ハーブ
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第二章
第二章
「これがまたかなり奇怪な事件でして」
「そうですね。まず被害者は老若男女様々で」
今言ったのは本郷だった。ジョッキの中のビールを飲みながらさらに話すのだった。
「時間帯もですね」
「朝も昼も晩もです」
軽侮は被害者達が殺された時間帯についても話した。
「全くばらばらです」
「何一つとして一致しない」
今度は役が言ってきた。彼はジョッキを置いてそのうえで考える顔になっている。そうしてそのうえで静かに話すのであった。
「被害者も時間帯も」
「事件の現場はダブリン市内です」
警部が今度話したのは事件が起こった場所についてだった。
「それ以外はです」
「それもまちまちだと」
「そうなのですね」
「その通りです。何一つとして一致しません」
警部は言いながら首を捻った。
「おかしな話です」
「そうですね。しかも」
「ハーブですか」
そしてであった。二人は今度はこのことを話に出してきた。
「事件の現場にハーブが鳴る」
「妙な話もここに極まれりです」
「はい。そして殺された者は誰もがその首を細く強靭な糸で首を締められています」
「殺され方は同じ」
「それだけが」
「そうです。それだけはです」
警部の目が話すその度に曇っていく。一致している非常に数少ないことだった。
それだけは同じだと話してだ。警部は二人に対してあらためて問うのだった。
「それで依頼ですが」
「だからここにいます」
「これが返答です」
こう言ってみせた二人だった。
「それで宜しいでしょうか」
「是非共」
「有り難うございます。ではようこそ日本から」
「はい、どうぞ」
「それでは」
こうして二人は事件の解決を依頼された。この謎の連続殺人事件にだ。
二人はすぐにダブリンのホテルに宿を借りた。そのホテルとは至って普通のホテルであり警部にしても少し目をしばたかせるものがあった。
「ホテルでしたらもっといいものを用意しますが」
「あまり気取るのも何ですから」
「ですから」
だからだという二人だった。
「御気になさらずに」
「私達はそこでいいですから」
「左様ですか」
「はい、それでなのですが」
「私達だけではありませんね」
三人はそのホテルの前で話をしていた。夜のダブリンは至る場所でパブの中から光が出ている。それがそのまま街の灯りになっている。
その灯りに照らされた夜のアスファルトの上でだ。三人は話しているのだ。三人共ビールのせいか顔が真っ赤になっている。
「もう一人呼ばれたとか」
「イタリアから」
「アンジェレッタ=ダラゴーナさんです」
この名前も出て来たのだった。
「その人も御呼びしています」
「合わせて三人ですか」
「私達も入れて」
「お嫌ですか?」
警部はここで二人に問うた。
「御二人だけでやられたいというのなら」
「いえ、それはありませんので」
「安心して下さい」
すぐにこう答えを返した二人だった。
「事件の解決には人が多い方がいいですから」
「それに今度の相手は」
役はここで考える顔になって述べた。
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