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八条学園怪異譚

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第四十三話 白蛇その三

「あの人は底なしでしかも舌の守備範囲が広いからさ」
「何でもなの」
「お酒なら何でもいいのね」
「そうだよ、ただ量は多い方がいいから」
 それでだというのだ。
「一人一升は持っていくといいだろ、いや」
「いや?」
「いやっていうと?」
「二人でさ」
 一人ずつ買うのではなく、というのだ。
「四リットルの焼酎買うといいかもな」
「あの酒屋さんで売ってる?」
「物凄い量の」
「ああ、あれがいいかもな」
 こう二人にアドバイスするのだった。
「あの人焼酎も大好きだしさ」
「あの焼酎安いから」
「お土産には」
「うわばみさんは酒の値段にはこだわらないんだよ」
 そういうことには、というのだ。
「こだわるのは量とかなんだよ」
「飲めればいいの?つまりは」
「そうなの?」
「まあそうだな」
 実際にそうだと言う猫又だった。
「あれはな」
「実際にそうなの」
「量なのね」
 二人もその話を聞いて納得した、言われてみればうわばみはとにかく量を飲みたがる、その辺りは名前通りだ。
「だから四リットルの焼酎なの」
「あれなのね」
「そうだよ、まああの人にとっちゃあその四リットルもな」
 しかも強い焼酎でもだというのだ。
「大したものじゃないけれどな」
「それでもなのね」
「あれがいいのね」
「ああ、そうしなよ」
 その四リットルの焼酎でいいだろうというのだ。
「つまみは向こうで用意しているからな」
「じゃあそれね」
「それ飲んでいくわね」
「そうするといいさ、しかしあんた達も慣れてきたな」
 猫又は二人の顔を見てこうも言って来た。
「随分な」
「妖怪さんや幽霊さん達とのお付き合いね」
「そっちのことね」
「いや、夜にだよ」
 彼等ではなく時間の話だった、、今話すのは。
「随分慣れてきたよな、夜に」
「言われてみればそうかしら」
「夜の学校を歩くのも」
「世界ってのは一つじゃないんだよ」
 そうだというのだ。
「昼もあれば夜もあるだろ」
「その夜に慣れることは?」
「どうなの?」
「いいことだよ」
 そうだというのだ、それでだ。
「夜のよさを知るのもな」
「夜のよさをなの」
「それを知ることもなの」
「ああ、そうなんだよ」
 猫又は今は普段の茶目っ気と愛嬌のある猫らしい態度ではなく哲学的な態度で二人に話してくる、彼にしては珍しく。
「昼のよさだけじゃなくてな」
「夜のよさも知ることが」
「それがいいのね」
 二人はその話を聞いて述べた。
「そうなのね」
「私達にとっても」
「そうだよ、視野は広い方がいいだろ」
 猫又がここで言うのはこのことだった。 
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