失わずに済んで、本当に良かった…

聞いた話によると私は高熱を出して意識不明のままずっと眠っていたんだって。

寝ている間にJ・S事件が終わってたんだけど。

私が倒れてからの事を話そう。

グングニールが炸裂したあと、駆けつけた局員が私やエリオくん、ついでに海面に浮かんでいたエルグランドを回収したらしい。

回収されたエルグランドはリンカーコアを厳重に封印。デバイスは物的証拠として押収され、拘置所送りにされている。

エルグランド自身は情状酌量の余地があると信じきっていて、余裕そうだと八神部隊長から聞いたが、そんな事になるはずは無く、一生刑務所の中だろうとの事。

この事については私は考える事が多い。

一歩間違えれば私があの位置にいたかもしれないのだ。

エルグランドは自分が関わる事で物語が歪むと言うことを考えられなかったのではないだろうか。

もしくは既に歪んでいるとは思えなかったのではないだろうか。

自分がユーノに成り代わり、なのはの側でなのはを助けつつ敵を蹴散らし、フェイトを救ってハッピーエンド。

もしかしたら、クロノKYと一方的に無双とか考えたかもしれない。

さらに闇の書事件も華麗に解決し、sts編にも部隊保有戦力の上限なんて無視して自身が誘われると信じていたのかも。

すべて自分に都合のいい方だけを考えて…

しかしうまくいかず、どう言う経路を辿ったのかナゾだが、数の子ルートへと。

しかし、結局スカリエッティにしてみれば使い捨ての駒だったようだね。

テンプレ的に考えれる所ではスカリエッティによる改造とかマインドコントロールとかありそうだが、魔力量はSSSの化け物だ。

スカリエッティもうかつには手が出せなかったのだろうか。

結局エルグランドも私も、この世界を物語としか捉えられなかったと言うことだろうか。

ここはもう、自分が生きる世界で現実だ。

今回の事でその事を途轍もなく実感した。

虚構ではなく現実。

これからはちゃんとその事を受け止めて生きていこう。

物語では無いのだから、自分の選択で未来が決まるという事を忘れてはいけない。


私達が関わったからなのか、この世界では原作よりも悪い結果でJ・S事件は終結する。

アオお兄ちゃん達が六課にいた筈なのに攫われたヴィヴィオ。

そのヴィヴィオの力で浮上したゆりかご。

しかし、原作のように無事救出とは行かず、軌道衛星上で囚われたヴィヴィオごと艦隊により蒸発。

そのまま幼い命を散らした。

これを聞かされたときはショックで現実とは認めたくなかったが、現実としてはヴィヴィオの救助はされていない。

アオお兄ちゃんが居ながら何をやっていたというのか…

ナンバーズやスカリエッティは逮捕され、これにて一応の終結をみた。

ヴィヴィオの死が私達に大きな影を落としたが、皆何とか立ち直ったようだ。

時は流れ、機動六課の解散の日。

八神部隊長が部隊解散の挨拶をしている。

挨拶が終わると、私はエリオくんに話しかける。

「エリオくんってさ、この部隊が終わったらどうするの?」

「僕?僕はやっと留学の許可が下りたから、次の春から学校に通う事になると思う」

「ええ!?学校!?」

「…変…かな?」

「う、ううん。ただ、ちょっと意外だったから」

留学って一体何処に?

いや、でも私も一緒に付いていけばエリオくんと楽しいスクールライフが出来るって事?

そんな邪な考えが脳をよぎった時、遠くからかわいい声でエリオくんを呼ぶ声が聞こえた。

「エリオくーーーん」

「キャロっ!」

勢い良く走りよってきてエリオくんに抱きついたキャロ。

「え?え?何?どういう事?」

私が目を点にしているのをお構いなしにういういしいカップルのようにお互いテレながら近況を報告している二人。

え?と言うか、キャロは何処から現れたの?

「こら、キャロ。エリオはこの後荷造りに忙しいんだから、邪魔していると学校の始業に間に合わなくなるかもしれないぞ」

キャロちゃんの後ろから歩いてきたアオお兄ちゃん。

なるほど、キャロはアオお兄ちゃんのお迎えか。

あれ、でも?

「むー、大丈夫だもん。ねー?」

かわいく脹れたキャロ。

あれ?なんかキャラが違いすぎない?

「あの、エリオくんの留学先って?」

私の質問にようやく私の存在を思い出したように向き直った。

「今度、管理外97世界に留学しようと思って。既に姉さん達(八神一家)の許可も得てますし、ようやく本局からの許可も得られたので」

え?もしかして海鳴に行くの?

「えと、それで、キャロちゃんとのご関係は…?」

さっきから手をつなぎっぱなしなんだけど?これだけは今のうちに聞いておかないと…

「…僕たち付き合ってるんです」

そう言って顔を真っ赤にする二人。

「え、いつから?」

「大体一年半前くらいからでしょうか」

ガーン

そんなに前から…

だから私のアプローチに何の反応も無かったわけね…

「うっうううううっうわーーーーん」

私は年がいも無くその場を走り去った。

「えっと、僕、何か…」

「今はそっとしておいてやれ」

「はい」

エリオくんと恋仲にもなれず、六課入隊では死ぬような目にもあって…

いったい、私って何のために機動六課に入ったのーーーー!?

私の葛藤を他所に本日をもって機動六課は解散しました。

 
 

 
後書き
今回の「高町ななな」は良くも悪くも転生オリ主と言う事ですかね。
次回はこの話の裏側。アオ視点になります。 
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