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久遠の神話

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第五十三話 十一人目の影その十四

「そのことはお話させて頂きます」
「成程な。中華街か」 
 広瀬は新しい剣士のことを彼が今いる場所から推察した、そしてこう声に対して脳裏から言ったのであった。
「中国人かそれとも台湾人か」
「確か中華人民共和国と中華民国ですね」
「どちらかだな」
 中華街の中国系には二つある。これは国共の関係もありそれでこの二国に立場がそれぞれ分かれているのである。
 それで広瀬も今声にこう言ったのだ。
「そのどちらかというと」
「私はそうしたことは興味がないので」
「言えないか」
「はい、しかし」
「ここで中国系と俺が思ったことか」
「それは何故でしょうか」
「考えただけだ」
 中華街という場所からだというのだ。
「それだけだ。深くはない」
「そうだったのですか」
「もっと考えると中華街にいるのは華僑だけじゃない」
 その他にはというと。広瀬はその中華街を見回しながら声に脳裏で言った。
「観光客も多い」
「日本人もですね」
「ここは観光地だ、それなら余計そうなるんじゃないかな」
「そういうことですね。ですが」
「今度の剣士は中国系か」
「はい、そうです」
「面白いな。剣士の戦いも国際色豊かだよ」
 広瀬は目を笑わせず口だけで笑ってこう言った。
「アメリカ人の士官さんの次は中国人か」
「誰も剣士が日本人だけとは言っていません」
「そうだったな。剣士もな」
「はい、国籍によらずです」
 声はここでこう言った。
「久遠の運命の中で」
「久遠?」
「神話の頃から定められた魂を持つ剣士達が戦い続けているのですから」
「魂、ねえ」
「そうです。運命なのです」
 声は彼女ともう一人だけが知っていることを今広瀬に話した。
「ですから日本人とは限りません」
「よくわからない話だな」
 広瀬は魂や運命と言ってもそれはだった。
 首を捻りそしてこう言ったのだった。
「どういうことかな、それは」
「何がですか」
「魂や運命というのは」
 広瀬はその彼がわからないことを声に問うた。
「何だ」
「あっ、来ました」
 声は答えなかった、その代わりにだった。
 声がこう言うと広瀬も前に気配を感じた、するとだった。
 そこに一人の青年が来た。広瀬も彼を見た、その彼こそがだった。


第五十三話   完


                             2012・12・14 
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