さらばジャマイカ
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第三章
「いいねえ」
「だろ?美味いだろ」
「フィラデルフィアにはない味だよ」
「これがこの国なんだよ」
「ジャマイカの味なんだね」
「とはいってもアメリカ料理だけれどな」
ハンバーガーやスペアリブはというのだ。
「それでもジャマイカの味だよ」
「トロピカルなんだね」
「これもな」
リチャードは僕にジュースも差し出してきた、青いドリンクの中に氷が入っていてグラスの端のところにスライスされたオレンジとグレープフルーツ、そしてチェリーがある。ストローも入っている。
そのジュースを差し出してだ、僕に言った。
「飲めよ」
「ジュースだね」
「これは完全にこの国のジュースだよ」
「ジャマイカの飲みものだね」
「ああ、美味いぜ」
「何かとても甘そうだね」
「甘いけれどそれだけじゃないぜ」
ジュースは二つある、リチャードのところにも。彼は自分のものも見ながらそのうえで僕に言ってくるのだ。
「炭酸でしかもオレンジもあるからな」
「そっちの味もあるんだ」
「そっちも楽しんでくれよ」
こう僕に言うのだ。
「じゃあいいな」
「お言葉に甘えて」
僕は笑顔で彼の言葉を受けた、そしてだった。
ジュースも飲んだ。甘い、けれどそれだけじゃない。
炭酸の刺激にオレンジの酸っぱさもある、グレープフルーツもまた。そのよく冷えた甘さと甘酸っぱさと刺激も楽しんだ。
太陽がある中でも充分だった、けれどそれだけじゃなかった。
部屋のシャワーを浴びた僕に先にシャワーを浴びていたリチャードが誘いをかけてきた。
「行くか」
「夕食だね」
「食うだけじゃないぜ」
「飲むんだね」
「夜だぜ、飲まないとな」
話にならないというのだ。
「そうしないとな」
「旅に来ている意味がないんだね」
「そうだよ、飲んでこそだよ」
それが旅だというのだ。
「そこの酒を飲んでこそな」
「そうだね、じゃあ今から」
「後はな」
「女の子かな」
「いい店もあるぜ」
どういう店かはあえて言わない。
「じゃあ行くか」
「それじゃあね」
「ただ、変な奴には気をつけろよ」
リチャードはこのことは注意してきた。
「いいな、それはな」
「ああ、リゾート地には付きものだね」
「いいものばかりあることなんてないからな」
「そこは何処でも同じだね」
「だろ?まあニューヨークよりましだけれどな」
あの街よりは治安はいいというのだ。
「それでもだよ」
「油断大敵だね」
「そういうことでな」
「行こうか」
こう二人で話して夜のジャマイカ、キングストンの街に繰り出した。リチャードはここでも僕に行ってくれた。
「食うのならな」
「いい店知ってるんだね」
「ついでに飲める場所だよ」
そうした店だというのだ。
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