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八条学園怪異譚

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第四十三話 白蛇その四

「だからなんだよ」
「成程、それでなの」
「知ることなのね」
「そうさ、あんた達は夜も知ってきてるからな」
 それがだというのだ。
「いいんだよ」
「そうなのね、まあ夜は怖いものじゃないってのはわかってきたかしら」
「そういうことは」
 二人は猫又の話を聞きながら応えた。
「暗くて物陰が気になって」
「変な人もいるけれど」
「そこは夜のよくないところだけれどさ」
 だから夜の人影の少ない場所は危ないのだ、痴漢や強盗のことは頭に入れておかなくてはならないことだ。
「けれどな」
「それでもなのね」
「よさも知ってことなのね」
「何でもいいところと悪いところがあるんだよ」
 これまた哲学的な言葉だった、語るその顔も。
「そこをわかっているのといないのとで全然違うんだよ」
「そういうものよね」
「やっぱりね」
「そうそう、まああんた達は夜のよさもわかってくれて何よりだよ」
 猫又は完全に人間の感じで述べた。
「昼にもよさがあってな」
「夜もね」
「そういうことよね」
 二人もその話を聞いて納得する、そしてだった。
 そうした話をしながらだ、愛実はこう聖花に言った。
「じゃあ今晩はね」
「うわばみさんとね」
「楽しく探してきなよ」
 泉を、というのだ。
「そうしてきたな」
「うん、それじゃあね」
「行って来るわね」
 犬猫コーナーでこうした話をした、そしてだった。
 二人はこの日の夜に小学校に向かった、愛実はその背中に赤いリュックを背負っている。聖花はそのリュックを見つつ彼女に言った。
「重くない?」
「大丈夫よ」
 愛実はにこりと笑って聖花の怪訝な言葉に応えた。
「交代で持ってるからね」
「疲れないっていうのね」
「そう、それ言ったら聖花ちゃんだってじゃない」
 さっきリュックを背負っていたというのだ。。
「だからね」
「だったらいいけれどね」
「ええ、それで先輩だけれど」
「ちょっと待ってね」
 聖花は制服のポケットに手を入れた、そのうえで携帯を取り出して見てから愛実に顔を戻してこう答えた。
「もうおられるそうよ」
「小学校に?」
「その校門のところにね」
 そこで待っているというのだ。
「おられるそうよ」
「そうなの。じゃあ校門で待ち合わせして」
「中に入ることになるわね」
「そうね、じゃあその焼酎を持ってね」
「そうね」
 愛実は聖花に応えながら自分の背中を見た、赤いリュックの中には。
「うわばみさん喜ぶかしら」
「そうみたいだけれどね」
「だといいけれどね。それにしてもこの焼酎って」
「重いの?代わる?」
「さっき代わったばかりじゃない」 
 だからいいとだ、愛実は聖花の気遣いに微笑んで返した・。
「大丈夫よ」
「そうなの。じゃあね」
「うん、このままいけるから」
 気遣いは無用だというのだ。 
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